Artist: Doechii
Album: Alligator Bites Never Heal
Song Title: FIREFLIES
概要
Doechiiのミックステープ『Alligator Bites Never Heal』に収録された本作「FIREFLIES」は、生々しい肉体的な欲求と精神的な脆弱性が交差する、前後編の2部構成からなるエモーショナルな楽曲だ。前半(Part I)では、フランク・オーシャンを引き合いに出しながら、有害でありながらも抗えない相手との濃密で官能的な交わりと、自己を明け渡すほどの盲目的な愛がトラップR&Bのビートに乗せて赤裸々に描かれる。一転して後半(Part II)では、ビートが幻想的でメランコリックなサウンドへと変貌。暗闇の中で儚く光る「蛍(Fireflies)」に一縷の希望と終止符(クロージャー)を託し、愛の喪失と自己探求の狭間で揺れる彼女の繊細な魂の叫びが表現された傑作である。
和訳
[Part I]
[Intro]
Uh
アー
[Verse 1]
Sick of niggas calling me childish
ガキ扱いしてくる野郎どもにはウンザリよ
All I gotta show is my mileage
アタシが証明すべきなのは、これまでのマイレージ(経験)だけ
※「mileage(走行距離)」は、これまで生き抜いてきた人生の経験値や、ストリートおよび業界で積んできたキャリアの長さ(Hustle)のメタファー。
Niggas ain't cut right, tracing
あいつらはマトモに裁断されてもない、ただのトレース(模倣品)よ
※「cut right」は衣服の裁断やダイヤモンドのカット、転じて「生まれつきの資質や出来が良い」こと。「tracing(なぞる)」と合わせ、オリジナリティのないフェイクな男たちを揶揄している。
I been up so late, you been up so late
アタシはずっと夜更かししてる、アンタもずっと夜更かししてるわね
Thinking 'bout you, no Frank shit
アンタのことばかり考えてる、フランクみたいにね
※Frank Oceanの歴史的名曲「Thinkin Bout You」からの直接的な引用(I've been thinkin' bout you)。眠れない夜に特定の相手を想い焦がれるR&Bのクラシックな情景を提示している。
Thinking 'bout you and your fragrance
アンタのこと、アンタの香水の匂いのことばかり考えてるの
Tricking on hoes, like Sally on toes
ホーたちに貢ぐ(遊ぶ)のさ、爪先立ちのサリーみたいにね
※「Tricking」は女性に金品を貢ぐこと、または売春婦を買うこと。「Sally on toes」は、こっそり爪先立ちで歩く様子(バレないように浮気や遊びに精を出す男の姿)を表している。
I'm throwing these shots, no picking me up
ショット(酒/銃弾)を打ち込むわ、アタシを迎えに来る必要はない
Throwing these shots, no Smith 'n', aye
ショットを打ち込むの、スミス&ウェッソンじゃなくてもね、エイ
※「shots(酒のショットグラスを煽る)」と「銃弾を撃つ」のワードプレイ。「Smith 'n'」は米国の有名な銃器メーカー「Smith & Wesson(スミス&ウェッソン)」のこと。銃を使わなくても、アタシの魅力や言葉でアンタを撃ち抜けるという自信の表れ。
Curling me up like mittens, yeah
ミトンみたいにアタシを丸め込んでいくのね、イェー
Throwing shit back, no photo
過去を振り返る(ケツを突き出す)の、写真なんて無くてもね
※「Throwing back」は「Throwback Thursday (TBT)=過去の写真を振り返る」というSNSの文化と、「Throw that ass back(セックスやダンスで尻を後ろに突き出す)」という卑猥なAAVEの秀逸なダブルミーニング。
All of that shit worth mentioning
それは全部、言及する価値があることなのよ
Clenching these walls till you're calling my name
アンタがアタシの名前を呼ぶまで、この壁(膣壁)を固く締めつけるわ
※極めて露骨で生々しいセックスの描写。肉体的な快楽を通じて相手を完全に支配・服従させようとするドミナントな姿勢。
I'm writing these songs till you're hearing my pain
アンタがアタシの痛みを聴き取るまで、この歌を書き続けるの
Last Balmain got the last bitch up
最新のバルマンを着た最後のビッチをモノにしたわね
※「Balmain」はフランスの高級ラグジュアリーブランド。ハイファッションに身を包んだ最高級の女(自分自身、または彼が過去に遊んだ女)の比喩。
So it's one last try in the back of your truck
だから、アンタのトラックの後部座席で最後の挑戦(セックス)よ
You gon' want sneak up a Linksters
リンクスターズにこっそり忍び込みたくなるでしょ
※「Linksters」はDoechiiの地元、フロリダ発祥のローカルなスポーツバーのチェーン(Linksters Tap Room)のこと。フロリダのリアルなデートや遊び場の情景描写。
You gon' want sit, smoke, stare at the blinker
アンタは座って、煙草を吸って、ウィンカーをぼんやり見つめたくなるのさ
You going way too far with the finger
アンタ、その指で少しやりすぎよ
I'ma fall back, tss-tss, like a sprinkler
アタシは後ろに下がるわ、ツツッ、スプリンクラーみたいにね
※「tss-tss」というスプリンクラーの水が噴き出す擬音語と、女性が極度に濡れる(Squirt)ことのダブルミーニング。また、「後ろに引く(fall back)」という動作もスプリンクラーの首振りの動きに例えている。
Don't call back till I bling-bling-bling
アタシの電話がブリン・ブリン・ブリンって鳴るまで、折り返さないでよ
And we gon' fuck 'round, do the same damn thing
そしてウチらはまたヤり合って、同じクソみたいなことの繰り返し
We going off the stove like bossa nova
ボサノヴァみたいに、ストーブの上で熱く弾けるの
※ブラジル音楽「ボサノヴァ(Bossa Nova)」の情熱的なリズムと、火にかけたストーブ(The stove)の熱を掛け合わせ、二人の激しい情事を表現している。
Hotter than Hell's Kitchen, let's
ヘルズ・キッチンよりも熱いわ、さあ
※ニューヨークの治安の悪い地区(またはゴードン・ラムゼイの過酷な料理番組)である「Hell's Kitchen」の引用。燃え上がるような危険な情熱。
Let's get to fucking, kissing
さあ、ヤり合って、キスしましょ
Let's get to munching, holding, gripping
食い合って、抱きしめて、強く掴み合いましょ
'Stead of that "Niggas ain't worth the mention"
「あんな野郎ども、話題にする価値もない」なんて強がる代わりにね
Let's get to biting, soaking, sippin'
噛み付いて、びしょ濡れになって、啜り合いましょ
My body do things for you that I've never seen her do
アタシの身体はアンタのために、自分でも見たことないような反応をするの
I open my spleen for you
アンタのためなら、この脾臓(スプリーン)だって開いてみせるわ
※「spleen(脾臓)」は古代西洋医学において「感情(特に怒りやメランコリー)」を司る臓器とされていた。単に身体を開く(股を開く)だけでなく、自身の奥底にある最もドロドロとした感情や脆弱性(Vulnerability)すらも相手に完全に明け渡すという、究極的で猟奇的でさえある愛のメタファー。
And I can do shit that you wouldn't believe
アンタが信じられないようなことだって、アタシにはできるのよ
I'ma surrender my body to please you
アンタを喜ばせるために、この身体を降伏(サレンダー)させるの
[Bridge]
Ooh
ウー
Ooh, ooh
ウー、ウー
Ooh, ooh, ooh, ooh, ooh, ooh
ウー、ウー、ウー…
Ah-ah
アー、アー
[Verse 2]
Open up, get the fuck, this a love drug
心を開いて、さっさとヤりな、これは愛のドラッグ(媚薬)よ
We go up, up above these assumptions
ウチらは昇っていく、世間の憶測なんて遥かに超えてね
Push it out, get it out, mister monster, in, out, in, out
押し出して、吐き出して、ミスター・モンスター、イン、アウト、イン、アウト
※野蛮で暴力的なほどの性行為のリズム。相手を「モンスター」と呼び、理性を失った本能的な交わりを描写している。
Ooh, you could never say I never fucked with you
ウー、アタシがアンタを愛してなかった(深く関わってなかった)なんて、絶対に言わせないわ
And you could never say I never made love to you
アタシがアンタとメイク・ラブしなかったなんて、絶対に言わせない
You could never say I never tried, in, out, in, out, in, out
アタシが努力しなかったなんて、絶対に言わせないわ。イン、アウト、イン、アウト、イン、アウト
I make love to you
アンタと愛し合うの
I make love to you
アンタと愛し合うのよ
[Outro]
Baby, drive me crazy
ベイビー、アタシを狂わせるのね
On the way, on my day
向かっている途中、アタシの1日の中で
Sun so shady
太陽はひどく陰鬱(シェイディ)で
Like my baby, yeah
まるでアタシのベイビーみたいね、イェー
Baby, drive me crazy
ベイビー、アタシを狂わせるのね
On the way, on my day
向かっている途中、アタシの1日の中で
Sun so shady
太陽はひどく陰鬱で
Like my baby, yeah
まるでアタシのベイビーみたいね、イェー
[Part II]
[Intro]
Haa-bee-doo-hah
ハァー・ビー・ドゥー・ハァ
Hah-baa-bee-doo-hah
ハァ・バー・ビー・ドゥー・ハァ
Ow, haa-baa-bee-doo-baa
アウ、ハァ・バー・ビー・ドゥー・バァ
Letting out
解き放つわ
[Chorus]
Don't let me down, fireflies
アタシを失望させないで、蛍たちよ
※「Fireflies(蛍)」は、漆黒の暗闇(どん底の精神状態や絶望)の中でわずかに瞬く「希望の光」や「儚い愛」のメタファー。Part Iの肉欲的な愛から一転し、スピリチュアルな導きを求めている。
Keep the night 'til it's over
この夜が終わるまで、夜を保ち続けて
Underground, overtime
アンダーグラウンドで、時間外(オーバータイム)にまで
※地下の暗闇や、人知れず苦悩し続ける孤独な時間の隠喩。
Keep the light 'til there's closure
終止符(クロージャー)が打たれるまで、その光を灯し続けて
※「closure(クロージャー)」は、終わった関係やトラウマに対する「心の整理、区切り、決着」を意味する心理学用語。暗闇の時期を抜け出し、前を向くための導きの光(蛍)を祈るように求めている。
[Verse]
Tried to take my time with you, you're always on my mind
アンタとゆっくり時間をかけようとした、アンタはいつもアタシの心の中にいる
Always from the side of view, that shadow's what I lack
いつも横顔(サイドビュー)から見ていた、その「影」こそがアタシに欠けているものなの
Please keep me from discrepancies that hold me from my light
アタシを光から遠ざける「矛盾(ディスクレパンシー)」から、どうかアタシを守って
※愛と憎しみ、執着と自立、肉欲と精神性といった、自身の中で引き裂かれる矛盾や葛藤(discrepancies)からの解放を願う切実なライン。
I tried to take my time with you but I—
アンタとゆっくり時間をかけようとしたけど、でもアタシは—
[Chorus]
Don't let me down, fireflies
アタシを失望させないで、蛍たちよ
Keep the night 'til it's over
この夜が終わるまで、夜を保ち続けて
Underground, overtime
アンダーグラウンドで、時間外にまで
Keep the light 'til there's closure
終止符が打たれるまで、その光を灯し続けて
