Artist: Clipse & Pharrell Williams
Album: Let God Sort Em Out
Song Title: So Far Ahead
概要
Clipseの記念碑的復帰アルバム『Let God Sort Em Out』に収録された「So Far Ahead」は、彼らの音楽的・精神的支柱であるPharrell Williamsをフィーチャーし、トレンドの遥か先を行く彼らの絶対的な優位性と、ストリートの過酷なサバイバルを描いた楽曲だ。Pharrellのコーラスは、大衆が理解する頃には既に次のステージへ進んでいるという彼自身の先見の明(So Far Ahead)を誇示する。Pusha Tのヴァースは、PnB Rockの悲劇的な死への言及や、エル・チャポとの比較など、ストリートの暴力と麻薬取引の現実を冷徹な視点で切り取る。一方、No MaliceからMaliceへと再び名を変えてシーンに戻った兄は、ラッパーと牧師の間を揺れ動いたMase(Mason Betha)のキャリアを自身に重ね合わせ、信仰と過去の罪との間で葛藤しながらも、最終的に「神にハンドルを委ねる(テスラの自動運転の比喩)」という見事な着地を見せる。ClipseとPharrellという黄金のトライアングルが、年齢を重ねたからこそ到達できた境地を示している。
和訳
[Chorus: Pharrell Williams]
They don't know what it is when I'm on it
俺がそれに夢中になってる時、奴らはそれが何なのか理解できねえ
But once they figure it out, I don't want it
だが奴らが理解した頃には、俺はもうそんなもん欲しくねえんだ
※音楽やファッションにおいて常に時代の最先端(So far ahead)を開拓してきたPharrellの、トレンドセッターとしての強烈な自負。大衆が追いついた時には、彼は既に次のフェーズにいる。
So far ahead, you niggas are behind
遥か先を行ってるぜ、お前らは遅れをとってる
Behind
後ろの方にな
You can't see it from where you sitting (Shit)
お前らが座ってる場所からは、到底見えねえだろうが(クソッ)
But this Ferrari leather with the matching stitching is
このフェラーリのレザーと、それに合わせたステッチングの仕上がりは
So far ahead (So far), you niggas are behind
遥かに先を行ってる(遥かにな)、お前らは遅れをとってる
Behind
後ろの方にな
[Verse 1: Pusha T]
Swerving through the lane, serving niggas cane
車線を縫うように走り抜け、奴らにケイン(コカイン)を捌く
※「Cane」はコカインのスラング。
Still ain't never hit a pothole
いまだにポットホール(陥没穴)にハマったことは一度もねえ
※道路の「陥没穴(Pothole)」と、人生における「失敗や逮捕」を掛けている。長年ドラッグゲームに身を置きながらも、一度も致命的なミスをしていないという誇示。
If I was Brittney Griner, I'ma need Obama
もし俺がブリトニー・グライナーだったら、オバマの力が必要になるだろうな
Only one to swap is Chapo
スワップ(囚人交換)できる相手は、エル・チャポくらいしかいねえよ
※WNBA選手のブリトニー・グライナーがロシアで拘束された際、アメリカ政府がロシアの武器商人との囚人交換(Swap)で彼女を解放した事件を引いている。「もし大物ディーラーである自分が捕まったら、メキシコの伝説的麻薬王エル・チャポ(El Chapo)クラスの人物とでなければ交換が釣り合わない」という、Pusha Tの底知れぬボースト。
Furthest from the streets, Monica, Denise
ストリートから一番遠い場所にいる、モニカやデニス
Good bitches fuck with Rocco's
イイ女たちはロッコズ(高級店)で遊んでる
Put 'em in them cars, hanging out with stars
そんな彼女たちを高級車に乗せ、スターどもとツルませてみろ
Now it's hard to tell they not hoes
今じゃ、彼女たちが娼婦(ホー)じゃないとは言い難いぜ
※富と名声の環境が、普通の女性たちの価値観を狂わせてしまう業界の毒を描写。
Your codefendant claim immunity
お前の共犯者が、免責(イミュニティ)を主張してるぜ
It was you and he, how'd you not know?
お前とそいつの2人だけだったのに、どうして気づかなかったんだ?
※仲間が警察に情報を売って(密告して)自分だけ罪を逃れようとしている状況。ストリートにおける裏切りの生々しいリアル。
Unless he leaving court in a Bentley Sport
そいつがベントレー・スポーツに乗って裁判所を後にし
Just to meet you on a yacht, though
ヨットでお前に会いに来るような展開じゃない限りな
※もし共犯者がお前を売っていないなら、共に無罪放免となって豪華な暮らしをしているはずだ、という皮肉。
Understand the art of war
『孫子の兵法(The Art of War)』を理解しな
All my niggas draw, so we all Picasso's
俺のダチは全員「描く(ドロー)」、だから俺たちは全員ピカソなのさ
※「Draw」は「絵を描く」という意味と、「銃を抜く」という意味のダブルミーニング。いつでも銃を抜く準備ができている凶暴な仲間たちを、偉大な画家ピカソに例えた秀逸なパンチライン。
Me just being me, respect to PnB
俺はただ俺らしくいるだけだ、PnB(・ロック)にはリスペクトを送るが
I prolly never eat at Roscoe's
俺はたぶん、一生「ロスコーズ」でメシを食うことはねえだろうな
※2022年、フィラデルフィアのラッパーPnB Rockが、ロサンゼルスの有名レストラン「Roscoe's House of Chicken 'N Waffles」で食事中に強盗に遭い射殺された悲劇への言及。同業者の死を悼みつつも、自分は決して隙を見せないという冷徹なサバイバル精神を示している。
Million ways to live, million ways to die
生き方は百万通り、死に方も百万通りだ
Millions stuffed in an auto
数百万ドルが車の中に詰め込まれてる
Million ways to wash it, million ways to stop it
マネーロンダリング(洗浄)する方法も百万通り、それを阻止する方法も百万通りさ
Pray for me 'cause we not, though
俺のために祈ってくれ、俺たち自身は祈ったりしねえからな
Best believe, I can whip a Christmas Eve
信じていいぜ、俺はクリスマスイブ(真っ白な雪)を調理(ウィップ)できるんだ
With some work in a hot stove
熱いストーブの上で「仕事(ブツ)」をこなしてな
※「Christmas Eve」は「White(白)」であり、「雪(Snow=コカイン)」のメタファー。「Whip」はコカインを重曹と水で煮詰めて(ストーブの上で)クラック・コカインにする製造工程。ドラッグディーラーとしての比類なきスキルをクリスマスの情景で表現。
They done took it all, praying that he fall
奴らは全てを奪い去り、彼が落ちぶれるのを祈ってる
No more questions 'bout Gestapo
ゲシュタポ(秘密警察)についての質問はもうご免だぜ
[Chorus: Pharrell]
They don't know what it is when I'm on it
俺がそれに夢中になってる時、奴らはそれが何なのか理解できねえ
But once they figure it out, I don't want it
だが奴らが理解した頃には、俺はもうそんなもん欲しくねえんだ
So far ahead, you niggas are behind
遥か先を行ってるぜ、お前らは遅れをとってる
Behind
後ろの方にな
[Verse 2: Malice]
Niggas tried to sneeze at the blessing
奴らは、与えられた「祝福」をくしゃみで吹き飛ばそう(軽んじよう)とした
※「Sneeze at」は「〜を鼻で笑う、軽んじる」というイディオム。
"How could I just leave?" was the question
「どうして俺は(ラップゲームを)ただ去ることができたのか?」ってのが疑問だったんだ
Whistle blowers left me no choice
内部告発者(ホイッスル・ブロワー)どものせいで、俺には選択の余地がなかった
Ain't no referees up in Heaven
天国にはレフェリー(笛を吹く奴)なんていねえからな
※「Whistle blower(笛を吹く者=密告者)」とスポーツの「レフェリー(笛を吹く審判)」を掛けたワードプレイ。ストリートの裏切りに嫌気がさし、また天国(神の裁き)にはそのような裏切り者はいないという信仰心から、彼がかつてシーンを去った(No Maliceへの改名)理由を語っている。
No mistaking me for the reverend
俺を牧師と間違えるんじゃねえぞ
Ushering the money, my confession
金を案内(アッシャー)してきたこと、それが俺の懺悔(告白)だ
※教会で席を案内したり献金を集めたりする「アッシャー(Usher)」と、ストリートで「金」を動かしてきた過去の罪の告白。
How your pastor whip a Rolls Royce?
お前のとこの牧師が、どうやってロールスロイスを乗り回してるって?
That was me pre-9/11
それが、9.11(2001年)以前の俺の姿だったのさ
※Clipseのデビューアルバム『Lord Willin'』(2002年)以前、つまり彼らが実際にストリートで莫大なドラッグマネーを稼ぎ、高級車を乗り回していた時代(Pre-9/11)の真実。
Look at me post-Armageddon
ハルマゲドン(世界の終末)の後の俺を見てみろ
Walking with my dog, I am legend
犬と一緒に歩いてる、俺は「アイ・アム・レジェンド」だ
※ウィル・スミス主演の映画『アイ・アム・レジェンド』(疫病で人類が絶滅した世界で、犬と共に孤独に生き抜く生存者の物語)を引き合いに出し、ストリートの過酷なサバイバルを生き延びた自らを伝説的存在として描写。
The grass is greener on each side
隣の芝生は、どっちの側から見ても青かった
I done been both Mason Betha's
俺は、両方の「メイソン・ベサ」を経験したんだ
※本ヴァース屈指のパンチライン。「Mason Betha」はラッパーのMase(メイス)の本名。彼はBad Boy Recordsで大成功を収めた後、突如引退して牧師となり、その後再びラッパーとして復帰した。Maliceもまた、Clipseとして成功した後に信仰の道へ進み(No Malice)、そして今回再びラップゲームに戻ってきた。自分自身の数奇なキャリアを、Maseの人生に完璧に重ね合わせている。
I done been at both intersections
俺は、両方の交差点に立ってきた
I done pulled Oceans 11's
『オーシャンズ11』みたいな大仕事もやってのけたぜ
※映画『オーシャンズ11』のような、大胆で計画的な大規模ハスリング(あるいは大成功)のメタファー。
Even when the well ran dry
井戸が干上がった(資金やインスピレーションが尽きた)時でさえ
I done raised quotes in the desert
俺は砂漠の中で相場(名言)を上げてきたんだ
※「Quotes」は相場(価格)と名言(リリック)のダブルミーニング。過酷な状況下でも価値を生み出してきた誇り。
Tried to hide the dope in the message
メッセージの中に「ドープ(麻薬/最高のもの)」を隠そうとした
Like we did the coke in the Lexus
俺たちがレクサスの中にコカインを隠したようにな
※自身の書くリリック(メッセージ)の中に、ストリートのヤバさ(Dope)を巧みに隠蔽する芸術性を、かつて高級車の隠しスペースに麻薬を隠していた手口に例えている。
Same hands I used to whip work
俺が「仕事(コカインの調理)」をウィップするのに使っていたのと同じ手が
See me turn 'em both into blessings
今じゃ、その両手を「祝福」に変えるのを見てくれよ
※かつて麻薬を作っていた汚れきった手が、今は神への祈りや人への祝福に使われているという、罪からの解放と救済の表現。
AMG the spokes for the extras
AMGのスポークホイール、それが余分な金(エクストラ)の使い道さ
Only way to cope with the pressure
それが、プレッシャーに対処(コープ)する唯一の方法だった
When you feel you in too deep
自分が深みにハマりすぎた(限界だ)と感じた時は
Let God take the wheel like a Tesla
神様にハンドルを握らせろ、テスラみたいにな
※カントリー歌手キャリー・アンダーウッドのヒット曲「Jesus, Take the Wheel(イエス様、ハンドルを握って=人生を委ねる)」というクリスチャンの有名なフレーズと、テスラ車の「オートパイロット(自動運転)」機能を完璧に掛け合わせた、Maliceの天才的な着地。
[Chorus: Pharrell]
They don't know what it is when I'm on it
俺がそれに夢中になってる時、奴らはそれが何なのか理解できねえ
But once they figure it out, I don't want it
だが奴らが理解した頃には、俺はもうそんなもん欲しくねえんだ
So far ahead, you niggas are behind
遥か先を行ってるぜ、お前らは遅れをとってる
Behind
後ろの方にな
You can't see it from where you sitting (Shit)
お前らが座ってる場所からは、到底見えねえだろうが(クソッ)
But this Ferrari leather with the matching stitching is
このフェラーリのレザーと、それに合わせたステッチングの仕上がりは
So far ahead (So far), you niggas are behind
遥かに先を行ってる(遥かにな)、お前らは遅れをとってる
Behind
後ろの方にな
