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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

DEATH ROLL - Doechii 【和訳・解説】

Artist: Doechii

Album: Alligator Bites Never Heal

Song Title: DEATH ROLL

概要

Doechiiのミックステープ『Alligator Bites Never Heal』に収録された本作は、名声の代償として彼女が陥った自己破壊的なライフスタイルを赤裸々に告白する極めてダークなトラックだ。タイトルの「DEATH ROLL(デスロール)」とは、ワニが獲物を水中に引きずり込み、回転しながら肉を引きちぎる特有の狩猟行動を指し、アルバム全体を貫くワニのメタファーの中核を成している。コカインへの依存、婚約者や友人との決別、そしてダークスキンの女性として業界で成功することへの「インポスター症候群」など、彼女を深淵へと引きずり込む精神的な「死の回転」が痛切に描かれている。彼女のキャリアにおいて最も脆く、同時に最も鋭利なリリシズムが発揮された重要曲である。

和訳

[Verse 1]

Speed the freeway when I need a breeze, ayy
風を感じたい時は、フリーウェイをぶっ飛ばすのさ、エイ

Wine and Chinese when I feel uneasy
不安な時は、ワインと中華のテイクアウトよ

Fall to my knees, take a line, I needed a boost
膝から崩れ落ちて、ライン(コカイン)を引く、ブーストが必要だったの
※「take a line」は粉末状のコカインを列(ライン)状にして鼻から吸引すること。精神的な限界を迎え、薬物に依存して無理やりテンションを上げている(ブーストする)生々しい描写。

Stumble inside of the booth, mumbling none of the truth
フラフラでブースに入り込んで、真実なんて一つも無いことをブツブツと呟いてる
※薬物でハイになった状態でレコーディングブースに入り、自身の本当の苦しみ(真実)を語る代わりに、虚飾に満ちたラップを録音しているという自己嫌悪。

As sweat drips down my tits
おっぱいに汗が滴り落ちていく中で

I contemplate, how'd it ever get like this?
考え込んじゃうの、どうしてこんな事になっちまったんだろう?って

I contemplate, how'd I ever get this rich or get this bag?
考え込んじゃうの、アタシはどうやってこんなに金持ちになって、このバッグ(大金)を手に入れたの?って

I wonder what them labels see in a bitch this black
レーベルの連中は、こんなに肌が黒い(ダークスキンの)ビッチのどこに価値を見出してるのかしら
※「インポスター症候群(自分の成功は実力ではなく偶然だと感じる心理)」の吐露。同時に、ブラックコミュニティ内でも肌の色が濃い女性(Dark-skinned Black women)が不当に評価されにくいという「カラーイズム」の問題に触れ、自分が業界から搾取されているだけではないかと疑心暗鬼に陥っている。

I wonder what my friends all think when I'm not there (Ah, ah)
アタシがいない時、友達はみんなアタシのことをどう思ってるんだろう(アー、アー)

I love the way my ideas flow when I'm not scared (Hah, hah)
恐怖を感じていない時にアイデアが溢れ出してくる、あの感覚が大好きなの(ハー、ハー)

I lovе the way my hips roll slow
自分の腰がゆっくりとロールする(揺れる)感じも大好き

But I don't like the way it feels whеn my vices are absent, I'm not there
でも、自分の「悪癖」が無い時の感覚は好きじゃない。自分がそこに居ないみたいだから
※「vices(悪徳、悪癖)」はドラッグや酒、あるいは有害な人間関係のこと。それらに依存しすぎて、シラフの状態ではもはや自我(I'm not there)を保てなくなっているという末期的な告白。

[Refrain]

I wonder, I wonder, I wonder
不思議よね、不思議なの、不思議で仕方ないわ

[Verse 2]

Sleep all day, all night, no time to work, work
昼も夜もずっと寝ていたい、仕事(ワーク)してる暇なんてないの

Ex my fiancé, can't make it work, work
婚約者を元カレにしたわ、関係を上手く機能(ワーク)させられなかった
※「make it work」は関係を修復する、上手くやるという意味。成功の裏で、プライベートにおける最愛のパートナーとの婚約破棄という大きな喪失を経験していたことを明かしている。

Bad bitches get burned, but now that bridge is burned
バッドなビッチ共は火傷するけど、今じゃあの橋も焼け落ちちまった
※英語のイディオム「burn bridges(人間関係を断ち切る、後戻りできない状態にする)」の引用。元婚約者や過去の友人たちとの関係が完全に修復不可能になったことを示している。

And when them tables turn, ya can't call back (Back)
そして立場が逆転(テーブルがターン)した時、もう電話をかけ直すことはできないのさ(バック)

Ring-ring, got that call but I can't call back (Call)
リンリン、着信はあったけど、折り返せないわ(コール)

Feeling all alone and I can't stall that (Oh, no)
完全に独りぼっちな気分、それをごまかす(先延ばしにする)こともできない(オー、ノー)

I got shit to prove, no time to fall back (Fall, fall, fall, fall)
アタシには証明しなきゃいけないことがある、一歩引いて休んでる(フォール・バック)暇なんてないのよ
※同ミックステープの別曲「WAIT」では「You should just fall back and wait(一歩引いて待つべき)」と歌っていたが、ここではその余裕すら失い、焦燥感に駆られている。彼女の精神的な矛盾と不安定さが表れている。

Fall back, fall for who is where ya left that
一歩引くって、誰のために? アンタが置き去りにした場所でね

I wonder what's the point, I wonder why fight? (Fights)
何の意味があるんだろう、どうして戦うんだろうって不思議に思う(ファイト)

I go to light the joint, I wonder why light? (Why light)
ジョイント(マリファナ)に火を点けようとして、どうして火を点けるんだろうって不思議に思うの(どうして)

I feel so ig'nant, sick of being friendly
自分がすごく無知(無作法)に感じる、愛想よく振る舞うのにもウンザリよ

Being friendly only bring bad business (Bad bid'ness)
愛想よくしたところで、悪いビジネス(厄介事)を引き寄せるだけだから(悪いビジネス)

If repetition is the master's practice (Practice)
もし「反復」が達人への道(練習)だとしたら(練習)

Then I'm a mathematician when it comes to fashion (Fashion)
ファッションに関して言えば、アタシは数学者みたいなもんね(ファッション)
※計算し尽くされたスタイリングを何度も反復し、完璧なビジュアルを作り上げているというフレックス。

Doechii-ana giving trash couture
「ドーチ・アナ」がトラッシュ・クチュール(ゴミみたいなオートクチュール)を提供してるの
※ハイブランドの「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)」をもじった造語。あえて「トラッシュ(ゴミ)」と表現することで、型破りでアバンギャルドな彼女独自のスタイルを誇示している。

Your fit is a detour, I'm not none of these whores
アンタの服装は遠回り(的外れ)よ、アタシはそこら辺のビッチ共とは違うの

[Refrain]

I wonder, I wonder, I wonder
不思議よね、不思議なの、不思議で仕方ないわ

[Verse 3]

Lost friends, shed just like loose skin
友達を失った、たるんだ皮膚みたいに脱ぎ捨てたの
※タイトル「DEATH ROLL(ワニのデスロール)」にリンクする、爬虫類(ワニやヘビ)が成長のために「脱皮(shed skin)」するメタファー。人間関係を切り捨てる冷酷さと、アーティストとして進化するための痛みを伴うプロセス。

I lost friends and lost kin closer than him, these loose ends
アイツよりも近かった友達や家族も失った、この未解決の問題(切りっぱなしの糸)の数々よ

I'd rather choose me over them
連中より、アタシは自分自身を選ぶわ

These loose ends or a hymn when I'm bleeding and I'm fading out
この未解決の問題たち、それともアタシが血を流して消えゆく時の賛美歌かしら

You know I gotta up that stock, I gotta up my profit when I'm outside
分かるでしょ、アタシは自分の株(価値)を上げなきゃいけない、外(ストリート/業界)にいる時は利益を上げなきゃいけないの

Keep my composure when I'm outside sober, gotta up my profit
シラフで外にいる時は、平常心を保たなきゃいけない。利益を上げなきゃいけないのさ
※内面がどれほど崩壊していても、外の世界(業界)では「利益を生む商品」としての価値(stock/profit)を維持し、シラフを装って(Keep composure)ハッスルし続けなければならないという、資本主義とショービジネスの残酷な結末で曲が幕を閉じる。