Artist: Ella Langley
Album: Dandelion
Song Title: Froggy Went A Courtin’ - Outro
概要
本楽曲は、Ella Langleyのアルバム『Dandelion』を締めくくるアウトロである。冒頭の「Froggy Went a Courtin’ - Intro」と対をなし、アルバム全体を16世紀から続く英米の伝統的な伝承歌(フォーク・ソング)の枠組みで包み込む見事な円環構造となっている。ここで歌われる「Apples on the table, peaches on the shelf / If you want any more, you can sing it yourself(テーブルにリンゴ、棚にピーチ / 続きが聴きたきゃ自分で歌いな)」というフレーズは、アパラチア民謡や初期カントリー音楽において演者が客に終演を告げるための古典的なサイン・オフ(締め言葉)である。彼女は自身の泥臭くも痛切なパーソナル・ストーリーを全編で語り尽くしたあと、この伝統的な決まり文句を用いてリスナーを突き放しつつ、同時にカントリー・ミュージックの広大なルーツへと接続する。南部女性のタフさとユーモア、そして音楽的血脈への深い敬意が凝縮された、アルバムの幕引きにふさわしい小粋なエンディングだ。
和訳
[Intro]
(Last one)
(最後の一曲)
※アルバムの録音風景、あるいはライブの終盤を思わせる臨場感のあるスポークン・ワード。「Last one(最後の一曲)」という宣言は、アルバム『Dandelion』の終わりを告げると同時に、カントリー音楽における夜の集まり(ピッキング・パーティーやホンキートンクでのギグ)の終焉を暗示している。
(Baby of mine)
(私の愛しい人)
Last one
最後の一曲よ
[Verse]
Apples on the table, peaches on the shelf, uh-huh
テーブルにはリンゴ、棚にはピーチが置いてある、あぁ
※「Apples / peaches」は南部の豊かな実りや日常の家庭的な食卓を象徴する単語であると同時に、伝承歌『Froggy Went A Courtin'』における伝統的なエンディング・フレーズの一部。この伝承歌はカエルとネズミの結婚式を描くナンセンス・ソングだが、長大な物語の最後に突然「リンゴとピーチ」という日用品が登場することで、聴衆を虚構から現実世界へと一気に引き戻す役割を果たす。
Apples on the table, peaches on the shelf, baby
テーブルにはリンゴ、棚にはピーチが置いてあるのさ、ベイビー
Apples on the table, peaches on the shelf
テーブルにはリンゴ、棚にはピーチ
If you want any more, you can sing it yourself, uh-juh
これ以上続きが聴きたいなら、自分で歌いな、あぁ
※アパラチア民謡やブルーグラスで古くから使われる「定型的な幕引き(Sign-off)」の痛快なフレーズ。Genius等でのディープな音楽ファンの考察でも指摘される通り、Ella Langleyはアルバム全体を通して自身の恋愛、トラウマ、そして南部女性としてのルーツを赤裸々に語り尽くした。最後にこの突き放したようなフレーズを置くことで、「私の物語はこれで終わり。あとはあなた自身の人生の続きを歌いなさい」という、自立した女性特有のタフなメッセージとユーモアをリスナーに提示している。
Baby of mine
私の愛しい人
※前行の突き放した態度とは裏腹に、極めて親密で愛情深い呼びかけ。タフさと脆さ、ユーモアと愛情が共存するElla Langleyの多面的な魅力が、この短いフレーズに凝縮されている。
I said apples on the table, peaches on the shelf
だから言ったでしょ、テーブルにはリンゴ、棚にはピーチだって
If you want any more, you can sing it yourself
これ以上続きが聴きたいなら、自分で歌うんだね
Oh-huh, baby of mine (Just like that)
あぁ、私の愛しい人(まさにそんな風にね)
※「Just like that(まさにその通り、いとも簡単に)」は、アルバム収録の『Loving Life Again』のコーラスや『Bottom of Your Boots』のアウトロなどでも反復して使用された、彼女の口癖とも言えるシグネチャー・フレーズ。何百年も歌い継がれてきた伝承歌という「過去」の遺物を、Ella Langleyという「現在」のアーティストの強烈なパーソナリティで完全に上書きし、名盤は完璧な円環を閉じて幕を下ろす。
