Artist: JID
Album: DiCaprio 2
Song Title: Mounted Up
概要
JIDの2ndアルバム『DiCaprio 2』(2018年)に収録された「Mounted Up」は、彼の圧倒的なラップスキルとライミングの精緻さを見せつける、アルバム終盤を飾るアグレッシブなバンガーだ。DJ Dramaの威勢の良いイントロから幕を開け、JIDは自身のサバイバル精神、偽物ラッパーへの強烈なディス、そしてアメリカ社会の暗部を抉るメッセージを、息継ぎすら感じさせない高速かつ変則的なフロウで叩きつける。プロデューサーのHollywood JBによる、重厚なベースと不気味なシンセが絡み合うミニマルなトラップビートが、JIDの声とリズムを最大限に引き立てている。「Mounted Up(準備完了、武装する)」というタイトル通り、頂点へ向けて戦闘態勢に入った若きリリシストの決意表明であり、ヒップホップにおける「Bars(純粋なラップのスキルとリリックの密度)」の重要性を現代に再提示した一曲である。
和訳
[Intro: DJ Drama]
Fam, take me to where the bars is at
なぁ兄弟、「バース」がある場所へ連れてってくれ
Take me to the street where the bars is at
「バース」が響き渡るストリートへ連れてってくれよ
※「bars」はヒップホップにおいて「高度なライムやリリックの小節、真のラップスキル」を指す。DJ DramaがJIDのラップスキルの高さを煽るイントロ。
JID, DJ Drama, let's get it
JID、DJドラマだ。さぁ、始めようぜ
[Chorus]
Okay, I'm mounted up (Huh)
よし、俺は武装完了(マウンテッド・アップ)だぜ(ハッ)
High off the ground, watch me count it up
地上高く舞い上がり、俺が札束を数えるのを見てな
Cop me a pound, burn it down with us (Uh)
大麻を1ポンド買って、俺たちと一緒に燃やそうぜ(アー)
Let's hit the town, is you down or nah?
街へ繰り出そう。お前も乗るか、それともやめとくか?
Look at me now, I done found me some
今の俺を見てみな、ついに見つけたんだ
[Verse 1]
Treasure inside the trash
ゴミ箱の中に埋もれた宝物をな
Sever my hands reaching through the metal and glass
金属片やガラスの破片に手を突っ込んで、切り裂きながらな
※何もない底辺(trash)から、傷つきながらも成功(treasure)を掴み取った過酷な過去のメタファー。
It's been a blast, feel the magic in the madness, give me yo' hands
最高の気分だ、この狂気の中にある魔法を感じろよ、手を貸してくれ
Give me passion, anything that can equal some satisfaction
情熱をくれ、少しでも満足感に等しいものなら何でもいい
Looking for love at the end of this Henn' bottle
ヘネシーのボトルの底に「愛」を探してる
Looking for pub', let me pen your next album
パブリシティ(名声/金)を探してる、お前の次のアルバムのリリックを俺に書かせろよ
※自身のリリシストとしての腕前に絶対的な自信があり、他のラッパーのゴーストライターすらやってやると豪語している。
Call from above, tell me kid you been allowed to
天からの声が聞こえる、「小僧、お前にはその資格があるぞ」ってな
Point it to re-emerge, kicking lyrics in the South, no issue
再び這い上がり、サウス(南部)でリリックを蹴り飛ばす、何の問題もねえ
Wipe that drizzle off your mouth, it's time to wake up the house
口元のよだれ(ドローズ)を拭きな、家中の奴らを叩き起こす時間だ
※気を抜いている(寝ている)同業者たちに対する警告。
Y'all niggas been playing skins versus blouses
お前らはずっと「上半身裸チーム vs ブラウスチーム」みたいな遊びをしてるんだろ
※コメディアンのデイヴ・シャペルによる伝説のスケッチ「Charlie Murphy's True Hollywood Stories」における、プリンス(ブラウスを着ていた)とのバスケットボール対決のパロディ。軟弱なラッパーたちをからかっている。
I'ma keep my shirt on until some hoes come out
俺はビッチどもが現れるまで、シャツは着たままでいるぜ
Always keep your word, homie, I don't know nothing else
常に自分の言葉(約束)は守れよ、兄弟。俺はそれ以外の生き方を知らねえ
I'm your father, go get a switch or a belt
俺はお前らの親父だ、木の枝かベルトを持ってこい
※「switch」は折檻に使われるしなやかな木の枝。格下のラッパーたちを「子供」扱いし、お仕置き(ラップで打ち負かす)するという古典的なパンチライン。
Interrupting my method, in here making this velvet
俺のやり方(メソッド)を邪魔すんじゃねえ、俺はここで「ベルベット」を作ってるんだ
※「ベルベット(高級な生地)」のように滑らかで上質な音楽を作っているという比喩。
Grab my dick and do a thrust with my pelvis
股間を掴んで、骨盤を突き出す
My shoes suede but don't fuck with no Elvis
俺の靴はスエードだが、エルヴィス(・プレスリー)なんざ知ったこっちゃねえ
※エルヴィスの名曲「Blue Suede Shoes」を引き合いに出しつつ、黒人音楽を白人のものとして大衆化(盗用)した彼への痛烈なディス。
I'm from the era of real shit, kill-or-be-killed shit
俺は「本物」の時代、殺るか殺られるかの時代の出身だ
Kill-or-be real quick, float like butterfly
一瞬で殺るか殺られるか。「蝶のように舞い」
Sting like killer bee, flow worth kilograms
「キラー・ビー(殺人蜂)のように刺す」。俺のフロウは「キログラム」単位の価値があるぜ
※モハメド・アリの有名な言葉「蝶のように舞い、蜂のように刺す(Float like a butterfly, sting like a bee)」の引用と、Wu-Tang Clanの異名「Killer Bees」、さらに麻薬の単位「キログラム」を掛け合わせた見事なワードプレイ。
You niggas killin' me thinkin’ you ill as me
お前らが「自分もJIDくらいヤバい(ill)」なんて思ってるのを見ると、笑い死に(killin' me)しそうだぜ
What's shit to an enema, enemy?
敵(エネミー)よ、浣腸(エネマ)にとっての「クソ」って何だと思う?
※「エネミー」と「エネマ(浣腸=クソを洗い流すもの)」の音韻を利用し、自分(浣腸)が敵(クソ=フェイクなラッパー)を一掃するという強烈なディス。
Anyone, get at me, I'm the epitome
誰でもかかってこい、俺は最高傑作(エピトミー)だからな
[Chorus]
Fuck, hey, I'm mounted up (Huh)
クソッ、よし、俺は武装完了だぜ(ハッ)
High off the ground, watch me count it up (Look)
地上高く舞い上がり、俺が札束を数えるのを見てな(見な)
Cop me a pound, burn it down with us (Uh)
大麻を1ポンド買って、俺たちと一緒に燃やそうぜ(アー)
Let's hit the town, is you down or nah? (Yeah)
街へ繰り出そう。お前も乗るか、それともやめとくか?(イェー)
Look at me now I done found me a
今の俺を見てみな、ついに見つけたんだ
[Verse 2]
Method to all the madness
この全ての狂気に対する「解決策(メソッド)」をな
Checkin' my back, checkin' my hands
背後を確認し、自分の両手を確認する
Checkin' in cash, and checkin' and balancin'
現金をチェックし、帳尻(バランス)を合わせるんだ
Hard work, callouses
過酷な労働で、手にはタコ(キャラス)ができてるぜ
※ここで「checking(小切手/確認する)」と「balance(残高/均衡)」という銀行用語を用いたワードプレイを展開。
Gripping the challenge by the cabbage
困難(チャレンジ)をキャベツ(大金/頭)ごと鷲掴みにして
And bl-bl-blackin' 'til it's no longer a factor
それが問題にならなくなるまで、ブ・ブ・ブラックアウト(ブチギレて破壊)してやる
Murder the, murder the game, kill it
ラップゲームを殺す、完全に殺し尽くす
Metaphysical living, deranged vision
形而上学的な生き方、狂気じみた視界(ビジョン)
Not a typical picture, the same limit
ありふれた絵図(ピクチャー)じゃねえ、お前らと同じ限界なんてない
But I'm limited edition, I change prisms
俺は限定生産(リミテッド・エディション)なんだ、プリズムの色を変えてやる
Am I trippin'? A nigga be trippin'
俺、おかしくなってるか? あいつらがおかしくなってんだよ
I'm feelin' like most of you niggas be slippin'
俺から言わせりゃ、お前らのほとんどが足元をすくわれてる(スリッピン)ぜ
I'm giving you tips and a nigga just went with it flippant
俺がアドバイス(チップ)を与えても、奴らはそれを軽くあしらいやがる(フリッパント)
Not sayin' you stupid, but hella reminiscent
「お前はバカだ」とは言わねえが、すごく思い出すんだよ
Of a stupid nigga, what they do to niggas
昔のバカな黒人のことをな。警察や社会が黒人に何をするかって?
Kill or shoot a nigga (Die)
黒人を殺すか、撃ち殺すんだ(死ね)
Wow, then recruit a nigga, boot or suit a nigga
ワオ、そしたら今度は黒人をリクルート(軍や警察に勧誘)して、軍靴(ブーツ)を履かせるか、スーツを着せる
Send em to the other side
そして、あの世(別の国や危険地帯)へ送り込むのさ
※アメリカ社会における、黒人の構造的な搾取。貧しい黒人を軍隊に勧誘して戦場へ送るシステムを痛烈に批判している。
Is you gon' buckle up for the ride?
お前はシートベルトを締めて、このドライブ(人生)に乗り込む覚悟はあるか?
Niggas is fuckin' tough 'til it's buckin' time
奴らは、いざ発砲(バッキン)する時間になるまでは、クソほどタフなふりをしてる
Then they motherfuck, better buckle down
そしたらいざって時に、マザーファッカー、縮み上がっちまう(バックル・ダウン)んだ
Cause I'm coming up nigga, hella mounted
俺が這い上がっていくからな、完全に武装(マウンテッド)してな
Know my name cross hella counties
俺の名前はいくつもの郡(カウンティ)を越えて知れ渡ってるぜ
(Hey, JID, hey), what's up shawty?
(ヘイ、JID、ヘイ)、調子はどうだ、お嬢ちゃん?
Been around the world, ooh yeah
世界中を飛び回ってきたぜ、オー・イェー
Let me tell you 'bout it
その話をしてやろう
Keep your shit cool, melancholy
常にクールでいろ、メランコリー(憂鬱)にな
Keep your tool, shit metabolic
銃(ツール)は持っとけ、新陳代謝(メタボリック)のようにな
※生きるために常に銃を携帯することが、身体の代謝と同じくらい当たり前の本能であるというストリートのメタファー。
Get some money, niggas jealous
少し金を稼げば、奴らは嫉妬する
So him and his fellas come deliver hella bodies
だから奴とその仲間たちがやって来て、死体の山(ヘラ・ボディーズ)を築こうとする
Post robberies, another dead nigga no problem
強盗の後、また黒人が一人死んだところで、世間にとっちゃ「何の問題もない」のさ
※黒人同士の殺し合い(Black on Black crime)が日常化し、社会から見過ごされている現実への冷酷な指摘。
You happy 'cause we doin' your job
お前ら(白人社会や警察)は幸せだろうな、俺たちが「お前らの仕事(黒人を減らすこと)」を代わりにやってやってるんだから
I'm pulling everybody's ho card
俺は全員の「ビッチ・カード(虚勢)」を剥がしてやるよ
※「pulling someone's ho card」は、相手がタフなふりをしているだけの偽物であることを暴き出すというスラング。
I never play with little boy toys
俺は子供のおもちゃなんかで遊んだことはねえ
I was busy inside of laboratories
実験室(ラボラトリー=スタジオや麻薬の製造所)の中に引きこもって忙しかったんだ
Lookin' out the window like a labrador
ラブラドール(犬)みたいに、窓の外をじっと見つめてたのさ
※「laboratories(ラボラトリー)」と「labrador(ラブラドール)」という発音の類似を利用した秀逸なライミング。
To the bullshit, I'm a matador
闘牛(ブルシット/戯言)に対して、俺は闘牛士(マタドール)だ
※「Bullshit(牛のクソ=くだらないこと)」を文字通り「牡牛(Bull)」と捉え、闘牛士のように軽々とかわして仕留めるというメタファー。
In the pulpit like God's son, not a daddy's boy
説教壇(プルピット)に立つ「神の子」だ、甘やかされた「パパっ子」じゃねえよ
Cornered boar, carnivore, ready for any war
追い詰められたイノシシ(ボア)、肉食獣(カーニボア)、どんな戦争の準備もできてるぜ
Send 'em forward, fifty more, plenty more
奴らを前線に送れ、さらに50人、もっと大量にな
Gimme more, see me Lord
もっとよこせ、主よ、俺を見てください
※ここから「-or(オア)」の音で猛烈な多音節ライミングが展開される。
After me, no before he be king
俺の後に、いや、俺の前に王になる奴なんていねえ
See me, boy, see these boys
俺を見ろ、ボウヤ。こいつらを見てみな
Gon' need CPR to be me, remorse
俺のレベルになるにはCPR(心肺蘇生)が必要だぜ、後悔(リモース)するぞ
For these meteors, it's just me recording
この降り注ぐ隕石(ミーティアー)どもにな。なんてことはねえ、俺がレコーディングしてるだけさ
※自分のラップ(言葉の弾幕)が隕石のように降り注ぎ、相手に致命傷を与えるという強烈なボーストで締めくくる。
[Outro: DJ Drama & Lil Jon]
Hahaha, DiCaprio 2
ハハハ、『DiCaprio 2』だ
(Gangsta, Gangsta)
(ギャングスタ、ギャングスタ)
※アトランタのレジェンド、Lil Jonの声のサンプリング。
Suckers
サッカー(マヌケ)野郎どもめ
