Artist: Doechii
Album: Alligator Bites Never Heal
Song Title: BOOM BAP
概要
フロリダ出身の気鋭ラッパーDoechiiによる本作は、ヒップホップ・シーンにおける「リアルなラップ」の定義やジャンルの枠組み(ピジョンホール)に対する痛烈なアンチテーゼである。彼女のキャリア最大のヒット曲「What It Is」がメインストリームやTikTokで爆発的な成功を収めた結果、一部のオールドスクールな純粋主義者(ピュリスト)たちから「彼女は本物のラッパーなのか」という批判的な眼差しが向けられた。本作はそうした声に対する直接的な回答であり、90年代的な「ブーンバップ」のビートや「ラッピティ・ラップ(技巧的だが中身のない早口ラップ)」を皮肉交じりに模倣しながら、自身がトラップからハウスまであらゆるスタイルを網羅する全能の存在であることを誇示している。TDEの絶対的なボスであるTop DawgやJ. Coleといった固有名詞を交え、既存のヒップホップの文脈を逆手に取ったシニカルで攻撃的なマニフェストだ。
和訳
[Intro]
Boom bap, rap, rap, rappity rap-rap
ブーンバップ、ラップ、ラップ、ラッピティ・ラップ・ラップ
※「rappity rap」は、リリシズムやメッセージ性よりも複雑な韻踏みや早口ばかりを重視する、頭でっかちなオールドスクール・ラップ(あるいはそれを崇拝するリスナー)を小馬鹿にした表現。
Rappity rap, pfft, boom bap, bap, bap, bap
ラッピティ・ラップ、プッ、ブーンバップ、バップ、バップ
They said they—
連中はこう言うのさ—
Camper, they said they want me to rap
キャンパー、連中はアタシに「ラップしてほしい」らしいわ
※Camper(Darhyl "DJ" Camper Jr.)はグラミー賞受賞歴のある著名プロデューサー。本作のビートメイカーへの語りかけ。
[Verse 1]
They want real rap from a bitch like they out-rappin' a bitch
連中はアタシみたいな女に「リアルなラップ」を求めてくる、まるで自分たちの方がラップが上手いとでも言いたげにね
Yeah, she can clap a lil' bit, do that, they ain't sayin' shit
「ああ、あの娘は少しケツを振れる(クラップできる)ね、そのままやってなよ」なんて、連中は中身のあることなんて何も言ってない
That ass a magnet, I get it, you know, attractive and shit?
「そのケツは磁石みたいだ、分かるよ、魅力的だってことだろ?」って感じ?
I just can't sang a lil' bit? I mean, that shit was a hit
アタシが少し歌っちゃダメなわけ? ていうか、あの曲は大ヒットしたんだけど
You know exactly what it is, the choir gon' sang "What It Is"
何の話をしてるか、アンタらもよく分かってるでしょ。聖歌隊だって「What It Is」を歌うわよ
Top 100, what it is? Número uno, what it is?
トップ100入りした「What It Is」、ナンバーワンになった「What It Is」
※「What It Is (Block Boy)」は2023年にリリースされた彼女の特大ヒット曲。TikTokでバイラルとなり、Billboard Hot 100入りを果たした。メインストリームで「歌う」ポップ寄りの楽曲で成功を収めた彼女に対し、ヒップホップ純粋主義者たちが「あれはラップじゃない」と批判したことへの痛烈なアンサー。
Favorite song? "What It Is," turn me on, what it is?
みんなのお気に入りの曲は? 「What It Is」よ。アタシを興奮させるのは? 「What It Is」よ
Even the moms know what it is, but y'all niggas can't see what it is
ママたちだってあの曲を知ってるのに、アンタら野郎どもだけが現実(What it is)を直視できてないのさ
What—? What the—? Well, what the fuck is it?
何なの? マジで何? で、一体全体何だって言うのよ?
What it is? What it—? What the fuck is it?
どういうこと? 何が—? マジで何が言いたいのよ?
Boom bap, cap, boom bap rap
ブーンバップ、キャップ(嘘)、ブーンバップ・ラップ
※オールドスクールな「ブーンバップ」こそが至高だという偏見を「キャップ(嘘・デタラメ)」だと切り捨てている。
Boom bap, cap, boom bap
ブーンバップ、キャップ、ブーンバップ
Brrr, pfft
ブルルッ、プッ
[Chorus]
Get Top on the phone
トップ(Top Dawg)に電話を繋いでよ
※彼女の所属レーベル「Top Dawg Entertainment (TDE)」のCEOであるAnthony "Top Dawg" Tiffithのこと。Kendrick Lamarの名曲「Untitled 02 | 06.23.2014.」におけるアイコニックなフック「Get Top on the phone!」のオマージュ。TDEの血脈を受け継ぐアーティストとしての強烈なフレックス。
Tell him it's a wrap, nigga
もうこれで決まり(ラップ)だって伝えて
Get Top on the phone
トップに電話を繋いでよ
Tell him it's all rap, nigga
これは全部「ラップ」なんだって伝えて
Say it's real and it's rap
これは「リアル」で、そして「ラップ」だって言ってよ
And it boom and it bap
ちゃんとブーンして、バップもしてる
And it bounce and it clap
バウンスもするし、クラップ(ケツが揺れる/拍手する)もする
And it's house and it's trap
ハウスでもあるし、トラップでもあるわ
※彼女の音楽がブーンバップという狭い枠に収まらず、サウスのバウンス、クラブミュージックのハウス、そしてトラップまで、すべての要素を内包した多次元的なものであるという宣言。
It's everything
すべてが含まれてるの
I'm everything
アタシがすべて(のジャンル)なのよ
Mm, boom, cap, boom, rap, boom, pat, cat, cat
ンー、ブーン、キャップ、ブーン、ラップ、ブーン、パット、キャット、キャット
Boom, cat in a hat, boom bap, bap, bap, ooh
ブーン、「キャット・イン・ザ・ハット」、ブーンバップ、バップ、バップ、ウー
※『The Cat in the Hat』はDr. Seussによる有名なアメリカの児童書。cat, hat, bat...といった極めて単純で初歩的な韻踏み(cat in a hat)をワザと披露することで、「アンタらが求めているブーンバップの韻なんて、絵本レベルの単純な言葉遊びでしょ?」と徹底的に小馬鹿にしている。
[Non-Lyrical Vocals] [Bridge]
Hol' up, hol' up, hol' up, hol' up, hol'—
待って、待って、待って、待って、待って—
Bop, bop, bop, bop (Mhm)
バップ、バップ、バップ、バップ(フーム)
Talk to 'em, Doechii
奴らに言ってやりな、ドーチ
[Verse 2]
I gave my soul to this shit, ate lumps of coal for this shit
アタシはこのゲーム(音楽)に魂を捧げてきた、このために石炭の塊だって食ってきたわ
※「石炭を食べる(極度の貧困や苦労に耐える)」という比喩。または、石炭が極限の圧力と熱でダイヤモンド(スター)になるプロセスのメタファー。
Went on the road for this shit, played humble for this shit
このためにツアー(過酷な道のり)を回り、謙虚なフリも演じてきた
Muggsy Bogues with the shit, might call J. Cole for this shit
マグジー・ボーグスみたいに立ち回ってきた、いっそJ. Coleでも呼んでやろうかしら
※「Muggsy Bogues」はNBA史上最も背が低かった(160cm)伝説的選手。周囲の巨人たちに囲まれながらも、小さく(Humbleに)立ち回りながら圧倒的な実力でサバイブしてきた自身のキャリアを重ねている。「J. Cole」は現代の「リアルなラップ(リリカルなブーンバップ)」の最高峰とされるラッパー。彼を客演に呼んで、アタシのラップスキルを証明してやってもいいという絶対的な自信の表れ。
I'm with the bull and the shits, I'm goin' home with this shit, God—
アタシはクソみたいな戯言(ブルシット)にも付き合ってやるし、この成功を掴んで家に帰るのよ、神様—
[Chorus]
Get Top on the phone
トップに電話を繋いでよ
Get him on the phone
彼に電話を繋いで
Get Top on the phone
トップに電話を繋いでよ
Get Top on the phone
トップに電話を繋いで
Get Top on the phone
トップに電話を繋いでよ
Get Top on the phone (Phone)
トップに電話を繋いで(電話を)
Get Top on the phone (Phone)
トップに電話を繋いで(電話を)
Get Top on the phone (Phone)
トップに電話を繋いで(電話を)
