UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

For Keeps - JID 【和訳・解説】

Artist: JID

Album: God Does Like Ugly

Song Title: For Keeps

概要

J.I.Dのアルバム『God Does Like Ugly』に収録された「For Keeps(永遠に/本気で)」は、彼がラッパーとして歩んできた泥臭い軌跡と、ヒップホップというアートフォームに対する終わりのない献身を綴った自伝的トラックである。ドミノピザでアルバイトをしながらタイムカードの裏にリリックを書き殴っていた極貧時代や、アトランタの伝説的オープンマイク・スポット「Apache Cafe」での下積み、そしてEARTHGANGの単なる取り巻きだと勘違いされていた過去の屈辱まで、一切の飾りを捨てた生々しいストーリーテリングが展開される。トラップ全盛のアトランタにおいて、愚直なまでにリリシズムを追求し続けた彼が、最終的に「量産型ラッパーたちを周回遅れにした(lapped clowns)」と宣言する姿は痛快極まりない。成功と苦悩のループを抜け出し、ラップゲームという名の「業(ごう)」を永遠に背負って生きていく覚悟を決めたJ.I.Dの、血の通ったヒップホップ讃歌だ。

和訳

[Intro]

Uh
あぁ

Two, one
2、1

Uh, look
あぁ、見ろよ

[Verse]

And every time I think the mojo gone
俺のモジョ(魔法/インスピレーション)が消えちまったと思うたびに
※「mojo」は元々ブードゥー教の魔術や護符を指すが、転じて人を惹きつける魅力や才能、インスピレーションを意味する。スランプに陥り、自信を喪失しかける瞬間を吐露している。

Here come the feelin' I've been tryna find for oh so long
ずっと探し求めていたあの感覚が、ここへ来てまた蘇ってくるんだ

"You can't hang it up now, bro, hold on
「今ここでマイクを置く(引退する)わけにはいかねぇだろ兄弟、踏みとどまれよ

People all around the world knowin' your songs"
今じゃ世界中の奴らがお前の曲を知ってんだからな」ってな

So this is for the diehards and casuals alike
だからこいつは、熱狂的なファン(ダイハード)からライト層まで、全員に捧げるぜ

That press play soon as the clock strikes midnight
時計の針が深夜0時を回った瞬間に、再生ボタンを押して

Hit up all my posts with the comments and likes
俺のすべての投稿にコメントと「いいね」を残してくれて

First on the site tryna cop the merchandise
マーチ(グッズ)を買おうと真っ先にサイトに張り付いてくれる奴ら

Could damn near recite every single verse I write
俺が書いたすべてのヴァースを、一言一句暗唱できるほどの奴ら

Or bought tix to see me on the stage with the mic
マイクを握ってステージに立つ俺を見るために、チケットを買ってくれて

And tell mе after the show how my songs changed your lifе
ショーの後に、俺の曲がどれだけお前らの人生を変えたか語ってくれる奴らにな

It's y'all energy that's keepin' on the lights (That do)
この光(成功)を灯し続けてくれてるのは、お前らのエネルギーのおかげなんだよ(マジでな)

I was down bad, scribblin' my life in a pad
俺がどん底(ダウン・バッド)だった頃、ノートの切れ端に自分の人生を書き殴ってた
※「down bad」は金もなく絶望的な状況を指すスラングであり、同時にJ.I.Dが参加したDreamvilleのグラミー賞ノミネート曲「Down Bad」を引用したワードプレイ。あの時のハングリー精神を回顧している。

They said, "Go get a real job, put down the mic, it's a fad," but
連中は言ったよ「まともな仕事に就け、マイクを置けよ、そんなのただの流行りだ」ってな、だが

Nah, nothin', uh, look (Nothing could keep me away)
いや、何があっても、あぁ、見ろ(何ものも俺を引き離すことはできなかった)
※背後で流れるサンプルの声が、J.I.Dのヒップホップに対する永遠の執着(For Keeps)を代弁している。

Was headstrong and so I kept on
俺は頑固だったから、そのまま(ラップを)やり続けた

Was fueled by the fact that I was slept on
俺が世間から過小評価されてる(スリープされてる)って事実が、俺の燃料になったんだ

Wanted to prove to niggas they was dead wrong
あいつらが完全に間違ってるってことを証明してやりたかったのさ

I wouldn't take it, take it onto the next song
俺は妥協なんてしなかった、その怒りを次の曲へとぶつけていったんだ

Told my mama I'd make it, she like, "I hope you right"
母ちゃんに「絶対に成功してやる」って言ったら、母ちゃんは「あんたが正しいといいわね」って言ってたよ

Worked up the courage to hit up the local open mics
勇気を振り絞って、地元のオープンマイクに飛び込んだ

Me and these raps got a bond so tight
俺とこのラップとの絆は、最高に強固なモンになっちまったのさ

I'm back the next week even if I bombed that night
たとえその夜に大スベリ(ボム)したとしても、次の週にはまた戻ってマイクを握ってた
※「bombed」はコメディやパフォーマンスの舞台で完全にウケず、大失敗することを意味するスラング。失敗を恐れずに現場に立ち続けた下積み時代。

It's like for real like (Nothing could keep me away)
マジでこんな感じさ(何ものも俺を引き離すことはできなかった)

Uh, look
あぁ、見ろよ

At Domino's writin' rhymes on the back of a time sheet
ドミノピザで働きながら、タイムカードの裏にライムを書き殴ってたんだ
※J.I.Dの実際の経歴。ラップで食えない時期、彼はピザ屋でアルバイトをしながら常にリリックを考えていたという有名なエピソードの開示。

Bosses would grind teeth at me fallin' behind
俺の作業が遅れて、店長たちはギリギリと歯を軋ませて怒ってたよ

Tryna scroll through my mind to find beats
頭の中をスクロールして、乗せるビートを探すのに必死だったからな

All I needed was a tempo to latch onto
俺に必要だったのは、ガッチリと食らいつくためのテンポ(拍子)だけだった

'Til I could find an instrumental that match
完璧にマッチするインスト音源を見つけるまではな

This back when producers wasn't sendin' me packs
プロデューサーどもが俺にビートのパック(音源集)を送ってこなかった頃の話さ

I dropped some shit on SoundCloud and people didn't react
SoundCloudに曲をドロップしても、誰も見向きも(リアクション)しなかった

I'd be happy just to get ten clicks on a track, nigga
1曲で10回再生(クリック)されただけで、飛び上がるほど嬉しかったんだぜ、マジでな
※世界的なスターとなった現在と、SoundCloudラッパーの底辺でもがいていた無名時代との強烈なコントラスト。

Goddamn, it's bringin' memories back
クソッ、昔の記憶が蘇ってきやがる

When my heart was sure, the art was pure
俺の心に迷いがなく、このアート(ラップ)がただ純粋だったあの頃

I'm talkin' back when we was packin' out department store
デパートの空きスペースをパンパンにしてライブしてた頃の話をしてるんだ

But of course (Nothing could keep me away)
だがもちろん(何ものも俺を引き離すことはできなかった)

Bruh, and I hit Apache Music, roamin' packed lounge
なぁ兄弟、俺は「アパッチ・カフェ」に行って、超満員のラウンジをうろついてた
※「Apache Cafe (Apache XLR)」はアトランタに実在する伝説的なオープンマイク・クラブ。J.I.DやEARTHGANG、6LACKなど、現在のシーンを牽引するSpillage Villageのメンバーたちがスキルを磨き、運命的な出会いを果たした登竜門。

Let the bouncer know I'm performin', doin' pat-downs
ボディチェック(パットダウン)されながら、バウンサーに「俺も今日パフォーマンスするんだ」って伝えて

Hit the blunt, wait my turn, play the background (Nothing could keep me away)
ブラント(葉巻マリファナ)を吸いながら自分の出番を待ち、背景(バックグラウンド)に溶け込んでた(何ものも俺を引き離すことはできなかった)

(Nah, bruh, I'm not a part of EARTHGANG, bruh, I'm just JID, but appreciate you)
(いや兄弟、俺はEARTHGANGのメンバーじゃないんだ、俺はただのJ.I.Dだよ、声かけてくれてありがとな)
※Spillage Village結成当初の屈辱的な思い出。当時すでに地元で知名度を上げつつあったEARTHGANG(Johnny Venus & Doctur Dot)に対し、小柄で無名だったJ.I.Dは「EARTHGANGのおまけ」や「3人目のメンバー」として間違われることが多かった。

Even though they was all mimickin' the trap sound
周りの連中がみんな、こぞってトラップのサウンドを真似(ミミック)してた時でも
※当時のアトランタはMigosやFutureなどを筆頭とするトラップミュージックの全盛期。誰もが流行りに乗る中で、J.I.Dは高速フロウと複雑なライムスキーミングという独自のリリカルなスタイルを貫き通した。

I knew this wasn't how that sound
俺には分かってた、俺のサウンドはそうじゃねぇってな

It's only fittin' eventually I lapped clowns
結果的に、俺があのピエロども(量産型ラッパー)を周回遅れ(ラップ)にしたのは当然の帰結さ
※「lapped」は陸上競技で他者を周回遅れにすること。流されてトラップばかりやっていた連中は消え去り、自分のスタイルを磨いたJ.I.Dだけが頂点に君臨している事実。

Now give me that crown, pussy (Nothing could keep me away)
さぁ、その王冠を俺によこしな、クソ野郎ども(何ものも俺を引き離すことはできなかった)

Look, uh
見ろよ、あぁ

From sportin' it even if it got thorns in it
たとえそれに茨(いばら)が混ざっていようとも、俺はそれを被る(レペゼンする)んだ
※「crown of thorns(茨の冠)」はキリストの受難の象徴。ラップゲームの頂点に立つこと(王冠)は、同時に激しい批判や重圧(茨)を伴うが、それでもJ.I.Dはそれを身につける(sporting it)覚悟があるというメタファー。

Open my doors for you to explore for four minutes
お前らが4分間探索できるように、俺の心の扉を開け放つよ
※1曲の平均的な長さである「4分間」を通じて、自身の内面や弱さをファンに全て晒け出す(explore)という芸術家としての真摯な姿勢。

Critics nitpick to the core, but as long as my core get it
評論家どもは芯の芯(コア)まで重箱の隅をつついてくるが、俺のコア(熱狂的なファン)が理解してくれてる限り

Then fuck 'em, easy, huh (Nothing could keep me away)
あんな奴らクソ食らえだ、簡単なことさ、ハッ(何ものも俺を引き離すことはできなかった)
※「core(核心)」と「core(コアファン)」を掛けたワードプレイ。

Uh, been like this for over a decade
あぁ、こんな生活がもう10年以上も続いてる

No matter how many times I try and segue
俺が何度、別の道へ進もう(セグウェイ)と試みたとしても

No matter how many heartbreaks, headaches
どれほど多くの失恋や、頭痛や

Affliction and the pain, it's itchin' in my veins
苦悩や痛みがあろうと、それは俺の静脈(ヴェイン)の中で疼き続けてるんだ

No right or wrong prescription, I'm addicted to the game
正しい処方箋も間違った処方箋もねぇ、俺はこのラップゲームに完全に依存(アディクト)しちまってるのさ
※ヒップホップに対する愛情を、薬物依存(静脈注射による疼き/処方箋の欠如)のメタファーを用いて表現。抜け出したくても抜け出せない、不治の病としてのアーティストの業(ごう)。

[Outro]

Daddy got best bars in the world?
(子供の声)パパは世界で一番すごいバーズ(ラップ)を持ってるの?

Yes
(J.I.D)あぁ、そうさ

Nothing could keep me away
何ものも俺を引き離すことはできなかった

Nothing could keep me away
何ものも俺を引き離すことはできなかった

Nothing could keep me away from you
何ものも、俺をお前(ヒップホップ)から引き離すことはできないんだ