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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

LUST. - Kendrick Lamar 【和訳・解説】

Artist: Kendrick Lamar

Album: DAMN. COLLECTORS EDITION.

Song Title: LUST.

概要

本作『DAMN. COLLECTORS EDITION.』は、トラックリストを逆順にすることで「運命」から「自由意志」への物語として再構築された作品である。このストーリーラインにおいて、6曲目に配置された「LUST.」は、前曲「LOVE.」からの残酷な転落を描く極めて重要なターニングポイントである。前曲で長年のパートナーとの純粋な愛(Weakness)に安らぎを見出そうとしたケンドリックだが、その精神的な平穏は長くは続かず、この楽曲において即物的な快楽と虚無的な「肉欲・渇望(LUST.)」の沼へと堕ちていく。自由意志で運命を切り開いたがゆえに生じる底知れぬ孤独と渇きを、彼はアルコール、ドラッグ、セックス、そしてSNSでの虚栄というストリートの怠惰なルーティンで埋めようとするのだ。さらに第3ヴァースでは、2016年の大統領選挙(トランプ当選)に対する大衆の絶望を描写するが、どれほど社会に怒りを感じても、人々は結局「元の怠惰な欲望のプログラム」へと戻ってしまう。この大衆の無関心と欲望への執着こそが、真の意味での「Lust」であると彼は看破する。音楽的にも、この曲のビートは後に登場する「FEAR.」のドラムパターンを逆再生(リバース)して構築されており、アルバム全体の「時間の反転」ギミックを音響的に体現している。純愛から肉欲へと堕落した彼は、この後「HUMBLE.」や「PRIDE.」へとエゴを肥大化させ、最終的な魂の試練(BLOOD.)へと歩みを進めていくのである。

和訳

[Chorus: Kendrick Lamar]

I need some water
水が欲しい
※「水」はキリスト教において洗礼や霊的な浄化の象徴。前曲「LOVE.」での聖性から切り離され、単にドラッグやアルコールによる口渇、あるいは極度の性的な熱を冷ますための物理的な渇きを求めている。

Something came over me
何かが俺に取り憑いたんだ
※自分の意志(理性)を超えた、原始的な欲望(Wickedness)の現れ。

Way too hot to simmer down, might as well overheat
落ち着くには熱すぎる、いっそこのままオーバーヒートしちまえばいい
※自制心を失い、欲望の炎に身を委ねて自滅へと向かう人間の業。

Too close to comfort
安らぎに近づきすぎた
※「Too close for comfort(危険が迫ってヒヤヒヤする)」の変形。心地よい快楽の深みにはまり、危険水域に入っている状態。

As blood rush my favorite vein
俺のお気に入りの血管に、血が駆け巡るように
※「お気に入りの血管」とは陰茎、あるいはドラッグを注射する静脈のメタファー。血(BLOOD)が肉体的な欲求のトリガーとなっている。

Heartbeat racin' like a junkie's
ジャンキーみたいに心臓の鼓動が早まってる
※性欲や物質的な渇望を、麻薬中毒者の禁断症状と同列に扱っている。

I just need you to want me
ただ、お前に俺を欲しがってほしいだけなんだ
※前曲「LOVE.」での「ただ俺を愛してくれ」という純粋な願いが、ここでは肉体的な交わりを通してしか存在価値を確認できない虚無的な渇望へと変質している。

Am I asking too much?
俺は求めすぎてるのか?
※神から見放された世界で、わずかな温もりを乞う姿。

Let me put the head in
先っぽだけ入れさせてくれ
※典型的な誘惑の常套句。一度受け入れてしまえば、欲望は際限なく膨れ上がる。

Ooh, I don't want more than that; girl, I respect the cat
あぁ、それ以上は望まないさ。なぁ、俺はお前のプッシー(猫)をリスペクトしてるんだ
※下心と嘘にまみれた甘い言葉。女性の身体に対する薄っぺらい敬意の偽装。

I promise, just a touch
約束する、ほんの少し触れるだけだから
※エスカレートしていく欲望の言い訳。

Let me put the head in
先っぽだけ入れさせてくれ
※執拗な懇願。

If it's okay; she said, "It's okay"
もし良ければ。彼女は言った、「いいわよ」
※結果として双方が肉欲(Lust)に屈し、罪のループへと陥っていく。

[Interlude: Kendrick Lamar & RAT BOY]

Yeah, I need everybody's motherfuckin' hands up right now
イェー、今すぐお前ら全員の両手を挙げさせたいんだ
※ライブの煽りであると同時に、強盗の決まり文句。快楽と暴力が常に隣り合わせであるストリートの現実。

I need everybody's motherfuckin'—
お前ら全員のクソみたいな—
※ここでRAT BOYのサンプリングがカットインする。

Door and his Nike Air Rattles
ドアと、あいつのナイキのエア・ラトル
※UKのインディー・アーティスト、RAT BOYの楽曲「Knock Knock」からのサンプリング。足元のスニーカー(物質的欲望)の描写。

Rush the fire exit, no time for battles
非常口に殺到する、争ってる暇なんてない
※刹那的な享楽やトラブルから逃走する若者の姿。

Well I, I never expected
まぁ、俺は予想もしてなかったがね
※サンプリングの余韻。

This that new shit
これは新しいシットだ
※ケンドリックの合いの手。

This that new, new shit
これは新しい、最新のシットだぜ
※ここから、典型的なストリートの男女の日常のループ描写が始まる。

[Verse 1: Kendrick Lamar]

Wake up in the mornin', thinkin' 'bout money, kick your feet up
朝起きて、金のことを考えながら足を投げ出す
※目的のない怠惰な朝。資本主義社会において、頭の中は常に金(Money)に支配されている。

Watch you a comedy, take a shit, then roll some weed up
コメディ番組を見て、クソをして、ウィードを巻く
※深く考えることを放棄し、笑いと排泄とドラッグという即物的な快楽で時間を消費する。

Go hit you a lick, go fuck on a bitch
強盗(一稼ぎ)しに行って、ビッチを抱く
※「Hit a lick」は犯罪で手っ取り早く金を稼ぐこと。生きていくための行動がすべて短絡的で野蛮な欲望(Lust)に直結している。

Don't go to work today, cop you a fit
今日は仕事に行かず、新しい服を買う
※勤労の義務を放棄し、外見を飾るための消費行動に走る。

Or maybe some kicks and make you—
それか新しいスニーカー(キックス)でも買って、お前を—
※物欲の描写の途中で再びサンプリングがループし、思考が途切れる。

[Interlude: RAT BOY]

Door and his Nike Air Rattles
ドアと、あいつのナイキのエア・ラトル

Rush the fire exit, no time for battles
非常口に殺到する、争ってる暇なんてない

Well I, I never expected
まぁ、俺は予想もしてなかったがね
※このループ自体が、抜け出せない日常のプログラムを表現している。

[Verse 2: Kendrick Lamar]

Wake up in the mornin', thinkin' 'bout money, kick your feet up
朝起きて、金のことを考えながら足を投げ出す

Watch you a comedy—hol' up
コメディ番組を見て—待てよ
※レコードの針が飛ぶように、一瞬自意識が戻りかける。

Wake up in the mornin', thinkin' 'bout money, kick your feet up
朝起きて、金のことを考えながら足を投げ出す
※しかし、再び同じルーティンに飲み込まれる。

Watch you a comedy, take a shit, then roll some weed up
コメディ番組を見て、クソをして、ウィードを巻く

Go hit you a lick, go fuck on a bitch, don't go to work today
強盗しに行って、ビッチを抱き、今日は仕事に行かない

Cop you a fit or maybe some kicks and make it work today
新しい服かスニーカーを買って、今日を何とかやり過ごす

Hang with the homies, stunt on your baby mama
仲間とつるんで、子供の母親にデカい態度をとる
※家族としての責任(Weakness/愛)を果たさず、虚勢(Stunt)を張るだけの有害な男らしさ。

Sip some lean, go get a pistol, shoot out the window
リーン(咳止めシロップ)をすすり、銃を手に入れ、窓からぶっ放す
※ドラッグで感覚を麻痺させ、無意味な暴力を撒き散らす。コンプトンの負のステレオタイプ。

Bet your favorite team, play you some Madden
お気に入りのチームに賭けをして、マッデン(アメフトのゲーム)をやる
※ギャンブルとビデオゲームという、現実逃避のエンターテインメント。

Go to the club or your mama house
クラブに行くか、それとも母親の家に行くか
※大の大人が自立できず、クラブの享楽か母親の庇護を行き来している。

Whatever you're doin', just make it count (I need some water)
何をするにせよ、意味のある一日にしろよ(水が欲しい)
※無意味な行動の羅列の後に皮肉めいたアドバイス。バックグラウンドで魂の渇き(水への渇望)が囁かれる。

Wake up in the mornin', thinkin' 'bout money, kick your feet up
朝起きて、金のことを考えながら足を投げ出す
※視点がストリートの男性から、ストリートの女性へと切り替わる。

Hop in the shower, put on your makeup, lace your weave up
シャワーを浴びて、メイクをし、ウィッグ(ウィーヴ)を整える
※外見を完璧に偽装するための女性のルーティン。

Touch on yourself, call up your nigga, tell him he ain't shit
自慰をしてから男に電話し、「あんたなんてクズよ」と罵倒する
※肉欲を自己処理しつつ、男に対して精神的な優位性(エゴ)を保とうとする姿。

Credit card scam, get you a Visa, make it pay your rent
クレジットカード詐欺でVisaを手に入れ、家賃を払わせる
※生き残るための手段を選ばない犯罪(Wickedness)。

Hop on the 'Gram, flex on the bitches that be hatin' on you
インスタグラム(Gram)を開き、あんたを妬んでるビッチどもにフレックスする
※SNSでの承認欲求と、他者への見栄っ張り(Pride)。

Pop you a pill, call up your bitches, have 'em waitin' on you
薬(ピル)をキメて、女友達を呼び出し、あんたを待たせる
※ドラッグでハイになり、わざと遅刻して自分の価値を高めようとする歪んだ特権意識。

Go to the club, have you some fun, make that ass bounce
クラブに行って、楽しんで、そのケツを揺らすのさ
※最終的な目的は常に肉欲の提供と消費に帰結する。

It's whatever, just make it count
何だっていいさ、ただ意味のある一日にしろよ
※圧倒的な虚無感の肯定。

[Chorus: Kendrick Lamar]

I need some water
水が欲しい

Something came over me
何かが俺を取り憑いたんだ

Way too hot to simmer down, might as well overheat
落ち着くには熱すぎる、いっそこのままオーバーヒートしちまえばいい

Too close to comfort
安らぎに近づきすぎた

As blood rush my favorite vein
俺のお気に入りの血管に、血が駆け巡るように

Heartbeat racin' like a junkie's
ジャンキーみたいに心臓の鼓動が早まってる

I just need you to want me
ただ、お前に俺を欲しがってほしいだけなんだ

Am I asking too much?
俺は求めすぎてるのか?

Let me put the head in
先っぽだけ入れさせてくれ

Ooh, I don't want more than that; girl, I respect the cat
あぁ、それ以上は望まないさ。なぁ、俺はお前のプッシーをリスペクトしてるんだ

I promise, just a touch
約束する、ほんの少し触れるだけだから

Let me put the head in
先っぽだけ入れさせてくれ

If it's okay; she said, "It's okay"
もし良ければ。彼女は言った、「いいわよ」

[Verse 3: Kendrick Lamar]

I wake in the mornin', my head's spinnin' from the last night
朝目覚める、昨夜の酔いで頭がガンガン回ってる
※視点はケンドリック自身(ロックスター)のループへと移行する。

Both in a trance, feelings are dead—what a fast life
お互いトランス状態で、感情は死んでいる—なんてペースの速い人生だ
※前曲「LOVE.」での永遠の愛の誓いとは正反対の、一夜限りの無機質な関係。肉欲は満たされても、愛や感情(Weakness)は完全に欠落している。

Manager called, the lobby call is 11:30
マネージャーからの電話、ロビー集合は11時半だ
※トップアーティストとしての分刻みのスケジュールに支配されている。

Did this before, promised myself I'd be a hour early
前にもこんなことがあった、一時間早く行動するって自分に誓ったはずなのに
※反省を繰り返しながらも、結局は同じ過ち(怠惰)を繰り返す意志の弱さ。

Room full of clothes, bag full of money: call it loose change
服で溢れかえった部屋、金が詰まったバッグ:こんなの小銭(ルーズチェンジ)みたいなもんさ
※「ルーズチェンジ(小銭)」は大金の比喩。物質的な豊かさの極みにあるが、精神的な満たされなさを示している。

Fumbled my jewelry, 100K, I lost a new chain
ジュエリーを落としちまって、10万ドル(約1500万円)の新しいチェーンを無くした
※大金を失っても気にも留めない、金銭感覚の麻痺。

Hop on the bird, hit the next city for another M
飛行機(バード)に飛び乗り、次のミリオン(百万ドル)を稼ぐために次の街へ向かう
※終わりのないツアーと資本主義のサイクル。

Take me a nap, then do it again
仮眠をとって、また同じことを繰り返す
※スターの生活すらも、結局はストリートの男女と同じ「無機質なループ」に過ぎないという悟り。

We all woke up, tryna tune to the daily news
俺たち全員が目を覚まし、毎日のニュースにチャンネルを合わせようとした
※「Wake up(目覚める)」の対象が、個人的な朝から、社会全体(アメリカ国民)の目覚めへと飛躍する。

Lookin' for confirmation, hopin' election wasn't true
確認(真実)を探し求めた、大統領選の結果が嘘であってくれと願いながらな
※2016年のアメリカ大統領選挙でのドナルド・トランプの勝利の朝。黒人コミュニティや進歩的な人々にとっての巨大な悪夢の到来。

All of us worried, all of us buried, in our feelings deep
俺たちは皆、深く心配し、俺たちは皆、深い感情の底に埋もれた
※国家の危機に対する本物の恐怖と喪失感。

None of us married to his proposal, make us feel cheap
誰も奴の提案(政策)に賛同(結婚)してないのに、俺たちを安っぽく感じさせる
※トランプの差別的な政策に対する拒絶感。

Stale and sad, distraught and mad, tell the neighbor 'bout it
気が滅入り、悲しくなり、取り乱して、怒り狂い、そのことを隣人に話す
※選挙直後のパニックと抗議の波。

Bet they agree, parade the streets with your voice proudly
きっと隣人も同意してくれるだろう、声を張り上げて誇り高くストリートをデモ行進するんだ
※社会正義を求める連帯(Weakness=正しい行い)の瞬間。

Time passin', things change
時間が過ぎ、物事は変わっていく
※しかし、大衆の熱量は長続きしない。

Revertin' back to our daily programs, stuck in our ways
俺たちはいつもの「毎日のプログラム」に逆戻りし、自分のやり方に固執するんだ
※楽曲の最大の結論。どれほど社会が腐敗しようとも、結局人々は怒りを持続できず、朝起きてウィードを吸い、SNSを見、肉欲に溺れる元の怠惰なループ(Lust)へと戻ってしまう。この絶望的な無関心と忘却こそが、人類の最も根深い業である。

Lust
肉欲(渇望)
※全てを飲み込む欲望の一言。

[Bridge: Kendrick Lamar]

Lately, I feel like I been lustin' over the fame
最近、俺は「名声」に肉欲を抱いて(渇望して)いるような気がする
※対象はセックスだけでなく、名声、金、権力すべてに対する病的な執着である。

Lately, we lust on the same routine of shame
最近、俺たちは皆、同じ恥ずべきルーティンに肉欲を抱いている
※社会全体がこの無意味なループを愛してしまっている。

Lately (Lately) Lately, my lust been heightened (Lately)
最近(最近)、最近、俺の肉欲はますます高まっている(最近)

Lately, it's all contradiction (Lately, I'm not here)
最近、全てが矛盾だらけだ(最近、俺はここにいない)
※神を信じながら罪を犯す自己矛盾。魂の不在。

Lately, I lust over self (Lust turn into fear)
最近、俺は「自分自身」に肉欲を抱いている(肉欲は「恐怖」へと変わる)
※極限のエゴイズム(ナルシシズム)。自己への執着は、それを失うことへの「FEAR.(恐怖)」へと直結する。

Lately, in James 4:4 says
最近、ヤコブの手紙4章4節にはこう書かれている
※新約聖書からの直接的な引用。

"Friend of the world is enemy of the Lord"
「世の友となることは、神の敵となることである」
※この現世(World)の快楽やルーティン(Lust)に浸かり切ることは、神(Lord)との断絶を意味する。ブラック・ヘブライの教義における、神に背いた民の絶望的な運命の再確認。

Brace yourself: Lust is all yours
覚悟しろ。肉欲(渇望)はお前たちのものだ
※逃れられない神の裁き(Damn)を前に、この呪われた欲望の世界で生きていくしかないという痛烈な宣告で曲が締めくくられる。この堕落の果てに、彼は次曲「HUMBLE.」でさらなる傲慢さの檻へと囚われていくのである。

[Chorus: Kendrick Lamar]

I need some water
水が欲しい

Something came over me
何かが俺を取り憑いたんだ

Way too hot to simmer down, might as well overheat
落ち着くには熱すぎる、いっそこのままオーバーヒートしちまえばいい

Too close to comfort
安らぎに近づきすぎた

As blood rush my favorite vein
俺のお気に入りの血管に、血が駆け巡るように

Heartbeat racin' like a junkie's
ジャンキーみたいに心臓の鼓動が早まってる

I just need you to want me
ただ、お前に俺を欲しがってほしいだけなんだ

Am I asking too much?
俺は求めすぎてるのか?

Let me put the head in
先っぽだけ入れさせてくれ

Ooh, I don't want more than that; girl, I respect the cat
あぁ、それ以上は望まないさ。なぁ、俺はお前のプッシーをリスペクトしてるんだ

I promise, just a touch
約束する、ほんの少し触れるだけだから

Let me put the head in
先っぽだけ入れさせてくれ

If it's okay; she said, "It's okay"
もし良ければ。彼女は言った、「いいわよ」