Artist: Lil Wayne
Album: Tha Carter
Song Title: Walk Out
概要
2004年の金字塔的アルバム『Tha Carter』を締めくくる本作は、オープニング曲「Walk In」から始まった「Tha Carter(高級マンション兼麻薬精製所)」のツアーの終着点である。リル・ウェインは、リスナーを建物の深部から裏庭へと連れ出し、最後には文字通り「追い出す」ことで物語を完結させる。ここで描かれるのは、ヘロインやエンバーミング・フルイド(遺体保存液)といったハードドラッグの蔓延と、それと対照的な母 Jacida "Cita" Carter への歪んだ慈愛である。一見すると家族の情景だが、その実態は麻薬王としての冷徹な権力行使と、自分たちの世界(要塞)に踏み込む者への容赦ない警告であり、後の「Carter」シリーズへと続く神話的なカリスマ性の強固な基礎となった重要曲である。
和訳
[Verse]
And in here is where the heroin boil
そんで、ここがヘロインを煮詰める場所だ
※「Boil」は、粉末のヘロインを注射器で打つために水で溶かして熱する工程、あるいは大量精製を指す。アルバム冒頭から続いた「家(ビジネス拠点)」のツアーが、最も危険な最深部に達したことを示唆している。
And I also got a large pot of cigarette oil
それから、大きな鍋には「シガレット・オイル」もたっぷりあるぜ
That's embalming fluid, illiterate are you?
そいつは「エンバーミング・フルイド(遺体保存液)」のことだ。お前は無学か?
※「Cigarette oil」は、遺体保存用の薬品(PCPを含む場合もある)にタバコを浸して吸うドラッグ「Wet(ウェット)」の原料を指す。非常に強力で破壊的なドラッグを扱っていることを「無学か?」と煽りながら提示し、自身のストリートでの知識レベルの差を見せつけている。
That's okay, man, I got the medicine for you
まあいいさ、お前のための「特効薬(メディスン)」はちゃんと用意してある
I got, I got, I got the amphetamine for you
お前のために、アンフェタミン(覚醒剤)だって揃えてあるんだ
Got that vitamin D-R-U-G for your shorty
お前の連れ(ショーティ)には、「D-R-U-G」っていうビタミン剤をくれてやるよ
※「Vitamin D-R-U-G」は当然ながらDrug(薬物)の綴りをビタミンDにかけて表現したもの。おどけた言い回しだが、相手を薬物中毒に落とし込むという冷酷な支配関係を暗示している。
One window to let the dawn in
夜明けの光を入れるための窓が一つ
'Cause we hustle in this bitch midnight to morning, yeah
だって俺たちは、真夜中から朝までずっとここでハッスル(商売)してるからな
We dump in and pump out, ow
ブツを運び込み、金を吸い上げる。オウ
I showed you this window for you to jump out, ow
この窓を見せたのは、お前をここから飛び降りさせるためだ。オウ
※ツアーは終了し、用済みとなった「客(リスナー/取引相手)」を窓から放り出すという、マフィア映画的な無慈悲な幕引き。これまでの「おもてなし」が、いつでも殺意に変わり得る恐怖を演出している。
You on the backyard lawn where a nigga got the ganja growin'
お前が着地したのは裏庭の芝生の上だ。そこじゃガンジャ(大麻)を育ててる
No cats or dogs, rats or snakes, Sams or Jakes
猫も犬もいねえ。ネズミ(密告者)もヘビ(裏切り者)も、「サム」も「ジェイク」もな
※「Sam」はUncle Sam(連邦政府)、「Jake」は警察官を指すスラング。自身の聖域には裏切り者や法執行機関の入り込む隙が一切ないことを強調している。
Around here, it's all gravy, ham and steak
この辺じゃ、すべてがグレービー、ハム、そしてステーキだ
※「It's all gravy」は「すべて順調だ」という意味の慣用句。そこから連想してハムやステーキといった高級な肉料理(富の象徴)を並べるウェイン特有の連想ゲーム的リリック。
Mama cookin' that up, here, have a plate
オフクロが料理してるぜ、ほら、一皿食っていけ
That's Mama Carter, she's a basket case
あれがママ・カーター(シータ)だ。彼女はちょっと情緒不安定(バスケット・ケース)だがな
※実母 Jacida "Cita" Carter についての言及。ウェインは幼少期のトラウマや母親の気性の激しさを「Basket case」と表現しつつも、後のラインで彼女を養う責任を果たす息子としての姿を見せる。
But I make sure her sandwiches and napkins straight
だが彼女のサンドイッチもナプキンも、俺が完璧に整えてやるのさ
※「Straight」は物質的な不自由をさせないこと、あるいは整理整頓を意味する。自分が稼いだ汚れた金で、母親の生活だけは「清廉で完璧なもの」に保とうとする、ギャングスタ特有の屈折した親孝行の描写である。
You pick with this picnic and I'm at your face, fucker
この穏やかな「ピクニック」を邪魔してみろ、お前のツラをブチ抜いてやるぜ、ファッカー
※「Picknic」と、ちょっかいを出す意味の「Pick with」を掛けたワードプレイ。家族との平穏な(しかし犯罪で得た)時間を汚す者には死を与えるという警告。
I say I'm at your throat, this was Tha Carter, slam the door
お前の喉元を掻っ切ってやる。これが「ザ・カーター」だ、ドアを叩き閉めな
Go
消え失せろ
