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Rich (Interlude) - Kendrick Lamar 【和訳・解説】

Artist: Kendrick Lamar

Album: Mr. Morale & The Big Steppers

Song Title: Rich (Interlude)

概要

本作「Rich (Interlude)」は、Kendrick Lamarのアルバムにおいて極めて重要な精神的転換点となるインタールードである。全編を通して語り部を担うのは、フロリダ出身のラッパーであり、過去の犯罪歴や数々の問題行動によって「キャンセルカルチャー」の標的となってきたKodak Blackだ。貧困、犯罪、刑務所というゲットーの過酷なトラウマから這い上がり、莫大な富を手にした彼の生々しい独白は、Samphaの荘厳なピアノとバックボーカルに乗せて響き渡る。Kendrickがコンシャス・ラッパーの象徴である自身の作品に、あえて対極に位置するKodakを起用したことは、「善悪の二元論」を超えた深い人間性の肯定と赦し、そしてヒップホップにおける真の癒やし(ヒーリング)を提示する極めて意図的で前衛的なステートメントである。

和訳

[Spoken Word: Kodak Black & Sampha]

I learned in trappin', in the business
トラップ(ハスリン)やビジネスの世界で学んだんだ
※「Trappin'」は麻薬の密売など、ストリートの非合法なビジネスで生計を立てる行為。Kodak Blackがストリートの路上から音楽業界というビジネスの世界へとステップアップしてきた過程を示している。

Smart people makin' horrible decisions, you know?
賢い奴らでさえ、最悪な決断を下しちまうってことをな、分かるだろ?
※極限の貧困やストリートのサバイバル環境下では、どれほど知性のある人間であっても、生き残るために倫理に反する「最悪の選択(犯罪など)」を余儀なくされるという構造的な暴力を突いた鋭い洞察である。

Rich nigga, gettin' my dick sucked after the show
今や金持ちのニガさ、ショーの後はフェラさせてる
※過酷な真理を語った直後に、ステレオタイプなラッパーの享楽的フレックス(物質的・性的な誇示)を挿入することで、自身の内面に未だ同居する聖と俗のコントラストを描き出している。

I ain't gon' lie, we were poor
嘘はつかねえ、俺たちはマジで貧しかった

A bunch of lost souls in survival mode
サバイバルモードに陥った、迷える魂の群れだったんだ
※余裕のないゲットーの環境で、若者たちが夢や希望を持つことすら許されず、ただ「今日を生き延びる(サバイバルモード)」ことだけを強いられている悲痛な現実。

It wasn't no way for us unless we found our own
自分たちで道を切り開く以外に、俺たちに生きる術なんてなかったのさ

Runnin' in stores, kickin' in doors, nigga, give me my glory
店に押し入って、ドアを蹴り破って、「俺の栄光をよこせ」ってな
※武装強盗や空き巣といった具体的な犯罪行為の描写。失われた尊厳や本来得られるはずだった豊かさ(Glory)を、暴力によって社会から力ずくで奪い返そうとする衝動。

Nigga play with me, he ain't gon' live to tell the story
俺をナメた真似する奴は、生きてその話を語ることはできねえぜ

You know, this the type of shit we glorify, everybody gang-gang
分かるだろ、俺たちはこういうクソみたいなことを美化してるんだ、みんなギャング・ギャングってな
※ヒップホップや黒人コミュニティが、自らを破滅に追いやるはずの「暴力」や「ギャング文化」をエンターテインメントとして消費し、栄光(グロリファイ)として扱ってしまっている自己矛盾に対する強烈な自省。

Most of the people that you grew up with are now in the chain gang
一緒に育った連中の大半は、今じゃチェイン・ギャング(囚人部隊)の仲間入りさ
※「Chain gang」は鎖で繋がれて過酷な肉体労働を強いられる囚人部隊のこと。アメリカにおける大量投獄(マス・インカーセレーション)のシステムによって、ストリートの若者たちが次々と刑務所へ送り込まれている現実を指す。

In the box, gettin' pink
箱(独房)の中にぶち込まれて、ピンク色になっていく
※「The box」は刑務所の懲罰房(独房)を指すスラング。「gettin' pink」はReddit等でも議論を呼んだラインだが、精神を鎮静させるために壁がピンク色に塗られた独房(ベーカーミラー・ピンクなどのクールダウンルーム)に隔離され、正気を失いそうになる極限状態のメタファーと解釈されることが多い。

Niggas shittin' where you sleep
自分の寝る場所でクソを垂れる

Niggas shittin' whеre you eat
飯を食う場所でクソをするんだ
※刑務所の狭い独房内には便器がむき出しで設置されており、食事も睡眠も排泄も同じ極小スペースで行わなければならない非人道的な環境(非人間化)の生々しい描写。

Who'da evеr knew that I'd become a fuckin' Kodak? Yeah
俺が世界的な「コダック・ブラック」になるなんて、一体誰が想像できた? イェー

Rap money good, but I'm still pumpin' gas through the hood
ラップの金回りは最高だが、俺は未だにフッドでガス(ハッパや活気)を撒き散らしてるぜ
※「Gas」は高品質なマリファナを指すスラングであり、同時に車を動かす燃料=フッドに還元するエネルギーや資金のダブルミーニング。スターになっても地元との繋がり(ストリート・クレド)を切り離していないことの証明。

Droppin' off plates to the fam' like Thanksgivin'
サンクスギビングみたいに、家族(地元のダチ)たちに食事を配って回ってる

Got the baby snipers standin' on that murk business, yeah, slidin' for Yak
マーダー・ビジネス(殺し)を任せてるベイビー・スナイパーたちもいる、ああ、ヤック(俺)のために報復に行く準備はできてるぜ
※「Sniper」はKodakのレーベル「Sniper Gang」に所属する若手ラッパーやストリートの手下たち。「Murk」は殺害すること。「Yak」はKodak自身の愛称(Lil Boosieが名付けた、あるいはコニャックから由来)。彼に忠誠を誓い、敵対ギャングを襲撃(Slide)する若き兵隊たちの存在を誇示している。

They ready for whatever
奴らは何があっても行く準備ができてる

I always knew that everything would get better
いつかすべてが良くなるって、俺はずっと分かってた

And it sho' got greater later
そして案の定、後になって最高の結果になったんだ

All the game came from the elders like hand-me-downs
ストリートの掟(ゲーム)はすべて、お下がりみたいに上の世代から受け継がれたものだ
※ストリートにおける生存戦略や非合法な知識(Game)は、世代を超えて連鎖するトラウマの一部として「お下がり(Hand-me-downs)」のように引き継がれていくという悲しいシステム。

Me and my brothers wearin' hand-me-downs
俺も兄弟たちも、お下がりの服を着て育った

Now I'm givin' game back to the old heads
今度は俺が、そのゲーム(知恵と金)を年長者たちに還元してる番さ

And the respect come first, yeah, you know?
何よりもリスペクトが第一だ、ああ、分かるだろ?

Can't be better than the OGs, you gotta get it somewhere
OG(オリジナル・ギャングスタ)を超えることはできない、どこかで教えを請わなきゃならないんだ

Gotta come from somethin', God don't come from nothin'
何もないところからは何も生まれない、神だって無からは生まれないんだよ

We ain't seen this comin', nigga, it's more than a blessin'
こんな未来が来るなんて思いもしなかった、ニガ、これは単なる祝福以上のものだ

What you doing with Kendrick? (Ooh, ooh)
「お前がケンドリックと何をしてるんだ?」ってな(ウー、ウー)
※世間の声を代弁した自己言及。ピューリッツァー賞を受賞し、知的なコンシャス・ラッパーとして神格化されるKendrickと、数々の犯罪歴で世間から非難を浴びるKodakがコラボレートすることに対するリスナーの戸惑いや批判を自ら先回りして口にしている。

What you doing with a legend? (Ooh, ooh)
「レジェンドと一緒に何やってるんだ?」って(ウー、ウー)

So what they call you? (Ooh, ooh)
で、連中はお前を何て呼ぶんだ?(ウー、ウー)

When it's all said and done, we ain't leavin' empty-handed (Ooh, ooh)
結局のところ、俺たちは手ぶらで帰るつもりはねえってことさ(ウー、ウー)

That's on gang (Ooh, ooh)
ギャングに誓ってな(ウー、ウー)

That's on Ma' Dukes (Ooh, ooh)
おふくろ(マ・デュークス)に誓ってな(ウー、ウー)
※「Ma' Dukes」は母親を親しんで呼ぶストリートスラング。極貧の中で自分を育ててくれた母親への強い敬意。

Poorer than that bitch but she fall through (Ooh, ooh)
あのビッチ(状況)よりも貧しかったが、おふくろはなんとかやり遂げてくれた(ウー、ウー)

Makin' ends meet (Ooh, ooh), daddy deadbeat (Ooh, ooh)
何とか帳尻を合わせて(ウー、ウー)、親父はろくでなしだった(ウー、ウー)

Had to steal for a meal or you can't eat, you know? (Ooh, ooh)
一食のために盗みを働かなきゃ、食っていくことすらできなかったんだ、分かるか?(ウー、ウー)

Poverty (Ooh, ooh)
貧困さ(ウー、ウー)

Red Cross, food banks, W.I.C. (Ooh, ooh)
赤十字、フードバンク、それにW.I.C.だ(ウー、ウー)
※「W.I.C.」は「Women, Infants, and Children」の略称で、アメリカ政府が提供する低所得の妊婦や乳幼児向けの栄養補助プログラム。この3つの単語を並べることで、底辺の貧困生活においていかに公的な慈善制度に依存せざるを得なかったかを極めてリアルに描写している。

Now look at this shit, we own property
今のこの状況を見てみろよ、俺たちは自分たちの不動産(資産)を持ってるんだぜ
※W.I.C.の配給に頼っていたどん底の生活から、土地や家という「自己資産(Property)」を所有する絶対的な勝者へと成り上がった、完璧なサクセスストーリーの帰結としてインタールードを締めくくる。

 

Mr. Morale & The Big Steppers [Explicit]

Mr. Morale & The Big Steppers [Explicit]

  • pgLang/Top Dawg Entertainment/Aftermath/Interscope Records
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