Artist: Ella Langley
Album: Dandelion
Song Title: Choosin’ Texas
概要
本楽曲は、アラバマ出身でありながらナッシュビル(テネシー州)を拠点とするElla Langleyが、テネシーとテキサスの「州(風土)」を恋敵に見立てて描いた極上の失恋カントリー・ソングである。カントリー・ミュージックにおいて「テキサス出身の男」は、どれほど愛し合っても結局は広大な地元へと帰ってしまうという厄介な神話性を持っている。本作では「Smoky Mountain Rain」や「Amarillo by Morning」といったカントリーの歴史的名曲を巧みに引用しながら、テキサスの女(あるいはテキサスという土地そのもの)にカウボーイを奪われる敗北感が泥臭くも切なく綴られている。単なる三角関係の枠を超え、アメリカ南部の地理的・文化的プライドが衝突するアメリカーナの秀作だ。
和訳
[Verse 1]
Just when I thought I got him to fall in love with Tennessee
やっとアイツにテネシーを愛してもらえたって思った矢先にね
※テネシー州はカントリー・ミュージックのメッカであるナッシュビルを擁し、Langley自身の現在の活動拠点でもある。ここでは単なる土地の名前ではなく、「自分との現在の生活」や「テネシー的な価値観」のメタファーとして機能している。
I shoulda known better than to take him back to Abilene
アイツをアビリーンになんて連れて帰るんじゃなかったよ
※「Abilene(アビリーン)」はテキサス州中央部に位置する都市。カントリーの文脈ではジョージ・ハミルトン4世のヒット曲「Abilene」などで知られる郷愁の地である。彼を故郷であるテキサスの土を踏ませてしまったことが、取り返しのつかないミスだったと後悔する描写だ。
I put him right back into her arms
私がアイツを、あの女の腕の中に送り返しちまったようなもんさ
I wasn't a match for that kind of spark
あんな風に火がついちまったら、私じゃ到底太刀打ちできない
[Chorus]
She's from Texas, I can tell by the way
あの女はテキサス出身なんだ、見れば一目でわかる
※「She」は実際の新しい恋人であると同時に、「テキサス州という擬人化された存在」としてのダブルミーニングを持っている。テキサス女性特有の誇り高さや土着的な魅力に圧倒されている主人公の敗北感が漂う。
He's two-steppin' 'round the room
アイツが部屋中をツーステップで踊り回ってる姿を見ればね
※「two-steppin'(ツーステップ)」はカントリー・バーやホンキートンクでお馴染みのペアダンス。特にテキサス・ツーステップは同州の強烈なアイデンティティであり、彼が水を得た魚のようにテキサスの文化に染まり直していることを視覚的に表現している。
And judgin' by the smile that's written on his face
それに、アイツの顔に貼り付いたみたいなあの笑顔からしてもさ
There's nothin' I can do
もう私にできることなんて何もないのさ
It doesn't take a crystal ball to see
水晶玉で占わなくたって、結末くらいお見通しだ
A cowboy always finds a way to leave
カウボーイってのは、いつだって結局は立ち去る理由を見つける生き物だから
※「Cowboy」は自由を愛し、定住を拒み、常に故郷(テキサス)や荒野へ帰っていく存在としてのアーキタイプ(原型)。カントリー音楽における典型的な「愛してはいけない危険な男」の象徴である。
Drinkin' Jack all by myself
一人ぼっちでジャック・ダニエルをあおりながら
※「Jack(ジャック・ダニエル)」はテネシー・ウイスキーの代名詞。テキサス(彼女)を選んだ彼を前に、自分は「テネシー」を象徴する酒を一人で飲むしかないという、地理的な対比を利用した極めて秀逸な自嘲的ラインである。
He's choosin' Texas, I can tell
アイツはテキサスを選んでる、私には分かるんだ
[Verse 2]
Well, I guess he forgot about the Smoky Mountain rain
きっとアイツは「スモーキー・マウンテン・レイン」のことなんか忘れちまったんだろうね
※「Smoky Mountain rain」はテネシー州とノースカロライナ州にまたがるグレート・スモーキー山脈の雨を指すと同時に、Ronnie Milsapの1980年の大ヒットカントリー曲「Smoky Mountain Rain」の引用。テネシーで育んだ二人のロマンチックな思い出の象徴である。
Them old Hank tunes, the Memphis blues we used to sing
昔よく一緒に歌った古いハンクの曲も、メンフィスのブルースも
※「Hank」はカントリー界の伝説Hank Williams(アラバマ州出身・テネシー州ナッシュビルで活躍)。「Memphis blues」はテネシー州メンフィスの音楽文化。彼らが共有していた「テネシー・アラバマ圏」のディープサウスの文化的絆のリストアップである。
He always loved "Amarillo by Morning"
アイツはいつだって「アマリロ・バイ・モーニング」が大好きだった
※George Straitによる1983年の名曲「Amarillo by Morning」の直接的な引用。テキサス州アマリロを目指すロデオ・カウボーイの哀愁を歌ったこの曲は、テキサス出身者の非公式なアンセムである。テネシーの音楽を共有しながらも、彼の魂の根底には常にテキサスの名曲があったという決定的なディスコミュニケーションの描写。
I should've taken that as a warnin'
それを警告だって受け取るべきだったんだ
[Chorus]
She's from Texas, I can tell by the way
あの女はテキサス出身なんだ、見れば一目でわかる
He's two-steppin' 'round the room
アイツが部屋中をツーステップで踊り回ってる姿を見ればね
And judgin' by the smile that's written on his face
それに、アイツの顔に貼り付いたみたいなあの笑顔からしてもさ
There's nothin' I can do
もう私にできることなんて何もないのさ
It doesn't take a crystal ball to see
水晶玉で占わなくたって、結末くらいお見通しだ
A cowboy always finds a way to leave
カウボーイってのは、いつだって結局は立ち去る理由を見つける生き物だから
Drinkin' Jack all by myself
一人ぼっちでジャック・ダニエルをあおりながら
He's choosin' Texas, I can tell
アイツはテキサスを選んでる、私には分かるんだ
[Bridge]
When I'm eastbound and down, and I can't help but cry
東へ向かってアクセルを踏み込みながら、涙がこらえきれない時
※「eastbound and down」は、1977年の映画『トランザム7000(Smokey and the Bandit)』の主題歌であるJerry Reedのカントリー・アンセム「East Bound and Down」からの引用。テキサス(西)からテネシー/アラバマ(東)へと敗北を抱えて逃げ帰る自身の姿を、サザン・カルチャーのアイコン的フレーズに重ね合わせている。
'Cause I-40 gets lonelier with every mile
州間高速道路40号線は、1マイル走るごとに孤独を増していくから
※「I-40(州間高速道路40号線)」はアメリカ大陸を横断するハイウェイで、テキサス州(北部パンハンドル地方)からアーカンソー州を経てテネシー州(メンフィス〜ナッシュビル)へとダイレクトに繋がっている。かつて二人で愛を育んだテネシーへの帰路が、今はただ長大な傷心旅行のルートでしかないという地理的なリアリズム。
I'll know that his mind wasn't ever gonna change
アイツの気持ちが二度と変わらないことくらい、私にも分かってる
'Cause his heart still belongs to the Lone Star State
だってアイツの心は、ずっとローン・スター・ステイトのモノなんだから
※「Lone Star State(一つ星の州)」はテキサス州の公式な愛称。独立共和国だった歴史を持つテキサス人の強烈な郷土愛を指す。恋敵の「彼女」に負けたのではなく、テキサスという巨大な歴史とプライドを持つ「州そのもの」に負けたのだという究極の悟りである。
[Chorus]
She's from Texas, I can tell by the way
あの女はテキサス出身なんだ、見れば一目でわかる
He's two-steppin' 'round the room
アイツが部屋中をツーステップで踊り回ってる姿を見ればね
And judgin' by the smile that's written on his face
それに、アイツの顔に貼り付いたみたいなあの笑顔からしてもさ
There's nothin' I can do, naw, yeah
もう私にできることなんて何もないのさ、あぁ
It doesn't take a crystal ball to see
水晶玉で占わなくたって、結末くらいお見通しだ
A cowboy always finds a way to leave
カウボーイってのは、いつだって結局は立ち去る理由を見つける生き物だから
Drinkin' Jack all by myself
一人ぼっちでジャック・ダニエルをあおりながら
He's choosin' Texas, I can tell, no
アイツはテキサスを選んでる、私には分かるんだ
Drinkin' Jack all by myself
一人ぼっちでジャック・ダニエルをあおりながら
He's choosin' Texas, I can tell
アイツはテキサスを選んでる、私には分かるんだ
[Outro]
Come on, baby
なあ、ベイビー
Oh yeah
あぁ、そうさ
Just when I thought I got him to fall in love with Tennessee
やっとアイツにテネシーを愛してもらえたって思った矢先にね
