Artist: Travis Scott (feat. Kid Cudi, James Blake & Philip Bailey)
Album: ASTROWORLD
Song Title: STOP TRYING TO BE GOD
概要
トラヴィス・スコットの最高傑作『ASTROWORLD』(2018年)に収録された、名声と傲慢さに対する壮大な警告歌。本作は「神になろうとするな(ゴッド・コンプレックスへの警鐘)」というテーマの下、Kid Cudiの呪術的なハミング、Earth, Wind & FireのPhilip Baileyによるファルセット、James Blakeの幽玄なボーカル、さらにはStevie Wonderのハーモニカ演奏という、世代とジャンルを超えた生ける伝説たちが集結している。圧倒的な成功を収めたトラヴィス自身が、エゴに飲み込まれずルーツや仲間を大切にすることの重要性を自戒を込めて歌い上げる、ヒップホップ史に残る神聖にしてプログレッシブな芸術作品である。
和訳
[Intro]
This is the real action: the pot party, the trippers, the grasshoppers, the hip ones
これがリアルなアクションだ。ポット・パーティー、トリッパーたち、グラスホッパーたち、ヒップな連中。
※1959年のドラッグに関する音声ドキュメンタリーからのサンプリング。「pot(大麻)」「tripper(幻覚剤使用者)」「grasshopper(マリファナ常習者)」といった古い隠語が並ぶ。ここから始まるサイケデリックな精神の旅(神の領域への接近)を暗示するイントロ。
All gathered in secrecy and flying high as a kite
全員が秘密裏に集まり、凧のように高く飛んでいる(ハイになっている)。
[Pre-Chorus: Kid Cudi & Philip Bailey]
Hmm-hmm
ンー・ンー
Just know what this about
これが何を意味するのか、分かってるはずだ
Hmm-hmm-hmm, hmm-hmm
ンー・ンー・ンー、ンー・ンー
Palm trees, oceans, fresh air, that can break your heart
ヤシの木、海、新鮮な空気、それがお前の心を打ち砕くこともある
※ここで歌われる美しい自然の風景(ヤシの木や海)は、カリフォルニアやマイアミのような成功者の楽園(セレブ生活)の象徴。しかし、その虚飾に満ちた成功こそが、人間の精神を狂わせ、破滅(break your heart)へと導くという痛烈な皮肉。
[Chorus: Kid Cudi & Philip Bailey]
Hmm-hmm (Stop tryna be God)
ンー・ンー(神になろうとするのはやめろ)
※CudiのハミングとBaileyの透き通るようなボーカルが交差する。富や権力を得て「自分は全能だ(God Complex)」と錯覚しがちなラッパーやスターたちに対する、文字通りの神からの警告。
Hmm-hmm, hmm-hm
ンー・ンー、ンー・ンー
Hmm-hmm (Stop tryna be God)
ンー・ンー(神になろうとするのはやめろ)
Hmm-hmm (That's not who you are)
ンー・ンー(それはお前の本来の姿じゃない)
Hmm-hmm (Stop tryna be God)
ンー・ンー(神になろうとするのはやめろ)
Hmm-hmm (That's just not your job)
ンー・ンー(それはお前の仕事じゃないんだよ)
Hmm-hmm (Stop tryna be God, God)
ンー・ンー(神になろうとするのはやめろ、神にな)
[Verse 1: Travis Scott]
Ride for it every night
毎晩そのために車を走らせる
Visions and these angles tight
ビジョンとこのアングルは完璧だ
※「Visions」は彼が立ち上げたレーベル「Cactus Jack」のクリエイティブなビジョン。富と名声を極めたトラヴィスの現在の姿。
Truth be told, I never try
実を言うと、俺は努力なんてしたことがない
Diamonds are the wife of life
ダイヤモンドこそが人生の伴侶(妻)なのさ
※女性ではなく「永遠の輝きと富(ダイヤモンド)」を妻と呼ぶまでに至った、傲慢な現状(神の視点)を描写している。
All three Rollies look alike (Hm)
3つのロレックスはどれも同じに見える(フーム)
After two, you get a hook-up price
2つ買った後は、特別価格(フックアップ・プライス)で手に入るんだ
Stripper never worked a nine-to-five (Hm)
ストリッパーは9時から5時の仕事(一般職)なんてしたことがない(フーム)
Delta and I ship it overnight (Hm)
デルタ航空で、それを一晩で空輸するのさ(フーム)
Stop tryna be God Almighty (Hm)
全能の神になろうとするのはやめろ(フーム)
Fuck the money, never leave your people behind, yeah
金なんかクソくらえだ、絶対に自分の仲間を置き去りにするなよ、イェー
※前半の傲慢なフレックスから一転し、自戒の念を込めたメッセージへと変化する。どれだけ金や名声を得ても、共に這い上がってきた仲間(people)を見捨てるような「神を気取った」振る舞いはするなというストリートの掟。
It's never love, no matter what you try
お前がどれだけ努力しようと、それは決して愛なんかじゃない
Still can see it comin' down your eyes
まだお前の目から涙がこぼれ落ちるのが見えるぜ
'Cause they did not create commandments (Ooh-ooh)
だって奴らは十戒を作ったわけじゃないからな(ウー・ウー)
※「commandments(十戒)」はモーセが神から授かった律法。人間(彼ら)が神のルールを作ったわけではないのだから、神を気取るなという念押し。
When you hustle, always make it fancy (Ooh-ooh)
ハッスルする時は、いつだって派手(ファンシー)にやれよ
※成功を誇示しつつも、人間として美しく生きろというトラヴィスの美学。
The signal's far from what you can be (Ooh-ooh)
お前がなれる姿から、シグナルは遠く離れている(ウー・ウー)
'Cause air traffic controls the landing, yeah, yeah, yeah, yeah
だって着陸(ランディング)をコントロールするのは、航空管制官だからな、イェー
※人間(飛行機)がどれだけ高く飛ぼうと、最終的な着地(運命や生死)を決定するのは航空管制官(=全能の神)であるという、本楽曲で最も重要なメタファー。人間は神にはなれないという無力感と謙虚さの表れ。
[Chorus: Kid Cudi & Philip Bailey]
Hmm-hmm (Stop tryna be God)
ンー・ンー(神になろうとするのはやめろ)
Hmm-hmm, hmm-hm
ンー・ンー、ンー・ンー
Hmm-hmm (Stop tryna be God)
ンー・ンー(神になろうとするのはやめろ)
Hmm-hmm (That's not who you are)
ンー・ンー(それはお前の本来の姿じゃない)
Hmm-hmm (Stop tryna be God)
ンー・ンー(神になろうとするのはやめろ)
Hmm-hmm (That's just not your job)
ンー・ンー(それはお前の仕事じゃないんだよ)
Hmm-hmm (Stop tryna be God, God)
ンー・ンー(神になろうとするのはやめろ、神にな)
[Verse 2: Travis Scott]
Stop tryna play God Almighty
全能の神を演じるのはやめろ
Always keep your circle tight
いつだって自分のサークル(交友関係)は狭く保っておけ
I been wantin' shit my whole life
俺は人生のすべてを懸けて、このシット(成功)を望んできた
I'm warning you, better not try to play God tonight
警告しておく、今夜は神を演じようとしない方がいいぜ
If I love her, I'ma pass on her
もし俺が彼女を愛してるなら、俺は彼女をパス(手放す)するだろう
First rule of war, you find an act on her
戦争の第一法則だ、お前は彼女の演技(裏切り)を見抜くのさ
You can't win a trophy or a plaque off her
彼女からトロフィーや盾(プラック)を勝ち取ることはできない
But never turn your back on her
だが、絶対に彼女に背を向けるなよ
※ここでの「彼女(her)」は特定の女性ではなく、ヒップホップ・ゲーム(音楽業界)、あるいは「ストリート(地元)」の擬人化。音楽業界はトロフィー(グラミー賞など)をくれても真の愛はくれない。それでも自分のルーツに背を向けて神のように振る舞うなという教訓。
'Cause they did not create commandments
だって奴らは十戒を作ったわけじゃないからな
When you hustle, always make it fancy
ハッスルする時は、いつだって派手にやれよ
The signal's far from what you can be
お前がなれる姿から、シグナルは遠く離れている
'Cause air traffic controls the landing, yeah, yeah, yeah, yeah
だって着陸をコントロールするのは、航空管制官だからな、イェー
You won't succeed tryna learn me
俺を学ぼう(真似しよう)としたって成功しないぜ
Stick to the roads in my journey
俺の旅路では、敷かれた道(信念)に固執するのさ
Stay out of court when you got the attorney
弁護士を雇ったなら、法廷には近づくな
※法廷に立つようなリスクは専門家に任せ、無駄に矢面に立つな(神の領域に踏み込むな)というストリートの知恵。
She say she love, but want to really burn me
彼女は愛してると言うが、本当は俺を燃やし尽くしたい(破滅させたい)のさ
※業界の罠(燃やし尽くそうとする誘惑)に対する警戒。
[Chorus: Kid Cudi & Philip Bailey]
Hmm-hmm (Stop tryna be God)
ンー・ンー(神になろうとするのはやめろ)
Hmm-hmm, hmm-hm
ンー・ンー、ンー・ンー
Hmm-hmm (Stop tryna be God)
ンー・ンー(神になろうとするのはやめろ)
Hmm-hmm (That's not who you are)
ンー・ンー(それはお前の本来の姿じゃない)
Hmm-hmm (Stop tryna be God)
ンー・ンー(神になろうとするのはやめろ)
Hmm-hmm (That's just not your job)
ンー・ンー(それはお前の仕事じゃないんだよ)
Hmm-hmm (Stop tryna be God, God)
ンー・ンー(神になろうとするのはやめろ、神にな)
[Verse 3: James Blake]
Is it the complex of the saint
それは聖人のコンプレックス(救世主妄想)なのか?
※UKのエレクトロニック・プロデューサー/シンガーであるJames Blakeの幽玄なボーカル。「complex of the saint(メサイア・コンプレックス)」とは、自分が人々を救う特別な存在だと思い込む心理状態のこと。これが「Stop trying to be God」の核心を突いている。
That's keepin' you so, so, so still, still?
それがお前をそんなにも、じっと、じっと立ち止まらせているのか?
Is it a coat of old paint
それは古いペンキのコーティングなのか?
That's peelin' every day against our will?
俺たちの意思に反して、毎日剥がれ落ちていくそれは
※名声や虚飾(古いペンキ)が、時間と共に剥がれ落ちていく(真実の姿が露わになる)ことへの虚無感。
Is it too long since the last
最後にあれから、あまりにも長く経ちすぎたのか?
Open conversation you had? Oh, no
腹を割った会話をしてから? オー、ノー
And did you see the void in the past?
過去の虚無(ヴォイド)を見たのか?
And can you ever see it comin' back?
そして、それがまた戻ってくるのが見えるか?
Well, can you always be a step ahead of it for me?
なあ、俺のために、常にその一歩先を行ってくれないか?
Well, can you always be a step ahead of it for me?
俺のために、常にその一歩先を行ってくれないか?
※虚無(エゴの崩壊や破滅)に追いつかれないよう、常に「一歩先」を読み、地に足をつけて生きろというJames Blakeからの祈りのようなメッセージ。
[Outro: James Blake, Kid Cudi & Stevie Wonder]
Woah-oh-oh
ウォウ・オー・オー
※ここで音楽界の至宝、Stevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)によるあまりにも美しくソウルフルなハーモニカのソロ演奏が鳴り響く。神のような存在であるレジェンドが、この「神になろうとするな」という楽曲のラストを締めくくるという、完璧なカタルシス。
Woah-oh-oh
ウォウ・オー・オー
Woah-oh-oh
ウォウ・オー・オー
Woah-oh-oh
ウォウ・オー・オー
That it?
これでおしまいか?
※演奏を終えたスティーヴィー自身の肉声(「録音できたか?」という確認の声)をそのまま残している。
