Artist: Doechii
Album: she / her / black bitch
Song Title: This Bitch Matters
概要
DoechiiのメジャーデビューEP『she / her / black bitch』のラストを飾る本作は、強気な「Black Bitch」というペルソナの裏に隠された黒人女性の脆弱性(Vulnerability)と自己愛をテーマにした内省的なR&Bトラックだ。タイトルは「Black Lives Matter」の痛烈なもじりであり、社会から冷遇され、恋愛では搾取されがちな黒人女性の存在意義を「このビッチだって重要なんだ(This Bitch Matters)」と切実に訴えかけている。Kanye Westの「New Slaves」を引用しつつ、物質主義や消費社会の奴隷となっている現代のヒップホップ・カルチャーへの葛藤を吐露。強がってハッタリをかます(bluffing)一方で、本当は誰よりも愛とハグを求めているという生々しい本音を、気怠くもソウルフルなボーカルで歌い上げる傑作である。
和訳
[Verse 1]
Downright lazy, downright shady
マジで怠惰で、完全に怪しい
Down bad baby, you flat out played me
最悪の気分よベイビー、アンタは完全にアタシを弄んだの
※「Down bad」は絶望的な状況や、恋に盲目になりすぎて惨めな状態になっていることを指すスラング。
You downright 'sgusting, give all of it
マジで吐き気がするわ、すべてを捧げたのに
Just for nothing
全部無駄だったなんて
[Chorus 1]
You should be holding a sign saying, "Needs more loving, need more hugging"
「もっと愛が必要、もっとハグが必要」って書いた看板でも掲げておくべきね
※路上生活者が掲げるダンボールの看板のメタファー。愛情や他者からの承認に飢えている自身の内面的な貧困状態を皮肉交じりに表現している。
This bitch mugging, this bitch bluffing
このビッチはガンを飛ばして、ハッタリをかましてる
※「mugging」は険しい顔で睨みつけること。ストリートでナメられないために攻撃的な態度をとっているが、それは弱さを隠すための防衛本能(bluffing)に過ぎない。
But this bitch matters
でも、このビッチだって重要(マター)なのよ
※「Black Lives Matter」の強烈なもじり。社会から無視されがちな黒人女性(Black Bitch)の命や感情、存在そのものが価値のあるものだと自己肯定する、本作の最も重要なパンチライン。
This bitch will fuck after hours, woo
このビッチはアフターアワーズ(真夜中)にヤるのさ、ウー
※The Weekndの『After Hours』にも通じる、深夜の孤独や虚無感、そしてそれを埋めるための刹那的なセックスへの言及。
[Verse 2]
What's up, nigga? What's a matter with you?
どうしたのよ、アンタ一体何が問題なの?
'04 twins popped up out of the blue
04年生まれの双子が突然目の前に現れたの
※「'04 twins」は2004年生まれの若い世代(Z世代の象徴)が急激にシーンに台頭してきたことへの焦り、あるいは双子の銃(グロックなど)のメタファーと解釈される。時代の変化に対するプレッシャーの描写。
The pressure gave me something to prove
そのプレッシャーのせいで、アタシは自分を証明しなきゃならなくなった
It's not enough hours in the day for something to do
やらなきゃいけないことに対して、1日の時間が全然足りないのよ
[Chorus 2]
The bitch needs more loving, needs more hugging
このビッチにはもっと愛が必要なの、もっとハグが必要なのよ
Needs more soul, needs more something
もっとソウルが必要、もっと「何か」が必要なの
This bitch cold, but this bitch matters
このビッチは冷酷だけど、このビッチだって重要なんだから
This bitch will fuck after hours, woo
このビッチは真夜中にヤるのさ、ウー
[Verse 3]
Now I'm smoking cigarillos in the meadow
今じゃ草原でシガリロをふかして
Flogging through another ghetto, waving hello
また別のゲットーを通り抜けながら、手を振って挨拶してる
※「Flogging」は鞭打つ、または売り歩くこと。名声を得て環境が変わっても、ゲットーというルーツを巡りながらハッスルし続けている状況。
Hopping on another metro, sipping coffee
別の地下鉄に飛び乗って、コーヒーをすする
Hoodie on my armadillo when you called me, mmm
アンタが電話してきた時、アタシはアルマジロみたいにパーカーを被ってた
※「armadillo」は危険を感じると丸まって防御姿勢をとる動物。パーカーのフードを深く被り、外界や他者(Toxicな元恋人など)からの干渉から身を守ろうとする精神的な引きこもり状態のメタファー。
Attitude jadеd, life outdated
態度はすり減って、人生は時代遅れ
One-two stеpper, needs new cadence
ワン・ツー・ステップの反復、新しいリズム(ケイデンス)が必要ね
※代わり映えのしない日常や音楽業界のルーティンに対する倦怠感と、新たなインスピレーションへの渇望。
Need new plays, find new faith
新しいプレイ(戦略)が必要、新しい信仰(信念)を見つけなきゃ
Need new Yeezys, we new slaves
新しいYeezyが必要ね、ウチらは現代の奴隷(ニュースレイブス)だわ
※Kanye Westの2013年の名曲「New Slaves」からの直接的な引用。現代の黒人が物質主義やハイブランド(Yeezy等のスニーカー)に囚われ、自ら消費社会の奴隷となっている状況への痛烈な自己批判。
What should I do? Do today?
アタシはどうすべき? 今日は何をするべき?
Who should I be? Be today?
アタシは誰になるべき? 今日はどんな自分になればいい?
※次々と新しいトレンドやペルソナを求められるエンタメ業界において、真のアイデンティティを見失っている精神的な迷子状態。
Lost translation, no foundation
翻訳(コミュニケーション)は失敗、基盤(ファウンデーション)なんて無い
Needs more patience, needs more, mmm
もっと忍耐が必要ね、もっと、うーん
Needs more
もっと必要よ
Needs more
もっと
Needs more
もっとね
[Chorus 2]
The bitch needs more loving, needs more hugging
このビッチにはもっと愛が必要なの、もっとハグが必要なのよ
Needs more soul, needs more something
もっとソウルが必要、もっと「何か」が必要なの
This bitch cold, but this bitch matters
このビッチは冷酷だけど、このビッチだって重要なんだから
This bitch will fuck after hours, woo, (Okay, okay)
このビッチは真夜中にヤるのさ、ウー(オーケイ、オーケイ)
