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Swamp Bitches - Doechii & Rico Nasty 【和訳・解説】

Artist: Doechii & Rico Nasty

Album: she / her / black bitch

Song Title: Swamp Bitches

概要

フロリダの「沼地(Swamp)」をルーツに持つDoechiiと、メリーランド発のパンクラップの旗手Rico Nastyが激突した、EP『she / her / black bitch』収録の凶悪なバンガーである。インダストリアルな重厚ビートの上で、両者はマスキュリンな支配力、バイセクシャルのフレックス、そしてフェイクな同業者への容赦ない冷笑をスピットする。ハリケーン・カトリーナやジョン・シナから、B.B. Simonのベルト、RICO法(連邦倒産及び腐敗組織法)に至るまで、ブラックカルチャーとストリートの文脈を高度なワードプレイで料理しており、既存のフィーメイル・ラップの枠組みを破壊する彼女たちの異端なカリスマ性が極限まで引き出された傑作だ。

和訳

[Intro: Doechii]

I'm just one bitch with three baths, I could shit all day (Shit all day)
アタシはバスルームが3つもある1人のビッチ、一日中クソ(ヤバいこと)ができるのさ
※「shit」は排泄と「ヤバい曲を作る/フレックスする」のダブルミーニング。バスルームが複数ある豪邸に住んでいるという成り上がりの誇示である。

I got small tits, two nips, you could suck broad day (Suck broad day)
小さなおっぱいに2つの乳首、白昼堂々吸わせてあげるわ

I piss fifties and leave the seat up
50ドル札でおしっこをして、便座は上げたままにするの
※男性のように「便座を上げたままにする」ことで、男勝りのドミナンス(支配力)を表現している。また、排泄物に使うほど50ドル札(大金)が有り余っているというフレックスだ。

Doechii bottom feeder to Doechii the Don Diva
底辺の住人(ボトムフィーダー)だったDoechiiから、ドン・ディーヴァ(首領)のDoechiiへ
※「bottom feeder」はフロリダの沼地(Swamp)の底に生息する生物から転じて、最下層の貧困層を指す。「Don Diva」はリル・キムのようなマフィアの女ボスを指し、底辺からの鮮やかな成り上がりを示している。

Walking over niggas and bitches then kick my feet up
野郎共やビッチ共を踏みつけて、足を投げ出してくつろぐのさ

'Cause I'm a— I'm a diva
だってアタシは…アタシはディーヴァだから

Nigga, check my bracket and tell me I ain't a keeper
なぁ、アタシのブラケット(所得階層)をチェックして、アタシが「手放せない女」じゃないって言ってみなよ
※「bracket」は所得階層(Tax bracket)のこと。莫大な稼ぎを見ても、まだアタシを手放せる(Keeperじゃない)って言えるのかという強烈な煽りである。

This outfit'll cause a fever
この服を見たら熱が出るわよ

This ass'll make 'em believers
このケツを見れば、アイツらも信者(ビリーバー)になる

My jacket chinchilla cheetah
アタシのジャケットはチンチラとチーターの毛皮

I'm wetter than Hurr' Katrina
ハリケーン・カトリーナよりも濡れてるわ
※女性器の濡れ具合(WAP)を、2005年に米国南部に甚大な被害をもたらした「ハリケーン・カトリーナ」の猛威に例えた、不謹慎ギリギリのハードコアなパンチラインだ。

[Verse 1: Doechii]

Wet like Trina, ass on Frida
トリーナみたいに濡れて、フリーダみたいなケツ
※「Trina」はマイアミの伝説的フィーメイルラッパー「The Baddest Bitch」であり、Doechiiのフロリダのルーツへのリスペクト。「Frida」は大きな尻の象徴とされる。

Queen lil' Sheeba, she a lil' diva
小さなシバの女王、彼女は小さなディーヴァ

Face like 'Retha, shoes on bleeder
アレサみたいな顔立ち、血を流すような靴
※「'Retha」はソウルの女王アレサ・フランクリン。「shoes on bleeder」は靴底が真っ赤なクリスチャン・ルブタンのことである。

Call her Miss Johnson, real John Cena
彼女をミス・ジョンソンと呼びな、本物のジョン・シナよ
※「Johnson」は男性器のスラング。WWEのスタープロレスラー、ジョン・シナの決めゼリフ「You can't see me(俺の姿は見えない=圧倒的すぎて相手にならない)」に掛け、自分が見えないほど高次元にいることを誇示している。

Anything to squeeze her, please her, she a real diva
彼女を抱きしめるため、喜ばせるためなら何でもする、彼女は本物のディーヴァ

She don't like men, me neither
彼女は男が好きじゃない、アタシもね
※Doechiiのバイセクシャルなセクシュアリティの表明。男には目もくれず、女性同士で完結しているというスタンスだ。

Shawty wanna treat her, eat her, rockstar Beatles
あの娘は彼女を労って、食べたいのさ、ビートルズみたいなロックスター

Shawty want a red two-seater
あの娘は赤い2シーター(スポーツカー)を欲しがってる

That ain't a Rollie, that's a Casio
それはロレックスじゃない、ただのカシオよ

Ain't hopped a porch, or step or patio
ポーチも、階段も、パティオも飛び越えたことなんてないでしょ
※「hopped a porch」はフッド(貧困街)の玄関先のポーチにたむろする生活から抜け出し、成功を掴むこと。自分の過去曲「Yucky Blucky Fruitcake」のセルフリファレンスであり、フッドの苦労を知らないフェイクな連中へのディスである。

You must've missed the drip and slipped inside
アンタはドリップ(水滴/ファッション)を見逃して、中に滑り込んじゃったのね

The pussy tighter than Spaghetti-O
プッシーはスパゲッティ・オーズよりもキツいの
※「Spaghetti-Os」はアメリカの子供に人気の、小さな「O」の形をした缶詰パスタ。局所の穴がそれくらい小さい(タイトである)というクレイジーな比喩表現だ。

Bitch, I'm in love with this scenario (Bitch, I'm in love)
ビッチ、アタシはこのシナリオに恋してるの

I need some drugs for this scenario (I need some drugs)
このシナリオにはドラッグが必要ね

I need a check or cash, a leather bag
小切手か現金、レザーのバッグが必要

Or I'ma need blood for this scenario
さもなきゃ、このシナリオには「血」が必要になるわよ

Lil' white bitch on Depop, she a lil' teapot
Depopにいる白人の小娘、まるで小さなティーポット
※「Depop」はZ世代に人気のフリマアプリ。「I'm a little teapot, short and stout(私は小さなティーポット、背が低くてずんぐりむっくり)」という有名なマザーグースの童謡を引用し、ネットで服を売買しているだけのイケてない量産型の女の子を小馬鹿にしている。

Two left feet, them Reeboks
2つの左足(ダンスが絶望的に下手)に、リーボック

Shawty did freelance, now she a free thot
あの娘はフリーランスでやってたけど、今じゃタダのビッチ(Thot)よ

Should've never left the bitch alone with my sea moss
あのビッチをアタシのシーモス(海藻)と一緒にしとくべきじゃなかった
※「Sea moss」は近年ブラックコミュニティで流行している健康食品。ヘルシーぶっているフェイクな女へのディスである。

Now the bitch skip-hip-hoppin' in my Reeboks
今じゃあのビッチが、アタシのリーボックを履いてスキップ・ヒップホップしてる

Talking 'bout a detox, pussy like a beatbox
デトックスがどうとか言って、プッシーはビートボックスみたいに鳴ってる

All grown up, bitch lookin' like Selena
すっかり成長して、セレーナみたいなビッチ

That booty cheap but you can go cheaper
そのケツは安っぽいけど、アンタならもっと安くできるわよ

That booty cheap (Cheap)
そのケツは安っぽい

Ain't even peep, I need that booty for keeps
覗き見すらしてない、そのケツは永遠にアタシのもの

That booty reek (Reek)
そのケツは臭いわ

Ain't even cheap, that booty fake, got a leak (I need a, I need a, I need a)
安くすらない、そのケツはフェイクで、中身が漏れてるわよ
※BBL(ブラジリアン・バット・リフト:豊尻手術)の失敗や、安物のシリコンを入れている女性のフェイクさを痛烈にディスっている。

I need a freak like an animal, freak like a cannibal
アニマルみたいなフリーク(変態)、人食い(カニバル)みたいなフリークが必要なの

She highly flammable, freak like a merry-go
彼女は超引火性、メリーゴーランドみたいにヤバい

Let me jump inside of shawty pussy like a cannonball
あの娘のプッシーの中に、キャノンボール(砲弾)みたいに飛び込ませて
※「Cannonball」はプールなどに膝を抱えて水しぶきを大きく上げて飛び込むこと。過激なセックスのメタファーだ。

Freak, freak, freak, freak
フリーク、フリーク…

[Bridge: Doechii]

Ha-ha-ha-ha-ha-ha-ha (Freak, freak)
ハハハハハ(フリーク、フリーク)

Ah-ha-ha-ha-ha-ha-ha-ha-ha-ha (Freak, freak, freak, freak, freak, freak)
アハハハハハ(フリーク、フリーク…)

Ha-ha-ha-ha-ha-ha
ハハハハハ

Neat freak, neat freak, neat freak, neat freak, neat freak
潔癖症(ニート・フリーク)、潔癖症…

[Verse 2: Doechii]

I wish death on all of you bitches
アンタらビッチ全員に死を願うわ

I blew fifty racks in one summer
ひと夏で50ラック(5万ドル)を吹き飛ばしたの

I think I deserve a new Hummer
新しいハマーに乗る資格があると思うわ

I still clap for bitches I'm front of
アタシの目の前にいるビッチたちには、今でも拍手して(尻を叩いて)あげる
※「clap」は称賛の拍手と、尻をパンパン叩く(あるいは銃を撃つ)のダブルミーニング。格下の相手に対する余裕の表れである。

That rap bitch must be the new runner
あのラップ・ビッチは新しい使い走り(二番手)ね

Mad they can't predict how I'll stunt
アタシがどうやってスタント(フレックス)するか予想できなくて、連中はキレてるのさ

Just make sure it's chips with my lunch
アタシのランチにはちゃんとチップス(チップ=金)をつけてね

Diamonds bustin' out to my fronts
ダイヤモンドがアタシのフロント(金歯/前歯)から弾け飛んでる

And niggas smoke dick 'cause Doechii too blunt
野郎どもはディックを吸う(クソなことをする)、だってDoechiiがブラント(直球)すぎるから
※「smoke dick」はAAVEで「馬鹿なことを言う、イカれてる」という意味。「blunt」は「率直な、遠慮のない」という意味と、「マリファナの葉巻(ブラント)」のダブルミーニング。Doechiiのラップがストレートすぎて、ヘイターたちがおかしくなっているというワードプレイだ。

[Verse 3: Rico Nasty]

I whoop hoes like I'm a new belt
新しいベルトみたいに、ビッチ共を引っ叩く(whoop)わ
※親が子供を革ベルトで叩くお仕置き(whoop)と、チャンピオンベルトを手に入れた王者のダブルミーニング。Ricoの暴力的なエントランスである。

Popeye strong 'cause I eat my kale
ポパイみたいに強い、だってアタシはケールを食べてるから
※ポパイの力の源である「ほうれん草」を、現代の健康志向を象徴するスーパーフード「ケール」にアップデートした小粋なジョークだ。

Like mine dark, don't fuck with no Mayo
アタシはダークなのが好き、マヨネーズ(白人)とは絡まない
※「Mayo(マヨネーズ)」は白人を揶揄するスラング。ブラックカルチャーへの誇りと、自身の男(または女)の好みをかけている。

Cause a scene 'cause I'ma post bail (Free me)
騒ぎを起こすわ、どうせ保釈金(ベイル)を払うからね(自由にして)

Feelin' like boulders, chip on my shoulders
大きな岩(ボルダー)みたいな気分、肩にチップ(恨み)が乗ってる
※英語のイディオム「chip on one's shoulder(喧嘩腰、過去の恨みやコンプレックス)」の「chip(木屑、欠片)」を、「boulders(巨大な岩)」と対比させて巨大化させた秀逸な表現である。

Won't tip over, still at the top
倒れたりしない、アタシはまだ頂点にいる

Sold your soul, these bitches so bogus, how you bold?
魂を売ったのね、このビッチ共はマジでボーガス(偽物)、よくそんな強気になれるわね?

I can't see the font
フォントが小さすぎて見えないわ
※相手の存在が小さすぎる、または言っていることが薄っぺらすぎて読む(理解する)価値がないというディスだ。

They wanna police us, shout out to my nieces
連中はアタシたちを取り締まりたがる、姪っ子たちにシャウトアウト

Stay on the defense, niggas is leeches
守りを固めな、野郎どもはヒル(搾取者)だから

Can't take Plan B, moved on to Plan C
プランB(事後避妊薬/次善策)は取れない、プランCに進んだわ

Wild like a banshee, my niggas is apes
バンシー(死を告げる妖精)みたいにワイルド、アタシの仲間は類人猿(エイプ)

You bitches chimpanzees, at the party like Gatsby
アンタらビッチはチンパンジー、ギャツビーみたいにパーティーしてる
※名作『華麗なるギャツビー』の引用。豪華だが空虚なパーティーを開いて浮かれている連中への皮肉だ。

I'm where the tools and the gats be
アタシはツール(道具/銃)とガトリング(銃)がある場所にいるのさ

I don't get jet-lagged, I just take BC
時差ボケになんてならない、アタシはBC(粉末鎮痛剤)を飲むだけ
※「BC powder」はアメリカ南部でよく使われる強力な粉末状の鎮痛剤。

I'm that bitch, there won't be a repeat
アタシこそが「そのビッチ」、二度と同じ存在は現れない

Simon says the belt is BB
サイモンが言うには、ベルトはB.B.だってさ
※子供の遊び「Simon says(船長さんの命令)」と、2000年代のヒップホップ・ファッションを象徴するスワロフスキー装飾の「B.B. Simon」のベルトを掛けた秀逸なライム。

Nickname CC, coulda bought CCs
ニックネームはCC、CC(シャネル)だって買えたはず

Didn't want DDs, suck on my PP
DD(デカい胸)なんて欲しくない、アタシのPP(チンコ)でもしゃぶりな
※女性でありながらマスキュリンな支配力(Big Dick Energy)を誇示する、Rico Nasty特有のパンクなアティチュード。

Niggas so Pee-Wee, money green like seaweed
野郎どもはピーウィー(ちっぽけ)ね、金は海藻みたいに緑色

Balenci' beanie
バレンシアガのビーニー

You small ball bitch, must've been a preemie
アンタは金玉の小さいビッチ、きっと未熟児(プリーミー)だったのね

Eating on lamb, I forgot the 'ghini
ラム(子羊の肉)を食べてる、ギーニ(ランボルギーニ)は忘れちゃった
※Lamb(羊肉)とLamborghini(ランボルギーニの略称Lambo)を掛けている。

Don't try this at home, make this shit look easy, easy, easy
家で真似しちゃダメよ、アタシはこのクソヤバいことを簡単に見せちゃうんだから

My money fleek, fleek, body petite
アタシの金は完璧(フリーク)、身体は小柄(プティ)

Killin' these bitches, they know it was me
このビッチ共を皆殺しにしてる、みんなアタシの仕業だって分かってるわ

Bitch, she can't think for herself, so we call her a sheep, sheep, sheep
ビッチ、彼女は自分で考えられないから、ウチらは彼女を羊(シープ)って呼ぶのさ

Lil' Bo Peep (Haha)
リトル・ボー・ピープみたいにね(ハハ)
※マザーグースの童謡「Little Bo-Peep(羊飼いの女の子)」の引用。羊(自分の意思を持たない大衆)を先導するどころか、羊と同レベルになっているフェイクな女たちを嘲笑している。

Bravado on my jeans, luggage I'm rollin' around Louis V
ジーンズには虚勢(ブラヴァード)を纏って、転がしてる荷物はルイ・ヴィトン

Got on Red Bottoms, feel like Cardi B
レッドボトム(ルブタン)を履いて、Cardi Bになった気分よ
※Cardi Bのブレイク曲「Bodak Yellow」の有名なライン「These expensive, these is red bottoms」へのオマージュ。

Got hit wit' the Rico, that bitch started singin' like she was on Glee
RICO(法)でやられて、あのビッチは『Glee』に出てるみたいに歌い(密告し)始めたわ
※「RICO」は連邦倒産及び腐敗組織法(RICO法)のことと自身の名前(Rico Nasty)のダブルミーニング。ストリートで「sing」は警察にペラペラと密告(スニッチ)することを意味し、それをミュージカルドラマ『Glee』に例えた完璧なパンチラインで曲を締めている。