Artist: Radiohead
Album: Pablo Honey (Collector’s Edition)
Song Title: You (Drill Version)
概要
1992年5月にリリースされたRadioheadのデビューEP『Drill』に収録された、最初期のバージョンである。プロデューサーはのちの長きにわたるマネージャーとなるクリス・ハッフォードが務めた。1993年の『Pablo Honey』収録版と比較すると、テンポが僅かに遅く、ギターのディストーションもよりノイジーで荒々しい。特筆すべきは歌詞の差異であり、アルバム版では削られた「I will shame myself(自分自身を恥じる)」という強烈な自己卑下のフレーズや、「You said(君が言った)」という他者への明確な責任転嫁が含まれている。共依存、自己否定、そして世界の終末というトム・ヨークの根源的なパラノイアが、完成されたアルバム版よりもさらに無防備で生々しい形で記録された、歴史的価値の高いオルタナティヴ・トラックである。
和訳
[Verse 1]
You are
君は。
The sun and moon and stars are you
太陽であり、月であり、星そのものだ。
※アルバム版の「You are the sun and moon...」と異なり、冒頭で「You are」と一度区切ることで、対象への強迫的なまでの執着と重圧がより生々しく表現されている。天体を比喩とした絶対的な支配関係、あるいは共依存という名の牢獄である。
I could never run away from you
僕は君から、決して逃げ出すことなどできない。
※物理的・精神的に自己を完全に相手へ明け渡した状態。のちの「All I Need」にも通底する、痛々しいほどの盲目的な従属である。
[Verse 2]
You try
君は。
At working out chaotic things
この混沌とした事象を、なんとか解き明かそうとしている。
Why
なぜ。
Should I believe myself, not you?
僕は君ではなく、自分自身なんかを信じなければならない?
※クリス・ハッフォードのプロデュースによる粗削りなサウンドが、インポスター症候群的な自己不信をより強調している。「混沌(chaotic things)」に対する無力感と、思考の主体性を他者(You)に完全に委譲してしまう危うい精神状態だ。
[Verse 3]
You said
君は言った。
The world is going to end so soon
この世界は、もうすぐ終わってしまうのだと。
※アルバム版の「It's like...(まるで〜のようだ)」という比喩表現とは異なり、ここでは明確に「You said(君は言った)」と他者の発言として断定されている。世界の終末(アポカリプス)というRadiohead特有のパラノイアすらも他者の言葉に依存しており、カルト的な洗脳状態にも似た自己喪失が描かれている。
Why
なぜ。
Should I believe myself?
僕は自分自身を信じなければならない?
[Bridge]
Oh, the sun and moon and stars are
あぁ、太陽も、月も、星も。
Yeah, but I will shame myself, not you, you
そうだ、だが僕は君ではなく、自分自身を恥じるだろう。君ではなく。
※『Pablo Honey』版には存在しない、この『Drill』バージョン最大のハイライト。「shame myself(自分を恥じる/辱める)」という強烈な自己嫌悪の言葉が叩きつけられる。神格化された「君」との対比によって、自己への嫌悪と無力感が暴力的なまでに極まった瞬間である。
[Outro]
Drowning, you
溺れていく。君が。
Drowning, you
溺れていく。君が。
※アルバム版の「I can see me drowning」と異なり、ここでは「Drowning, you」と反復される。自身が溺れているのか、対象が溺れているのか、あるいは共に心中するように沈んでいくのか、主語と客体の境界が曖昧なまま崩壊していく。共依存の果てにあるカオティックな末路である。
Drowning, you
溺れていく。君が。
Drowning, you
溺れていく。君が。
Drowning, you
溺れていく。君が。
Drowning, you
溺れていく。君が。
Drowning, you
溺れていく。君が。
Drowning, you
溺れていく。君が。
