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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Mr. Morale - Kendrick Lamar & Tanna Leone 【和訳・解説】

 

Artist: Kendrick Lamar & Tanna Leone

Album: Mr. Morale & The Big Steppers

Song Title: Mr. Morale

概要

本作「Mr. Morale」は、アルバムのタイトルにも冠されたKendrick Lamarの自己解放的なペルソナが、自身の子供たち(長男エノクと長女ウジ)に向けて語りかける、世代間トラウマの解体を試みる極めて重要なトラックである。Pharrell Williamsによる不穏かつ推進力のあるビートに乗せ、Kendrickは黒人コミュニティに蔓延する「ブラック・トラウマ」の連鎖を紐解く。R.ケリーが加害者となった背景にある彼自身の被虐待経験や、タイラー・ペリーが黒人の痛みをエンターテインメントとして消費している構造を痛烈に指摘し、負の連鎖を断ち切るために自らが「犠牲」となって治癒を始めることを宣言する。曲の終盤では思想家エックハルト・トールが「ペインボディ(苦痛の体)」の概念を語り、アルバムのクライマックスである次曲「Mother I Sober」へと直結する深い精神的洞察に満ちたマスターピースである。

和訳

[Intro: John Shango & Kendrick Lamar]

It was one of the worst performances I've seen in my life
私の人生で見てきた中で、最悪のパフォーマンスの一つだった
※YouTubeのボクシング解説者John Shangoの音声をサンプリング。Kendrickがこれまで世間に向けて演じてきた「完璧な救世主」としての偽りの姿(パフォーマンス)を、自ら冷笑的に振り返っていると解釈できる。

I couldn't sleep last night because I felt this shit–
昨夜は眠れなかったよ、こいつを感じてな——

Ooh, ah, ooh, ah
ウー、アー、ウー、アー

Ooh, ah, ah, ooh, ah, ah, ah, ah, ah
ウー、アー、アー、ウー、アー、アー、アー、アー、アー

Yeah, yeah, yeah, yeah, yee
イェー、イェー、イェー、イェー、イー

[Verse 1: Kendrick Lamar]

Enoch, your father's just detoxed, my callin' is right on time
エノク、お前の親父はデトックスを終えたばかりだ、俺の天命はまさに絶好のタイミングさ
※「Enoch(エノク)」はKendrickの長男の名前。セックス依存やトラウマなどの「毒」を抜き(デトックス)、父親として、そして表現者として浄化された状態で息子に語りかけている。

Transformation, I must had a thousand lives
変容(トランスフォーメーション)だ、俺はきっと千回の人生を生きてきたに違いない

And like three thousand wives
それに3千人の妻がいたようにも感じるぜ
※前世からのカルマや、これまでの人生で犯してきた無数の女性関係(不貞)の重みを誇張して表現している。

You should know that I'm slightly off
俺が少しイカれてるってことは、お前も知っておくべきだ

Fightin' off demons that been outside
外に潜む悪魔たちを払いのけてるんだ
※「悪魔」は彼を悩ませる誘惑や世間のプレッシャー、そして彼自身の内なるトラウマの具現化。

Better known as myself, I'm a demigod
俺自身という名でよく知られてる、俺は半神半人(デミゴッド)だ
※神のごときラッパーとしての名声と、欠点だらけの人間の部分(エゴ)を併せ持つ複雑な自意識。

Every thought is creative, sometimes, I'm afraid of my open mind
すべての思考がクリエイティブだ、時々、自分のオープンな心が恐ろしくなるよ

[Chorus: Kendrick Lamar]

Shit on my mind, and it's heavy
頭の中のクソみたいな考え、それはひどく重いんだ

Tell you in pieces 'cause it's way too heavy
少しずつ話してやる、あまりにも重すぎるからな
※子供たちやリスナーに対し、自身が背負ってきたトラウマや真実を一度にすべて語るのではなく、段階的に(in pieces)明かしていくという意図。

My diamonds, the choker is heavy
俺のダイヤモンド、このチョーカーは重いんだ
※ラッパーの成功の象徴である分厚いダイヤモンドのチョーカー(首飾り)が、奴隷の首輪や彼を縛り付ける世間の期待(重圧)のメタファーとして機能している。

More lifе to give on demand, are you rеady?
求められればもっと命を捧げてやる、準備はいいか?

Who keep 'em honest like us?
俺たちみたいに、奴らを正直にさせられる奴が他にいるか?

Who in alignment like us?
俺たちみたいに、(宇宙や神と)同調してる奴が他にいるか?

Who gotta heal 'em all? Us (Us)
誰が奴ら全員を癒やさなきゃならない? 俺たちさ(俺たちだ)
※「救世主ではない」と宣言した一方で、真実を語ることで傷ついた黒人コミュニティの魂を癒やす使命感そのものは放棄していない、という矜持。

When there's no one to call
他に頼るべき奴が誰もいない時にはな

[Interlude: Sam Dew]

Don't need no conversation
会話なんて必要ねえ

If it ain't 'bout the business, shut the door now
ビジネスの話じゃないなら、今すぐドアを閉めろ

Bitch, it's a celebration
ビッチ、これはお祝いだぜ

And if this shit ain't bussin', what's it for now?
もしこのシットがヤバくない(バッシンじゃない)なら、何のためにやってるってんだ?

[Bridge: Tanna Leone]

Steppin' out when the weight lifts
重荷が下りた時、外へ踏み出すんだ(ステップを踏むんだ)
※KendrickのレーベルpgLangに所属するTanna Leoneのボーカル。セラピーを通じて「救世主の重圧」という重荷を下ろし、ついに「Big Stepper」として軽やかに人生を歩み始めた状態。

Floatin' on 'em (Ooh-ooh-ooh, da-da)
奴らの上を宙に浮いていく(ウーウーウー、ダダ)

Floatin' on 'em (Float, float, ooh-ooh-ooh, da-da)
奴らの上を宙に浮いていく(浮かぶ、浮かぶ、ウーウーウー、ダダ)

Floatin' on 'em (Float, float, ooh-ooh-ooh, da-da)
奴らの上を宙に浮いていく(浮かぶ、浮かぶ、ウーウーウー、ダダ)

Floatin' on 'em (Float, ooh-ooh-ooh, da-da)
奴らの上を宙に浮いていく(浮かぶ、ウーウーウー、ダダ)

Steppin' out when the weight lifts
重荷が下りた時、外へ踏み出すんだ

Floatin' on 'em (Ooh-ooh-ooh, da-da)
奴らの上を宙に浮いていく(ウーウーウー、ダダ)

Floatin' on 'em (Float, float, ooh-ooh-ooh, da-da)
奴らの上を宙に浮いていく(浮かぶ、浮かぶ、ウーウーウー、ダダ)

Floatin' on 'em (Float, float, ooh-ooh-ooh, da-da)
奴らの上を宙に浮いていく(浮かぶ、浮かぶ、ウーウーウー、ダダ)

Floatin' on 'em (Float, float, ooh-ooh-ooh, da-da)
奴らの上を宙に浮いていく(浮かぶ、浮かぶ、ウーウーウー、ダダ)

[Verse 2: Kendrick Lamar]

Uzi, your father's in deep meditation
ウジ、お前の親父は深い瞑想に入ってる
※「Uzi(ウジ)」はKendrickの娘の名前(Romeとも呼ばれる)。

My spirit's awakened, my brain is asleep
魂は目覚め、脳は眠りについてるんだ

I got a new temperature
俺は新しい体温(熱量)を手に入れた

Sharpenin' multiple swords in the faith I believe
自分が信じる信仰の中で、何本もの剣を研ぎ澄ませてるのさ

I think about Robert Kelly
俺はロバート・ケリー(R.ケリー)について考えるんだ

If he weren't molested, I wonder if life'd fail him
もし彼が性的虐待を受けていなかったら、彼の人生はあれほど破綻していただろうかってな
※未成年への性的虐待で有罪となったR&BシンガーのR.ケリー。彼を単なるモンスターとして糾弾するのではなく、彼自身もまた幼少期に性的虐待の被害者であったという事実に目を向け、トラウマが加害性を生む「暴力の連鎖(ペインボディ)」を冷徹に分析している。

I wonder if Oprah found closure
オプラは心の決着(クロージャー)を見つけられたんだろうか

The way that she postered the hurt that a woman carries
女性が抱える痛みを、彼女があんな風にポスター(表舞台)に掲げたやり方でさ
※アメリカの国民的司会者オプラ・ウィンフリーもまた、幼少期に親族から性的虐待を受けたサバイバーである。彼女が他者のトラウマを引き出すことで自身のトラウマを克服しようとした姿に、自身を重ね合わせている。

My mother abused young
俺の母さんも、若い頃に虐待を受けた

Like all of the mothers back where we from
俺たちの故郷にいる、すべての母親たちと同じようにな
※コンプトンをはじめとする黒人社会において、虐待や性被害が個人の問題ではなく、システムとして蔓延している世代間トラウマであることを指摘している。これが次曲のテーマへと直結する。

SSI bury family members
SSI(生活補助金)が、家族の遺体を埋葬する

At the repass, they servin' Popeyes chicken
葬式の後の食事(リパス)では、ポパイズのフライドチキンが振る舞われる
※SSIは米国の低所得者向け生活保護。貧困層の黒人家庭では葬儀の費用すら公的支援に頼らざるを得ず、弔いの食事も安価なファストフード(Popeyes)であるという、痛ましいまでのゲットーのリアリズム。

What you know about Black trauma?
お前らに「ブラック・トラウマ」の何が分かる?

F&Ns, kickin' back is another genre
F&N(ベルギー製の銃器)を撃ち返すなんてのは、別のジャンルの話さ

Tyler Perry, the face of a thousand rappers
タイラー・ペリー、1000人のラッパーたちを代表する顔

Using violence to cover what really happen
本当に起こったことを隠すために、暴力(エンタメ)を利用している
※Tyler Perryは黒人のトラウマや家庭内暴力を題材にしたコメディ作品(『マデアおばさん』シリーズなど)で大成功を収めた映画監督。彼の作品や、ギャングスタラップが、黒人の深い精神的苦痛を「笑い」や「暴力的なエンターテインメント」として消費・商品化し、根本的な治癒から目を背けさせているという鋭い業界批判である。

I know somebody's listenin'
誰かが聞いてくれてるのは分かってる

Past life regressions to know my conditions
自分の状態を知るための、前世療法(退行催眠)だ

It's based off experience
これは経験に基づいた話さ

Karma for karma, my habits insensitive
カルマにはカルマを、俺の悪習は無神経に出来上がってる

Watchin' my cousin struggle with addiction
従兄弟が薬物依存と闘うのを見てきた

Then watchin' her firstborn make a million
それから、彼女の最初の子供(Baby Keem)がミリオン(大金)を稼ぐのを見たんだ

And both of them off the grid for forgiveness
そして、二人とも赦しを求めて世間から姿を消した(オフ・ザ・グリッド)
※前曲の客演でありKendrickの従兄弟であるBaby Keemと、その母親に関するリアルなストーリー。凄惨な環境から成功を掴んでも、トラウマからは逃れられないという業。

I'm sacrificin' myself to start the healin' and...
だから俺は、治癒(ヒーリング)を始めるために自分自身を犠牲にしてるんだ、そして…
※自己の醜悪な過去や家族の秘密をアルバムで世界中に曝け出す(自分を犠牲にする)ことで、黒人コミュニティ全体のトラウマの呪縛を解き、治癒の第一歩を踏み出させようという真の「救済」の宣言。

[Chorus: Kendrick Lamar]

Shit on my mind and it's heavy
頭の中のクソみたいな考え、それはひどく重いんだ

Tell you in pieces 'cause it's way too heavy
少しずつ話してやる、あまりにも重すぎるからな

My diamonds, the choker is heavy
俺のダイヤモンド、このチョーカーは重いんだ

More life to give on demand, are you ready?
求められればもっと命を捧げてやる、準備はいいか?

Who keep 'em honest like us?
俺たちみたいに、奴らを正直にさせられる奴が他にいるか?

Who in alignment like us?
俺たちみたいに、同調してる奴が他にいるか?

Who gotta heal 'em all? Us (Us)
誰が奴ら全員を癒やさなきゃならない? 俺たちさ(俺たちだ)

When there's no one to call us (Us)
他に頼るべき奴が誰もいない時にはな(俺たちさ)

[Outro: Tanna Leone, Kendrick Lamar, Eckhart Tolle]

Say, "Hydrate, it's time to heal"
言いな、「水分補給しろ(ハイドレイト)、癒やしの時間だ」と
※涙を流して感情を解放すること、あるいはデトックスのための水分補給の意。

Safe, you're frustrated, I can feel
大丈夫(セーフ)だ、お前がフラストレーションを抱えてるのは感じてるよ

Huddle up, tie the flag, call the troops, holla back
集まれ、旗を掲げろ、軍隊を呼べ、声を上げろ

Huddle up, tie the flag, call the troops, holla back
集まれ、旗を掲げろ、軍隊を呼べ、声を上げろ

Yeah, yeah, yeah, yeah
イェー、イェー、イェー、イェー

(Ooh-ooh-ooh, da-da)
(ウーウーウー、ダダ)

(Ooh-ooh-ooh, da-da)
(ウーウーウー、ダダ)

(Ooh-ooh-ooh, da-da)
(ウーウーウー、ダダ)

People get taken over by this pain-body (Ooh-ooh-ooh, da-da)
人々は、この『ペインボディ(苦痛の体)』に乗っ取られてしまうのです(ウーウーウー、ダダ)
※思想家エックハルト・トールの教義。過去のトラウマや未解決の痛みが、無意識のうちに人間の中に「苦痛の体」という実体を形成し、宿主を支配してしまうという概念。

Because this energy field (Ooh-ooh-ooh, da-da) that almost has a life of its own (Ooh-ooh-ooh, da-da)
なぜなら、このエネルギー場は(ウーウーウー、ダダ)、まるでそれ自体が独自の生命を持っているかのように振る舞い(ウーウーウー、ダダ)

It needs to (Ooh-ooh-ooh, da-da), periodically, feed on more unhappiness
それは定期的に(ウーウーウー、ダダ)、さらなる不幸を『餌』として喰らう必要があるからです
※トラウマ(ペインボディ)は、自らを延命させるために、人間が意図的に不幸な状況や暴力的な環境を作り出すように仕向けるという恐ろしい心理学的・霊的メカニズムの解説。この「ペインボディ」の究極の現れである『性的虐待の連鎖』に立ち向かう、アルバムの最深部「Mother I Sober」へと繋がっていく。

 

Mr. Morale & The Big Steppers [Explicit]

Mr. Morale & The Big Steppers [Explicit]

  • pgLang/Top Dawg Entertainment/Aftermath/Interscope Records
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