Artist: Kendrick Lamar
Album: GNX
Song Title: squabble up
概要
アルバム『GNX』の熱狂を牽引するバンガー「squabble up」は、西海岸特有のバウンシーなビートに乗せ、ヒップホップシーンに対するケンドリック・ラマーの容赦ない闘争心を剥き出しにした一曲だ。タイトルの「Squabble up」とは西海岸のスラングで「ステゴロでやり合う(素手の喧嘩)」を意味する。1983年のDebbie Debによるエレクトロ・クラシック「When I Hear Music」を大胆にサンプリングし、LAのストリート・パーティーの伝統へ深い愛と敬意を示すと同時に、ネット上での中傷や虚構のギャングスタ像に逃げ込むフェイクなラッパーたちへ強烈な警告を放っている。Drakeとの歴史的ビーフを制した後の圧倒的な勝者の余裕を見せつけながら、自身のクラシック「Money Trees」の引用や、深いメタファーを随所に張り巡らせた本作は、ファンの深い考察(GeniusやRedditでの議論)を呼ぶ『GNX』のハイライトである。
和訳
[Intro: Kendrick Lamar]
God knows
神は知ってるぜ
I am reincarnated
俺が生まれ変わったことを
I was stargazin'
星を眺めてたんだ
Life goes on, I need all my babies (Gyah, gyah)
人生は続く、子供たちは全員俺のそばに必要だ(ギャー、ギャー)
※"stargazin'"には自身の過去の栄光を振り返る意味や、トラヴィス・スコットの同名曲へのオマージュの可能性が含まれる。また「子供たち(babies)」は実子のみならず、彼が影響を与える次世代のラッパーやリスナー全体を指し、新たなフェーズ(reincarnated)に入った自身の責任とシーンを牽引する覚悟を宣言している。
[Verse 1: Kendrick Lamar & Debbie Deb]
Woke up lookin' for the broccoli
目覚めてブロッコリーを探す
※"broccoli"は現金や大麻を指すスラングだが、メガヒットとなったディス曲「Not Like Us」での一節("Tell me where the broccoli at")と意図的にリンクさせている。また、大麻文化に浸るシーン全体の状況を描写している。
High-key, keep a horn on me, that Kamasi
マジな話、常にホーンを持ってるぜ、カマシみたいにな
※"horn"は銃(チャカ)のメタファーであり、同時にLA出身の世界的なジャズ・サックス奏者Kamasi Washington(カマシ・ワシントン)の「ホーン(サックス)」と掛けた見事なダブルミーニング。カマシはケンドリックの傑作『To Pimp A Butterfly』の制作にも深く関わった盟友である。
IP, ownership, the blueprint is by me
IP(知的財産)、所有権、その青写真を引いたのは俺だ
※原盤権や知的財産権を自身で所有することの重要性を説き、搾取されるラッパーたちに対してビジネス面でも王者であることを示唆している。
Mr. Get Off, I get off and mop feet
ミスター・ゲット・オフ、俺はぶちかまして足元を拭き取る
※"get off"には「銃を撃つ」「ステージでぶちかます」「絶頂に達する」などの意味がある。"mop feet"(血をモップで拭き取る=敵を完全に始末して証拠を消す)というギャングスタ・ラップ的な表現を用いつつ、圧倒的なスキルでシーンを制圧する様を描く。
When I hear music, it makes me dance
音楽を聴くと、踊りたくなる
You got the music, now is your chance
音楽を手にしたんだ、今がお前のチャンスだ
※1983年のDebbie Debのエレクトロ/フリースタイル楽曲「When I Hear Music」からの直接のサンプリング。LAのローラーリンクやパーティカルチャーで深く愛されてきたクラシックを引用することで、西海岸の伝統的なパーティー・バイブスを楽曲に注入している。
A yee nigga couldn't try me in the tri-state
どこぞの馬の骨がトライステートで俺に挑もうなんて無理な話だ
※"yee nigga"は価値のない、ダサい奴を指すローカルスラング。"tri-state"(ニューヨーク・ニュージャージー・コネチカットの3州エリア、または広範な地域)においても自分の覇権は揺るがないという絶対的な自信の表れ。
Buddy pass, bet I get him splashed 'til he hydrated
仲間からのパス、あいつが水浸しになるまで銃弾(スプラッシュ)を浴びせてやるぜ
Bounce out, know he spook town, eyes dilated
車から飛び出す、あいつの地元は恐怖のどん底、瞳孔は開きっぱなしだ
I got the money and the power both gyratin'
金と権力、その両方が俺の周りで渦巻いてるぜ
[Chorus: Kendrick Lamar]
I feel good, get the fuck out my face
気分は最高だ、俺の目の前から失せな
Look good, but shе don't got no taste
見た目はいいが、あの女にはセンスがねえ
I walk in, walked out with the safе
中に入って、金庫ごと持ち去ってやったぜ
Mando, let me know what the play
マンドー、今日の作戦を教えてくれ
※"Mando"は身内の仲間やストリートのコネクションを指す名称、あるいは「Mandatory(必須・絶対)」のスラングとしての使用と考えられる。どんな状況でも確実に獲りに行く姿勢を示す。
[Verse 2: Kendrick Lamar]
What the fuck?
なんだって?
I got hits, I got bucks, I got new paper cuts
ヒット曲もある、金もある、札束で切った新しい切り傷もあるぜ
I got friends, I got foes, but they all sitting ducks
仲間もいる、敵もいる、だが奴らは全員無防備なカモだ
Hit his turf and get crackin', double back like a deluxe
奴のシマを襲撃してひと暴れ、デラックス版みたいに二度戻ってやるよ
※"double back"は一度襲撃した後に、油断した相手を再び強襲するストリートの冷酷な戦術。「アルバムのデラックス版」がオリジナル版の後に追加リリースされることと掛けた、Reddit等で絶賛されている秀逸なパンチライン。
Fifty deep, but it ain't deep enough
50人の大所帯、だがそれじゃ深さが足りねえな
Fuck a plea, there he go, beat him up
命乞いなんてクソ食らえだ、あいつが来たぞ、ぶちのめせ
Fallin' from a money tree and it grow throughout the months
マネー・ツリー(金のなる木)から落ちて、それは数ヶ月かけて育っていく
※自身の2012年の大クラシック「Money Trees」のセルフオマージュ。当時はフッドの日陰で金を渇望していた若者が、今や自らが巨大な「金のなる木」となり、その恩恵や影響力が長期にわたってシーン全体に波及していく様子を示している。
Spit a loogie at the camera, speed off, yeah, it's us
カメラにツバを吐き捨てて、車を飛ばす、ああ、俺たちのことさ
[Chorus: Kendrick Lamar]
I feel good, get the fuck out my face
気分は最高だ、俺の目の前から失せな
Look good, but she don't got no taste
見た目はいいが、あの女にはセンスがねえ
I walk in, walked out with the safe
中に入って、金庫ごと持ち去ってやったぜ
Mando, let me know what the play
マンドー、今日の作戦を教えてくれ
[Post-Chorus: Kendrick Lamar]
Squabble up, squabble up
ステゴロだ、立ち上がれ
Squabble up, squabble up
拳で語れ、立ち向かえ
※"Squabble"は西海岸のスラングで「殴り合いの喧嘩」。銃やネット上のゴシップに頼るのではなく、素手での正々堂々とした決着を促すことで、SNSで暗躍する敵対者たちへの痛烈な皮肉と直接対決の要求を突きつけている。
Squabble up (Mm, mm), squabble up (Mm, mm)
ステゴロだ(ムームー)、立ち上がれ(ムームー)
Squabble up (Mm, mm), squabble up
拳で語れ(ムームー)、立ち向かえ
[Bridge: Kendrick Lamar]
Hol' up (Hol' up)
待てよ(待てよ)
Where you from? (Where you from?)
お前どこ出身だ?(どこ出身だ?)
※LAのギャング文化において、相手の所属を尋ねる「バンギング」の常套句。この問いへの返答次第では即座に流血の事態に発展する、ストリートにおける究極の緊張感を孕んだ言葉。
Bye, bitch (Bye, bitch)
じゃあな、ビッチ(じゃあな、ビッチ)
I'm finna go dumb (Finna go dumb)
今からブチ上がるぜ(ブチ上がるぜ)
Sideways (Sideways)
斜に構えて(斜に構えて)
Bunk skunk (Bunk skunk)
粗悪なスカンク(低品質のウィード)(粗悪なウィード)
Fever (Fever)
熱狂(熱狂)
I'm on one (I'm on one)
俺はハイになってるぜ(ハイになってるぜ)
[Verse 3: Kendrick Lamar]
Thunk, thunk, thunk, thunk, thunk, baby rockin' it
ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ベイビーがロックしてる
Quid pro quo, what you want? 'Cause I'm watchin' it
見返り(クイド・プロ・クオ)、何が欲しいんだ?俺は監視してるぜ
Work on the floor, let me know if you clockin' it
フロアで働きな、稼いでるなら教えてくれ
Brodie won't go, but I know that he poppin' it
兄弟は行かないが、あいつがブッ放すのは知ってる
It was wolf tickets on sale 'til I silenced it
俺が黙らせるまで、ウルフ・チケットが売りに出されてたな
※"sell wolf tickets"は「ハッタリをかます」「口先だけで脅す」という古いストリート・スラング。Drakeをはじめとする対立者たちがネット上で見せかけの脅威を振りかざしていたが、自身の楽曲群による圧倒的な実力行使によって完全に沈黙させられた事実を突きつけている。
Pipe down, young, these some whole other politics
黙ってろ若造、これは全く別次元のポリティクスなんだよ
Bitch with him and some bitch in him, that's a lot of bitch
奴の隣にはビッチ、奴の中にもビッチ、ビッチだらけじゃねえか
※直訳すれば「女性を連れ、自身の中にも女々しさがある」。Drakeが女性ファンに媚びるスタイルや、その背後にあるゴーストライター疑惑など、彼のアーティストとしての本質的な「軟弱さ」や「作られた虚像」を揶揄する、考察班の間で高く評価されているパンチライン。
Don't hit him, he got kids with him, my apologies
奴を撃つな、子供と一緒だぞ、すまねえな
※「子供がいる前では手を出さない」というストリートの最低限の掟。皮肉にも、過去にDrakeに隠し子がいることを暴いたPusha Tの「The Story of Adidon」や、ケンドリック自身の「Meet the Grahams」での子供への直接的な言及という歴史的文脈に連なっている。
Ghetto child, it was Blacky Milds with the Smirnoff
ゲットーの子供、スミノフと一緒にブラック・アンド・マイルド(葉巻)をやってた
Yeehaw, we outside, whoadie 'bout to kill him off
イーハー、俺たちは外にいるぜ、ダチがあいつを殺ろうとしてる
Blaps on blaps, it's a fact, this a brick of raw
ブラップス(バンガー)の連続、事実だ、これは純度100%の麻薬さ
※"Blap"は西海岸で「ヤバい曲、バンガー」を意味する。「俺の楽曲は混ぜ物なしの純度の高いコカイン(brick of raw)のように強烈で中毒性がある本物だ」という自負。
Tell me why the fuck you niggas rap if it's fictional?
なんでお前ら、フィクション(作り話)なのにラップなんてしてんだ?
※ヒップホップにおける「リアル」の喪失への強烈な批判。実際のギャング・ライフや過酷な現実を経験していないにもかかわらず、流行に乗ってストリートの物語を捏造するフェイク・ラッパーたち全体への痛烈な問いかけ。
Tell me why the fuck you niggas fed if you criminal?
なんでお前ら、犯罪者のくせにサツに寝返ってんだ?
※"fed"は連邦警察を意味し、司法取引で仲間を売るラッパー(Gunnaなどの名前がしばしば議論の対象になる)や、ストリートの掟を破る者たちへの軽蔑。「ストリートを自称しながら警察の手先になる」という自己矛盾を突く、極めて冷酷なライン。
"Ayy, Dot, can I get a drop?" I'm like, "Nigga, nah"
「エイ、ドット(ケンドリック)、ドロップ(宣伝や音源)をもらえないか?」俺は「無理だな」って返す
Ace boon coon from the Westside to Senegal
ウェストサイドからセネガルまで、エース・ブーン・クーン(親友)だ
※"Ace boon coon"はアフリカ系アメリカ人の間で「一番の親友」を意味する古典的なスラング。コンプトン(西海岸)のブラック・コミュニティのルーツが、遠く離れたアフリカ(セネガル)まで繋がっているという、ディアスポラとしての強固な連帯とブラック・プライドを示している。
It's a full moon, let the wolves out, I been a dog (Ah)
満月だ、狼たちを放て、俺はずっと犬(トップドッグ)だったんだ(アー)
※古巣であるTDE(Top Dawg Entertainment)出身としての自身のアイデンティティ(Dog)と、満月の夜に覚醒する狼(狂気や野性)を対比させている。ついに彼の中に眠っていた猛獣が完全に解き放たれたことを宣言してヴァースを締めくくる。
[Chorus: Kendrick Lamar]
I feel good, get the fuck out my face
気分は最高だ、俺の目の前から失せな
Look good, but she don't got no taste
見た目はいいが、あの女にはセンスがねえ
I walk in, walked out with the safe
中に入って、金庫ごと持ち去ってやったぜ
Mando, let me know what the play
マンドー、今日の作戦を教えてくれ
[Post-Chorus: Kendrick Lamar]
Squabble up, squabble up
ステゴロだ、立ち上がれ
Squabble up, squabble up
拳で語れ、立ち向かえ
Squabble up (Mm, mm), squabble up (Mm, mm)
ステゴロだ(ムームー)、立ち上がれ(ムームー)
Squabble up (Mm, mm), squabble up
拳で語れ(ムームー)、立ち向かえ
