Artist: JID & Baby Kia
Album: God Does Like Ugly
Song Title: On McAfee
概要
J.I.Dのアルバム『God Does Like Ugly』において、最も狂気的で暴力的なエネルギーを放つバンガーが本作「On McAfee」である。客演には、アトランタの次世代ドリルシーンで異常なまでのシャウトと凶暴なペルソナでカルト的な人気を誇るBaby Kiaを迎えている。タイトルの「McAfee」は、アンチウイルスソフトの創業者であり、晩年は銃とドラッグに溺れてパラノイア的な逃亡生活を送ったジョン・マカフィーの狂気的な生き様、あるいは「ウイルス(敵)を排除する」というストリートのメタファーであるとReddit等で考察されている。J.I.Dの地元であるイーストサイド(Zone 6)と、Baby Kiaの地元であるサウスウェスト・アトランタ(Bleveland)のローカルな文脈が交差し、トラウマから闇落ちした若者の姿や、刑務所でのサバイバルといったディープなトピックが、重低音の効いた歪んだビート上で展開される。J.I.Dの流麗なライミングと、Baby Kiaの制御不能なシャウトが奇跡的な化学反応を起こした、アトランタ・ストリートの最前線を体感できる一曲だ。
和訳
[Intro: glizzyfr]
Bitch
ビッチ
[Chorus: JID & Baby Kia]
Yeah, yeah, yeah, uh
イェー、イェー、イェー、あぁ
Yeah, yeah, yeah, uh
イェー、イェー、イェー、あぁ
Three in the back, two in the front
後ろに3人、前に2人
One in my lap, two in the trunk
俺の膝に1つ、トランクに2人だ
※車の乗車定員を超えたギャングたちのドライブバイ(車からの銃撃)前の不穏な空気。膝の上の「1つ」は銃を指し、トランクの「2人」は誘拐された敵対者、あるいは隠された大型の武器を暗示しているホラーな情景。
Who got the strap? Who got the pump?
誰がチャカ(拳銃)を持ってる? 誰がポンプ(ショットガン)を持ってる?
Open the cap, open the door, yeah (Yeah, huh)
キャップ(ボトルの蓋、あるいは弾倉)を開けろ、ドアを開けろ、イェー(イェー、ハッ)
Yeah, yeah, yeah, uh (Yeah, huh)
イェー、イェー、イェー、あぁ(イェー、ハッ)
Yeah, yeah, yeah, uh
イェー、イェー、イェー、あぁ
Three in the back, two in the front
後ろに3人、前に2人
One in my lap, two in the trunk
俺の膝に1つ、トランクに2人だ
Who got the K? I got the Drac' (Go)
誰がK(AK-47)を持ってる? 俺はドレイコを持ってるぜ(行け!)
※「Drac' (Draco)」はAK-47のピストル(短銃身)モデル。隠し持ちやすく殺傷能力が高いため、現在のアトランタのラップシーンで最も頻繁に言及される凶器。
When we pulled in, lil' jit got pumped, yeah, huh
俺らが乗り込んだ時、あのガキ(jit)はショットガンでブチ抜かれた(pumped)のさ、イェー、ハッ
※「jit」はフロリダや南部で使われる若者・ガキを指すスラング。「pumped」はアドレナリンが出る(興奮する)ことと、ショットガン(pump-action)で撃たれて風穴が開くことの残酷なダブルミーニング。
[Verse 1: JID & Baby Kia]
Lil' dog with a bite and the bark
吠えるだけじゃなく、しっかり噛みつく小犬さ
※「His bark is worse than his bite(口ほどにもない)」ということわざの反転。口先だけでなく、実際に引き金を引く(噛みつく)危険な若者を指す。
A nice heart niggas abused and turned to dark
もともとは優しい心を持ってたが、虐待され、闇に染まっちまったんだ
※ゲットーの若者が生来の悪人ではなく、過酷な環境とトラウマによって狂気(Baby Kiaのようなペルソナ)へと変貌していく過程を描いた社会学的な視点。
A nighthawk lookin' for food and look at the booty
夜鷹(ナイトホーク)のように獲物を探し、女のケツを狙う
Nice soft, maybe the bougie bitch look good with the lights off
柔らかくてイイね、気取った(ブージーな)ビッチも、電気を消せばよく見えるかもな
He bust real dope moves, one dope boy, two loose screws
アイツはガチでヤバい動きをする、1人のドープな売人、外れた2本のネジ
※「loose screws」は「頭のネジが外れている(イカれている)」状態。ここからJ.I.D特有のカウントアップ・スキーム(1, 2, 3...)が始まる。
Three bad Black lil' niggas said fuck school
3人の不良の黒人のガキが「学校なんてクソ食らえだ」と言ったのさ
Fuck them, fuck you, fuck dudes up, tough dudes get touched too
奴らも、お前もクソ食らえ、野郎どもをブチのめす、タフな野郎だって手を出される(殺される)んだ
Ash to ash and dust to dust, you best to bust the rusty, trusty, dusty, if you rush me (Bet I blow this bitch down)
灰は灰に、塵は塵に。もし俺に突っ込んでくるなら、その錆びて埃を被った信頼できる銃をブッ放した方がいいぜ(間違いなくお前をブチ殺してやるからな)
※「Ash to ash, dust to dust」はキリスト教の葬儀で使われる祈りの言葉。死を覚悟したストリートの銃撃戦の描写。括弧内はBaby Kiaの狂気に満ちたアドリブ。
Yeah, pullin' up well, he got his heat and his hooligans there
イェー、上手く乗り付けたな、アイツは銃(ヒート)と不良仲間(フーリガン)を連れてる
Who brought the beef and the food for the bear?
熊へのエサと、このビーフ(揉め事)を持ち込んだのは誰だ?
Who got the fever? The heater can shoot in the air?
誰が熱(殺意)に浮かされてる? その銃(ヒーター)は空に向けて撃てるのか?
Yeah, yeah, yeah, uh (Uh)
イェー、イェー、イェー、あぁ(あぁ)
Yeah, yeah, yeah, uh (Bitch, I'm from the— Bitch, bitch)
イェー、イェー、イェー、あぁ(ビッチ、俺は— ビッチ、ビッチ)
Bitch, I'm from the Eastside, you can see the street sign
ビッチ、俺はイーストサイドの出身だ、ストリートの標識を見りゃ分かるだろ
※J.I.Dの出身地であるアトランタのZone 6(東部)のレペゼン。
Never seen a peace sign, hell yeah
ピースサインなんて見たことねぇよ、マジでな
※平和(ピース)とは無縁の環境であり、掲げられるのはギャングのハンドサインか、銃口だけだという現実。
Said he finna respawn, shootin' out a Nissan
アイツはリスポーン(復活)するつもりだと言って、日産車から銃を乱射しやがる
※「respawn」はビデオゲームで死んだ後に復活すること。ストリートの抗争をゲーム感覚で捉える若者の狂気。「Nissan」は、アトランタのストリートやネットミームで「ボロボロの日産・アルティマ(Nissan Altima)に乗っている奴は失うものがなく、最も危険な運転/犯罪をする」という共通認識を引用している。
Put that boy to sleep now, hell yeah
あのガキを永遠の眠りにつかせてやれ、マジでな
Nigga, fuck 12, they be jockin' the player
12(サツ)はクソ食らえだ、奴らはプレイヤー(俺たち)にまとわりついてきやがる
※「12」は麻薬特捜班に由来する警察を意味するスラング。「jockin'」はしつこく付き纏う、邪魔をするの意。
Ninja Turtle Raphael when they caught a shell
薬莢(シェル)を食らえば、まるでニンジャ・タートルズのラファエロさ
※「shell」は銃弾の薬莢(または散弾)と、亀の甲羅(シェル)のダブルミーニング。「ラファエロ」は赤いバンダナを着けたタートルズのキャラクターであり、赤い血を流して甲羅にこもる(倒れる)様子をアニメキャラクターに例えた残酷なワードプレイ。
Better say a prayer when he walkin' to jail
刑務所(ジェイル)に歩いて向かう時は、祈りを捧げた方がいいぜ
They said he walk it like he talk it, then he walkin' it well
口だけでなく有言実行する(walk it like he talk it)って言われてたが、アイツは上手く立ち回ってるな
They said he 'bout to tuck a shank and he ain't tuckin' his tail
アイツは手製のナイフ(シャンク)を隠し持ってるが、尻尾を巻いて逃げる(tuck tail)つもりはねぇってよ
※「tuck」を使った言葉遊び。刑務所内で身を守るためにシャンクを服に隠し(tuck)、決して怯えて尻尾を丸める(tuck tail)ことはないという獄中サバイバル。
He train well, wheel train goin' off of the rails
アイツはよく訓練されてるが、列車の車輪はレールから外れちまってる
※ストリートの掟は熟知しているが、精神的にはすでに脱線して狂っている状態。
Same thing, gang bang, he ain't stock for bail
同じことの繰り返し、ギャングの抗争、アイツには保釈金を払う蓄え(ストック)なんてねぇのさ
[Chorus: Baby Kia]
Three in the back, two in the front
後ろに3人、前に2人
One in my lap, two in the trunk
俺の膝に1つ、トランクに2人だ
Who got the K? I got the Drac'
誰がK(AK-47)を持ってる? 俺はドレイコを持ってるぜ
When we pulled in, lil' jit got pumped, yeah
俺らが乗り込んだ時、あのガキはショットガンでブチ抜かれたのさ、イェー
[Interlude: Baby Kia & JID]
You better run, nigga, know you not safe
走って逃げた方がいいぜ、お前が安全じゃないことぐらい分かってんだろ
I'm from Bleveland, nigga, that was BK
俺はブリーブランドの出身だぜ、アレはBK(ベイビー・キア)だったな
※Baby Kiaの地元アトランタ南西部の「Cleveland Avenue(クリーブランド・アベニュー)」のこと。彼が所属するBlood(ブラッズ)ギャングのルールでは、敵対するCripの「C」を忌み嫌うため、CをBに変えて「Bleveland」と呼ぶ。また「BK」はBaby Kiaの略であると同時に「Blood Kill」や「Bleveland King」などの意味も内包する。
Walkin' down Ave with that Drac'
アベニューをドレイコ(銃)をぶら下げて歩くんだ
It's okay, nigga, I made it out of here
大丈夫さ兄弟、俺はここから抜け出したんだ
Nigga mad I done got that pape'
俺が札束(ペーパー)を手に入れたからって、連中は怒り狂ってやがる
I'm gone, bitch, haha, yeah (Uh, look)
俺はもう行くぜビッチ、ハハ、イェー(あぁ、見ろよ)
[Verse 2: JID & Baby Kia]
I'm from the East, look at the streets, lookin' for peace, yeah
俺はイーストサイドの出身だ、ストリートを見渡し、平和を探してるのさ、イェー
He was in a Nissan, never put the heat down, givin' niggas beat down, yeah, yeah, yeah
アイツは日産車に乗ってて、絶対に銃(ヒート)を下ろさず、連中をブチのめすんだ、イェー、イェー、イェー
Bitch comin' in the night like thief when it's sleep time, he be on creep now, hell yeah
ビッチ、眠りにつく夜中、盗人のように忍び込む、アイツは今、忍び足(クリープ)で狙ってるぜ、マジでな
※新約聖書の「主の日は盗人が夜やって来るように来る(テサロニケの信徒への手紙)」の不気味な引用。いつ襲撃されるか分からない恐怖。
Tell you from the feast now, hell yeah
晩餐の席からお前に教えてやるよ、マジでな
They done let the beast die, hell yeah, hell yeah
奴らはついに野獣を死なせちまったのさ、マジでな、マジでな
Trippin', I gotta get out of city
狂っちまいそうだ、俺はこの街から抜け出さなきゃならねぇ
Lot of shit I been dealin' with makin' money, makin' enemies
金を稼ぎ、敵を作る過程で、抱えきれないほどのクソみたいな問題を処理してきた
Monitor time, tickin' and tockin' until infinity
時間を監視する、チクタクと無限に時を刻み続ける
I'm feelin' fine, real good, I'm lookin' physically fortified
気分は悪くねぇ、最高だ、肉体的には要塞化(強化)されてるように見えるだろ
Fifty feet tall, a hundred wide
高さ50フィート、幅は100フィートだ
I jump high and run fast, a hundred miles
高く跳び、100マイルのスピードで速く走れるのさ
My nigga still in the hood, he just one of the guys
俺のダチはまだフッドに残ってる、アイツはただの仲間の一人さ
He gettin' sick of the bull, wanted a hundred thousand
アイツもこのクソみたいな現状(ブルシット)にウンザリして、10万ドルを欲しがってた
But he be good, a hundred rounds, he hunted down
だがアイツは上手くやるさ、100発の弾丸(ラウンド)で標的を狩り立てるんだ
A bloodhound, I think that nigga a blood now
まるで猟犬(ブラッドハウンド)さ、たぶんアイツは今じゃブラッド(ギャング)になっちまったんだろうな
※金に飢えて血眼になって獲物を探す姿を猟犬(bloodhound)に例え、そのまま彼がBaby Kiaと同じ「Blood」ギャングに取り込まれてしまったというストリートの非情な現実(言葉遊び)を描く。
He bang guns and take crumbs, he bugged out
銃をブッ放し、パンの耳(はした金)を奪う、アイツは完全にイカれちまった
I don't even try and show him another route
俺はもう、アイツに別の道を示そうとすら思わねぇよ
He been thuggin' it since a youngin, you know that we seen it comin'
アイツはガキの頃からサグとして生きてきた、こうなることは俺たちにも分かってたはずだろ
Since park ball days out in Wade Walker, lil' shotty was poppin' off daily
ウェイド・ウォーカーの公園でバスケをしてた頃から、アイツは毎日銃(ショーティ)をブッ放してたからな
※「Wade Walker Park」はアトランタ郊外のストーン・マウンテンにある実在の公園。J.I.Dのローカルな記憶であり、子供の遊び場である公園にすら常に銃声が響いていた環境の恐ろしさ。
Gettin' mad, fightin' niggas, walkin' off crazy
キレて、連中と喧嘩して、狂ったように歩き去っていく
Play with him, and all he would say is
アイツをナメた真似をすれば、アイツが言うことはこれだけさ
[Outro: JID & Baby Kia]
Yeah (Uh), yeah, yeah, uh
イェー(あぁ)、イェー、イェー、あぁ
Yeah (Huh-huh), yeah (Huh-huh), yeah, uh (Uh)
イェー(ハハッ)、イェー(ハハッ)、イェー、あぁ(あぁ)
You gettin' that done every time, you don't be bullshittin'
お前は毎回確実にブチかましてくれるな、マジでふざけてねぇよ
You said what?
何て言った?
You gettin' that done every time, I fuck with you, on God
毎回完璧にブチかますって言ったんだ、俺はお前のスキルをマジで認めてるぜ、神に誓ってな
Now I know it was you
あぁ、お前がやったって今分かったよ
Hahaha
ハハハ
Real nigga, on my mama
本物の男だよ、母ちゃんに誓ってな
You already know, bro, I fuck with you, bro
分かってんだろ兄弟、俺もお前を最高だと思ってるぜ
Gettin' that done every time
毎回確実にブチかましてるよな
※アウトロはスタジオでのリアルな会話。世代もスタイルも異なるJ.I.DとBaby Kiaが、アトランタのアーティストとして互いのヒップホップ・スキルと狂気的なエネルギーを心からリスペクトし合っている様子が記録されている。
