Artist: Drake
Album: Dark Lane Demo Tapes
Song Title: Deep Pockets
概要
「Deep Pockets」は、2020年にサプライズリリースされたミックステープ『Dark Lane Demo Tapes』のオープニングを飾る、極めて内省的でノスタルジックなトラックである。Noah "40" ShebibらによるLo-Fiでメランコリックなビートに乗せ、Drakeはトロントでの過酷な下積み時代から、誰もが羨む世界の頂点へと登り詰めるまでの道のりを回顧している。「深すぎるポケット(Deep Pockets)」というタイトルは、底なしの富を手に入れた現在のステータスを示すと同時に、過去の記憶の奥深くへと手を伸ばしている彼の精神状態の比喩でもある。Lil Wayneのアルバムを聴きながら成功を夢見ていた日々や、初期のOVOを支えた仲間たちへの言及など、彼のキャリアにおける原点回帰と「Sad Boy」としての深い哀愁、そしてストリートのルールを生き抜いてきた「Mob Boss」としての冷徹さが完璧に融合した、私小説的な傑作である。
和訳
[Intro]
For my nigga Hush
俺のダチ、ハッシュのために
※Hush(Young Tony)はトロントの伝説的なアンダーグラウンドラッパーであり、Drakeの長年の盟友兼ゴーストライターと噂される重要人物。キャリアの初期から彼を支え続けてきた仲間へのシャウトアウト。
Yeah, look
ああ、見とけ
[Verse 1]
Dressed in fatigues, I rep the East with my trustees
迷彩服に身を包み、信頼できる仲間たちとイーストサイドを代表する
Smokin' on crushed leaves
砕いた葉っぱを吸いながら
They turn they back on everything we built, then they must bleed
俺たちが築き上げたものに背を向けるなら、奴らは血を流すことになる
※かつての仲間であっても、OVOの結束を裏切る者には容赦しないというマフィア的な冷酷な掟(Mob Boss的要素)。
I've seen splatter hit the snow when the blood freeze
血が凍りつくような雪の日に、血飛沫が飛び散るのを見たことがある
Straps over territory they know we must keep
俺たちが守り抜かなきゃならない縄張りを巡って、銃を構えるんだ
Get home and white Air Forces get brushed clean
家に帰って、真っ白なエアフォースワンの汚れをブラシで落とす
Back when my mama would interrupt sleep
母さんが俺の眠りを妨げていたあの頃
To tell me hurry up 'cause the bus leaves
バスが出発するから急げって言うために
Summertime heatwaves, I used to just cut sleeves
夏の猛暑、昔はただ袖を切り落としてた
My shorty really love me, man, she want me to cut keys
俺の女は本当に俺を愛してくれてて、合鍵を作ってほしいって言ってきた
※「cut keys」は家の合鍵を作ることと、コカインの塊(キログラム=keys)を切り分ける(売人になる)ことのダブルミーニング。ストリートの過酷な日常と、平凡な恋愛が交差する状況を描写している。
I can't do that normal type of life, is it just me?
俺にはそんな普通の人生は送れない、そう思ってるのは俺だけか?
Niggas steady try to ride the wave, but it's rough seas
奴らは常に波に乗ろうとするが、海は荒れてるんだ
I'm losin' enough sleep dealin' with envy
嫉妬に対処するだけで、十分に睡眠を削られてる
And the news that they sent for me got the block in a frenzy
奴らが俺を狙ってるっていう知らせが、ブロック中をパニックに陥れた
It's on Meech like it's trendy
ミーチのブランドみたいに、流行りのように俺に降りかかってくる
※「Meech」はトロント出身のデザイナーMeechが手掛けるブランドを指し、命を狙われるようなトラブルがストリートの流行服のように日常化していることを皮肉っている。
Runnin' round from Laurier to MacKenzie when the city's empty, yeah
街が空っぽの時に、ローリエからマッケンジーまで走り回るんだ
※LaurierとMacKenzieは、Drakeが育ったトロントのエリアに近い道路の名前。無名時代の夜のドライブの記憶。
Early twenties, but I want fifties, hundreds, not pennies
まだ20代前半だったが、俺は50ドル札や100ドル札が欲しかった、小銭じゃなくてな
I need plenty
大量に必要だったんだ
Got me ready to flip the F out like Fendi
フェンディみたいに、Fをひっくり返す準備はできてた
※Fendiのロゴ(向かい合ったF)と「flip the fuck out(ブチ切れる、あるいは大金に変える)」をかけた見事な言葉遊び。
Whatever's in me, it's takin' over
俺の中にある何かが、俺を支配していく
I gotta bust it down, break it open
ぶっ壊して、こじ開けなきゃならない
Until somebody starts takin' notice, then we rollin'
誰かが気付き始めるまでな、そしたら俺たちは転がり出す
[Chorus]
Yeah, then we rollin', then we rollin'
ああ、そしたら俺たちは転がり出す、転がり出すんだ
Deep pockets on a nigga, I can't find my phone in
今の俺のポケットは深すぎて、自分の携帯すら見つけられない
※「Deep pockets」は大金持ちであることの比喩。物理的にポケットが深すぎて携帯が見つからないという富の誇示と、過去の記憶の奥深くを探っている現在の精神状態を重ね合わせている。
Now we rollin'
今、俺たちは転がり続けてる
Yeah, then we rollin', then we rollin'
ああ、そしたら俺たちは転がり出す、転がり出すんだ
Deep pockets on a nigga, I can't find my phone in
今の俺のポケットは深すぎて、自分の携帯すら見つけられない
Now we rollin'
今、俺たちは転がり続けてる
[Verse 2]
Look
見とけ
Back when Big Apple sold dreams, I stuck to my own thing
ビッグ・アップルが夢を売っていた頃、俺は自分の道にしがみついていた
※Big Appleはニューヨークのこと。かつてニューヨークのヒップホップシーンが圧倒的な全盛を誇っていた時代でも、Drakeはトロントという自分のルーツにこだわっていたというプライド。
Back when the house that I own now was my home screen
今所有してるこの豪邸が、かつてはスマホのホーム画面の壁紙だったあの頃
※成功を夢見て理想の家の画像を待ち受けにしていた過去。引き寄せの法則(マニフェステーション)の実現。
Before I'd ever hit the road and feel like the home team
ツアーに出て、どこに行ってもホームチームのように歓迎されるようになる前の話だ
Runnin' missions
ミッションをこなしていた
Pyramid schemes just like the Egyptians
エジプト人みたいに、ピラミッド・スキームをやりながらな
※底辺からピラミッドの頂点へと這い上がるための危険なビジネスや詐欺まがいの手法(ネズミ講)に手を出していたアンダーグラウンド時代。
Back when hotlines were still flippin'
ホットラインでまだクスリを捌いていたあの頃
※トラップフォン(犯罪用の使い捨て携帯)で取引をしていたストリートの過去。
Now I'm seein' money off of hotlines blingin' but it feels different
今じゃホットライン・ブリングで大金を稼いでるが、あの頃とは気分が違う
※世界的大ヒット曲「Hotline Bling」への言及。同じ「電話が鳴る」ことでも、犯罪の着信からメガヒットの印税へと変化した皮肉な対比。
Transitions, plans switchin', ambition
変遷、計画の変更、野心
Mindin' my business, buildin' a business, et cetera
自分の仕事に集中し、ビジネスを築き上げ、その他もろもろ
Inspired by a few, but my mind really drives itself like Tesla
何人かには刺激を受けたが、俺の心はテスラみたいに自動運転で進んでいく
I always had a little somethin' extra
俺にはいつも、少しばかり特別な何かがあった
Back when Corey was our sole investor
コーリーが俺たちの唯一の投資家だったあの頃
※Corey Litwinは、OVOの初期メンバーであり、Drakeの初期のプロモーションなどに私財を投じて支援した人物。
And the car could get from A to B, but won't impress ya
車はA地点からB地点へ移動できれば十分で、誰も感心させるようなものじゃなかった
Look, I ain't no baller
なあ、俺はまだ大成功したわけじゃない
Still need my accounts longer like the way my nephew's gettin' taller
甥っ子の背が伸びていくみたいに、俺の口座の桁ももっと長くならなきゃいけないんだ
My soundtrack is the second Carter, dreamin' of acceptin' offers
俺のサウンドトラックは『カーターⅡ』、オファーを受け入れる日を夢見てた
※Lil Wayneの2005年の名盤『Tha Carter II』。これを聴きながら、いつか彼のようなスターになり大手レーベルと契約することを夢見ていたという、師匠への最大のリスペクト。
And easin' tensions
そして緊張を和らげるんだ
Keepin' family out of East Detention
家族をイースト留置所から遠ざけ
※Toronto East Detention Centre。地元の悪名高い刑務所。家族や仲間が犯罪に巻き込まれないようにするという一家の大黒柱としての責任。
And out of Pine Hill Funeral Center
パイン・ヒル葬儀場からも遠ざける
※トロントにある実際の墓地・葬儀場。ストリートの暴力による死から身内を守り抜くという悲痛な決意。
Spots we got no business enterin'
俺たちが立ち入るべきじゃない場所さ
Back when Jill Scott was the apple of my afrocentric eye
ジル・スコットが俺のアフロセントリックな瞳のリンゴだったあの頃
※ネオソウルの女王Jill Scottへの憧れ。黒人文化(アフロセントリック)への深い傾倒と、知的な女性への思慕を「apple of my eye(最愛の人)」という慣用句で表現している。
I had to find a way to get someone's attention
俺は誰かの注意を惹きつける方法を見つけなきゃならなかったんだ
[Chorus]
Then we rollin', then we rollin'
そしたら俺たちは転がり出す、転がり出すんだ
Deep pockets on a nigga, I can't find my phone in
今の俺のポケットは深すぎて、自分の携帯すら見つけられない
Now we rollin'
今、俺たちは転がり続けてる
Yeah, then we rollin', then we rollin'
ああ、そしたら俺たちは転がり出す、転がり出すんだ
Deep pockets on a nigga, I can't find my phone in
今の俺のポケットは深すぎて、自分の携帯すら見つけられない
Now we rollin'
今、俺たちは転がり続けてる
