Artist: A$AP Rocky
Album: TESTING
Song Title: Distorted Records
概要
「Distorted Records」は、A$AP Rockyが2018年にリリースした3枚目のスタジオアルバム『TESTING』のオープニングを飾る、極めて実験的で破壊的なトラックである。Hector DelgadoとNez & Rio、そしてRocky自身がプロデュースを手掛けた本作は、タイトルの通り「歪んだ(Distorted)」極悪なベースラインとインダストリアルなサウンドスケープが特徴だ。『TESTING』というアルバム全体が、既存のヒップホップの枠組みを打ち破る「音響実験」をテーマにしており、この曲はその強烈なマニフェストとして機能している。リリックでは、シーンにおける自身の絶対的な影響力や、自身のスタイルを模倣する「チルドレン」たちへの優位性を誇示しつつ、当時のトランプ大統領への痛烈な批判や、ハードコア・パンクの伝説的バンドBad Brainsへの言及など、ジャンルや政治的文脈を横断するRockyの特異な美学が凝縮されている。メインストリームの頂点に立ちながらもアンダーグラウンドのノイズを追求した、彼のキャリアにおける重要な転換点である。
和訳
[Intro]
Uh, uh
[Pre-Chorus]
I can feel the bass, from the ceiling to the basement
天井から地下室まで、ベース(重低音)を感じる
I don't feel a thing, get the fuck up out my face, bitch
俺は何も感じない、俺の目の前から失せな、ビッチ
※「ベースを感じる(I can feel the bass)」と「何も感じない(I don't feel a thing)」という矛盾した感情の対比。ドラッグで極度のハイ状態にあり、物理的な重低音以外は何も感じない(他人の言葉や感情には無関心)というサグな表現。
I don't feel a thing, yeah I'm faded, yeah I'm shaded
何も感じない、ああ、俺はハイになってて、サングラスで隠してる
I don't feel a thing, I can feel the bass, I can feel the bass
何も感じない、ベースを感じる、ベースを感じる
[Chorus]
Distorted, distorted records (I-I can feel the bass)
歪んだ、歪んだレコード(ベ、ベースを感じる)
Distorted, distorted records (I-I can feel the bass)
歪んだ、歪んだレコード(ベ、ベースを感じる)
Distorted records, distorted records (I-I can feel the bass)
歪んだレコード、歪んだレコード(ベ、ベースを感じる)
Distorted records (What more distorted records do you have?)
歪んだレコード(これ以上、どんな歪んだレコードを持ってるんだ?)
※曲の背後で流れるこの不気味なサンプリング音声は、ヒップホップファンの間では古い教育用レコードやアヴァンギャルドなノイズ音源からの引用と推測されており、アルバム『TESTING(実験)』の不穏な幕開けを告げる象徴的なギミックとして機能している。
[Verse]
First things first, I done heard the worst things
まず最初に言っておくが、俺は最悪なことを耳にしてきた
Like if I'm in your top 10, mine's better be the first name
俺がお前の「トップ10」に入るなら、俺の名前が一番目じゃなきゃおかしいってな
Out your mouth, ain't even worth saying
お前の口から出る言葉なんて、口にする価値もねえよ
Little niggas is my offsprings
あの小僧どもは俺の子孫(クローン)さ
They deserve a nigga first name, middle name, surname
あいつらには俺のファーストネーム、ミドルネーム、そしてファミリーネームを名乗る資格があるぜ
※現代のラップシーンにおける自身の多大な影響力へのボースト。サウンドやファッションをパクる若手ラッパーたちを全員自分の「子供」扱いし、いっそ俺の名前を継がせてやるという強烈な皮肉。
From another planet, birthplace, Cloud 9, hello earthlings
別の惑星から来た、出生地はクラウド9、こんにちは地球人ども
※「Cloud 9」は最高にハイで幸福な状態。ドラッグによるサイケデリックなトリップと、自分が常人(地球人)の次元を超越した存在であるという主張。
My newest President an asshole
俺の最新の大統領はクソ野郎(ケツの穴)だ
I guess that's why I'm leaving turd stains
だから俺はウンコの染みを残してやってるんだろうな
※当時のドナルド・トランプ大統領に対する直接的なディス。「asshole(ケツの穴)」と「turd stains(ウンコの染み)」を掛けた下品で強烈なワードプレイ。政治や社会への不満を排泄行為のメタファーで一蹴している。
My ex used to chill with bad tings
俺の元カノはヤバい女たちとつるんでた
※「bad tings」はパトワ語由来のスラングで、イケてる魅力的な女性たちのこと。
All they talked about was bird things
あいつらが話すのは、鳥(ビッチ)みたいな中身のないことばかり
Tried to put them on to Bad Brains
あいつらに「バッド・ブレインズ」を教えようとしたが
But bird hoes got the bird brains
鳥(ビッチ)どもは鳥の脳みそ(単細胞)しか持ってなかったのさ
※「bird」は頭の悪い軽薄な女性を指すスラング。「Bad Brains」はワシントンD.C.出身の伝説的な全黒人ハードコア・パンクバンド。パンクの美学を理解できない女性たちへの皮肉と、自身の音楽的教養の深さのアピール。Rockyはヒップホップにモッシュピットの文化やパンクの破壊衝動を持ち込んだ先駆者の一人である。
Everything I do groundbreak
俺がやることすべてがグラウンドブレイク(革新的)だ
Big body make the floor break
ビッグ・ボディが床をぶち抜く
※「Big body」は大型の高級車、あるいは重低音そのものの比喩。
Big bass make the world shake
巨大なベースが世界を揺らす
Flacko out here causin' earthquakes, uh
フラコがここで地震を起こしてるのさ
※革新的なサウンド(地震のように床を揺らす重低音)でヒップホップシーンに地殻変動を起こしているという宣言。
[Pre-Chorus]
Uh, I can feel the bass, uh, I can see the fakes
ベースを感じる、偽物たちの姿が見えるぜ
Word to T.D. Jakes, uh, word to Pastor Ma$e and Kirk Franklin
T.D.・ジェイクスに誓って、ああ、メイス牧師とカーク・フランクリンに誓ってな
※「Word to ~」は「〜に誓って本当だ」という意味。「T.D. Jakes」は有名な黒人牧師、「Pastor Ma$e」はラッパーから牧師に転身したMase、「Kirk Franklin」はゴスペル界の巨匠。神聖な名前を並べて「偽物が見える」という自分の審美眼が、神の啓示レベルであると主張するギミック。
Fuck what niggas think, I'm about the bank
他の野郎どもがどう思おうが知ったこっちゃねえ、俺は銀行(金)のことだけだ
Comma, dollar signs, I'm about my Franklins, I can feel the bass
カンマ、ドル記号、俺は自分のフランクリン(100ドル札)のことだけさ、ベースを感じるぜ
※「Franklins」はベンジャミン・フランクリンが描かれた100ドル札。直前のゴスペル歌手Kirk Franklinの名前と掛けた鮮やかなワードプレイ。
[Chorus]
Distorted, distorted records (I-I can feel the bass)
歪んだ、歪んだレコード(ベ、ベースを感じる)
Distorted, distorted records (I-I can feel the bass)
歪んだ、歪んだレコード(ベ、ベースを感じる)
Distorted records, distorted records (I-I can feel the bass)
歪んだレコード、歪んだレコード(ベ、ベースを感じる)
Distorted records
歪んだレコード
