Artist: Doechii
Album: Alligator Bites Never Heal
Song Title: SKIPP
概要
Doechiiのミックステープ『Alligator Bites Never Heal』に収録された本作は、テキサス州ヒューストンのヒップホップ・クラシックであるDJ DMDの「25 Lighters」(1998年)を大胆にサンプリングしたバンガーだ。無邪気な童謡「Skip to my Lou」のリズムと、銃器(Tool)やストリートの暴力性を対比させたフックが鮮烈な印象を与える。富やジュエリー(5000本のチェーン)で内なる苦痛を覆い隠そうとするスターダムの重圧と、困難な状況を先読みしてサバイブする冷徹なハスラー精神が同居している。フロリダの沼地(スワンプ)の泥臭さと、サウス・ヒップホップの歴史的文脈を見事に融合させた、彼女の特異なセンスが光る一曲である。
和訳
[Intro: DJ DMD]
Call daddy, tell him twenty-five got to go
パパに電話して、25個(のクラック)を捌かなきゃならないって伝えてくれ
※1998年のヒューストン・クラシック、DJ DMD feat. Lil' Keke & Fat Patの「25 Lighters」からの直接のサンプリング。当時のテキサスのハスラーたちは、Bicのライターの中身を抜き取り、そこにクラック・コカインの石を隠して密売していた(25 lighters)。ストリートの生々しいハスリングの歴史を引用し、楽曲に重厚なサウスの空気感を注入している。
DMD done put it down, twenty-five out the door
DMDがやってのけた、25個がドアから出ていく
Hittin' the highway, doin' twenty-five shows
ハイウェイを飛ばして、25回のショーをこなす
Twenty-five limos slammin' twenty-five doors
25台のリムジン、25枚のドアを勢いよく閉める音
Representin' fo' those holdin' twenty-five screws in they deck
デッキに25個のスクリュー(カセット)を持ってる奴らをレペゼンするぜ
※「screws」はヒューストン発祥のチョップド・アンド・スクリュード(Chopped and Screwed)の手法を生み出した伝説的DJ、DJ Screwへのオマージュ、あるいはそのミックステープを指す。
I'ma wreck and rip twenty-five crews quick
25のクルーを瞬殺でブッ壊して、引き裂いてやる
[Chorus: Doechii]
Skip to my lou, tuck the tool in my pocket
スキップ・トゥ・マイ・ルー、ポケットにツール(ハジキ)をねじ込む
※「Skip to my lou」はアメリカの伝統的な子供向けの歌・遊び。その無邪気で平和なフレーズと、「tool(銃器を指すストリートスラング)」をポケットに隠し持つという暴力的な現実を対比させた強烈なフック。
Fuck 'posed to do? Whole crew on that hot shit
どうすりゃいいっての? クルー全員がヤバいヤマ(犯罪)に乗っかってる
※「hot shit」は「最新の流行・ヤバい音楽」と、「警察に目をつけられる危険なブツや状況」のダブルミーニング。
Cop twenty-two, keep the lube for the rocket
22口径を手に入れて、ロケット用の潤滑油を準備する
※「twenty-two」は22口径の銃器。「rocket」も銃のメタファーであり、それをスムーズに作動させるためのガンオイル(lube)を意味する。同時に自身の急上昇するキャリア(ロケット)の準備を整えるという意味も含む。
Fifty-hundred chains, tuck the pain in my locket
5000本のチェーン、この苦痛はロケットペンダントの中に隠しておくの
※「Fifty-hundred(5000)」という誇張された数のジュエリー(チェーン)で身を飾り立てながらも、その奥にあるロケット(locket)には深いトラウマや心の痛み(pain)を隠している。ラッパーとしての物質的なフレックスと、内省的な脆さのコントラスト。
[Verse: Doechii]
Mayday, just tryna stay ahead of stormy weathеr till it rain day
メーデー(緊急事態)、雨が降るその日まで、嵐の天気を先読みして生き延びようとしてるだけ
※「Mayday」は遭難信号。音楽業界やストリートでの困難(stormy weather)が本格的に降り注ぐ前に、常に先手を打ってサバイブしようとする防衛本能。
It's a hundred people tryna hеlp me but I feel the same ways
100人の人間がアタシを助けようとしてくるけど、結局いつも同じように(孤独に)感じるの
Suffer loss of vision but I'm focused, bitch
視界を失うほど苦しんでも、アタシの焦点は合ってるのよ、ビッチ
Sober-minded but I'm takin' trips
頭はシラフだけど、トリップ(旅/幻覚)してるわ
※「takin' trips」は実際に各地をツアーで飛び回っていることと、ドラッグ等による精神的な「トリップ」のダブルミーニング。物理的にはシラフ(Sober)でも、業界の狂乱の中で精神がトリップしているような感覚。
Tik-tak-duck, it's all a red truck, no mercy when I tumble
チク・タク・ダック、全部が赤いトラック(危険信号)、アタシが転がる(暴れる)時に慈悲なんてない
※子供の遊び「Duck, duck, goose」をもじりつつ、時計の針(Tik-tak)や銃の撃鉄の音を連想させる。「red truck」は緊急車両や血の比喩。
Click-clack-duck, if I'm off to ya, holla mercy when I rumble
カチャッ、ターン(ダック)、アタシがアンタに向かっていくなら、アタシが暴れ回る時は慈悲を乞いな
※「Click-clack」は銃の撃鉄を起こす音。前の行の「Tik-tak」から完全にストリートの暴力(銃撃戦)へと文脈が移行している。
Mention ya nigga, mix it up, it's come up when I call you
アンタの男の名前を出して、かき回す。アタシが電話すれば、それは金(カムアップ)になるの
Fiction, yeah, it's a fiction, yeah, it's a picture when I fall through
フィクション、そう、全部フィクションよ。アタシが姿を現せば、まるで絵に描いたような光景になるのさ
[Chorus: Doechii]
Skip to my lou, tuck the tool in my pocket
スキップ・トゥ・マイ・ルー、ポケットにツールをねじ込む
Fuck 'posed to do? Whole crew on that hot shit
どうすりゃいいっての? クルー全員がヤバいヤマに乗っかってる
Cop twenty-too, keep the lube for the rocket
22口径を手に入れて、ロケット用の潤滑油を準備する
Fifty-hundred chains, tuck the pain in my locket
5000本のチェーン、この苦痛はロケットペンダントの中に隠しておくの
[Outro: Fat Pat, Lil' Keke & DJ DMD]
Love it, mane
最高だぜ、なぁ
Twenty-five lighters on my dresser, yessir
ドレッサーの上に25個のライター、イエス・サー
※DJ DMD「25 Lighters」の伝説的なフックのサンプリング。前述の通り、ライターの中にクラック・コカインを隠して密売のための準備を整えている情景。Kendrick LamarやZZ Topなども過去に引用した、テキサス・ヒップホップを象徴する歴史的なパンチラインで楽曲を締めくくっている。
Twenty-five lighters on my dresser, yessir
ドレッサーの上に25個のライター、イエス・サー
