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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

LOST FOREVER - Travis Scott (feat. Westside Gunn) 【和訳・解説】

Artist: Travis Scott (feat. Westside Gunn)

Album: UTOPIA

Song Title: LOST FOREVER

概要

トラヴィス・スコットの4作目のアルバム『UTOPIA』(2023年)に収録された、サイケデリックと東海岸ブーンバップが奇跡的な融合を果たした特異なトラック。Chuck Senrickの1976年の楽曲「Don't Be So Nice」をサンプリングしたジェイムス・ブレイク(James Blake)主導の浮遊感漂う前半から、ビートが突如としてThe Alchemistらが手掛けるザラついたサンプリング・ビートへとスイッチし、Griselda Recordsの首領ウェストサイド・ガン(Westside Gunn)が登場する。トラヴィスのメランコリックな精神世界と、ガンの血生臭いストリートの現実が交錯する構成は、アルバムが掲げる「ユートピア」という概念が、人によって全く異なる風景(アイランドリゾートか、あるいはゲットーの路地裏か)になり得ることを示唆している。

和訳

[Part I]

[Intro: Chuck Senrick & James Blake]

Have you ever been lost?
迷子になったことはあるか?

Have you ever been lost?
道を見失ったことはあるか?

Forever
永遠にな
※Chuck Senrickの「Don't Be So Nice」(1976年)からのサンプリングと、James Blakeの幽玄なボーカル。名声という迷宮の中で、永遠に自分を見失ってしまう(Lost Forever)というアルバム全体に通底するパラノイアの提示。

[Verse: Travis Scott, James Blake & Chuck Senrick]

Lost on islands, driven in boat cars
島々で迷子になり、ボートカー(水陸両用車)を乗り回す

Just bring your girl, feel like she both ours
お前の女を連れてきな、まるで俺たち二人のモノみたいに感じるぜ

Young black nigga work at the Auchans (Auchans)
若い黒人のガキが「オーシャン(Auchan)」で働いてる(オーシャンで)
※「Auchan」はフランスなどを拠点とする大手スーパーマーケットチェーン。かつての労働者階級としての自分や同胞を指している。

So how we here trapped on the ocean?
じゃあ、なんで俺たちはこの「海(オーシャン)」に囚われてるんだ?
※前行の「Auchans(スーパー)」と「ocean(海)」の同音異義語を用いた見事なワードプレイ。底辺の労働から抜け出したはずが、今度は名声や富という広大な「海」で孤立し、身動きが取れなくなっているという虚無感。

'Bout to go up a level of disrespectful
無礼(ディスリスペクトフル)のレベルをもう一段階上げてやるよ

I'm just one chain away from goin' heavy metal
俺はあとチェーン1本で、ヘヴィ・メタルになっちまうところさ
※首に巻いた大量のダイヤモンド・チェーンの重さと、「Heavy Metal(過激な音楽ジャンル、または銃)」を掛けた秀逸なパンチライン。

I'm just one angel away from blockin' out the devil
俺はあと天使が1人いれば、悪魔を完全にブロックできるんだ

Just one mountain away from meetin' all my rebels
あと山を一つ越えれば、俺の反逆者(レベルズ)たち全員に会える

Too much power, too many hours all in a day
1日の中に、あまりにも巨大な権力と、長すぎる時間が詰まってる

I sent her flowers, ain't talkin roses, I'm talkin' maoda
彼女に花(フラワーズ)を送った、バラの話じゃねえ、「マオダ」の話をしてるんだ
※「flowers」はマリファナの隠語。「maoda」の正確な意味には諸説あるが、ドラッグの一種、あるいは大金を示す独自のストリート・スラングと解釈される。

Ask if she "ha-ha-ha", I wouldn't doubt it
彼女が「ハ・ハ・ハ(笑っている/ハイになっている)」か聞いてみろよ、疑う余地もねえだろ

Took her through the Hills at noon, she felt the (And how wonderful, how wonderful)
真昼のヒルズ(高級住宅街)を案内してやったら、彼女は感じたのさ(なんて素晴らしい、なんて素晴らしいんだろうって)

Baby girl think she in Honolu' (Wonderful)
あのベイビー・ガールは、自分がホノルルにいると勘違いしてるぜ(素晴らしいな)
※ロサンゼルスのビバリーヒルズやハリウッドヒルズの豪華な邸宅と気候が、ハワイのホノルルと錯覚するほどのリゾート(UTOPIA)のようであるというフレックス。

Don't you know you in the I-5 loop? (How wonderful)
自分がI-5(州間高速道路5号線)のループの中にいるって分かってないのか?(なんて素晴らしいんだろう)

How many chickens fit in the coupe? (How wonderful, wonderful)
このクーペに、何匹のチキン(女たち/コカイン)が乗ると思う?(なんて素晴らしい、素晴らしい)

Wonderful, she don't wanna leave
素晴らしいな、彼女はここから離れたがらない

She jump up, bounce back like trampoline (Have you ever been lost?)
彼女は跳び上がり、トランポリンみたいに跳ね返るのさ(迷子になったことはあるか?)

[Part II]

[Verse 1: Westside Gunn]

Ayo, whip the cocaine 'til the pot bust ('Til the pot bust, ah)
エイヨー、鍋(ポット)が壊れるまでコカインをかき混ぜるんだ(鍋が壊れるまでな、アァ)
※ここからGriseldaの首領ウェストサイド・ガンのヴァースへ、ダーティなビートと共に突入する。彼らの代名詞である「クラック・コカインの精製(Whip)」の描写。

You was on the porch, I was locked up (I was locked up, ah)
お前がポーチ(玄関先)で遊んでた頃、俺はブタ箱にぶち込まれてた(ロックアップされてたんだ、アァ)

Two-tone Maybach truck with the MAC-12 (Skrrt, MAC-12)
ツートンのマイバッハ・トラックに、MAC-12(サブマシンガン)を積んでるぜ(スキール音、MAC-12)

Think a nigga shot somethin' (Ah)
野郎が何かを撃ったみたいだな(アァ)

Put it to your face, watch a motherfucker blow (Boo-boo-boo-boo-boom)
そいつを顔面に突きつけて、クソ野郎の頭が吹き飛ぶのを見てるのさ(ブ・ブ・ブ・ブ・ブーム)
※ウェストサイド・ガンのトレードマークである、銃声を模した強烈なアドリブ(Machine Gun Ad-lib)。

Daytona, different color face on the Ro' (Ah)
デイトナ、ロレックスの文字盤(フェイス)は色違いで揃えてる(アァ)

Ten on his head, he be dead by the mornin' (By the mornin')
あいつの首(頭)に10(万ドル)賭ければ、朝までには死体になってるぜ(朝までにはな)
※「Ten on his head」は殺し屋に支払う1万ドル(または10万ドル)の懸賞金(Bounty)。

I can get thirty for the stove (Ah)
ストーブ(コカインの精製)で30(万ドル)は稼げる(アァ)

Dior trench shit hang to the floor (Ah)
ディオールのトレンチコートが、床につくほど垂れ下がってるぜ(アァ)

Dior goggles, I ain't playin' with you hoes (Uh-uh)
ディオールのゴーグルさ、お前らビッチと遊んでる暇はねえよ(アー・アー)
※ウェストサイド・ガン特有の、血生臭いストリートの現実と『アヴァンギャルド・ラグジュアリー』を交差させる美学。単なるストリートウェアの枠に収まらず、マジョリティからの逸脱(majority deviation)を体現するような特異なファッションセンスは、彼がパリのファッションウィーク等でも絶大なプロップスを集める理由である。

Out in South Beach with the poles in the Rolls (Skrrt, boo-boo-boo-boo-boom)
サウスビーチに繰り出す、ロールスロイスの中にはポール(銃)を積んでな(スキール音、ブ・ブ・ブ…)

Good to see ya dudes, alligators on the toes (Ah)
お前らに会えて嬉しいぜ、つま先にはアリゲーター(の革靴)だ(アァ)

Fashion week, I almost tripped two bitches (Ah)
ファッションウィークで、危うく二人のビッチを転ばせるところだったぜ(アァ)

Hundred-round drum, make a nigga go get it (Make a nigga go get it, grrt)
100連発のドラムマガジン、野郎に取りに行かせるのさ(取りに行かせる、グラララ)

John L. Sullivan, bucket while we drillin' (Boo-boo-boo-boo-boom)
ジョン・L・サリバンだ、俺たちがドリル(襲撃)する時はバケットハットを被ってるぜ(ブ・ブ・ブ…)
※「John L. Sullivan」は19世紀後半の伝説的なベアナックル(素手)ボクシングの世界ヘビー級王者。圧倒的な暴力の象徴。

Had to sneak my new Glock up in Lenox (Ah)
アトランタのレノックス・モールに、新品のグロックを忍び込ませなきゃならなかった(アァ)

Free Sly Green, he got Wayne Perry digits
スライ・グリーンを解放しろ、あいつはウェイン・ペリーと同じ桁の数字(刑期/殺人件数)を持ってるんだ
※「Sly Green」と「Wayne Perry」は共にアメリカの裏社会で恐れられた伝説的なギャング・殺し屋。両者とも終身刑などの極めて重い刑期を受けていることへの言及。

Socks Burberry, dick sucks on the visit (Ah, brrt, boo-boo-boo-boo-boom)
靴下はバーバリー、面会室(ビジット)でフェラチオをしてもらうのさ(アァ、ブルルル、ブ・ブ・ブ…)

[Verse 2: Travis Scott & Westside Gunn]

First one to pop, first to earn the stripes (Stripes)
最初に弾けた(銃を撃った)奴が、最初にストライプ(階級章/名誉)を稼ぐんだ(ストライプ)
※軍隊やギャングにおける階級章(Stripes)と、刑務所の囚人服のストライプのダブルミーニング。

Three strikes in, twenty-five to life (Uh-uh)
スリー・ストライクで、25年から終身刑(ライフ)さ(アー・アー)
※アメリカの「三振法(Three-strikes law)」。3度目の重罪で自動的に25年〜終身刑が科される厳しい法律。

Hyping up the building, hyping up the sights (Sights)
ビルディングを熱狂させ、景色(サイト)を熱狂させる(景色)

Whip got the wings of angel kit
俺の車(ウィップ)には、天使の翼(ガルウィング)のキットがついてるぜ

I been wanting this shit my whole life, I didn't pray for it
俺はこのシット(成功)を一生求め続けてきた、だが神に祈るような真似はしなかったぜ
※神頼みではなく、自らのハッスル(行動)のみで全てを勝ち取ったという圧倒的な自負。

She want me to come into his house but I can't kick it
彼女は俺に「あいつの家に来て」って言うが、俺はそんなこと(キック・イット)できねえよ

She want the whole dub-dub E, but I ain't convinced
彼女は完全なWWE(過激なプロレス)みたいなプレイを求めてるが、俺は乗り気じゃねえな
※「dub-dub E」はプロレス団体WWE(World Wrestling Entertainment)のこと。ベッドでのアクロバティックで激しいSM的プレイの暗喩。

Never met her she, but she met Sheck, she don't need a prince
俺は彼女に会ったことがないが、彼女はシェックには会ったことがある、彼女に王子様(プリンス)なんて必要ないのさ
※Cactus Jack所属のラッパー、Sheck Wes(シェック・ウェス)へのシャウトアウト。彼のようなタフなストリートの男と遊ぶ女に、おとぎ話の王子様は似合わないというニュアンス。

Took her off the O into the D, she ain't take offense
彼女をO(オフェンス)からD(ディフェンス)に持っていったが、彼女は怒り(オフェンス)はしなかったぜ
※「O」はOral(オーラルセックス)、「D」はDick(挿入)。あるいはスポーツの「Offense/Defense」と、怒るという意味の「take offense」を掛けた巧みなワードプレイ。

Way we got it bouncin' off the boards we making prints
俺たちがバックボード(ベッドのヘッドボード)にぶつけてバウンスさせるやり方で、俺たちはプリント(痕跡)を残すんだ
※バスケットボールのリバウンド(bouncing off the boards)と、ベッドボードが壁に激しくぶつかる性行為を掛けている。

Wait until I step into the floor and then they commence
俺がフロアに足を踏み入れるまで待てよ、そしたら奴らが(狂乱を)開始(コメンス)するからさ