Artist: Lil Nas X
Album: MONTERO
Song Title: TALES OF DOMINICA
概要
2021年リリースのデビューアルバム『MONTERO』に収録された、Lil Nas Xの最も内省的でダークな過去を掘り下げるトラック。タイトルの「Dominica(ドミニカ)」はカリブ海の島国を指し、巨大な成功を手にした彼自身の「孤立」と、逃れられない「運命の島」の隠喩として機能している。歌詞では、大学中退後に姉の家で空気が漏れるエアベッドに寝泊まりしていた極貧時代や、薬物依存の母親との機能不全家族(ブロークン・ホーム)のトラウマが赤裸々に語られる。スターダムに上り詰めてもなおインポスター症候群や不安障害に苛まれる青年のリアルな葛藤を、アコースティックなギターの旋律に乗せて痛切に歌い上げた、アルバムの深淵を覗くような傑作である。
和訳
[Pre-Chorus]
Woke up on the floor
床の上で目が覚めた
Oh, this plastic bed don't blow up no more
あぁ、このプラスチックのベッドはもう膨らまない
※ブレイク前の2018年、大学を中退した彼が姉の家に居候し、空気が漏れる安物のエアベッド(プラスチックのベッド)で寝起きしていた極貧時代と不安定な生活のリアルな描写。
In this broken home
この壊れた家庭(ブロークン・ホーム)じゃ
Everyone becomes predictable
誰もが予想通りの行動しかとらなくなる
※両親の離婚や、重度の薬物依存症である母親との軋轢など、機能不全家族の中で繰り返される負の連鎖と、そこから抜け出せない絶望感。
[Chorus]
Oh, sometimes you're angry
あぁ、時には怒りに震え
Sometimes you're hurting
時には傷ついて
Sometimes you're all alone
時には完全に一人ぼっちになる
Sometimes I'm anxious
時々、俺は不安に押しつぶされそうになる
Sometimes it makes me
時々、そのせいで
Feel like there's only now
「今」しか存在しないような気分にさせられるんだ
※トラウマによるパニックや不安障害(Anxiety)の描写。未来への希望が見えず、苦しい「現在」だけに閉じ込められているような精神的な閉塞感。
[Post-Chorus]
I've been living in my lowest, it's safe to say
どん底の生活を送ってきた、そう言っても過言じゃない
Hope my little bit of hope don't fade away
俺のわずかな希望が、どうか消え去らないでほしい
I've been living on an island made from fate
運命で作られた島で、俺はずっと生きてきたんだ
※曲のタイトル「TALES OF DOMINICA(ドミニカの物語)」の回収。カリブ海の島国「ドミニカ」を、他者から隔絶された彼自身の「孤独」や、100万分の1の確率で手にしたスターダムという「運命の島」のメタファーとして用いている。天才ゆえの孤立。
Can't go running back to home, I can't facе her face (Oh)
走って家に帰ることもできない、あの人の顔をまともに見られないから(オー)
※「あの人(her)」とは彼の実の母親のこと。同アルバム収録の『DEAD RIGHT NOW』でも語られている通り、薬物依存で彼を苦しめた母親との修復不可能な溝により、彼にはもはや帰るべき「家(Home)」が存在しないという悲痛な事実。
[Verse]
Oh, finally grown, ain't nothing like I hopеd it would be
あぁ、やっと大人になったのに、俺が思い描いてたのとは全然違う
Out on my own, I'm floating in an oceanless sea
たった一人で、海のない海原(オーシャンレス・シー)を漂っている
※「海のない海(oceanless sea)」という矛盾した詩的なメタファー。自由(大人/独立)を手に入れたはずが、実は何も見えない虚無の中に放り出されただけだという孤独と喪失感。
Could I be wrong? Was everybody right about me?
俺が間違ってたのか? 俺に対するみんなの評価が正しかったのか?
※成功を掴んだ後も消えない「インポスター症候群(自分の実力を信じられない心理状態)」。自分の夢を否定した父親やアンチたちの言葉が、彼の内面で呪いのように響いている。
Scary things in my head, I can't dream and I just
頭の中に恐ろしい考えが浮かんでくる、夢を見ることもできずに、俺はただ…
※「恐ろしい考え(Scary things)」とは、ブレイク前夜に彼を苛んでいた自殺願望や重度のうつ症状の暗示。
[Pre-Chorus]
Woke up on the floor
床の上で目が覚めた
Oh, this plastic bed don't blow up no more (Ooh)
あぁ、このプラスチックのベッドはもう膨らまない(ウー)
In this broken home
この壊れた家庭(ブロークン・ホーム)じゃ
Everyone becomes predictable
誰もが予想通りの行動しかとらなくなる
[Chorus]
Oh, sometimes you're angry
あぁ、時には怒りに震え
Sometimes you're hurting
時には傷ついて
Sometimes you're all alone
時には完全に一人ぼっちになる
Sometimes I'm anxious
時々、俺は不安に押しつぶされそうになる
Sometimes it makes me
時々、そのせいで
Feel like there's only now
「今」しか存在しないような気分にさせられるんだ
[Post-Chorus]
I've been living in my lowest, it's safe to say
どん底の生活を送ってきた、そう言っても過言じゃない
Hope my little bit of hope don't fade away
俺のわずかな希望が、どうか消え去らないでほしい
I've been living on an island made from fate
運命で作られた島で、俺はずっと生きてきたんだ
Can't go running back to home, I can't face her face
走って家に帰ることもできない、あの人の顔をまともに見られないから
[Outro]
Ooh
ウー
Ooh
ウー
