UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Lose You - Drake 【和訳・解説】

Artist: Drake

Album: More Life

Song Title: Lose You

概要

「Lose You」は、2017年のプレイリスト・プロジェクト『More Life』に収録された、Drakeのキャリアにおける最も内省的で核心を突く楽曲の一つである。プロデューサーのNoah "40" Shebibによるメランコリックなビートに乗せ、Drakeは「大衆的なメガスターへの成長」と引き換えに「初期のコアファンやストリートからの支持」を失ってしまったのではないかという、深いパラノイア(Sad Boy的要素)を吐露する。「人は成功に向かって努力している時のアンダードッグを愛し、すべてを手にした勝者を憎む」というヒップホップにおける残酷な真理を突いたバースは、ファンの間で高く評価されている。同時に、自分を批判しながらもSNSで中身のない見栄を張るライバルたち(特にMeek Mill)への致命的なサブリミナル・ディスも展開しており、苦悩するアーティストと冷酷な「Mob Boss」の二面性が同居する、Drakeの複雑な精神状態を完璧にパッキングした名曲である。

和訳

[Intro: Drake & John Taylor]

I don't care what society thinks. They're nothing anyway. They're no better than me. Out there you just have to fit into a pattern that somebody's already laid out for you. Life we live, you have to set your own patterns, your own ideals. You have to handle the whole job yourself (Yeah)
社会がどう思おうと気になんてしない。奴らは無価値だ。俺より優れているわけでもない。世間に出れば、誰かが敷いたレールに自分を当てはめなきゃならない。だが俺たちが生きるこの人生では、自分自身のレール、自分自身の理想を打ち立てなきゃならないんだ。すべてを自分の手でやり遂げる必要がある
※1969年のバイカー映画『Hell's Angels '69』からのサンプリング。他人のルールに従わず、自らの帝国を築き上げたアウトローとしての姿勢を提示している。

[Verse 1: Drake]

No snow tires, the Range slip-slide like Trick Daddy and Trina
スノータイヤは履いてない、レンジローバーがトリック・ダディとトリーナみたいにスリップ・スライドする
※マイアミのラッパーTrick DaddyとTrinaによる1998年のヒット曲「Nann Nigga」やレーベル「Slip-N-Slide Records」に掛け、トロントの雪道で高級車を乗り回す様を描写している。

Oli North pull in, like, 10 million a season
オリ・ノースは1シーズンで1000万ドルを稼ぎ出す
※OVOの共同創設者Oliver El-Khatibの異名。イラン・コントラ事件の中心人物オリバー・ノース大佐に例え、彼が裏で巨額のビジネスを動かすフィクサーであることを示している。

Queen Street visions that nobody believed in
誰も信じてくれなかったクイーン・ストリートでのビジョン
※トロントのクイーン・ストリート。彼が無名時代に抱いていた大きな野望。

If we not on the charts, my XO niggas eatin'
もし俺たちがチャートにいない時は、XOの兄弟たちが食いっぱぐれることはない
※「XO」は同郷トロントのスター、The Weekndのレーベル。かつての不和を乗り越え、トロント勢で世界の音楽チャートを支配しているという連帯の誇示。

Fifty-two consecutive weekends, shout out to Weeknd
52週連続の週末、ウィークエンドにシャウトアウトを送るよ

The city gets stronger when everybody is speakin'
全員が対話する時、この街はもっと強くなる

Not when everybody out here beefin'
全員がここでビーフをして争っている時じゃなくな

We got it, now we just gotta keep it
俺たちは天下を獲った、あとはこれを維持するだけだ

America's most wanted, man, I'm still on the run
アメリカの最重要指名手配犯さ、なあ、俺はまだ逃亡中なんだ

All these number ones and we still not the ones
これだけナンバーワンを獲っても、俺たちはまだ「選ばれし者」として認められていない
※商業的にどれだけ成功しても、ポップすぎると批判されヒップホップ・コミュニティから「本物(The ones)」としてリスペクトされないことへの不満。

No hard feelings, but I'll still get you spun
恨みはないが、それでもお前をスピンさせてやる
※「Spin」はストリートスラングで車で敵の陣地に乗り込んで銃撃すること。あるいは業界から弾き出すというMob Boss的な威嚇。

Went and got diplomas and we still goin' dumb
卒業証書を手に入れても、俺たちはまだバカな真似をしてる

Please never label niggas who lay down for a livin'
横になって生きることを選んだような奴らを、俺と同じ枠で括らないでくれ
※競争から逃げて怠慢になったラッパー、あるいはビーフの最中に逃げ隠れしたMeek Millらへのサブリミナルな軽蔑。

My competition, it's beyond offensive
お前らが俺のライバルだなんて、不愉快を通り越してるぜ

I'm in it for the glory, not the honor mention
俺は栄光のためにやってるんだ、佳作なんかじゃなく

Not tryna be fourth and inches, I'm tryna go the distance
4thダウン残り数インチでギャンブルするつもりはない、俺は最後まで走り抜くつもりだ
※アメリカンフットボールのメタファー。一時的な話題作りではなく、圧倒的なキャリアを築き上げるという決意。

Yeah, distance, I'm on a different mission
ああ、圧倒的な距離感さ、俺は次元の違うミッションに挑んでる

This the remix to "Ignition," hot and fresh out the kitchen
これはイグニッションのリミックスだ、キッチンから出したばかりのホットでフレッシュなヤツさ
※R. Kellyの2003年の歴史的メガヒット「Ignition (Remix)」の有名な一節をそのまま引用し、自分の楽曲がそれと同レベルのマスターピースであることを宣言。

How you forget to fill up with gas on the road to riches?
成功への道のりで、どうしてガソリンを満タンにするのを忘れるんだ?
※勢いを失い、シーンから消えていったかつてのライバルたちへの皮肉。

Too overly ambitious, too late to fix it
野心が強すぎたんだ、修正するにはもう遅すぎる

Too late for condolences when it's over with
すべてが終わってからお悔やみを言ったって遅すぎるんだよ

I need to start sayin' shit when I notice it
気づいた時にちゃんと口に出すようにしなきゃな

Be open with people I need some closure with
決着をつけるべき相手には、心を開いて向き合うべきだ

Be honest with myself and take ownership
自分に正直になって、責任を持つんだ

Opinions started to burn when tables started to turn
形勢が逆転し始めた時、周囲の意見は俺を焼き尽くすように厳しくなった
※アンダードッグから絶対王者になった途端、世間の評価が一転してヘイトに向かったことへのSad Boy的苦悩。

I really used to feel like they loved a nigga at first
最初はみんな、俺のことを愛してくれてるって本気で思ってたのにな

Excitin' times, revitalized
刺激的な日々だ、活力を取り戻したよ

Trust this little light of mine is gonna shine positively
俺の中のこの小さな光が、必ずポジティブに輝くと信じてる
※有名なゴスペルソング「This Little Light of Mine」からの引用。

I'm just takin' what God will give me
俺は神が与えてくれるものを受け取っているだけだ

Grateful like Jerry, Bob and Mickey
ジェリー、ボブ、そしてミッキーのように感謝してるぜ
※伝説的ロックバンド「Grateful Dead」のメンバー、Jerry Garcia、Bob Weir、Mickey Hartの名前を並べた、音楽オタクとしての巧妙なワードプレイ。

Better attitude, we'll see where it gets me
もっとマシな態度でいよう、それでどこまで行けるか見てみようぜ

I know catchin' flies with honey is still sticky
蜂蜜でハエを捕まえるのが有効でも、やっぱりベタつくのは分かってるんだ
※「怒るより優しくした方が人は動く」という英語の諺の引用。良い人でいようとすると、厄介な人間関係に巻き込まれるジレンマ。

I wrote the book on world-class finesses
俺は世界クラスのフィネス(巧妙な立ち回り)に関する本を書いた

And tasteful gestures and makin' efforts
そしてセンスのいい振る舞いや、努力の重ね方についてもな

And never placin' second
そして、絶対に2位にはならない方法もだ

And even better knowin' you're first but then takin' second
さらに言えば、自分が1位だと分かっていながら、あえて一歩引いて2位のポジションを取る高等テクニックもだ
※絶対王者でありながら若手をフックアップしたり、時には黒子としてシーンを動かす彼のプロデューサー的気質。

Inspirin' and never takin' credit
インスピレーションを与えておきながら、決して手柄を独り占めしない

I know I deserve more, I just never said it
もっと評価されて当然だと分かってるが、決して口には出さなかった

Two middle fingers as I make a exit, yeah
両手の中指を立てて、退場させてもらうぜ

[Chorus: Drake]

Did I lose you?
俺は君を失ってしまったのか?
※ここで呼びかけている「君」は特定の女性ではなく、初期の頃から支えてくれたコアファン、あるいは故郷トロントのコミュニティを指していると解釈されている。

Did I? Did I?
失ったのか? なあ?

Did I lose you?
俺は君を失ってしまったのか?

Did I? Did I?
失ったのか? なあ?

Did I lose you?
君の心から離れてしまったのか?

[Verse 2: Drake]

Winnin' is problematic
勝つことには問題が伴う

People like you more when you workin' towards somethin'
人ってのは、お前が何かに向かって努力している時のほうが好きでいてくれるんだ

Not when you have it
すべてを手にしてしまった時じゃなくな
※ヒップホップにおける「ハングリー精神を愛し、成功者を憎む」という残酷な真理。Drakeのキャリアを通じて最も頻繁に語られるパラノイアの核心。

Way less support from my peers
同業者からのサポートは明らかに減った

In recent years as I get established
確固たる地位を築いたここ数年でな

Unforgivin' times, but fuck it, I manage
容赦のない時代だ、だがクソくらえ、俺は上手くやってる

Why is my struggle different than others'?
なぜ俺の苦労は、他の奴らの苦労とは違うものとして扱われるんだ?

Only child that’s takin' care of his mother
悪化する健康状態と倍に膨れ上がる請求書を抱えながら、母親の面倒を見ている一人息子
※長年闘病を続けている母Sandiへの責任と重圧。

As health worsens and bills double
悪化する健康状態と倍に膨れ上がる請求書を抱えて

That’s not respectable all of a sudden?
それが突然、尊敬に値しないことになっちまうのか?
※ギャングスタ的な生い立ちでないというだけで、家族を養うという普遍的な苦悩がヒップホップ界で軽く扱われることへの怒り。

I don’t get a pat on the back for the come up?
この成り上がりに対して、背中を叩いて褒めてはくれないのか?

What do you see when you see me?
俺を見る時、君たちには何が見えているんだ?

When did all the things I mean
俺が心の底から伝えたいと思っていたことのすべてが

From the bottom of my heart start to lose meaning?
一体いつから意味を失い始めたんだ?

Maybe I share it with too many people
多分、あまりにも多くの人とそれを共有しすぎたんだろうな
※アンダーグラウンドでパーソナルな内省的ラップが、世界最大のポップミュージックとして大衆消費されてしまうことへのジレンマ。

Back then it used to just feel like our secret
あの頃は、俺たちだけの秘密みたいに感じられていたのに

Back when I would write and not think about how they receive it
世間がどう受け取るかなんて気にせず、ただ歌詞を書いていたあの頃に

I be tryna manifest the things I needed
自分に必要なものを引き寄せようと必死だった

And look, now, I mean, it's hard to believe it even for me
そして見てみろよ、今じゃ俺自身でさえ信じられないほどの状況だ

But you're mindful of it all when your mind full of it all
だが、頭の中がすべてで満杯になると、何もかもが気になって仕方なくなる

How they go from not wantin' me at all
奴らは俺に見向きもしなかったのに

To wantin' to see me lose it all?
どうして俺がすべてを失うところを見たいと願うようになったんだ?

Things get dark, but my aura just starts glowin'
状況は暗くなるが、俺のオーラはただ輝き始める

I'm overcome with emotions
感情に完全に圧倒されている

Ones I can't access when I'm stoned sober
完全にシラフの時にはアクセスできないような感情にな

Jealous ones still envy and niggas turn king cobra
嫉妬深い奴らは今でも妬み、野郎どもはキングコブラに姿を変える
※Fat Joeのアルバム『J.O.S.E. (Jealous Ones Still Envy)』のタイトルと、裏切り者を意味する「蛇(コブラ)」を掛けた秀逸なパンチライン。

I could only speak what I know of
俺は自分の知っていることしか語れない

Man, we wrote the book on calculated thinkin'
なあ、俺たちは計算し尽くされた思考術の本を書いたんだ

And icy Heineken drinkin', and rival neighborhoods linkin'
冷えたハイネケンを飲み、敵対するフッド同士を繋ぐ方法もだ

And puttin' your trust in someone with the risk of financially sinkin'
そして、経済的に沈没するリスクを背負いながら誰かに信頼を託す方法も

All you did was write the book on garbage-ass Rollies
お前がやったことといえば、ゴミみたいなロレックスを見せびらかす方法の本を書いたことくらいだ

Ego strokin', picture postin'
自尊心を満たすために写真を投稿し

Claimin' that you'd do it for motivational purposes only
「あくまでモチベーションを高めるためだ」なんて言い訳をしてる
※高級時計の写真をSNSに頻繁にアップし「Motivation(モチベーション)」とキャプションをつけていたMeek Millらに対する、致命的かつ的確なサブリミナル・ディス。中身のなさを痛烈に批判している。

But you just had to show me
だけど、お前はただ俺に見せつけたかっただけなんだろ

See, I know, 'cause I study you closely
ほら、分かってるさ、俺はお前のことを誰よりも観察しているからな

I know when someone lyin'
誰かが嘘をついている時も分かる

I notice people standin' for nothin' and gettin' tired
信念もなく立っていて、ただ疲弊していく奴らのことにも気づいてる

I know what we're both thinkin' even when you're quiet
お前が黙っていても、俺たち二人が何を考えているか分かってるぜ

Sometimes I gotta just make sure that I didn't lose you
時々、俺は君を見失っていないか確かめなきゃならないんだ

[Chorus: Drake]

Did I? Did I?
失ったのか? なあ?

Did I lose you?
俺は君を失ってしまったのか?

Did I? Did I?
失ったのか? なあ?

Did I lose you?
君の心から離れてしまったのか?

[Outro: 600Breezy]

This is the 6’s year
今年はシックス(トロント)の年だ

Six hundreds instead of six, OVO
シックスじゃなくシックス・ハンドレッドだ、OVO
※シカゴのギャング・ラップグループ「600(Team600)」のメンバー、600Breezyによるアウトロ。トロント(The 6)とシカゴ(600)のストリートの強固な結びつきを証明するMob Boss的な演出。

You know we’ll be rockin' our asses out
俺たちが全力で暴れ回るってことは分かってるだろ

To my big brother Drizzy
俺のビッグ・ブラザー、ドリジーへ

You know what I’m sayin'?
言ってること分かるか?

More Life, 6 to the world, gang shit
モア・ライフ、シックスから世界へ、ギャング・シットだ