Artist: Drake (feat. Giggs)
Album: More Life
Song Title: KMT
概要
『More Life』(2017年)に収録された「KMT」は、DrakeがUKのヒップホップ・グライムシーンへの深い敬意と野心を顕著に示したハードコアなトラップ・チューンである。「No Long Talk」に続き、サウスロンドンの重鎮Giggsを再び客演に迎えている。タイトルの「KMT」とは、ジャマイカのパトワ語に由来するUKスラング「Kiss My Teeth(歯打ち)」の略であり、苛立ちや軽蔑、不満を表す際に「チッ」と舌打ちをする仕草を指す。Drakeは本作で、成功者としての圧倒的な余裕を見せつつ、実力のないヘイターやフェイクな同業者たちを冷酷に一蹴する「Mob Boss」のペルソナを披露している。また、ファンの間では、この曲でのDrakeのスタッカートなフロウが、当時新進気鋭であったフロリダのラッパーXXXTentacionのヒット曲「Look At Me!」に酷似しているとして大きな物議を醸し、激しいビーフの火種となったことでも歴史に名を刻んでいる重要曲である。
和訳
[Intro: Giggs & Drake]
(Ness on the beat)
(ネスがビートを手掛けてるぜ)
※プロデューサーNessのプロデューサータグ。
Yeah, yeah, yeah
Yeah
Yeah, okay, okay, okay
[Verse 1: Drake & Giggs]
Demon just got out the can (Yeah)
ディーモンがムショから出てきたばかりだ
I gave my bro an advance (Yeah)
俺は兄弟に前金を渡してやったよ
Love is just not in my plans
「愛」なんてものは、俺の計画には入っちゃいない
Not even takin' a chance
一か八かの賭けに出るつもりすらないね
※恋愛(Sad Boy的な未練)に構っている暇はなく、ビジネスとストリートの仲間の世話に徹するというMob Bossの冷徹なスタンス。
Studio right in my yaad
俺のヤードのど真ん中にスタジオがある
※「Yaad(ヤード)」はパトワ語で「家、故郷、自分の縄張り」の意味。
I'm doin' ten in a week
1週間に10曲は作ってるぜ
How long I been on this streak?
この連勝記録はもうどれくらい続いてるんだ?
Dream about work in my sleep (Oof)
眠っている時でさえ、仕事の夢を見ているんだ
Okay, I got a lock on the streets
オーケイ、俺はこのストリートを完全に掌握(ロック)している
Shoutout to T, he did three
Tにシャウトアウトを送る、あいつは3年食らってた
And he brought it in 'cause of me
俺のためを思って、あいつはブツを持ち込んだんだ
You don't know nothin' 'bout me
お前らは俺のことなんて何も分かっちゃいない
Life for my bruddas is deep
俺の兄弟たちの人生は、底知れずディープなんだ
※ストリートで危険な橋を渡る仲間たちへの敬意と、自分もまたその世界と深く繋がっているというアピール。
Long as they all on they feet
あいつらが全員、自分の足でしっかり立っている限り
Long as they pockets is greaze (Greaze!)
あいつらのポケットがグリーズで満たされている限りはな
※「Greaze」はUKスラングで「金が潤沢にあること、ハードコアであること、危険な魅力」などを意味する。
I'm in the penthouse but still, nothin' is sweet (Yeah)
俺はペントハウスに住んでるが、それでも世の中甘くはないのさ
Dust a man down with the pen, it's a sweep (Mmm!)
ペン一本で野郎どもを粉砕してやる、まさに完全勝利(スイープ)だ
Taller in person, you'll see when we meet
実物はもっと背が高いぜ、実際に会えば分かるさ
※文字通りの身長(Drakeは180cm以上ある)と、カリスマ性や存在感の大きさを掛けている。
I heard your new shit and I'm kissin' my teeth
お前の新曲を聴いたが、思わず舌打ち(キス・マイ・ティース)しちまったよ
※ここでタイトルの「KMT」を回収。レベルの低い同業者の楽曲への呆れと軽蔑をUKのストリート・スラングで表現している。なお、このバースの「スタッカートなフロウ(短く区切るようなラップ)」が、フロリダのラッパーXXXTentacionの楽曲「Look At Me!」を意図的に模倣しているとファンの間で激しく議論された。
Jheeze!
ジーザス!
[Interlude: Giggs]
You know dem ones? Hahaha
ああいう奴ら、分かるだろ? ハハハ
Yeah, ahh!
[Verse 2: Giggs]
Bringin' that dirty-dirty, bringin' that certy (Certy)
ダーティなものを持ち込むぜ、確実な(サーティ)ものを持ち込むぜ
※「Certy」はCertain(確実な、本物の)を意味するUKスラング。
Mizzy with the quick extension, ringin' off thirty (Rah!)
拡張マガジンを付けたミジーで、30発をぶっ放す
※「Mizzy」はMac-10などのサブマシンガンを指すUKのストリート・スラング。
I've got bitches in the merky, swervin', lookin' all curvy
メルセデスの中にビッチたちを乗せて、カーブを切りながら走る、みんなグラマラスな曲線美(カーヴィー)だ
※「Merky」はMercedes-Benzのこと。同時に「怪しい、暗い」という意味もある。
And you already know I love them breasts, lookin' all perky
俺が上を向いた(パーキー)胸を愛してるってことは、お前ももう知ってるだろ
Lookin' all Christmas gift-wrapped, lookin' all turkey
クリスマス・ギフトみたいに包装されて、まるで七面鳥みたいに美味そうだ
Spen jumped out the Ghost in a suit, lookin' all churchy (Oof!)
スペンがスーツ姿でロールス・ロイス・ゴーストから飛び出してきた、まるで教会に行くみたいにキマッてるぜ
※Giggsの仲間であるSpen。
Fingers all itchin', twitchin', lookin' all jerky (Jerky)
指先がムズムズして、痙攣して、ビクビクと動いてる
※引き金を引きたくてうずうずしている状態。
Whippin' that white girl (Yeah?), cookin' that Cersei (Dah!)
あのホワイト・ガールをかき混ぜる、あのサーセイを調理するのさ
※「White girl」はコカインの隠語。ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に登場する冷酷な白人女性「Cersei Lannister(サーセイ・ラニスター)」の名前をコカインに掛けた巧みなワードプレイ。
I was pushin' that dark shit, pushin' that charcoal (Yeah)
俺はダークなヤツを売り捌いていた、あの木炭(チャコール)を売り捌いていたんだ
※「Dark shit / charcoal」はヘロインのこと。過去のリアルなドラッグ・ディーラーとしての経歴。
Now this is that big bad, this is Gustavo (Mmm!)
今じゃこれはビッグでバッドなシノギだ、まさにグスタボさ
※大ヒットドラマ『ブレイキング・バッド』に登場する冷徹な麻薬王、Gustavo "Gus" Fring(グスタボ・フリング)の引用。ストリートのチンピラから巨大な組織のボス(Mob Boss)へと成り上がった姿を重ね合わせている。
Look at them jokers, look at that arsehole (That arsehole)
あのジョーカー(ふざけた奴ら)を見てみろ、あのクソ野郎を見てみろよ
Man are gettin' bread now, and this is that hard dough (Yeah)
俺たちは今、パン(金)を稼いでる、これはハードドウ(本物の大金)だぜ
※「Bread」はお金のスラング。ジャマイカの伝統的な固いパン「Hard dough bread」と、硬貨(あるいは確かな大金)を掛けている。
Clap man, dominant murder ('Nant murder)
野郎を撃ち抜く(クラップする)、圧倒的な殺人さ
I'm a black man (Black man), government earner (Earner)
俺はブラックマンだ、政府から金を稼ぐ男さ
※正当なビジネスで税金を納める(あるいは政府から金を奪い取る)ほどの成功者になったこと。
Could've just slapped man, but he wanted it further (Why?)
ビンタだけで済ませることもできたのに、あいつはそれ以上(死)を望んだんだ
Batman, da-na-na-da-na
バットマン、ダ・ナ・ナ・ダ・ナ
※突然のバットマンのテーマソングのハミング。Giggsの強烈なキャラクターと、闇に潜むヒーロー(あるいはヴィラン)としての予測不可能な不気味さを表現したアイコニックなライン。
[Outro]
October Firm
オクトーバー・ファーム
※DrakeとOVOの共同創設者Oliver El-Khatibによるビジネス・パートナーシップの名称。アルバムに全体に漂うマフィア組織のような雰囲気を最後に刻み込んでいる。
