Artist: Doechii
Album: Alligator Bites Never Heal
Song Title: BLOOM
概要
TDE所属のラッパー、Doechiiが2024年にリリースしたミックステープ『Alligator Bites Never Heal』を締めくくる本作は、スターダムへの野心と現実生活の重圧の間で揺れ動くアーティストの精神世界を象徴するインタールード的な楽曲だ。冒頭のモノローグでは、夢の追求(Californiaへの移住やパフォーマーとしての自覚)と、家族への責任や家賃の支払いといった「生活の維持」という相反する要素に引き裂かれる葛藤が語られる。タイトルの「BLOOM(開花)」が示す通り、過酷な沼地(Swamp)から這い上がってきた彼女が、ようやく自分を肯定できる場所を見つけ、美しく咲き誇るプロセスを描いている。アルバム全体を通じて描かれた「ワニに噛まれた傷(トラウマ)」を癒やし、一人の人間としての平穏を希求する、極めてパーソナルで希望に満ちた終曲である。
和訳
[Intro]
I'm constantly trying to remember, like, okay
アタシ、いつも自分に言い聞かせようとしてるの、ええと
※楽曲の導入部は、Doechii自身の独白あるいは親しい人物との会話形式で進行する。ここでは「責任感のある大人」と「夢を追うアーティスト」の二面性に苦しむ彼女のリアルな内面が吐露されている。
"You have to chase your goals, but you gotta check in with your mom
「目標を追いかけなきゃいけないけど、ママの様子も見にいかなきゃ」
And you gotta make sure your sisters are okay"
「妹たちが元気にやってるかも確認しなきゃね」
"You gotta make sure your bills are paid, but you gotta make sure you have fun and time for you, time for your friends"
「請求書を確実に支払わなきゃいけない、でも、自分自身の楽しみや友達のための時間も作らなきゃ」
And like, I just constantly feel like I'm neglecting parts of my life
なんだか、人生の大事な部分をずっと放ったらかしにしてるような気がしてならないのよ
Nope, nope, God made a day twenty-four hours
違うわ、神様は1日を24時間としてお創りになったのよ
※ここで別の声(年長者の知恵、あるいは自身の内なる理性の声)が介入する。すべてを一気に成し遂げようとするDoechiiの焦燥感に対し、物理的な限界(24時間)を受け入れるよう諭している。
Yeah
そうね
It's not a lot of time
そんなに長い時間じゃないわ
Uh-huh
ええ
Because, you, you just can't do it all in one moment
だって、たった一つの瞬間にすべてを片付けるなんて無理なんだから
Uh-huh
そうね
There's past, present, and future
過去があって、現在があって、そして未来がある
You gotta put pieces in places, it's 24 hours
ジグソーパズルのピースを嵌めるみたいに、24時間を組み立てていくのよ
You take part of those hours
その時間の一部を使って
You do what you can do, and you go to bed
自分にできることをやって、あとは眠りにつくだけ
[Chorus]
Ooh-ooh-ooh
オー、オー、オー
Ooh-ooh-ooh, oh
オー、オー、オー
Found a place to grow
成長できる場所を見つけたわ
※「Swamp(沼地)」出身であることをレペゼンし続けてきたDoechiiが、泥の中から栄養を吸い上げ、ようやく根を張るべき「土壌(キャリアや精神的安定)」を見つけたというメタファー。
I feel wonderful
最高の気分よ
Found a place to bloom (Found a place to bloom)
花を咲かせる場所を見つけた(開花できる場所を)
※アルバムタイトルの『Alligator Bites Never Heal(ワニに噛まれた傷は決して癒えない)』という過酷な現実を生き抜いた末に辿り着いた、自己再生と成功の象徴。どんなに傷ついても、花は咲く(Bloom)という力強いメッセージ。
I feel beautiful
自分が美しいって感じるの
Ooh-ooh-ooh
オー、オー、オー
Ooh-ooh-ooh, oh
オー、オー、オー
[Outro]
I just wanna chase my dreams
アタシはただ、夢を追いかけたいだけなの
I just wanna be like
こう言えるようになりたいだけ
"Oh my God, fuck everything, fuck it, I'm moving to California"
「ああもう、全部クソ食らえ! どうでもいい、アタシはカリフォルニアに移住するわ!」
※「California」は、フロリダのローカルスターだった彼女にとって、メジャーレーベル(TDE)の本拠地であり、夢の終着点である成功の象徴。無責任にすべてを投げ出して夢に飛び込みたいという衝動的な願望。
"I'm following my dreams, oh, God"
「夢を追いかけてるのよ、ああ、神様」
"I'm a performer, I'm an entertainer, I'm a star"
「アタシはパフォーマーで、エンターテイナーで、スターなんだから!」
But I can't, because, bitch, you have to have rent
でも無理なのよ、だってビッチ、家賃を払わなきゃいけないでしょ
※再び現実に引き戻される瞬間。「スター」という虚像の裏側には、一般人と変わらない「生活の維持(家賃)」という重荷がある。この「Rent」という言葉は、彼女の代表曲『Yucky Blucky Fruitcake』から続く「貧困からの脱却」というテーマを想起させる。
You have to have a place to live, you have to have money
住む場所が必要だし、お金も必要
You have to maintain things, and that's just the way of life
物事を維持していかなきゃいけない、それが人生ってものなんだから
※夢と現実のバランスを受け入れることが、真の「開花(Bloom)」への第一歩であることを悟り、物語は幕を閉じる。この悟りは、業界でサバイブしていくための彼女なりの「癒えない傷」との付き合い方であると言える。
