Artist: Radiohead
Album: Pablo Honey (Collector’s Edition)
Song Title: Nothing Touches Me (Live at BBC Radio 1 Evening Session / June 22, 1992)
概要
1992年6月22日、BBC Radio 1の番組「Evening Session」にて収録され、のちに『Pablo Honey』コレクターズ・エディションに収録されたレア・トラックである。この楽曲はRadioheadがまだ「On A Friday」と名乗っていた結成初期から存在していた曲であり、デビューアルバムの選考からは漏れたものの、初期の彼らが内包していたオルタナティヴな怒りと疎外感を最もストレートに表現している。他者からの拒絶や社会からの干渉を防ぐために、自らの周囲に「3フィートの分厚い壁」を築き上げ、徹底的な自己防衛(感情の麻痺)に引きこもる青年の姿が描かれている。物理的な暴力や言葉の刃に対する極度の恐怖感は、後の名作『OK Computer』収録の「Climbing Up the Walls」や、『Kid A』収録の「How to Disappear Completely」へと連なる「隔離と逃避」というトム・ヨークの生涯のテーマの原点と言える。BBCスタジオでの生々しくノイジーな演奏が、そのヒリヒリとしたパラノイアを増幅させている。
和訳
[Verse 1]
Nothing touches me, man
誰にも僕に触れることはできない。
※「触れる(touch)」は物理的な接触だけでなく、感情を揺さぶること、あるいは傷つけることのダブルミーニング。外部からのあらゆる刺激や人間関係を完全に遮断し、感情を麻痺させた(無感覚になった)状態を宣言している。
These walls are three feet thick
この壁は、3フィートもの厚さがあるから。
※「3フィート(約90センチ)の壁」は、強固な心理的防衛機制のメタファーである。ピンク・フロイドの『The Wall』にも通底する、他者とのコミュニケーションを拒絶し、自己の内面に引きこもるための強固な要塞(パラノイア)の構築を示している。
Wouldn't take one of them little drills
そんなちっぽけなドリルの一つや二つじゃ、
※「little drills」は外部から壁を破壊しようとする他者の試みや干渉を指す。奇しくも彼らのデビューEPのタイトルが『Drill』であったことと符合しており、初期の彼らが音楽業界という外の世界へ穴を開けようとしていた状況へのシニカルな自己言及とも受け取れる。
To get through it
到底、貫通することなどできないさ。
[Pre-Chorus]
I try to make her listen
彼女に話を聞かせようとするけれど、
※壁の中に引きこもりながらも、完全には他者への期待を捨てきれていない状態。特定の女性、あるいは自分を理解してくれない大衆や社会全体(Her)に対するコミュニケーションの試みである。
When I turn away she's split
僕が目を逸らした隙に、彼女は消え去っている。
※「split」は俗語で「急いで立ち去る、逃げる」の意。自分が勇気を出して心を開こうとした瞬間に相手は既に興味を失って去っているという、対人関係における決定的なタイミングのズレと絶望的な孤独感。
I try to make her listen
彼女に話を聞かせようとするけれど、
When I turn away she's split
僕が目を逸らした隙に、彼女は消え去っている。
She went
彼女は行ってしまった。
[Chorus]
Nothing touches me now
今や、何ものも僕に触れることはない。
※コミュニケーションの失敗を経て、再び強固な壁の中へと退却し、感情を完全にシャットダウンしたことによる虚無的な安堵の宣言。
Nothing touches me now
何ものも僕に触れることはない。
[Verse 2]
Nothing touches me, man
誰にも僕に触れることはできない。
No matter how you split
君がどうやって逃げ去ろうとも。
Sticks and stones can get through bones
棒や石は、骨さえも貫いてくる。
※英語の有名なことわざ「Sticks and stones may break my bones, but words will never hurt me(棒や石は私の骨を折るかもしれないが、言葉が私を傷つけることは決してない)」のダークな反転と解釈できる。Reddit等の考察では、トムはこの楽観的なことわざを否定し、「物理的な暴力だけでなく、言葉や悪意も実際に心(骨)を貫き、致命傷を与えるのだ」という冷徹な現実を突きつけていると指摘されている。
So I've given up looking out of that shit
だから僕は、あんなクソみたいな外の世界を見ることを諦めたんだ。
※外部からの攻撃(悪意や批判)が自分の精神を容易く破壊することを知っているからこそ、外界を観察すること自体を完全に放棄した。極度の防衛本能による引きこもりの正当化である。
[Pre-Chorus]
I try to make her listen
彼女に話を聞かせようとするけれど、
When I turn away she's split
僕が目を逸らした隙に、彼女は消え去っている。
I try to make her listen
彼女に話を聞かせようとするけれど、
Whеn I turn away she's split
僕が目を逸らした隙に、彼女は消え去っている。
She went
彼女は行ってしまった。
[Chorus]
Yеah, nothing touches me now
あぁ、今や何ものも僕に触れることはない。
Yeah, nothing touches me now, oh
何ものも僕に触れることはない。
[Instrumental Solo] [Chorus]
Woah, nothing touches me now
あぁ、今や何ものも僕に触れることはない。
Yeah, nothing touches me now
何ものも僕に触れることはない。
[Outro]
Laugh if you can't, if you can't, if you can't find me, oh
僕を見つけられないなら、せいぜい笑えばいいさ。
※壁の中に完全に姿を隠し、外界に対して冷笑的な挑発を行っている。自分を理解しようとも見つけようともしない世界に対する強烈なルサンチマン(怨恨)であり、「どうせ自分は誰にも見つけられない」という諦念が混じり合った、初期Radiohead特有の痛ましい自虐のエンディングである。
Laugh if you can't, if you can't, if you can't find me, oh
僕を見つけられないなら、せいぜい笑えばいいさ。
Laugh if you can't, if you can't, if you can't find me, oh
僕を見つけられないなら、せいぜい笑えばいいさ。
Laugh if you can't, if you can't, if you can't find me, oh
僕を見つけられないなら、せいぜい笑えばいいさ。
