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ALLIGATOR BITES NEVER HEAL - Doechii 【和訳・解説】

Artist: Doechii

Album: Alligator Bites Never Heal

Song Title: ALLIGATOR BITES NEVER HEAL

概要

フロリダ出身の気鋭ラッパーDoechiiのミックステープのタイトル・トラックにして、作品全体のテーマを総括する極めてエモーショナルな楽曲だ。「ワニに噛まれた傷は決して癒えない」というタイトルは、彼女の故郷であるフロリダの象徴(ワニ)を用い、幼少期のトラウマや裏切り、ストリートで負った心の傷が一生消えないことを示唆している。メランコリックなビートの上で「私と踊って」と繰り返されるフレーズは、孤独や己の悪魔とのダンスを思わせる。アウトロでは旧約聖書のアブラハムとロトの逸話が引用され、成功への道(神に約束された地)へ進むには、愛する者や過去の仲間を切り捨てなければならないという「トップに立つ者の孤独」が残酷なまでに美しく語られている。

和訳

[Intro]

Better off, here alone
一人でここにいる方がマシね

Better off, here alone
一人でここにいる方がマシ

Doo-doo, doo-doo, doo-doo, doo-doo
ドゥ・ドゥ、ドゥ・ドゥ…

Doo-doo, doo-doo, doo-doo, doo-doo
ドゥ・ドゥ、ドゥ・ドゥ…

Doo-doo, doo-doo, doo-doo, doo-doo
ドゥ・ドゥ、ドゥ・ドゥ…

Doo-doo, doo-doo, doo-doo, doo-doo
ドゥ・ドゥ、ドゥ・ドゥ…

Ooh, ooh
ウー、ウー

Ooh, ooh
ウー、ウー

Won't you dance with me?
アタシと踊ってくれない?
※傷ついた孤独な魂が、自分自身の影、あるいは過去の亡霊(トラウマ)に向かってダンスを求めているような、メランコリックで呪術的なフレーズの反復。

Won't you dance with me?
アタシと踊ってくれない?

Won't you dance with me?
アタシと踊ってくれない?

Won't you dance with me?
アタシと踊ってくれない?

Won't you dance with me?
アタシと踊ってくれない?

Won't you dance with me?
アタシと踊ってくれない?

Won't you dance with me?
アタシと踊ってくれない?

[Verse]

Bare-feet in the parking lot
駐車場で裸足になって

Dancing with the car light on
車のヘッドライトの灯りを浴びて踊るの
※華やかなステージのスポットライトではなく、ゲットーの駐車場で車のライトを浴びて踊るという対比。彼女のルーツにある泥臭さと、富を得ても癒えない心の空虚さを表している。

Gas tank running on and on
ガスタンクは空っぽのまま走り続けてる
※ガス欠(精神的な限界・燃え尽き症候群)状態であるにも関わらず、音楽業界という止まることの許されない環境で無理やり走り続けているというメタファー。

(Are you hurt? Are you hurt? Won't you dance for me?)
(傷ついてるの? 傷ついてるの? アタシのために踊ってくれない?)

Farewell to the sunny days
晴れ渡った日々(幸せな過去)に別れを告げる

Sache through the cloudy days
曇り空の日々をサシェイ(気取って)歩き抜けるの
※「sache (sashay)」はボールルーム・カルチャーにおいて自信満々にランウェイを歩くこと。どれだけ心の中が曇って(病んで)いても、表舞台ではスターとして堂々と振る舞わなければならないという業。

Dancing through the summer haze
夏の陽炎の中を踊り抜けていく

Won't you dance? (Are you hurt? Won't you dance for me?)
踊らない?(傷ついてるの? アタシのために踊ってくれない?)

May I have— (Won't you dance with me?)
この手を—(アタシと踊ってくれない?)

May I have— (Won't you dance with me?)
この手を—(アタシと踊ってくれない?)

(Won't you dance with me?)
(アタシと踊ってくれない?)

(May I have this dance?)
(このダンスをアタシと踊ってくれない?)

(Won't you dance with me?)
(アタシと踊ってくれない?)

(I love you yes, I love you not)
(愛してる、いいえ、愛してない)
※花びらを一枚ずつちぎりながら「好き、嫌い(He loves me, he loves me not)」を占う童話的なフレーズの引用。人間関係の脆さや、自分自身の愛に対する極度の不信感、情緒の不安定さを表現している。

(I love you yes, I love you not)
(愛してる、いいえ、愛してない)

(Won't you dance with me?)
(アタシと踊ってくれない?)

(I love you yes, I love you not)
(愛してる、いいえ、愛してない)

(I love you yes, I love you not)
(愛してる、いいえ、愛してない)

(Won't you dance with me?)
(アタシと踊ってくれない?)

(I love you yes, I love you not)
(愛してる、いいえ、愛してない)

(I love you yes, I love you not)
(愛してる、いいえ、愛してない)

(Won't you dance with me?)
(アタシと踊ってくれない?)

(I love you yes, I love you not)
(愛してる、いいえ、愛してない)

(I love you yes, I love you not)
(愛してる、いいえ、愛してない)

(Won't you dance with me?)
(アタシと踊ってくれない?)

[Bridge: Mike Thornwell & Doechii]

I'll let you touch but
触らせてあげるけど、でも

I could be dead on her place
俺は彼女の場所で死んでるかもしれない

I could be on my pockets and my shoulder
俺はポケットと肩に重荷を抱えてるかもしれない

All day, the neighbors gon' watch me do, do
一日中、隣人たちが俺のやることを監視してるんだ
※フッド(地元)における閉塞感と、名声を得たことによって周囲から常に監視され、利用されようとしているパラノイア的な恐怖を描写している。

(Won't you dance for me?)
(アタシのために踊ってくれない?)

[Outro]

You gotta understand, the path that you going on, everybody can't go
理解しなきゃいけない。お前が進もうとしている道は、誰もが歩めるものじゃないんだ
※メンター(あるいは家族の長老的な存在)による、成功の代償についての説教(Spoken word)。

And you can't take everybody where you going
そして、お前が向かう場所に、全員を連れて行くことはできないんだよ
※「サバイバーズ・ギルト(自分だけが成功し、地元から抜け出したことへの罪悪感)」。フッドの仲間や古い友人をすべて引き上げることは不可能であり、トップに立つためには切り捨てなければならない人間がいるという残酷な真理。

You remember I used to talk to you about the story about Abraham and Lot
俺が昔、アブラハムとロトの物語について話したのを覚えてるか?

And how he wanted to take Lot with him?
アブラハムがどうにかしてロトを一緒に連れて行こうとした話だよ
※旧約聖書(創世記第13章)の引用。神から約束の地へ向かうよう命じられたアブラハムは、甥のロトを連れて旅立ったが、やがて財産(家畜)が増えすぎたため彼らの羊飼い同士が争うようになり、最終的に二人は別々の道を歩むことになった。

Everybody can't go where you going
お前が向かう場所に、全員を連れて行くことはできないんだ
※神に選ばれし者(圧倒的な才能を持ち、成功を約束されたDoechii)は、愛する者(ロト=過去の仲間)と決別しなければならない。ミックステープの根底に流れる「喪失と孤独」というテーマを聖書レベルの壮大なスケールで締めくくり、「ワニに噛まれた傷(過去の痛み)は癒えない」が、それでも痛みを抱えたまま前へ進むしかないという究極の結論を提示している。