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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

3 Peat - Lil Wayne 【和訳・解説】

Artist: Lil Wayne

Album: Tha Carter III

Song Title: 3 Peat

概要

Hip-Hop史に燦然と輝く金字塔であり、発売初週で100万枚以上のセールスを記録したメガヒットアルバム『Tha Carter III』(2008年)の幕開けを飾る重要なトラックである。タイトルの「3 Peat(スリーピート)」は、スポーツ界において「3連覇」を意味する用語であり、本作が『Tha Carter』『Tha Carter II』に続く伝説的シリーズの3作目にして、自らがラップゲームの頂点を完全に防衛したことを高らかに宣言する勝利のファンファーレとして機能している。プロデューサーのMaestroが手掛けた重厚かつスタジアム級のビートに乗せ、Wayneはミックステープ時代(『Da Drought 3』等)から研ぎ澄ませてきた狂気的なワードプレイとストリートの獰猛さを遺憾なく発揮している。独裁者ヒトラーを用いた際どいダブルミーニングから、12歳での自殺未遂という極めてパーソナルなトラウマの回顧まで、Wayneの深層心理と天才的な言語感覚が極限まで詰め込まれた、まさに「生きた伝説」の証明とも言えるマスターピースである。

和訳

[Intro]

Yessir
イエッサー

They can't stop me
奴らじゃ俺を止められねぇ

Even if they stopped me
たとえ俺の足を止めたとしてもな

Hahaha, yeah
ハハハ、イェー

[Verse]

I'm on it, ooh, I'm on it
俺はやるぜ、ああ、ゾーンに入ってる

I'm so on it, and however you want it
完全にキマッてる、お前がどう望もうがな

You can get it tonight, ho, and all night, ho
今夜くれてやるよ、ビッチ、一晩中だ

I get the beat from (Maestro), a-fuckin' right, ho
マエストロからビートをもらったぜ、当然だろ、ビッチ
※プロデューサーのMaestro(マエストロ)へのシャウトアウト。彼は本作のスタジアム・アンセム的な壮大なビートを提供し、Wayneの王の帰還を演出した。

I might go crazy on these niggas, I don't give a motherfuck
こいつらをボコボコにして狂っちまうかもな、知ったこっちゃねぇ

Run up in a nigga house and shoot his grandmother up
野郎の家に乗り込んで、そいつのばあちゃんごとブチ抜いてやるよ
※Wayneのミックステープ時代に見られた、モラルを度外視した過激でショッキングなパンチラインの延長。メインストリームの頂点に立っても、ストリートの獰猛さと狂気を一切失っていないことを誇示している。

What? What? I don't give a motherfuck
あ?なんだよ?マジでどうでもいいんだよ

Get your baby kidnapped and your baby mother fucked
お前のガキを誘拐して、ガキの母親を犯してやる

It's Tha Carter 3, bitch, better put your supper up
これが『Tha Carter 3』だ、ビッチ、晩飯でも隠しときな
※「put your supper up(晩飯を隠せ)」は、Wayneがシーンの全てを「食い尽くす(喰らう)」ことへの警告。他のラッパーたちの取り分(食事)すら奪い取り、業界を独占するという貪欲さの表れである。

Hollygrove, I throw it up like I'm tryin' to lose my gut
ホリーグローブ、腹の肉を落とすみたいにレペゼンして吐き出してやるよ
※「Hollygrove」はWayneの地元であるニューオーリンズの第17区のフッド。「Throw it up」には「フッドのハンドサインを掲げる」という意味と「(ダイエットのために)嘔吐する」というダブルミーニングが隠されている。過食症(ブリミア)のメタファーを用いて、地元への異常なまでの執着を表現している。

Fuck is up? Beat him up like a million uppercuts
何様のつもりだ?100万発のアッパーカットでボコボコにしてやる

Got a million duffled up for the fuck of it, shit
ただの暇つぶしにダッフルバッグに100万ドル詰め込んでるぜ
※「duffled up」は麻薬取引などのブラックマネーをダッフルバッグに詰め込むストリートの習慣を指す。「for the fuck of it(ただなんとなく、理由もなく)」と付け加えることで、彼にとって100万ドルという大金ですら端金であることを強調している。

Get on my level? You can't get on my level
俺のレベルに達するだと?お前らにゃ無理だね

You gon' need a space shuttle or a ladder that's forever
スペースシャトルか、永遠に続くハシゴでも用意しな
※他のラッパーとの実力差、そして彼自身が常に「ハイ(High)」な状態であることを、宇宙や無限のハシゴといった高低差のメタファーで表現している。

However, I'm better, if not now, then never
なんにせよ俺のほうが上だ、今じゃなきゃ一生無理だな

Don't you ever fix your lips unless you 'bout to suck my dick
俺のチ○ポをしゃぶる時以外、その口を動かすんじゃねぇ

Bitch, swallow my words, taste my thoughts
ビッチ、俺の言葉を飲み込んで、俺の思考を味わいな
※前行のフェラチオのメタファーから繋がり、彼のリリック(精液)を飲み込み、その思想の深さを噛み締めろという性的なダブルミーニング。

And if it's too nasty, spit it back at me
もしエグすぎるなら、俺に吐き出せよ

Two more inches, I'd have been in that casket
あと2インチズレてたら、俺はあの棺桶の中だった
※12歳の時、Wayneが実家の寝室で9mm拳銃を使い自らの胸を撃ち抜いた事件(自殺未遂)への言及。弾丸は心臓からわずか2インチ(約5センチ)のところを貫通しており、奇跡的に一命を取り留めたという強烈な過去を赤裸々に語っている。

According to the doctor, I could've died in traffic
医者が言うには、渋滞の中で死んでたかもしれねぇってよ
※当時通報で駆けつけた警察官("Uncle Bob"ことボブ・ディーン)は、救急車を待つ余裕がないと判断し、瀕死のWayneを自身のパトカーに乗せて病院へ急行した。もし救急車を待って交通渋滞(traffic)に巻き込まれていたら確実に死んでいたという、生と死のギリギリの境界線を回顧している。Hip-Hopファンの間でも語り草となっているWayneのオリジンストーリーである。

Bounce right back on them bitches, like Magic
マジックみたいに、あいつらの前に完全復活してやるよ
※NBAのレジェンド、マジック・ジョンソン(Magic Johnson)がHIV感染を公表した後に奇跡的な回復を見せ、一時的にコートへ復帰した事実、あるいはビジネスでの大成功(バウンスバック)とかけている。また、単なる「魔法(Magic)」のように蘇るという言葉遊びでもある。

Abracadabra, I'm up, like Viagra
アブラカタブラ、バイアグラみたいにビンビンだぜ

I just do this shit for my clique, like Adam Sandler
アダム・サンドラーみたいに、ただ仲間のためにやってるだけだ
※ハリウッド俳優のアダム・サンドラーは、自身の制作会社(Happy Madison)の映画にロブ・シュナイダーなど、無名時代からの親友を必ずキャスティングすることで知られる。Wayneもまた、自身のYoung Moneyレーベルを通じて地元の仲間やファミリーをフックアップし続ける姿勢をこれに重ね合わせている。Genius等でも秀逸なネームドロップとして高く評価されている。

I control hip-hop, and I'ma keep it on my channel
俺がヒップホップを支配してる、チャンネルはそのままにしておけ

Watch me, bitch, watch me, bitch, watch me
俺を見ろ、ビッチ、俺から目を離すな

But they cannot see me, like Hitler
でも奴らに俺の姿は捉えられない、ヒトラーみたいにな
※本作屈指の強烈で物議を醸すダブルミーニング。「cannot see me(俺の姿が見えない=俺のレベルには達していない)」の "not see" と、独裁者ヒトラーが率いた「Nazi(ナチス)」で完璧な韻を踏んでいる。RedditやGeniusの考察コミュニティにおいて「They can Nazi (not see) me」として、Wayneの天才的かつ狂気的なワードプレイの代表例として頻繁に引用されるラインである。

It's the New Orleans nightmare
これがニューオーリンズの悪夢だ

Money so old, it's growin' white hair
金が古すぎて、白髪が生えてきやがる
※「Old money(代々続く裕福な資産)」の直訳的な言葉遊び。札束を長期間保管しすぎているため、擬人化されたお札に白髪が生えるほど、長きにわたってトップで稼ぎ続けていることを示している。

Young Money, baby, yeah, we right here
ヤング・マネーだ、ベイビー、俺らはここにいるぜ

I'ma make sure we ball 'til we fall like tears
涙みたいにこぼれ落ちるまで、確実に遊び尽くしてやる

And mama, don't cry, your son can handle his
だからママ、泣かないでくれ、あんたの息子はちゃんとやれるから

I got her out the hood and put up in the hills, yeah
お袋をフッドから連れ出して、ビバリーヒルズに住ませたんだ
※Wayneは若くしてCash Money Recordsと契約し、成功を収めた後、母親(Jacida Carter)を治安の悪いニューオーリンズから高級住宅街へと移住させた。親孝行というHip-Hopの王道的なサクセスストーリー。

When I was fourteen, I told my mom we would see better days
14歳の時、ママに「いつかいい日が来る」って言ったんだ

And sure enough, I got Miss Cita in a better place
そしてその通り、ミシータをより良い場所へ連れて行った
※Miss Citaは母親の愛称。12歳の銃撃事件の後、ステップファーザー(Rabbit)が亡くなるなど苦難が続いたが、ラップの才能で家族を養うという幼い頃の誓いを見事に果たした。

When I was fourteen, I told my mom we would see better days
14歳の時、ママに「いつかいい日が来る」って言ったんだ

And sure enough, we did exactly what I said
そしてその通り、俺の言った通りになっただろ

I tell my girl, "When you fuck me, better fuck me good
俺の女に言うんだ、「俺とヤるなら、最高にキメてくれよ」って

'Cause if another girl could, she gon' fuck me good"
「じゃなきゃ他の女が、俺を最高に満足させちまうからな」ってな

No sittin' at the table if you bringin' nothin' to it
何も提供できないなら、テーブルに座る資格はねぇ
※ビジネスやストリートの掟。「bring something to the table(価値を提供する、貢献する)」というイディオムを使用している。金や利益、スキルをもたらさない人間とはビジネスをしない(食事を共にしない)という厳しいスタンス。

And I get straight to it like it's nothin' to it
俺は迷わず直行するぜ、なんてことないようにな

Yeah, I got game like Stuart
ああ、俺にはスチュアートみたいなゲーム(スキル)があるぜ

Scott, fresh out the ESPN shop
スコット、ESPNから出てきたばかりのな
※「Stuart Scott(スチュアート・スコット)」はスポーツ専門チャンネルESPNの伝説的なアンカー。彼のキャッチフレーズ「Booyah!」などはHip-Hopカルチャーにも深く浸透していた。「Game」は「バスケットなどの試合(スポーツ)」と「女を口説くスキル/ストリートの知恵」のダブルミーニングである。

And when SportsCenter poppin', everything stoppin'
『スポーツセンター』が始まれば、何もかもストップするだろ

But you can't fool me, I know what you watchin'
でも俺は騙せねぇよ、お前がどこを見てるか分かってるぜ
※Stuart Scottは事故による後遺症で斜視(義眼)であったため、「彼が画面越しにどこ(誰)を見ているか分からない」という視聴者の暗黙のジョークをブラックユーモアとして引用している。同時に「皆が他ならぬWayne(俺)に注目している」という揺るぎない自信の表れでもある。

[Refrain]

Me You watch me, you watch me
俺だよ、お前らは俺を見てる、俺から目が離せない

'Cause I be Weezy, must-see TV, C3
俺がWeezyだからな、必見のテレビ番組、C3さ
※「Must-see TV」はアメリカの放送局NBCが90年代から使っていた黄金帯の番組宣伝キャッチコピー。Wayne自身がそのレベルの極上のエンターテイメントであり、「C3(Tha Carter 3)」が歴史的瞬間の放送であることを宣言している。

Nigga, that's me, and I'm me
なあ、それが俺だ、俺は俺なんだよ

I'm me, times three
俺は俺だ、3倍のな

So retreat, or suffer defeat
だから撤退するか、敗北を味わうか選びな

I'm back, 3-Peat, C3
戻ってきたぜ、3連覇、C3の幕開けだ
※「3-Peat」はNBAのロサンゼルス・レイカーズの元ヘッドコーチ、パット・ライリーが商標登録した言葉で「3連覇」を意味する。名盤『Tha Carter』シリーズの3作目にして、ラップゲームにおける完全なる3連覇(王座防衛)をここに完遂したという力強い宣言で曲を締めくくっている。