Artist: Drake
Album: Scorpion
Song Title: Sandra’s Rose
概要
2018年にリリースされた2枚組のメガアルバム『Scorpion』のA面(ラップ・サイド)に収録された「Sandra’s Rose」は、ヒップホップ史に燦然と輝く伝説的プロデューサーDJ Premierと、トロントのManeeshが共同でビートを手掛けた、ソウルフルでクラシックなブーンバップ・トラックである。タイトルの「Sandra」とはDrakeの実母Sandi Grahamのことであり、かつて花屋(フローリスト)として働いていた母が育て上げた最高傑作(薔薇)こそが自分であると、Sad Boy的な深い愛情と傲慢なエゴを交えて歌い上げている。Pusha Tらとの歴史的なビーフが勃発した不穏な時期に制作された本作には、トップに君臨し続けることの孤独、裏切りへの警戒心、そして敵を圧倒的な力でねじ伏せるMob Boss(マフィアのボス)としての残忍な比喩が散りばめられており、Drakeのリリシストとしての真髄が味わえる名曲である。
和訳
[Chorus: Maneesh & Drake]
Yeah, no more, no more
ああ、もうたくさんだ、もう終わりだ
Baby, baby, baby, baby, baby, baby, baby
ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー
Yeah, no more, no more
ああ、もうたくさんだ、もう終わりだ
Baby, baby, baby, baby, baby, baby, baby
ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー
Ooh, ooh (Yeah)
[Verse 1: Drake]
Niggas see the crib and ask who did I steal from
奴らは俺の豪邸を見て、誰から盗んだんだと聞いてきやがる
※若き黒人が規格外の富を築いたことに対する世間の人種的偏見や、同業者からの嫉妬への皮肉。
Price tags on makin' the world feel some
世界を感動させることには、それなりの値札がついている
They don't have enough to satisfy a real one
本物の男を満足させるだけのものを、奴らは持ち合わせていないんだ
Maverick Carter couldn't even get the deal done
マーベリック・カーターでさえ、この取引はまとめられなかった
※レブロン・ジェームズの敏腕ビジネスパートナーであるMaverick Carterを引き合いに出し、Drake自身のビジネス的な価値が計り知れないほど高騰していることを示している。
Niggas scared to come towards us, gotta run from us
野郎どもは俺たちに向かってくるのを恐れて、逃げ出すしかない
Louisville hush money for my young gunners
ルイビル大学の口止め料を、俺の若いガンナーたちにくれてやる
※全米大学スポーツ協会(NCAA)を揺るがした、ルイビル大学バスケットボール部のスキャンダル(有望選手をリクルートするためにストリップクラブや現金をあてがっていた事件)の引用。Mob Bossとして、自分の手下(若いラッパーたち)を大金で手懐けているというフレックス。
Rick Pitino, I take 'em to strip clubs and casinos
リック・ピティーノみたいにな、俺はあいつらをストリップクラブやカジノへ連れて行くんだ
※前述のスキャンダル当時のルイビル大のヘッドコーチ、Rick Pitinoの名前を出して前行のラインを強調している。
Stack of C-notes, get all you niggas scratched like Preemo
100ドル札の束を使えば、お前ら全員プリーモみたいにスクラッチ(消去)できるぜ
※「C-note」は100ドル札のこと。ヒップホップ界の生ける伝説DJ Premier(プリーモ)の代名詞である「スクラッチ」と、大金を払ってヒットマンに敵を「消させる(scratch)」ことを掛けた見事なワードプレイ。この曲のビートはDJ Premier本人が手掛けている。
Worms, I just opened up a can of those
厄介事の缶詰を、俺は開けてしまったばかりだ
※「Open a can of worms」は、わざわざ厄介な問題を引き起こすという慣用句。Pusha Tらとのビーフなど、シーン全体を巻き込む騒動の引き金を引いてしまったことへの言及。
My mother had a flower shop, but I was Sandra's rose
俺の母さんは花屋をやっていたが、俺こそがサンドラの薔薇だった
※タイトルの回収。Drakeの母Sandi Grahamはかつてフローリストとして働いていた。自分こそが彼女の育てた最高傑作(薔薇)であるという、母親への深い愛情の表現。
Two girls that I rope like Indiana Jones
インディ・ジョーンズみたいに、2人の女をロープで縛り上げる
I make them hoes walk together like I'm Amber Rose
アンバー・ローズみたいに、そのビッチたちを一緒に歩かせるのさ
※モデルのAmber Roseが主催する、女性の権利向上と性被害非難を訴える大規模なデモ行進「SlutWalk」と、複数の女性をはべらせて歩く様子を掛けた強烈なパンチライン。
Yeah, fuck that, I got to up the ante
ああ、そんなことはどうでもいい、俺は掛け金を上げなきゃならない
California girls sweeter than pieces of candy
カリフォルニアの女たちは、キャンディーよりも甘いぜ
Had me all in Nipsey hood to go link up with Sammy
ニプシーのフッドに乗り込んで、サミーと合流したんだ
※LAのクレンショー地区を拠点とするラッパーNipsey Hussleと、その実兄であるSamiel "Blacc Sam" Asghedomのこと。他所の危険なストリートでもリスペクトを持って迎え入れられるという証明。
Type of hood where bandanas make niggas a family
バンダナの色で野郎どもが家族(ギャング)になるようなフッドさ
Head on a swivel, I could shoot but I could never dribble
常に周囲を警戒している、俺はシュートは撃てるがドリブルは絶対にできない
※「Head on a swivel」は首を振って常に警戒を怠らないこと。「Shoot(撃つ)」は銃とバスケのダブルミーニング。「Dribble」はバスケのドリブルと、スラングで「口を滑らせる、密告する」こと。敵を撃つことはあっても、警察に仲間を売ることはないというストリートの掟。
Life too short, I gotta get it 'fore they blow the whistle
人生は短すぎる、笛を吹かれる前に手に入れなきゃならない
My uncle tryna change my energy with stones and crystals
俺の叔父は、石やクリスタルで俺のエネルギーを変えようとしている
But it's gon' take more than that for me to control my issues
だけど、俺が自分の抱える問題をコントロールするには、そんなものじゃ足りないんだ
※怒りや人間不信といった精神的な問題(issues)が、スピリチュアルな石程度では到底癒やされないというSad Boyの苦悩。
I wasn't made for no casket or no prison cell
俺は棺桶に入るためにも、刑務所の独房に入るためにも生まれてきたわけじゃない
Every title doin' numbers like I'm Miss Adele
出す曲すべてが、まるでアデルみたいに圧倒的な数字を叩き出す
Sandra knows I pulled us out of a living hell
俺が生き地獄から家族を救い出したことを、サンドラは分かってくれている
※両親の離婚や貧困といった苦しい過去から抜け出し、母を支え続けている息子としての誇り。
I'm the chosen one, flowers never pick themselves
俺は選ばれし者だ、花が自分で自分を摘むことなんてないからな
※再び「Sandra's Rose(花)」の比喩。神や運命によって「摘み取られた(選ばれた)」存在であるという傲慢かつポエティックな宣言。
[Chorus: Maneesh]
Yeah, no more, no more
ああ、もうたくさんだ、もう終わりだ
Baby, baby, baby, baby, baby, baby, baby, yeah
ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ああ
Yeah, no more, no more
ああ、もうたくさんだ、もう終わりだ
Baby, baby, baby, baby, baby, baby, baby
ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー
Ooh, ooh
[Verse 2: Drake]
Niggas want a classic, that's just ten of these
野郎どもはクラシック(名盤)を求めているが、こんな曲を10曲揃えるだけのことさ
Crime family like the Genovese, you don't want drama, capisc'?
ジェノヴェーゼみたいな犯罪一家だ、揉め事はごめんだろ、カピッシュ?
※ニューヨークの五大マフィアの一つ「ジェノヴェーゼ一家」への言及。「Capisc'(カピッシュ)」はイタリア語由来でマフィア映画によく登場する「分かったか?」というフレーズ。完全にMob Bossになりきっている。
My house is full of supermodels just like Mohamed Hadid
俺の家はモハメド・ハディッドみたいに、スーパーモデルで溢れかえっている
※ジジ・ハディッドやベラ・ハディッドといった世界的スーパーモデルの父親である、大富豪の不動産王Mohamed Hadidの引用。
I take this shit too serious, you niggas my comic relief
俺はこのゲームを真剣に捉えすぎている、お前らは俺のコメディリリーフ(息抜き)にすぎない
I find it funny how I keep on talkin' and commas increase
俺が喋り続けるだけで、口座のコンマ(桁)が増えていくのが笑えるよな
I'm standin' at the top of where you niggas are climbin' to reach
俺は、お前らが必死に登ろうとしている場所の、その頂上に立っている
I even got my very own initials inscribed on my sheets
俺のベッドシーツには、俺自身のイニシャルまで刺繍されている
Subtle reminders are key, jeez!
こういうさりげないリマインダーが鍵なんだよ、まったく!
Spoiler alert: the second act is tragic
ネタバレ注意だ、第二幕は悲劇になるぜ
※お前らのキャリア(または俺に挑んでくるビーフの結末)は悲惨な終わりを迎えるという警告。
And everyone that wants the worst for me's askin' what happened
俺の不幸を望む奴らはみんな、「一体何が起きたんだ?」って聞きたがる
Backstabbed so many times I started walkin' backwards
何度も背中を刺されすぎたせいで、俺は後ろ歩きを始めたよ
Like Charlamagne, I see the light and see the darkest patches
シャーラメインみたいに、俺には光(成功)と最も暗い部分(裏切り)の斑点が見えるのさ
※有名なラジオホストであり、Drakeの熱烈なヘイターとしても知られるCharlamagne Tha Godへのディス。彼が皮膚の色素が抜ける病気(または肌の漂白疑惑)で肌に斑点(patches)があることを、成功と裏切りが入り混じる自分の人生に掛けて揶揄している。
Bury me and I'll be born again
俺を埋めてみろよ、また生まれ変わってやるから
I walk in godly form amongst the mortal men
俺は死すべき定めの人間たちに混じって、神の姿で歩いているんだ
I got some real demons across the border fence
俺には、国境のフェンスの向こう側に本物の悪魔(仲間)たちがいる
※カナダ(トロント)からアメリカ国境を越えた先にも、自分のために動く危険なストリートのコネクションがあるというMob Boss的な威嚇。
And made a note of the mistakes we can't afford again
二度と繰り返すわけにはいかない過ちを、しっかりと書き留めておいた
Like I said, can of worms and I'm the early bird
言っただろ、厄介事の缶詰(虫の缶詰)だってな、俺は早起きの鳥さ
※「早起き鳥は虫を捕らえる(The early bird catches the worm)」という諺と、前バースの「can of worms(厄介事)」を掛け、トラブルが起きても自分が先手(early bird)を打って敵(worms)を片付けるという宣言。
Niggas want to hang but I'm too busy doin' dirty work
野郎どもはつるみたがるが、俺は汚れ仕事で忙しすぎるんだ
Hit 'em back and say we'll link up on the 33rd
奴らに返信して、「33日」に会おうぜって伝えておくよ
※カレンダーに「33日」は存在しない。つまり「お前らとは永遠に会うつもりはない」というスマートな拒絶。
When I say that they cursin' me, it ain't dirty words
俺が「奴らは俺に呪いをかけている(curse)」と言う時、それはただの汚い言葉(悪口)のことじゃない
※アンチがネットで悪口(curse words)を叩くレベルではなく、本気で破滅を願って呪術的な呪い(curse)をかけてきているほどの深い憎悪を感じているというパラノイア。
Church of Pentecost, Holy Spirit synagogue
ペンテコステ派の教会、聖霊のシナゴーグ
I don't know who's protectin' me but we hit it off
誰が俺を守ってくれているのかは分からないが、俺たちは上手くやってるぜ
※キリスト教やユダヤ教など、宗教を問わずあらゆる神聖な力が自分を守護しているという圧倒的な自信。
Sandra's rose, no wonder they tryna pick me off
俺はサンドラの薔薇だ、奴らが俺を摘み取ろう(狙撃しよう)とするのも無理はない
※「Pick off」は花を摘み取ることと、遠くから狙撃(暗殺)することのダブルミーニング。最高傑作であるがゆえに狙われるトップの宿命。
I guess you gotta show these niggas who you really are
こいつらに、自分が本当は誰なのかを見せつけてやらなきゃならないようだな
[Chorus: Maneesh]
Yeah, no more, no more
ああ、もうたくさんだ、もう終わりだ
Baby, baby, baby, baby, baby, baby, baby, yeah
ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ああ
Yeah, no more, no more
ああ、もうたくさんだ、もう終わりだ
Baby, baby, baby, baby, baby, baby, baby
ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー、ベイビー
Ooh, ooh, ooh, ooh
