Artist: Lil Wayne (feat. Nikki Kynard)
Album: Tha Carter II
Song Title: Get Over
概要
2005年発表の歴史的名盤『Tha Carter II』の終盤に配置された本作は、Lil Wayneがストリートの抗争や死別によるトラウマと正面から向き合った、極めてパーソナルで悲痛なレクイエムである。ソウルフルなコーラスと哀愁漂うビートに乗せ、彼が実の父以上に慕い、銃弾に倒れた継父Reginald "Rabbit" McDonaldや、ストリートで命を落とした仲間たちへの消えない喪失感が赤裸々に語られる。「ドラッグやアルコールで痛みを麻痺させながら、それでも生き残るために前へ進む」というゲットーの過酷なサバイバル精神が描かれており、当時ハリケーン・カトリーナによって壊滅的被害を受けた地元ニューオーリンズの「死と隣り合わせの日常」が色濃く反映されている。ギャングスタとしての冷徹な仮面の下に隠された、一人の人間としての孤独と脆さを浮き彫りにした内省的な傑作である。
和訳
[Intro]
Yeah
イェー
Yeah, real rap (Real rap), real rap for ya
あぁ、リアルなラップだ。お前らに本物のラップを届けるぜ
Yeah
イェー
Lighters up
ライターを掲げな
※ヒップホップやレゲエのライブにおける定番の追悼・リスペクトの表現。亡くなった者たちへの祈りを意味する。
Know you miss somebody (Got to)
誰だって、失った誰かを恋しく思うもんだ(そうだろ)
Put your (Yeah), let's go (Get 'em)
手を掲げな、行くぜ(やっちまえ)
[Chorus: Nikki Jean & Lil Wayne]
Though, though I'm missing you (Straight to your head, man)
あなたのことが恋しくてたまらないけど(お前の頭に直接叩き込むぜ)
I'll find a way to get through (Nik', talk, yeah)
この痛みを乗り越える方法を見つけるわ(Nikki、歌ってくれ、イェー)
I know livin' without ya is impossible (Yeah, that's right)
あなたなしで生きていくなんて不可能に思える(あぁ、その通りだ)
And I, I know you gon' live on (Cry, mama, yeah, cry, mama)
でも、あなたが心の中で生き続けるって分かってる(泣きな、ママ、泣いていいんだ)
'Cause you were my brother (My sister)
だってあなたは私の兄弟だったから(俺の姉妹さ)
And I love ya, and I miss ya, oh-oh
愛してる、会いたいよ
[Verse 1]
Stay strong, be tough, that's what the preacher tell ya
「強くあれ、タフでいろ」、それが牧師の決まり文句さ
He never really felt ya, so he can't even help ya
だが奴はお前の痛みを微塵も感じちゃいねえ。だから助けになんてならねえんだ
※教会や宗教の綺麗事では、ストリートで親しい者を失った人間の生々しい絶望は救えないという、ゲットーの冷酷な現実主義。
Need a shoulder to lean on, somebody to cry to
寄りかかる肩が欲しい、泣きつける誰かが欲しい
It's like everything's gone, but I'm a survivor
すべてを失っちまった気分だが、それでも俺はサバイバー(生存者)だ
Standin' on stage in front of thousands (Yeah)
何千人もの観客の前に立ってステージをこなす
Don't amount to me not havin' my father
だがそんな成功も、親父がいない喪失感を埋めてはくれねえよ
※Wayneが実の父親のように慕っていた継父Rabbitの死。どれほどラップゲームで頂点に立ち、大金と名声を得ても、彼の心の中にある最大の空洞は満たされないという悲痛な告白。
That's real talk, I know a lot of y'all got 'em
マジな話だ。お前らの多くには親父がいるだろうがな
But you need 'em way more when you gotta go without 'em
親父なしで生きていかなきゃならねえ時こそ、余計に親父の存在が必要になるんだ
And I'm without 'em, but that's life, y'all
俺には親父がいねえ。でも、それが人生ってやつさ
Sometimes you gotta learn to swim with no lifeguard (Yup)
時にはライフガードなしで泳ぐ術を学ばなきゃならねえんだよ
※「ライフガード(保護者・救済者)」のいない危険な海(ストリート)で、自力で生き残るしかないというサバイバルのメタファー。
I'm alright, God, shit, I'm still breathin'
俺は大丈夫だ、神よ。クソ、俺はまだ息をしてるぜ
But loss hurt like bullets, I'm 'bout to start bleedin'
だが喪失感は銃弾のように俺を傷つける。今にも血が吹き出しそうさ
Throw me down some comfort 'cause my heart need it (Yeah)
天から少しの慰めを投げ落としてくれ、俺の心にはそれが必要なんだ
Tryna cope but my chances are needle
なんとか対処しようとしてるが、乗り越えられる確率は針の穴を通すようなもんさ
※「Needle(針)」は、干し草の山から針を探す(不可能に近い確率)という慣用句と、痛みを麻痺させるためのドラッグ(注射器)のメタファーを含んでいる。
There's a dark road ahead, but I'm tryin' to take it easy
この先には暗い道が続いてるが、俺は気楽に行こうとしてる
Rest in peace Lil Beezy, my nigga
安らかに眠れ、Lil Beezy。俺のダチよ
※「Lil Beezy」はWayneの地元ニューオーリンズのストリートで命を落とした親しい仲間、あるいは家族に近い存在への個人的な追悼。
[Chorus: Nikki Jean & Lil Wayne]
Though, though I'm missing you (Yeah, yeah, yeah)
あなたのことが恋しくてたまらないけど(イェー)
(I miss my dawg, I can't believe that it's over)
(ダチが恋しいぜ、これで終わりだなんて信じられねえ)
I'll find a way to get through (But I'm a soldier, so I gotta get over)
この痛みを乗り越える方法を見つけるわ(だが俺はソルジャーだ、だから乗り越えなきゃならねえ)
I know livin' without ya is impossible (Can't stay sober, I'm just tryna get over)
あなたなしで生きていくなんて不可能に思える(シラフじゃいられねえ、ただ乗り越えようともがいてるんだ)
And I, I know you gon' live on (Real rap for you)
でも、あなたが心の中で生き続けるって分かってる(お前らにリアルなラップを届けるぜ)
(Man, I miss my dawg, I can't believe that it's over)
(ダチが恋しいぜ、これで終わりだなんて信じられねえ)
'Cause you were my brother (My sister, but I'm a soldier, so I gotta get over)
だってあなたは私の兄弟だったから(俺の姉妹さ、だが俺はソルジャーだ、だから乗り越えなきゃならねえ)
And I love ya, and I miss ya, oh-oh (Can't stay sober, I'm just tryna get over)
愛してる、会いたいよ(シラフじゃいられねえ、ただ乗り越えようともがいてるんだ)
[Verse 2]
And now we smoke kush all day and pop painkillers (Yeah)
今じゃ俺たちは一日中クッシュを吸い、鎮痛剤(ペインキラー)を飲み込んでる
※悲しみやトラウマを麻痺させるため、マリファナ(Kush)と処方薬(鎮痛剤)に依存するストリートの自己治療の現実。
Fuck who don't understand it, this what the game did us
理解できねえ奴らはクソ食らえだ。このゲーム(ストリートの環境)が俺たちをこうさせたんだ
This what the streets showed us, this how the block made us
これがストリートが俺たちに見せつけた現実で、ブロックが俺たちをこういう人間にしたんだ
The same block where they layed 'em (Damn)
あいつらが殺されて横たわったのも、この同じブロックだからな
I pray every time I cross the spot on the pavement, save me
舗装路のその場所(血が流れた現場)を通るたびに、俺は祈る。「俺を救ってくれ」ってな
Lord, will I be next for the taking? Take me
神よ、次に連れて行かれる(殺される)のは俺ですか? なら連れて行けよ
※親しい人間が次々と死んでいく環境で、自分自身の死をも半ば受け入れ、運命に投げやりになっている究極のニヒリズム。
I know I'm livin' like I know when I'm comin'
自分の死期(運命)を知り尽くしてるかのように生きてる
But I'm just livin' 'cause I know that it's comin'
だが俺は、いつか死が来るって分かってるからこそ、ただ必死に生きてるんだ
And the end is comin', but I ain't runnin', I ain't hidin' and duckin'
終わりは近づいてる。だが俺は逃げないし、隠れたり身を屈めたりもしねえ
I'm in the middle of a war, I'm alive and love it
俺は戦争のド真ん中にいる。生きてる実感があるし、このスリルを愛してるのさ
I'm just speakin' from the heart of the dyin' public
俺はただ、死にゆく大衆の心を代弁してるだけだ
※ハリケーン・カトリーナで見捨てられ、壊滅的な被害を受けたニューオーリンズの黒人コミュニティの絶望的な状況を「死にゆく大衆(dyin' public)」と表現し、彼らの痛みを背負って歌っている。
We still beatin', we gon' rise above it
俺たちの心臓はまだ脈打ってる、この絶望から必ず這い上がってみせる
Though it seem like they cheatin' and we losin'
奴ら(権力や運命)がチート(不正)をして、俺たちが負け戦をしてるように見えてもな
We survive, if nothin'
何が起きようと、俺たちは生き残る
They could never take the stride from struggling
もがき苦しみながら進んできた俺たちの歩み(ストライド)を、奴らが奪うことは絶対にできねえ
I gotta ride, and sometimes that ride get bloody
俺は走り続けなきゃならねえ。時にはそのドライブが血まみれになることもある
But I just think about my buddy and go after that money
だが俺はただ、死んだダチのことを思い出しながら、あの金を追い求めるだけさ
But, uh
だが、あぁ
[Bridge: Nikki Jean & Lil Wayne]
Oh (Yeah), we gotta get over (Yeah)
オー(イェー)、私たちは乗り越えなきゃ(イェー)
We gotta get over, we gotta get over (Yeah)
乗り越えなきゃ、乗り越えなきゃいけないの
It's almost over (I said, I said I gotta get over)
もうすぐ終わるわ(俺は、俺は乗り越えなきゃならねえんだ)
And we gon' be alright (I gotta get over)
きっと大丈夫よ(乗り越えなきゃならねえ)
('Cause, bitch, I'm a soldier)
(だって俺はソルジャーだからな、ビッチ)
[Verse 3]
Straight Patrón out the bottle to the head now (Bitch)
パトロンをボトルから直接、頭(喉)に流し込むぜ(ビッチ)
※「Patrón」は高級テキーラ。グラスを使わずボトルごと一気飲みして、友人を失った激しい痛みを強引に忘れようとしている。
We gettin' red now, bitch, my nigga dead now (Bitch)
俺たちは今、真っ赤(怒りと血)に染まってる。俺のダチが死んじまったからな
And all the things I never said, I gotta say it now (Damn)
あいつに言えなかったすべての言葉を、今言わなきゃならねえ
I shoulda said it then, now I gotta talk to clouds (Damn)
あの時言っておくべきだった。今じゃ俺は、空の雲(天国)に向かって話しかけるしかないんだ
※身近な人間の突然の死に対する、ストリート特有の後悔。生きている間に感謝や愛情を伝えられなかった無念をポエティックに表現している。
Now I gotta walk around, brim down
今、俺はキャップのツバを深く下げて歩き回る
Just tryin' to find my way 'til the next day, escape
明日が来るまでの道筋を見つけようと、ただ逃げ回ってるんだ
Your birthday could be your death date
お前の誕生日が、そのまま命日になるかもしれない
So I'm livin' like it was just yesterday, let's pray
だから俺は、それがまるで昨日のことだったかのように生きてる。祈ろうぜ
※明日の命すら保証されていないゲットーでは、誕生日を祝うことすら死の恐怖と隣り合わせであるという究極の死生観。
Ten fingers together, can't bring 'em together
10本の指を合わせようとしても、うまく合わせられねえ
※両手を合わせて神に祈ろうとするが、トラウマや怒り、あるいは神への不信感から、素直に祈ることができないという心理状態の描写。
It's murda-murda, I don't think it get better
殺しに次ぐ殺しだ、これ以上状況が良くなるとは思えねえ
So be a competitor or get out the weather
だから競争者(戦う側)になるか、この嵐(環境)から逃げ出すしかない
Me? I got an umbrella and a Beretta (Rah)
俺か? 俺には傘と、ベレッタ(拳銃)があるぜ
※ストリートに吹き荒れる暴力の雨(the weather)を防ぐための「傘」と、身を守り戦うための「銃」を対比させて韻を踏んだ秀逸なパンチライン。
I'm just tryin' to make sure my daughter future progressin'
俺はただ、俺の娘の未来が確実に前進するようにしてるだけさ
※過酷な状況下でもハッスルを続ける最大の理由は、長女Reginaeを守り、彼女に同じ苦労をさせないためである。
And behind that, I'm shootin' excessive (Bang), trust me (Yeah)
その裏側で、俺は過剰なまでに銃を撃ちまくってるんだ(バン)。俺を信じろ
The beautiful dead, we living with the ugly
美しい死者たち。俺たちは醜い現実と共に生きているんだ
※死んで天国へ行った者たちは美しい存在になったが、生き残った者たちは血生臭く醜いストリートの現実(The ugly)の中で苦しみ続けなければならないという、悲痛な対比。
I just tell my pops, "Wait for me, I'm comin'"
俺はただ親父(Rabbit)に伝えるのさ、「待っててくれ、俺もいずれ行くから」ってな
[Chorus: Nikki Jean & Lil Wayne]
Though, though I'm missing you (Yeah, yeah)
あなたのことが恋しくてたまらないけど(イェー)
(Man, I miss my dawg, I can't believe that it's over)
(ダチが恋しいぜ、これで終わりだなんて信じられねえ)
I'll find a way to get through (But I'm a soldier, so I gotta get over)
この痛みを乗り越える方法を見つけるわ(だが俺はソルジャーだ、だから乗り越えなきゃならねえ)
I know livin' without ya is impossible (Can't stay sober, I'm just tryna get over)
あなたなしで生きていくなんて不可能に思える(シラフじゃいられねえ、ただ乗り越えようともがいてるんだ)
And I, I know you gon' live on (They ask me what's wrong)
でも、あなたが心の中で生き続けるって分かってる(奴らは俺に「どうした?」って聞いてくる)
(Man, I miss my dawg, I can't believe that it's over)
(ダチが恋しいぜ、これで終わりだなんて信じられねえ)
'Cause you were my brother (My sister, but I'm a soldier, so I gotta get over)
だってあなたは私の兄弟だったから(俺の姉妹さ、だが俺はソルジャーだ、だから乗り越えなきゃならねえ)
And I love ya, and I miss ya, oh-oh (Can't stay sober, I'm just tryna get over)
愛してる、会いたいよ(シラフじゃいられねえ、ただ乗り越えようともがいてるんだ)
[Outro]
They ask me why I wear shades at nighttime
奴らは俺に聞くんだ。「なんで夜なのにサングラスをかけてるんだ?」ってな
(Man, I miss my dawg, I can't believe that it's over)
(ダチが恋しいぜ、これで終わりだなんて信じられねえ)
'Cause I don't wanna see nothin' (But I'm a soldier, so I gotta get over)
だって俺は、もう何も見たくないからさ(だが俺はソルジャーだ、だから乗り越えなきゃならねえ)
※夜にサングラスをかける(悲惨なストリートの現実から目を背ける、あるいは涙を隠す)理由を独白する、非常にエモーショナルなクロージング。
Yeah (Can't stay sober, I'm just tryna get over)
あぁ(シラフじゃいられねえ、ただ乗り越えようともがいてるんだ)
Like I said (Man)
俺が言ったようにな
Life ain't nothin' but a long extended road, keep drivin'
人生なんて、ただ長く続く道にすぎねえ。運転し続けるだけさ
(But I'm a soldier, so I gotta get over)
(だが俺はソルジャーだ、だから乗り越えなきゃならねえ)
I done passed up plenty people on the side of road, no help
俺は道端に倒れてる沢山の奴らを通り過ぎてきた。誰も助けちゃくれねえ
Keep goin', yeah (I'm just tryna get over)
進み続けるだけさ、あぁ(ただ乗り越えようともがいてるんだ)
Lost a lot of passengers on the ride, kept goin', yep
このドライブ(人生)で多くの乗客(仲間)を失ったが、それでも走り続けた
(But I'm a soldier, so I gotta get—)
(だが俺はソルジャーだ、だから乗り越え——)
Who knows when I'll run outta gas? Yeah (Over)
俺のガソリン(命)がいつ尽きるかなんて、誰が分かるんだ? あぁ(終わりさ)
