Artist: Kendrick Lamar (feat. Dody6)
Album: GNX
Song Title: hey now
概要
アルバム『GNX』の中盤を飾る「hey now」は、東LA出身のラッパーDody6をフィーチャーし、西海岸特有のバウンシーなGファンクと、Drakeとの歴史的ビーフを制したケンドリック・ラマーの冷酷な勝者の視点が交錯する極めて危険なバンガーだ。彼は莫大な富や精神的平穏(仏陀や円)を誇示する一方で、「Black Noah(黒きノア)」として箱舟を導きつつ「GOAT(史上最高)を絞め殺した」と強烈なパンチラインを放つ。Jack DorseyやX-MENなどの多彩なネームドロップを散りばめ、終盤ではコンプトンのメインストリートであるローズクランズ通りに宇宙船を見るという彼特有のSF的メタファーへと回帰する。超越的な精神世界から一転、後半のDody6による生々しいストリートの暴力描写へと接続される構成は、考察班を唸らせる完璧な仕上がりとなっている。
和訳
[Intro: Kendrick Lamar]
Damn, baby
クソッ、ベイビー
I like it
気に入ったぜ
Damn
クソッ
Hmm
フーム
[Verse 1: Kendrick Lamar]
Hey now, say now, I'm all about my yen
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ、俺は円(金)のことしか頭にねえ
※"yen"(日本の通貨である「円」)は「切望する(yearn)」や「金」を意味するダブルミーニング。後述の仏陀と合わせて東洋的な精神世界や禅の境地を匂わせている。
Big face Buddha, get my peace from within
ビッグ・フェイスの仏陀、俺は内面から平和を手に入れる
※"Big face"は通常100ドル札(ベンジャミン・フランクリンの大きな顔)を指すが、ここでは仏陀の顔(大仏)と掛け合わせている。莫大な富と精神的な平穏(内なる平和)という相反するものを同時に掌握している王者の余裕の表れである。
Sending kites to all my dirties in the pen
刑務所(ムショ)にいる汚れたダチ全員に手紙(カイト)を送るぜ
※"kite"は刑務所内で受刑者同士や外の人間とやり取りする手紙やメッセージを指すストリート・スラング。"pen"はpenitentiary(刑務所)。成功してもなお、塀の中にいる地元の仲間たちを決して忘れないという強固な忠誠心。
Let the honorary walk for the win, for the win
名誉ある歩みをさせてやれ、勝利のために、勝利のためにな
You crash out, then you better break the backboard
暴走(クラッシュ・アウト)するなら、バックボードをぶっ壊すくらいの覚悟を持てよ
※バスケットボールの強烈なダンクシュートでバックボードを破壊する情景と、ストリートでの後先考えない暴力行為(Crash out)を掛けている。「やるなら中途半端じゃなく、取り返しのつかないレベルまで徹底的にやれ」という警告。
I got friends, hopin' that they make the tabloids
俺にはダチがいる、奴らがタブロイド紙のトップを飾る(デカい事件を起こす)のを望んでるような奴らがな
You know the last one figured he was Magneto
最後に相手にした奴は、自分のことをマグニートーだと思い込んでたんだ
※"last one"は明らかにビーフの相手であったDrakeを指している。Magneto(マグニートー)はアメコミ『X-MEN』のヴィランであり、金属(銃や権力)を操る強力なミュータントだが、最終的にはプロフェッサーX(精神を操る側=ケンドリック)に敗北する運命にあるという極めて高度なメタファーだ。
You play God, you gon' get what you ask for
神の真似事なんかしてたら、痛い目を見る(自業自得だ)ぜ
※ヒップホップ界で絶対的な権力を振りかざし、「6 God」として神のように振る舞っていたDrakeの傲慢さに対する痛烈な批判。
We got the same twenty-four, what you mad for?
誰だって1日は同じ24時間だ、お前は何をそんなに怒ってるんだ?
※ロサンゼルスの英雄である亡きコービー・ブライアントの背番号「24」と1日の時間(24時間)を掛けている。同じ時間を与えられているのに結果が出ない(または負けた)ことを他人のせいにするな、という成功者の冷酷な説教。
I put a square on his back like I'm Jack Dorsey
ジャック・ドーシーみたいに、あいつの背中に四角い的(Square)を貼り付けてやったよ
※Jack DorseyはTwitterの創業者であり、モバイル決済サービス「Square(現Block)」の創業者。「Square」と「背中の的(標的)」を見事に掛け合わせた、Geniusでも高く評価されているパンチライン。ビーフにおいてDrakeを完全に「標的」としてロックオンした事実を誇示している。
It's high beams if I make a public appearance
俺が公の場に現れれば、ハイビーム(スポットライト)が眩しいぜ
Go back to hidin' 'cause I'm not too friendly with niggas
また隠遁生活に戻るよ、俺はお前らと馴れ合うつもりはねえからな
One one thousand, two one thousand, four
1、2、4
※かくれんぼのカウント。あえて「3」を飛ばすことで、「3(=Drakeがよく用いるトロントのエリアコードや愛着のある数字)」を消し去る、あるいは「Drakeを視界にも入れていない」というディスだとReddit等で考察されている。
The Black Noah, I just strangled me a goat
黒きノアの箱舟さ、俺は今まさに一匹のヤギ(GOAT)を絞め殺してきたところだ
※"Noah"は旧約聖書のノアの方舟を指す。カルチャーを救うために動物(ラッパーたち)を船に乗せる立場でありながら、その中の一匹である「GOAT(Greatest Of All Time=史上最高と自称する者、すなわちDrake)」を容赦なく絞め殺したという、残酷でユーモアのある最強の宣言。
I walked in with a therapeutic flow
セラピーのような癒やしのフロウを引っ提げて入ってきたぜ
Put a few hundred up, let 'em go, let 'em go
数百万円を賭けて、放ってやれ、放ってやるのさ
[Chorus: Kendrick Lamar]
Hey now, say now
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ
Hey now, say now
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ
Hey now, say now
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ
Hmm, hey now, say now
フーム、ヘイ・ナウ、セイ・ナウ
Hey now, say now, I'm all about my yen
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ、俺は円(金)のことしか頭にねえ
Big face Buddha, get my peace from within
ビッグ・フェイスの仏陀、俺は内面から平和を手に入れる
Sending kites to all my dirties in the pen
刑務所にいる汚れたダチ全員に手紙を送るぜ
Let the honorary walk for the win, for the win
名誉ある歩みをさせてやれ、勝利のために、勝利のためにな
Hey now, say now
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ
Hey now, say now
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ
Hey now, say now
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ
Hey now, say now
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ
[Verse 2: Kendrick Lamar]
Hey now, say now, I done slid on they backstreet
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ、あいつらの裏通りにスライド(襲撃)してやったぜ
Heavy on the Parmesan, every day tax season
パルメザン(チーズ=金)がどっさりだ、毎日が確定申告の季節みたいにな
※"Parmesan"(チーズ)は「金」のスラング。あまりに大金が入りすぎるため、毎日が税金の支払いに追われるタックス・シーズンのようだと皮肉っている。
What the fuck you wearin'? Bro, it's tacky
お前、一体何着てんだ? ブロ、ダサすぎるぜ
※ファッションセンスに対するディス。Drakeの私服やスタイリングがしばしばネットでミーム化され「ダサい」と揶揄されることへの言及。
Niggas layin' on they deathbed tryna match me
死の床に横たわりながら、奴らは俺と張り合おうとしてやがる
※キャリアが完全に死に体(Deathbed)になっているにもかかわらず、未だにケンドリックに敵対しようとするラッパーたちの哀れな姿を描写している。
Oh my God, I'm 'bout to do the fool
オー・マイ・ゴッド、俺はバカやって暴れちまいそうだ
They be screamin' out P, but they resume is boof
奴らは「P(プッシュ/プレッシャー)」と叫んでるが、履歴書はブーフ(低品質・嘘っぱち)だぜ
※"P"はGunnaの大ヒット曲で広まったスラング「Pushin P(リアルでクールであること)」を指すが、同時にギャングの所属(Piruなど)のアピールも意味する。"boof"は質の悪い大麻やフェイクを意味し、「リアルを気取っているが、経歴は偽物だ」という批判。
Switch both lanes, the engine sound like the zoo
両方の車線を切り替える、エンジンの音はまるで動物園だな
※高級スポーツカーのエンジン音が、猛獣の咆哮のように激しいことを「動物園(zoo)」と表現している。
Need a fee just to breathe, bitch, I can't talk to you
息をするのにも金がかかるんだ、ビッチ、お前と話してる暇はねえよ
It's the Ben Frank murderer
ベン・フランクの殺人鬼のお出ましだ
※「ベン・フランク」は100ドル札に描かれているベンジャミン・フランクリンのこと。大金を躊躇なく散財する(札束を殺す)ほどの莫大な富を表現している。
Mister I ain't heard of ya
「お前のことなんて聞いたこともねえ」ミスターさ
Gulf streams, back to back, flyin' through the turbulence
ガルフストリーム(プライベートジェット)が立て続けに、乱気流の中を飛んでいく
Who is he? Free lunch, hmm, craft services
あいつは誰だ? 無料のランチか、フーム、クラフトサービス(現場のケータリング)だな
※敵対するラッパーたちを、自分にとって「簡単に食える無料のメシ(Free lunch)」や「現場の軽食」程度にしか見ていないという王者の徹底的な侮蔑。
Throw your ass out this rental if I smell nervousness
少しでもビビッてる匂いがしたら、このレンタカーからお前を蹴り出してやるよ
Hey now, say now, let me pop my shit
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ、俺に言いたいことを言わせろ(調子に乗らせろ)
Water down my wrist, arm around my bitch
手首には水(ダイヤモンド)、腕の中には俺のビッチ(女)
It's a green light, don't get out of bounds, I'ma blitz
青信号(ゴーサイン)が出てるぜ、線を越えるなよ、ブリッツ(急襲)を仕掛けるからな
※アメフトの戦術「ブリッツ(守備陣形からの猛チャージ)」を引用。少しでも境界線を越えれば即座に破滅的な攻撃を下すという警告。
It's a bird, it's a plane, no, it's all blue strips
鳥だ、飛行機だ、いや、すべてブルー・ストリップ(100ドル札)だぜ
※スーパーマンの有名な登場口上「鳥だ!飛行機だ!いやスーパーマンだ!」をパロディ化し、空を舞うのがヒーローではなく「新札の100ドル札(青い偽造防止帯が入っていることからblue stripsと呼ばれる)」であるという、成金的なフレックス(自慢)。
Nigga, what?
ニガ、なんだって?
[Chorus: Kendrick Lamar]
Hey now, say now
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ
Hey now, say now
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ
Hey now, say now
ヘイ・ナウ、セイ・ナウ
Hmm, hey now, say now
フーム、ヘイ・ナウ、セイ・ナウ
I'm way too important
俺はあまりにも重要すぎる存在だ
I'm way too important
俺はあまりにも重要すぎる存在だ
I'm way too important to ever let you slide on me again
俺は重要すぎる存在なんだ、二度とお前らを俺の領域に踏み込ませたりしない
[Bridge: Kendrick Lamar & Sam Dew]
Startin' to see spaceships on Rosecrans (Startin' to see spaceships on Rosecrans)
ローズクランズ通りで宇宙船が見え始めてきた(ローズクランズ通りで宇宙船が見え始めてきた)
※Rosecrans(ローズクランズ)は、ケンドリックの地元であるコンプトンを東西に貫く主要道路。エイリアンや宇宙船のメタファーは彼の初期の作品から度々登場し、ストリートの過酷な現実からの「超越」や「非日常へのトリップ」を意味する。
I seen the aliens hold hands (I seen the aliens holding hands)
エイリアンたちが手をつないでるのを見たぜ(エイリアンたちが手をつないでるのを見た)
They wanna see me do my dance (They wanna see me do my dance)
奴らは俺が踊るのを見たがってるんだ(奴らは俺が踊るのを見たがってる)
※ビーフの勝利を決定づけた「Not Like Us」のMVでのアイコニックなCウォーク(ダンス)や、世界中が彼の次の一挙手一投足を注視している現状を指している。
I let 'em watch me do my dance
あいつらに俺のダンスを見せつけてやるよ
[Verse 3: Dody6 & Kendrick Lamar]
Who the fuck I feel like? I feel like Joker
俺が誰の気分かって? ジョーカーの気分さ
※ここからLAのアンダーグラウンドラッパー、Dody6のヴァース。混沌と暴力を体現するバットマンのヴィラン「ジョーカー」に自らを重ねている。
Harley Quinn up in the cut with a blower
ハーレイ・クインが裏でブローワー(銃)を構えてるぜ
※"blower"は銃を意味するスラング。ジョーカーの相棒であるハーレイ・クインを引き合いに出し、狂気に満ちた女性パートナーが武装して控えている危険な状況を描写している。
Ayy, shit get spooky, every day in October
エイ、ヤバいことになってきたな、10月の毎日がハロウィンみたいだ
My torpedo even jumped out on smokers, J-Cat
俺の魚雷(ヒットマン)はヤク中相手でも飛び出していくぜ、J-Cat(イカれた奴)め
※"torpedo"は殺し屋や鉄砲玉を指すスラング。"J-Cat"はカリフォルニアの刑務所用語で、精神に異常をきたした受刑者を指す。
Ayy, we mean muggin' niggas, Dody too important
エイ、俺たちはガン飛ばして歩く、Dodyは重要すぎる存在だからな
If they talkin' 'bout playin' ball, me and my team gon' get to scorin'
奴らがボール遊び(抗争)の話をしてるなら、俺と俺のチームで得点(キル)を重ねてやるよ
※"playin' ball"(バスケをする)は「銃撃戦をする、抗争に参加する」ことの隠語。"scorin'"(得点する)は相手を撃つことを意味するストリート・スピーチ。
If they talkin' 'bout playin' ball, they can take it up with Jordan
奴らがボール遊びの話をしてるなら、ジョーダンと直接やり合えばいい
※マイケル・ジョーダンの圧倒的な無敵ぶりと、自分たちのチームの圧倒的武力を重ねている。あるいは「死んでマイケル・B・ジョーダン(または亡くなった人物)に会いに行け」という殺害予告の可能性もある。
It's bald heads in the Heckler for all endorsements
すべての契約(報復)のために、ヘックラー(銃)を持ったスキンヘッドどもが控えてるぜ
※"Heckler"はドイツの銃器メーカー「ヘッケラー&コッホ (H&K)」のこと。スキンヘッドのギャングメンバーが重武装して出撃の準備を整えているという生々しい暴力の描写。
Eenie, meenie, miny, moe, I'm tryna tag a nigga toe
どれにしようかな(イーニー・ミーニー・マイニー・モー)、あいつの足の指にタグ(死体標識)を付けてやるよ
I'm aggressive on the beat and real life, niggas know
俺はビートの上でも現実世界でもアグレッシブだ、みんな知ってるだろ
Ayy, I tatted up my body in the pen', level four
エイ、ムショで全身にタトゥーを彫ったぜ、レベル4(最高警備施設)でな
※Dody6のリアルな犯罪歴を誇示するライン。「レベル4」はカリフォルニア州の刑務所システムにおける最も危険な受刑者が収容される最高警備レベルのヤードを指す。
Ayy, I sharpened up a knife and came home to a blow
エイ、ナイフを研ぎ澄まして、コカイン(ブロー)のある家へ帰ってきたのさ
My bitch gon' get to tweakin' like she playin' with her nose
俺のビッチは鼻で遊んでる(コカインを吸ってる)みたいにイカれちまう
Lil' brodie 'bout to crash, my young niggas be on go
弟分が今にも暴走しそうだ、俺の若い衆はいつでも出陣(オン・ゴー)の準備ができてる
I'm a different type of trophy, baby girl, I'm rose gold
俺は一味違うトロフィーだぜ、ベイビー・ガール、俺はローズゴールドさ
Me and Dot get to slidin', put 'em in a choke hold
俺とドット(ケンドリック)で襲撃に行く、奴らをチョークスリーパーで締め落としてやるよ
Bitches actin' like some niggas, niggas actin' like some hoes
ビッチどもは男みたいに振る舞い、男どもは娼婦(ホーズ)みたいに振る舞いやがる
Ayy, I jumped out that pen', then I jumped up in a Ghost
エイ、ムショから飛び出して、そのままゴースト(ロールス・ロイス)に飛び乗ったのさ
I'm the hottest type of nigga, see my face, then he froze
俺は最高にホットな男だ、俺の顔を見て、あいつは凍りついたぜ
All that shit he was talkin', found out he not that bold
あいつが散々ほざいてたこと、大して肝が据わってないってことがバレたな
Okay, this shit like forty, that's a dub, okay, let's add it up
オーケー、これは40みたいなもんさ、つまりダブ(20)だ、よし、計算してみようぜ
※麻薬の取引やストリートでの金の計算に関する隠語。「dub」は20ドル分のドラッグ、または20インチのリムなどを指す。
Baby ass fat, can you do it? Can you back it up?
ベイビーのケツはデカい、ヤれるのか? バックアップ(ケツを振る/証明する)できるのか?
Kickflip a nigga, I got Tech Decks
あいつをキックフリップ(吹っ飛ばす)してやる、俺にはテックデッキ(指スケ)があるからな
※指スケボーの「Tech Deck」と、TEC-9などの銃器(Tech)や重武装を掛けたストリート特有のユーモア。
And it ain't shit for me to call and get your chin checked
電話一本であいつの顎を砕く(制裁を下す)なんて、俺にとっちゃ造作もないことさ
Tell 'em, "Dody did that"
奴らに伝えておけ、「Dodyがやったんだ」ってな
