Artist: JID
Album: The Forever Story
Song Title: Kody Blu 31
概要
JIDの最高傑作『The Forever Story』(2022年)の核心を成す本作は、喪失と悲哀、そして逆境に立ち向かう人間の不屈の精神を歌い上げたソウルフルな鎮魂歌である。タイトルの「Kody Blu 31」は、幼い子供を亡くした彼の友人(Cody)と、彼がフットボールで着けていた背番号に由来する。特筆すべきはイントロで流れるゴスペルであり、これは実際にJIDの祖母の葬儀で録音された彼の父親らの歌声がサンプリングされている。深い悲しみのどん底にいる友人や家族に向け、「Swang on(腕を振り回して戦い続けろ)」という南部のストリート特有の表現でエールを送るこの楽曲は、単なるトラウマの吐露にとどまらず、黒人コミュニティが世代を超えて受け継いできた「サヴァイブする力」を感動的に描き出している。
和訳
[Intro]
And now
さあ
My niggas
俺の兄弟たちよ
Our feature presentation
本日のメインプログラム(長編映画)の始まりだ
※アルバム全体を一つの映画として見立てる構成。ここから作品の最もディープで感情的なセクションへと入っていくことを示している。
[Bridge]
When I die, Hallelujah, by and by, I'll fly away
私が死ぬ時、ハレルヤ、やがて私は空へと飛び立つだろう
※1929年にアルバート・E・ブラムリーによって書かれた有名な黒人霊歌・賛美歌「I'll Fly Away」の引用。この音声は、JIDの祖母の実際の葬儀において、彼の父親や家族が歌っているホームビデオの録音をそのままサンプリングしたものである。生と死、そして魂の解放という楽曲のテーマを決定づける極めてパーソナルで神聖なイントロ。
Doo, doo, doo, doo, doo, doo, doo, doo
ドゥー、ドゥー、ドゥー、ドゥー…
Doo, doo, doo, doo (Doo), doo, doo, doo, doo
ドゥー、ドゥー、ドゥー、ドゥー…
Doo, doo, doo, doo, doo, doo, doo, doo
ドゥー、ドゥー、ドゥー、ドゥー…
Doo, doo, doo, doo, doo, doo, uh, uh
ドゥー、ドゥー、ドゥー、ドゥー、アー、アー
[Verse 1]
And as I lay myself to sleep, I pray the Lord my soul to keep
眠りにつく時、主が俺の魂を守ってくれるように祈る
※18世紀から伝わる古典的な子供の就寝時の祈りの言葉「Now I lay me down to sleep...」の引用。ヒップホップにおいてもMetallicaの「Enter Sandman」やKid Cudiなど多くのアーティストが引用してきたフレーズだが、ここでは死やトラウマへの恐怖から魂を守るための切実な祈りとなっている。
The pressure makes me, the journey takes me
重圧(プレッシャー)が俺を形作り、この旅路が俺を導いていく
To places where history can't stop or break me
歴史のしがらみでさえ俺を止めたり、壊したりできない場所へと
You know it rains for somethin', you know the pain's for somethin'
雨が降るのには意味がある、この痛みにも意味があるって分かってるだろ
I hope a change is comin', just keep on swangin' on
いつか変化が訪れることを願ってる。だから、ただ腕を振り回して戦い続ける(スウェンギン・オン)んだ
※「Swang」は南部スラングで「揺れる」「車を蛇行運転する」等の意味があるが、ここではボクシングのように「拳を振り回す(Swing)=逆境に対して諦めずに戦い続ける」という意味合いで使われている。Sam Cookeの「A Change Is Gonna Come」の精神を受け継ぐメッセージ。
[Chorus]
Swang on, swang on (Oh), swang on, swang on
戦い続けろ、諦めるな(オー)、拳を振り続けろ
Swang on, swang on, swang on, swang on
戦い続けろ、諦めるな
Swang on, swang on, swang on, swang on
戦い続けろ、諦めるな
Swang on, swang on, swang on, swang on (Uh)
戦い続けろ、諦めるな(アー)
[Verse 2]
Keep on swangin' lil' sis, keep swangin' lil bro
戦い続けるんだ、妹よ。戦い続けるんだ、弟よ
I'm 'bout to swang on Terry Payne because he said my sister ho
俺はテリー・ペインに殴りかかろう(スウェンギン)としてる。あいつが俺の姉貴をビッチ呼ばわりしたからな
Gettin' high from Swisher Sweets, chariots are swingin' low
スウィッシャー・スイート(葉巻)でハイになる。チャリオット(神の馬車)が低く降りてくる
※黒人霊歌の「Swing Low, Sweet Chariot(低く揺れよ、甘き馬車)」の引用と、安価な葉巻「Swisher Sweets」を掛け合わせた巧みなワードプレイ。苦難の現世から天国へ救い出されることへの渇望。
Swastikas and the police, hang a nigga, swangin' rope
スワスチカ(ナチスの鉤十字/白人至上主義)と警察。黒人の首を吊るし、ロープが揺れている(スウェンギン)
※同じ「Swang」という言葉で、今度は南部における黒人のリンチ(首吊り)の歴史というおぞましい情景を描写している。アメリカ社会に根深く残る構造的な人種差別の暴力。
Peewee tried to swang on me, but I was with likе fifty folks and he ain't know
ピーウィーが俺に殴りかかろう(スウェンギン)としてきたが、俺の後ろに50人くらい仲間がいるのをあいつは知らなかったんだ
But what was worse, I ain't evеn want no beef with bro
でも何が最悪だったかって、俺はあいつと揉め事(ビーフ)なんて起こしたくもなかったのさ
We was told that we was soldiers, we was soulless, we was sold it
俺たちはソルジャー(兵士/ギャング)だと言い聞かされ、魂を失い、その嘘を売りつけられた(信じ込まされた)
Sayin' somethin' 'bout his set, nigga, that who he swangin' for
あいつは自分のセット(縄張り/ギャング)の話をしてた。あいつは自分の縄張りのために拳を振るってたのさ
※黒人同士がストリートで殺し合う(Black on Black crime)無意味さと、そう仕向ける社会システム(魂を売り飛ばすような環境)への深い悲哀。
Swear you bitches don't know shit about our stress, about our woes
誓って言うが、お前らビッチどもは俺たちのストレスや、この悲痛(ウォーズ)について何一つ分かっちゃいねえ
And my obsession with success by definition of my own
俺が自分なりの定義で「成功」に異常なほど執着している理由もな
Sure as death is waitin' on our flesh and bones
死が俺たちの肉体と骨を待ち受けているのと同じくらい確実なことさ
Demon callin' my spirit, had to click the phone
悪魔が俺の魂に電話をかけてくる。通話ボタンを切らなきゃならなかった
Couldn't get to Courtney quick enough to give her warm big hugs
コートニーのもとへ駆けつけて、温かくて大きなハグをしてあげるには遅すぎたんだ
※「Courtney(コートニー)」はJIDの友人で、子供を亡くした母親。幼い命の喪失という耐え難い悲劇に対して、自分が何もできなかったという無力感と深い後悔。
Told her, "You like the strongest woman on the fuckin' globe"
彼女に言ってやったよ、「君はこの地球上で一番強い女性だ」ってな
I watched my mama lose her mama
俺は、自分のママが彼女のママ(俺の祖母)を失うのを見てきた
Go through drama and trauma but had to keep her head high
修羅場(ドラマ)やトラウマを乗り越えながらも、彼女は常に顔を高く上げて(気高く)いなきゃならなかった
So we don't fuckin' know
だから、俺たち(子供)にはその悲しみが全く分からなかったんだ
※母親が子供たちのために気丈に振る舞い、悲しみを隠していたことへの気づき。黒人女性たちの計り知れない強さと自己犠牲への賛歌。
I'm gettin' older, so when the world's feelin' enormous on your back and on your arms (Ooh)
俺も年を取ってきた。だから、世界がとてつもなく重く、お前の背中や腕にのしかかってきた時は(オー)
And your feet just as heavy, you been draggin' through the storm (Oh)
足取りが鉛のように重く、嵐の中を足を引きずりながら歩いているような時は(オー)
Starin' at the city, but you trapped inside a hole (Oh)
街を見つめているのに、深い穴の中に閉じ込められているように感じる時は(オー)
Get your back up off the ropes, keep swangin' on (Yeah)
ロープから背中を離して、戦い続ける(スウェンギン・オン)んだ(イェー)
※ボクシングで劣勢になりロープを背負った(絶体絶命の)状態からの反撃のメタファー。どんなに深い悲しみや困難の中でも、生きることを諦めるなという魂からの叫び。
[Chorus]
Swang on, swang on, swang on, swang on
戦い続けろ、諦めるな
Swang on, swang on (Oh), swang on, swang on
戦い続けろ、諦めるな(オー)、拳を振り続けろ
Swang on, swang on (Swang on), swang on, swang on (Swang on)
戦い続けろ、諦めるな(戦い続けろ)、拳を振り続けろ(戦い続けろ)
Swang on, swang on (Swang on), swang on, swang on
戦い続けろ、諦めるな(戦い続けろ)、拳を振り続けろ
[Outro: Rashida Chitunda]
Hello?
もしもし?
Swang on, swang on, swang on, swang on
戦い続けろ、諦めるな
Swang on, swang on, swang on, swang on
戦い続けろ、諦めるな
You know it rains for somethin' (Ah)
雨が降るのには意味があるって分かってるだろ(アー)
Swang on, swang on, swang on, swang on
戦い続けろ、諦めるな
Swang on, swang on, swang on, swang on
戦い続けろ、諦めるな
