Artist: SZA
Album: SOS Deluxe: LANA
Song Title: Saturn
概要
グラミー賞を席巻した大ヒットアルバム『SOS』のデラックス・エディション『LANA』のリードシングルとしてリリースされた「Saturn」は、地球という過酷な現実からの逃避と、存在の無意味さに対する深い葛藤を歌ったオルタナティヴなR&Bトラックである。SZAはこれまでも自身の不安(インセキュア)を赤裸々に歌ってきたが、本作ではその視点が人間関係から「宇宙や輪廻」という壮大なスケールへと拡大している。仏教思想であるカルマ(業)やニルヴァーナ(涅槃)を引き合いに出し、どれだけ善く生きようとしても報われない世界の理不尽さに絶望する彼女は、逃避先として「土星(Saturn)」を夢見る。占星術において土星は「試練とカルマ」を象徴する星(サターン・リターン)であるが、地球上の痛みや「テラドーム(狂った地球空間)」の息苦しさに比べれば、そこでの人生の方がまだマシだという強烈なアイロニーが込められている。アフロフューチャリズム的な宇宙への憧憬と、現代社会を生きる若者の虚無感が見事にシンクロした傑作だ。
和訳
[Verse 1]
If there's another universe
もし別の宇宙があるのなら
※過酷な現実から逃れるためのマルチバース(並行宇宙)への切実な逃避願望。
Please make some noise (Noise)
お願いだから何か音を立てて(音を)
Give me a sign (Sign)
サインを送って(サインを)
This can't be life
こんなのが人生なはずがない
If there's a point to losing love
愛を失うことに意味があるのなら
Repeating pain (Why?)
痛みを繰り返すことに意味があるのなら(どうして?)
It's all the same (Same)
全部同じことの繰り返しよ(同じね)
I hate this place
私はこの場所が嫌い
※「この場所」とは特定の街や環境ではなく、地球そのもの、あるいは人間の生きる現世のこと。
[Pre-Chorus]
Stuck in this paradigm
このパラダイムに閉じ込められている
※「パラダイム」は社会を支配する固定観念や枠組み。そこから抜け出せない閉塞感。
Don't believe in paradise
パラダイスなんて信じていない
This must be what Hell is like
地獄ってきっとこんな感じなのね
There's got to be more, got to be more
何か他にもあるはずよ、あるはずなの
※人生にはもっと深い意味や救いがあるはずだという、絶望の中のわずかな祈り。
Sick of this head of mine
自分のこの頭の中にもウンザリしている
Intrusive thoughts, they paralyzе
侵入してくる思考が私を麻痺させる
※「Intrusive thoughts(侵入思考)」は、本人の意思に反して頭に浮かんでくる不快な考えのこと。精神的な疲弊を心理学的な用語で描写している。
Nirvana's not as advertised
ニルヴァーナは宣伝されていたようなものじゃない
※仏教における「涅槃(究極の悟りと平穏の境地)」のこと。宗教やスピリチュアルが約束する救済が、現実にはもたらされなかったことへの失望。また、90年代のグランジバンドNirvanaが象徴する「虚無感」とのダブルミーニングとも考察されている。
Therе's got to be more, been here before
何か他にもあるはずよ、前にもここに来たことがある
※「前にもここに来たことがある(been here before)」は、輪廻転生(生まれ変わり)のサイクルに囚われている感覚の表現。
[Chorus]
Ooh (Ooh, ooh)
Life's better on Saturn
土星での人生の方がずっとマシよ
※占星術において土星(Saturn)は「試練」や「制限」を司る厳しい星だが、地球(現実社会)の不条理さに比べれば、はるか遠くの土星の試練の方がまだ耐えがいがあるという強烈なアイロニー。
Got to break this pattern
このパターンを壊さなきゃ
Of floating away
どこかへ漂い去ってしまうこのパターンを
Ooh (Ooh, ooh)
Find something worth saving
救う価値のある何かを見つけて
It's all for the taking
すべては手に入れるためにあるの
I always say
私はいつもそう言っているわ
[Post-Chorus]
I'll be better on Saturn
土星にいる方がマシよ
None of this matters
ここでのことなんて何も重要じゃない
※地球での名声や富、悩みといったものは、宇宙規模で見れば無意味であるというニヒリズム。
Dreaming of Saturn, oh
土星の夢を見ているの、ああ
[Verse 2]
If karma's really real
もしカルマが本当に実在するなら
※「カルマ(業)」は過去の行いが未来の結果をもたらすという法則。善因善果、悪因悪果の概念。
How am I still here?
どうして私はまだここにいるの?
※自分は善く生きようと努力してきたのに、なぜまだこの苦しい現世(地球)に留まり、報われないのかという理不尽さへの怒り。
Just seems so unfair
ただ不公平にしか思えない
I could be wrong though
私が間違っているだけかもしれないけれど
If there's a point to being good
善人であることに意味があるのなら
Then where's my reward?
私へのご褒美はどこにあるの?
The good die young and poor
善人は若くして貧しいまま死んでいく
※「The good die young」は古くからある格言であり、ビリー・ジョエルの名曲のタイトルとしても知られる。正直者が馬鹿を見る世界への諦観。
I gave it all I could
私はできる限りのことをしたのに
[Pre-Chorus]
Stuck in this terradome (Ooh)
このテラドームに閉じ込められている
※「terradome」はTerra(地球)とDome(ドーム)を組み合わせた造語。地球という逃げ場のない閉鎖空間の比喩であり、同時にPublic Enemyの社会派ヒップホップの名曲「Welcome to the Terrordome」へのオマージュでもある。
All I see is terrible (Ooh)
目に入るのはひどいことばかり
Making us hysterical (Ooh)
それが私たちをヒステリックにさせる
There's got to be more, got to be more
何か他にもあるはずよ、あるはずなの
Sick of this head of mine (Ooh)
自分のこの頭の中にもウンザリしている
Intrusive thoughts, they paralyze (Ooh)
侵入してくる思考が私を麻痺させる
Nirvana's not as advertised (Ooh)
ニルヴァーナは宣伝されていたようなものじゃない
There's got to be more, been here before
何か他にもあるはずよ、前にもここに来たことがある
[Chorus]
Ooh (Ooh, ooh)
Life's better on Saturn
土星での人生の方がずっとマシよ
Got to break this pattern
このパターンを壊さなきゃ
Of floating away
どこかへ漂い去ってしまうこのパターンを
Ooh (Ooh, ooh)
Find something worth saving
救う価値のある何かを見つけて
It's all for the taking
すべては手に入れるためにあるの
I always say
私はいつもそう言っているわ
[Post-Chorus]
I'll be better on Saturn
土星にいる方がマシよ
None of this matters
ここでのことなんて何も重要じゃない
Dreaming of Saturn, oh
土星の夢を見ているの、ああ
[Outro]
(Ooh, ooh, ooh)
(Ooh, ooh, ooh)
※宇宙空間を漂うようなコーラスとともに、現実から完全に解き放たれるような美しい余韻を残して楽曲が幕を閉じる。
