Artist: Travis Scott (feat. Theophilus London & Paul Wall)
Album: Owl Pharaoh
Song Title: Dance on the Moon
概要
トラヴィス・スコットのデビュー作『Owl Pharaoh』に収録された本作は、過酷な現実(重力)から逃れ、ドラッグや成功による浮遊感(月への逃避)を描いたメランコリックかつ壮大なシンセポップ・トラップである。客演にはブルックリンのオルタナティヴ・ラッパーTheophilus Londonと、トラヴィスの同郷(テキサス州ヒューストン)の大先輩であり、スクリュード・サウンドの生ける伝説Paul Wallを迎えている。実家を追い出され、光熱費も払えなかった下積み時代の苦悩から一転、ハイファッションに身を包み、VIPルームでシャンパンを浴びる現在のロックスター的なライフスタイルが対比的に語られる。特にPaul Wallによるテキサス特有の濃密なドラッグ・カルチャー(リーン、ザナックス、ワックス等)の描写は、トラヴィスの音楽的ルーツであるヒューストンのダークな一面を色濃く反映しており、彼が月(成功の頂点)に到達してもなお、地元のストリート精神を手放していないことを証明している。
和訳
[Intro: Theophilus London]
Where the weather is warm
気候が暖かくて穏やかな場所へ
※Theophilus Londonの甘いボーカルが、厳しい現実や冷たいストリートからの逃避願望を提示する。ここでの「暖かい場所」は、月(究極の自由や安らぎのメタファー)を指している。
[Verse 1: Travis Scott]
Moonlight move when a nigga dance
俺が踊れば、月明かりも一緒に揺れる
Peep a nigga steeze from a nigga stance
俺の立ち姿から、溢れ出るスタイル(スティーズ)を見てみなよ
※「steeze」は「Style」と「Ease(余裕)」を合わせたスラング。成功を手にしたトラヴィスの、リラックスしつつも圧倒的なオーラ(スタイル)の誇示。
Had to leave home, wasn't working out
家を出なきゃならなかった、上手くいかなくてな
※トラヴィスが大学を勝手に中退してLAへ飛んだため、激怒した両親から一時的に勘当され、実家を追い出された(ホームレス状態になった)実体験への言及。
Kiss moms for me if you get a chance
もし機会があったら、俺の代わりにお袋にキスしといてくれ
Walk the streets where I stay
俺がたむろするストリートを歩いてみな
Niggas give me daps and pounds they can't wait
ダチ共は待ちきれないって感じで、俺と拳を合わせて挨拶(ダップス)してくるぜ
※地元に戻れば、今やスターとなった彼を仲間たちが熱烈に歓迎するという情景。
In the moonlight, you can't see my eyes
月明かりの下じゃ、俺の目は見えないだろ
※サングラスをしているか、あるいはウィードやドラッグで目が血走っている(または焦点が合っていない)状態を隠していることの暗示。
And when I'm off the things I can't think
それに、クスリ(things)でキマってる時は、まともに考えられねえんだ
Man, I been coastin' the coast
なぁ、俺はずっと海岸線を流してきたんだ
※テキサスからLAへ移り住み、西海岸のシーンをサバイブしてきた経歴。
Swear a young nigga done been through the most
誓って言うが、俺みたいな若造が一番過酷な道を切り抜けてきたんだぜ
Washin' my mind out with dope
ドープ(ドラッグ)で頭の中を洗い流す
Shit real, but you know a nigga can't choke
現実はマジで厳しい、だが俺がここで息を詰まらせる(失敗する)わけにはいかねえんだ
When they recognize a real nigga still
奴らが俺を、今でも変わらない「リアルな野郎」だって認めてくれるなら
Ride with me, down with me, say he a float
俺と一緒に乗れ、俺と行動を共にしろ、あいつは宙に浮いてるって言ってやれ
And all my real niggas sittin' in the VIP
そして、俺のリアルなダチ共はみんなVIP席に座ってる
Shovin' champagne through the next girl throat
隣にいる女の喉にシャンパンを流し込みながらな
※苦労を共にした地元の仲間たちと、成功の証であるVIPルームでの豪遊(フレックス)を満喫している様子。
[Chorus: Theophilus London]
Whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa
ウォウ、ウォウ、ウォウ…
Let's get high and go dance on the moon
ハイになって、月へ行って踊ろうぜ
※ドラッグによる陶酔感(High)と、音楽業界の頂点(月)に到達して成功を祝うダンスを掛けている。
Whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa
ウォウ、ウォウ、ウォウ…
We could fly and go straight to the moon
俺たちなら飛べる、月まで一直線さ
Whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa
ウォウ、ウォウ、ウォウ…
Touch the skies, and go dance on the moon
空に触れて、月の上で踊ろうぜ
Where the weather is warm and we forever live long
気候が暖かくて、俺たちが永遠に生きられる場所でな
[Verse 2: Travis Scott]
Lost in the moonlight, run through the moonlight, who knew?
月明かりの中で迷子になり、月明かりの中を走り抜ける、誰がこんな未来を予想した?
Cop lights, no lights, 'cause the bills they was overdue
パトカーのランプ、いや、明かりなんて点かなかった、光熱費を滞納してたからな
※警察に追われる(Cop lights)ようなストリートのトラブルと、ただ単に貧乏で電気代が払えず家が真っ暗だった(no lights)という過去の悲惨な生活を掛け合わせた自虐的なパンチライン。
Now a skinny-iggy nigga got fits from the runway
それが今じゃ、ガリガリの黒人がランウェイの服(ハイブランド)を着こなしてる
※「fits」はOutfit(服装)。貧しかったオタク気質の痩せた青年が、今や世界的なファッションアイコンとして高級ブランドを身に纏っているという鮮やかなコントラスト。
Takin' trips to the side of the Moon
月の裏側へトリップするんだ
Had to take trips to define my peace
自分の心の平穏を見つけるために、旅に出る(トリップする)必要があった
But I got a little feeling it might be in that tomb
だが、本当の平穏は「あの墓(死)」の中にあるんじゃないかって気も少ししてるんだ
※成功を手に入れても心は満たされず、究極の安らぎ(Peace)は死(tomb)によってしか得られないのではないかという、トラヴィス特有の暗く虚無的な死生観。
I like my weed a little cheese, roll that, that a little thick
俺のウィードは少しチーズ系(強い匂い)がいい、それを太めに巻いてくれ
※「cheese」はブルーチーズのように強烈な刺激臭を持つ高品質な大麻の品種(UK Cheeseなど)を指す。
Better watch your toke, don't wanna choke
吸い込む時は気をつけな、むせたくないだろ
※「toke」は大麻を吸い込むこと。
Better let that jack roll down your neck
ジャック(酒)を喉の奥に流し込むのがいいぜ
※「jack」はジャックダニエル(ウイスキー)。
I'm on some popular shit, come look in my eyes and get a fix
俺は最高にポピュラーなモノ(極上のドラッグ)をキメてる、俺の目を見て、お前も一発キメなよ
We just gon' cruise, hit the brews, lay back, don't worry 'bout shit
俺たちはただクルージングして、ビールを飲んで、リラックスして、細かいことは何も気にしねえ
It might get rowdy, 'cause all the freaky models wanna party
ちょっと荒れる(乱痴気騒ぎになる)かもな、イカれたモデルたちがみんなパーティーしたがってるからさ
All the freaky models in the lobby, it's so obvious that they lobbyist
ロビーにはイカれたモデルたちが勢揃いさ、あいつらが「ロビイスト」なのは見え見えだぜ
※ホテルの「ロビー(lobby)」に群がるグルーピーのモデルたちを、政治家にすり寄って利益を得ようとする「ロビイスト(lobbyist)」に例えた、非常に巧みでシニカルな言葉遊び。
Man, it can't be realer, me and my niggas in the villa
なぁ、これ以上リアルなことはねえよ、俺とダチ共がヴィラ(別荘)にいるんだぜ
She in that white dress, it can't fit her
あの子が着てる白いドレス、全然サイズが合ってねえな
Sweet not bitter, drink like you got no liver
苦くない、甘い酒だ、肝臓なんて無いみたいに飲み干しな
Hit it, and then she on the moon, my nigga
一発キメれば、あの子も月へぶっ飛んでいくのさ、兄弟
[Chorus: Theophilus London]
Whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa
ウォウ、ウォウ、ウォウ…
Let's get high and go dance on the moon
ハイになって、月へ行って踊ろうぜ
Whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa
ウォウ、ウォウ、ウォウ…
We could fly and go straight to the moon
俺たちなら飛べる、月まで一直線さ
Whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa
ウォウ、ウォウ、ウォウ…
Touch the skies, and go dance on the moon
空に触れて、月の上で踊ろうぜ
Where the weather is warm and we forever live long
気候が暖かくて、俺たちが永遠に生きられる場所でな
[Bridge: Theophilus London & Paul Wall]
Whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa
ウォウ、ウォウ、ウォウ…
Let's get high and go dance on the moon
ハイになって、月へ行って踊ろうぜ
Whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa
ウォウ、ウォウ、ウォウ…
We could fly and go straight to the moon
俺たちなら飛べる、月まで一直線さ
Whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa
ウォウ、ウォウ、ウォウ…
Touch the skies, and go dance on the moon
空に触れて、月の上で踊ろうぜ
Where the weather is warm (Paul Wall), and we forever live long (Two cups)
気候が暖かくて(ポール・ウォールだ)、俺たちが永遠に生きられる場所でな(2つのカップ)
※ヒューストンの伝説Paul Wallの登場。「Two cups(ダブルカップ)」は、発泡スチロールのカップを2つ重ねて飲むテキサス特有のドラッグ「リーン(プロメタジン・コデイン・シロップ)」の象徴。
[Verse 3: Paul Wall]
Hold up (Hold up)
ちょっと待て(待てよ)
I'm headed to the moon, 'cause the world screwed up
俺は月へ向かってる、この世界が狂ってる(スクリュード)からな
※ヒューストン発祥の音楽スタイル「Chopped and Screwed(曲のテンポを極端に遅くする手法)」の創始者DJ Screwへのオマージュ。「screw up(めちゃくちゃになる)」と掛けている。
Like the city I grew up
俺が育った街(ヒューストン)みたいにな
So I'm pouring up a co-cup, 'bout to get tore up
だから俺はコデインのカップを注いでる、完全にぶっ壊れるところさ
※「co-cup」はCodeine(コデイン)が入ったカップ。「tore up」はドラッグや酒で泥酔・酩酊すること。
Got a Xanax crushed up
ザナックス(抗不安薬)を砕いて混ぜてな
If you spill my cup, it'll get you fucked up
もし俺のカップをこぼしやがったら、お前をボコボコにしてやるぜ
※リーンは非常に高価であり(1パイント数千ドルになることも)、ストリートにおいてカップをこぼすことは最大のタブーの一つである。
Pull up to the moon with the trunk up
トランクを跳ね上げたまま、月へ車をつけるぜ
※「trunk up」は、車のトランクを開け放って巨大なウーファーやネオンを見せびらかしながら低速で走る、テキサス・ヒューストン特有のカスタムカー文化(SLAB)のフレックス。
Gettin' sucked up with three blunts rolled up
3本のブラント(大麻の葉巻)を巻きながら、女にフェラされてる
Smoke all three at the same time, call that "triple OG"
3本同時に吸うんだ、それを「トリプルOG」って呼ぶのさ
※「OG」はOriginal Gangster、または高品質な大麻(OG Kush)。3本同時に吸うという過剰な摂取を誇示している。
In the triple D, I'm full when I'm on E, you don't know nothing 'bout me
トリプルD(ダラス)じゃ、俺はエクスタシー(E)をキメて満たされてる(Full)、お前は俺のことなんて何も分かっちゃいねえよ
※「triple D」はテキサス州ダラス(Dallas)の愛称。車のガソリンメーターが「E(Empty)」でも自分が「Full(満たされている、あるいはドラッグで満腹)」であるという言葉遊びと、「E(エクスタシー)」を掛けている。
Backwood feel with a Compton tree
コンプトン産のウィード(ツリー)を、バックウッズ(葉巻)で味わう
※西海岸(コンプトン)の極上の大麻を、ラッパー御用達の粗削りなタバコの葉(Backwoods)で巻いて吸うストリートの流儀。
Gettin' full of that oil, I got gas and grease
ハシシオイルで満タンだ、俺には極上のガス(ウィード)とグリースがある
※「gas」は強烈な匂いのする大麻。「oil」や「grease」は濃縮された大麻成分(ダブやワックス)を車(SLAB)の燃料や整備油に見立てたテキサスらしいメタファー。
Three lines poured up in the big East
ビッグ・イーストで3ライン(約3オンスのシロップ)を注ぐ
※「lines」は哺乳瓶などで計量するシロップの単位。通常の摂取量より多い致死量スレスレの量を飲んでいる。
Baptized a blunt, but I ain't no priest
ブラント(葉巻)に洗礼を施す、俺は牧師じゃねえけどな
※「Baptize a blunt(ブラントに洗礼を施す)」は、大麻を巻いた葉巻の外側にリーン(シロップ)や液状のPCPなどを塗ってから火をつける、極めて危険で強力な吸引方法。聖なる儀式に例えるヒューストンのダークなユーモア。
Peach Ciroc with a Norco, piece of hash and my trippy sticks
ピーチ味のシロック(ウォッカ)、ノーコ(鎮痛剤)、ハシシの欠片、それに俺のトリッピースティック(Vapeペン)
OG wax on a bone with a skillet, me and Paskel been doin' that shit
スキレット(鉄板)を使ってボーン(パイプ)でOGワックスを吸う、俺とパスケルはずっとこれをやってきたんだ
※大麻ワックスを加熱して吸引する「ダビング(dabbing)」の描写。「Paskel」はPaul Wallの昔からの地元の仲間(ヒューストンのラッパー)。
Def' rockin' link, what you know about this?
間違いなく極太のチェーンを揺らしてる、お前らこれの何が分かる?
Baby Bash came through with the kush assist
ベイビー・バッシュが極上のクッシュ(大麻)でアシストしに来てくれたぜ
※Baby Bashは、Paul Wallとも親交の深いヒューストン拠点のベテランラッパー(「Suga Suga」などで有名)。
Percocet ten and a Soma Twist on the moon
パーコセット10ミリと、月の上でのソーマ・ツイスト
※「Percocet」は強力なオピオイド系鎮痛剤。「Soma」は筋弛緩剤。これらをカクテルにして服用する、非常に危険な薬物乱用の実態。
Gettin' higher than a bitch, and I'm doin' my dance
ビッチより高く(ハイに)ぶっ飛んで、俺は自分のダンスを踊るのさ
※大量のドラッグのミックスによって完全に限界突破した(月に到達した)状態で、スローモーションのように踊り続けるという、スクリュード・カルチャーの極致。
[Chorus: Theophilus London]
Whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa
ウォウ、ウォウ、ウォウ…
Let's get high and go dance on the moon
ハイになって、月へ行って踊ろうぜ
Whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa
ウォウ、ウォウ、ウォウ…
We could fly and go straight to the moon
俺たちなら飛べる、月まで一直線さ
Whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa, whoa
ウォウ、ウォウ、ウォウ…
Touch the skies, and go dance on the moon
空に触れて、月の上で踊ろうぜ
Where the weather is warm and we forever live long
気候が暖かくて、俺たちが永遠に生きられる場所でな
