Artist: JAY-Z & Freeway
Album: 8 Mile
Song Title: 8 Miles and Runnin’
概要
2002年に公開された映画『8 Mile』のサウンドトラックに収録された、ロッカフェラ・レコード(Roc-A-Fella Records)の頂点に君臨するJAY-Zと、当時デビューを控えていた期待の超新星Freewayによる強力なコラボレーショントラック。プロデュースはエミネムが担当し、名盤『The Blueprint』収録の「Renegade」以来となる黄金タッグが実現した。タイトルの「8 Miles and Runnin'」はN.W.A.の伝説的EP『100 Miles and Runnin'』へのオマージュでありながら、JAY-Zの「すでに成功を収め、大帝国を背負って走り続ける姿」と、Freewayの「ストリートのシノギから抜け出し、デビューに向けて猛追する姿」を見事なスケール感の対比(1000人の胃袋 vs 20人の胃袋)で描き出している。ヒップホップにおける世代交代と、成功してもなお歩みを止めないハスラーたちの美学が詰まった、2000年代初頭を象徴する隠れた名曲である。
和訳
[Intro: Jay-Z]
Gyeah
イェー
Renegades is back
レネゲイズ(反逆者たち)の帰還だ
※JAY-Zのアルバム『The Blueprint』に収録され、ヒップホップ史に残る名曲となったエミネムとのコラボ曲「Renegade」への言及。本作のビートもエミネムがプロデュースしており、「あの伝説のタッグが戻ってきた」という強烈な宣言。
Em, the beat is sick
エム、このビートはヤバいぜ
It's Young
俺はヤング(JAY-Z)
Freeway
そしてフリーウェイだ
8 Miles
8マイル
Let's go!
行くぞ!
[Verse 1: Jay-Z]
Eight miles and runnin', got my seventh album droppin'
8マイルを爆走中だ、俺の7枚目のアルバムがドロップされる
And my eighth album comin', feeding a thousand growling stomachs
そして8枚目のアルバムも控えてる。1000個の唸る胃袋に飯を食わせなきゃならねぇ
※7枚目のアルバムは2002年11月リリースの『The Blueprint 2: The Gift & The Curse』、8枚目は2003年の『The Black Album』を指す。ロッカフェラ・レコードのCEOとして、巨大なレーベルの従業員やアーティスト、その家族(1000人の胃袋)を養う絶対的ボスの責任と権力を誇示している。
But I can rewind the calendar back, back when it was now or nothin'
だが、カレンダーを巻き戻すことだってできる。一か八かのどん底だったあの頃にな
People said I would amount to nothin', that I had talent for nothin'
連中は「あいつは何者にもなれない」「才能なんて何一つない」と言いやがった
Said I would succumb to violence or be silenced by a gunman
「暴力に屈する」か、「ガンマン(刺客)に口封じされる」のがオチだってな
I could just hear the folks now: "He got what he had comin'"
今でも奴らの声が聞こえるよ。「自業自得だ(なるべくしてなった)」ってな
Now that my eighth album's comin', everybody's smilin'
だが8枚目のアルバムが出る今となっては、誰もがヘラヘラ笑ってすり寄ってくる
Wanting somethin', claiming that they done somethin' for him
何かをおこぼれをねだり、「昔、あいつ(JAY-Z)の世話を焼いてやった」なんて主張しやがるんだ
Got their Jay-Z pom-poms and their Hov uniform
「JAY-Z」のポンポンを振りかざし、「Hov」のユニフォームまで着込んでな
※Hov(JAY-Zの愛称=神エホバに由来)の熱狂的なチアリーダーやファンのように振る舞い、手のひらを返したかつてのヘイターたちを強烈に皮肉っている。
Claiming they been runnin' and tellin' everybody, like Martin Lawrence
マーティン・ローレンスみたく「俺はずっと応援してたんだ」って、みんなに言いふらしてるんだぜ
※90年代の人気コメディアン、マーティン・ローレンスの有名番組『Martin』での口調や、彼のスタンダップにおける「Run and tell that」というお決まりのフレーズを引用。おしゃべりで調子のいい連中の例え。
'Bout how hot my rap performance was before I was who I was
俺が今の「JAY-Z」になる前から、「あいつのラップのパフォーマンスはヤバかった」なんて語りやがる
Claiming that they threw it up before I threw it up—you what?
俺がハンドサインを掲げる前から、自分たちも掲げてたなんて言い張るんだ。はぁ? 何だって?
Where was you before I blew this up?
俺がこのシーンを爆発させる前、お前らは一体どこにいたんだよ?
I didn't see you in the courtroom when everybody was suin' us
みんなが俺たちを訴えまくってた時、法廷にお前の姿なんて見なかったぜ
※1999年にJAY-Zがレコードエグゼクティブのランス・“アン”・リベラをナイトクラブで刺傷した事件での裁判や、その他レーベルが抱えていた数々の法廷闘争を指す。「苦しい時は誰も助けてくれなかった」というリアルな怒り。
I didn't see you in all black when everybody was suitin' up
仲間たちが黒のスーツでビシッとキメて(法廷や葬儀に)集まった時も、お前はいなかっただろ
Back on the block, getting it in—it wasn't no you with us
ストリート(ブロック)に戻って死に物狂いでシノギを削ってた時、俺たちの輪の中にお前なんていなかったんだよ
[Chorus: Jay-Z & Freeway]
Eight miles and runnin', got my seventh album droppin'
8マイルを爆走中だ、俺の7枚目のアルバムがドロップされる
And my eighth album comin', feeding a thousand growling stomachs—Free!
そして8枚目も控えてる。1000個の唸る胃袋に飯を食わせるんだ。フリー(Freeway)!
Six miles and runnin', got my fifth strip poppin'
俺は6マイルを爆走中だ、5つのストリップ(縄張り)を回してる
And my first album comin', feeding twenty growling stomachs
そして俺のファーストアルバムが控えてる。20個の唸る胃袋に飯を食わせるんだ
※JAY-Zの「8マイル、7・8枚目のアルバム、1000人の胃袋」に対し、デビュー前のFreewayは「6マイル、5つのドラッグの売買拠点(Strip)、最初のアルバム、20人の胃袋(身内や地元のクルー)」と答える。ボスの巨大な帝国と、成り上がりを目指す若手ハスラーの規模感のリアルな対比が秀逸なフック。
Eight miles and runnin', got my seventh album droppin'
8マイルを爆走中だ、俺の7枚目のアルバムがドロップされる
And my eighth album comin', feeding a thousand growling stomachs—Free!
そして8枚目も控えてる。1000個の唸る胃袋に飯を食わせるんだ。フリー!
Six miles and runnin', got my fifth strip poppin'
俺は6マイルを爆走中だ、5つのストリップを回してる
And my first album comin', feeding twenty growling stomachs
そして俺のファーストアルバムが控えてる。20個の唸る胃袋に飯を食わせるんだ
[Verse 2: Freeway]
Six miles and runnin' in the Pontiac six thousand eighty six
俺は1986年製のポンティアック6000に乗って、6マイルを爆走中だ
※ポンティアック6000は80年代の中流階級向けセダン。Freewayがドラッグディーラー時代に乗っていたボロ車の思い出。
Trans' might shift while the engine run
エンジンを吹かしてる間に、トランスミッションがイカれちまうかもしれない代物さ
Anyone, tell your honor: "Give me one more chance"
誰か、裁判官(Your honor)に伝えてくれ。「どうかもう一度だけチャンスをくれ」ってな
And them smokers screaming, "One more gram!"
そしてジャンキー(スモーカー)共は「もう1グラムくれ!」って叫んでる
So I'ma bring 'em one (Gyeah)
だから俺は、奴らにブツを届けてやるのさ(イェー)
Only son to my pop, stick close to my mama
親父にとっての唯一の息子として、母さんのそばに寄り添う
Keep toasters for drama, make Salat with my son
揉め事(ドラマ)に備えてトースター(銃)を隠し持ち、自分の息子とはサラート(礼拝)をするんだ
※Freewayは熱心なスンニ派のイスラム教徒(ムスリム)である。銃を持ち歩く過酷なギャングスタの日常と、息子に信仰(Salat=イスラムの1日5回の礼拝)を教える父親としての顔。この極端な二面性が彼のパーソナリティの深さを作っている。
My son growin', and he learnin' a lot
息子は成長し、多くのことを学んでいく
That's when them toasters, when the burners will pop, brain on your, um–
その時だ、トースターやバーナー(両方とも銃のスラング)が火を吹き、お前の脳漿が散らばるのは…ええと、
'Brella, nigga, tell 'em niggas, that's like the Biblical scripture
傘(Umbrella)の上にな、ニガ。奴らに教えてやれ、まるで聖書の教えみたいだってな
※銃撃で吹き飛んだ脳漿が傘に降り注ぐというグロテスクな情景と「Umbrella」のライミング。
Look back, turn to salt, like the sinners
後ろを振り返れば、罪人たちのように「塩」になっちまうんだ
※旧約聖書の「ソドムとゴモラ」の逸話。神の警告を破って燃え盛る街を振り返ったロトの妻が「塩の柱」になったことから、「ストリートの過去(罪悪)を振り返れば、身を滅ぼす」という教訓のメタファー。
And most of you heartless and self-centered like Meshach and Mesha
それに、お前らの大半はメシャクやメシャみたいに冷酷で自己中心的な連中だ
※旧約聖書ダニエル書に登場する「メシャク(Meshach)」からの引用。過酷な環境で信仰を試される者の比喩。Freewayの宗教的バックグラウンドが色濃く反映されたライン。
Set up your brother 'cause you jealous, nigga
嫉妬に狂って、自分の兄弟分をハメやがるんだよ、ニガ
The heat back (Ugh), like you never left, I ever rep
熱気(銃撃戦)が戻ってきた(ウッ)、お前が一度もここを離れなかったかのように。俺は常にレペゼンしてるぜ
Cops watch every step, six miles and runnin'
サツが俺の足取りを全て監視してる、それでも俺は6マイルを爆走中だ
Dodgin' every trap, the rap gingerbread man
あらゆる罠を躱していく、俺はラップ界のジンジャーブレッド・マンさ
※「逃げろ、逃げろ、俺を捕まえることはできないぞ」と挑発して逃げ続ける童話の「ジンジャーブレッド・マン」。警察や敵の追跡を逃れ続けるストリートのハスラーの比喩。
Cherish every precious breath, State P, the second gat
この尊い呼吸の一つ一つを大切にするんだ。State P、俺が第二の銃(刺客)だ
※「State P」はFreewayが所属するフィラデルフィアのヒップホップ・グループ「State Property」のこと。
[Chorus: Jay-Z & Freeway]
Eight miles and runnin', got my seventh album droppin'
8マイルを爆走中だ、俺の7枚目のアルバムがドロップされる
And my eighth album comin', feeding a thousand growling stomachs—Free!
そして8枚目も控えてる。1000個の唸る胃袋に飯を食わせるんだ。フリー!
Six miles and runnin', got my fifth strip poppin'
俺は6マイルを爆走中だ、5つのストリップを回してる
And my first album comin', feeding twenty growling stomachs
そして俺のファーストアルバムが控えてる。20個の唸る胃袋に飯を食わせるんだ
Eight miles and runnin', got my seventh album droppin'
8マイルを爆走中だ、俺の7枚目のアルバムがドロップされる
And my eighth album comin', feeding a thousand growling stomachs—Free!
そして8枚目も控えてる。1000個の唸る胃袋に飯を食わせるんだ。フリー!
Six miles and runnin', got my fifth strip poppin'
俺は6マイルを爆走中だ、5つのストリップを回してる
And my first album comin', feeding twenty growling stomachs
そして俺のファーストアルバムが控えてる。20個の唸る胃袋に飯を食わせるんだ
[Verse 3: Jay-Z]
Back when nobody would find he had talent, nobody would sign me
「あいつに才能なんてない」と誰もが思い、誰も俺と契約しようとしなかったあの頃
Nobody believed in me, nobody but Mommy, blindly
誰も俺を信じてくれなかった。母さん以外はな。盲目的に俺を信じてくれたんだ
※JAY-Zの母、グロリア・カーターへの無償の愛に対する感謝。デビュー前、メジャーレーベルから悉く契約を拒否されたJAY-Zは、自らインディペンデントでロッカフェラ・レコードを立ち上げ、成功を掴み取った。
But how can she deny me?
でも、どうして母さんが俺を否定できる?
Me being the youngest runt to come up outta her tummy
俺は、母さんのお腹から出てきた一番下の末っ子(チビ)なんだからな
She got nothing but love for me
母さんは俺への愛しか持ち合わせていないんだ
When niggas would one me, the industry shunned me
野郎どもが俺を一人きりにし(見放し)、音楽業界が俺をのけ者にした時もな
That's why I'm taking all the industry's money
だからこそ今、俺はこの業界の金を根こそぎ奪い取ってやってるんだよ
Revenge is sweet honey, we run this
復讐ってのは甘い蜜の味だぜ、俺たちがこのゲームを支配してる
Young is the illest, Free is the future
ヤング(自分)は最強だ、フリー(Freeway)は俺たちの未来だ
Beans and Bleek is right now, we can see y'all, eight miles, nigga
ビーンズとブリークは今の最前線だ。俺たちはお前ら全員を見下ろしてるぜ。8マイルからな、ニガ
※「Beans」はBeanie Sigel、「Bleek」はMemphis Bleek。ロッカフェラ・レコードを支える右腕と左腕が「今」を固め、Freewayが「未来」を担い、JAY-Z自身が「最高地点」に君臨するという、帝国の盤石な布陣を宣言したパーフェクトなアウトロ。
[Chorus: Jay-Z & Freeway]
Eight miles and runnin', got my seventh album droppin'
8マイルを爆走中だ、俺の7枚目のアルバムがドロップされる
And my eighth album comin', feeding a thousand growling stomachs—Free!
そして8枚目も控えてる。1000個の唸る胃袋に飯を食わせるんだ。フリー!
Six miles and runnin', got my fifth strip poppin'
俺は6マイルを爆走中だ、5つのストリップを回してる
And my first album comin', feeding twenty growling stomachs
そして俺のファーストアルバムが控えてる。20個の唸る胃袋に飯を食わせるんだ
Eight miles and runnin', got my seventh album droppin'
8マイルを爆走中だ、俺の7枚目のアルバムがドロップされる
And my eighth album comin', feeding a thousand growling stomachs—Free!
そして8枚目も控えてる。1000個の唸る胃袋に飯を食わせるんだ。フリー!
Six miles and runnin', got my fifth strip poppin'
俺は6マイルを爆走中だ、5つのストリップを回してる
And my first album comin', feeding twenty growling stomachs
そして俺のファーストアルバムが控えてる。20個の唸る胃袋に飯を食わせるんだ
