Artist: Lil Nas X
Album: 7
Song Title: C7osure (You Like)
概要
2019年発表のデビューEP『7』のラストを飾る本作は、Lil Nas Xのキャリア、そしてヒップホップ史において極めて重要な意味を持つ一曲である。彼はプライド月間の最終日である同年6月30日、Twitter上で「C7osureをよく聴いてみて」と投稿し、自身がゲイであることを世間にカミングアウトした。ホモフォビア(同性愛嫌悪)が根強く残るヒップホップシーンにおいて、世界的ヒットの絶頂期に自らのセクシュアリティを公表することは異例中の異例だった。本作は、他者の期待に合わせて「演技」するのをやめ、自らの真実を生きる決意を歌った感動的なマニフェストだ。タイトルにEP名である「7」が刻まれている通り、彼がこれまでの人生の一つの章を終え(Closure)、新たな自分へと境界線を越える瞬間を記録した記念碑的トラックである。
和訳
[Chorus]
True say, I want and I need
マジな話、俺は望んでるし、必要なんだ
※「True say」は「本当のことを言うと」「マジな話」を意味するスラング。これまで隠してきた自身の真実(セクシュアリティ)を告白する直前の、切実な思いが込められている。
To let go, use my time to be free
すべてを手放して、自由になるために時間を使うことが
It's like it's always what you like
まるでいつも、お前らの好みに合わせているみたいだ
※ここでの「you(お前ら)」は、世間やヒップホップ・コミュニティが押し付ける「ストレートの黒人男性ラッパー」というステレオタイプや異性愛規範を指す。他人の期待に応えるために自分を押し殺してきた過去への決別である。
It's always what you like
いつもお前らの思い通りにさ
Why it's always what you like?
なんでいつもお前らの好きなように生きなきゃならないんだ?
It's always what you like, huh
いつだってお前らの好みに合わせてさ、ハァ
[Post-Chorus]
Ain't no more actin', man, that forecast say I should just let me grow
もう演技は終わりだ。天気予報(未来)は、俺らしく成長すべきだって言ってるぜ
※「actin'(演技)」は、ストレートの男性を演じてきたこと。「forecast(予報)」は自分の未来の展望を指す。EP『7』のアートワークには虹(LGBTQ+の象徴)が描かれており、雨上がりの空(予報)と虹を掛けたダブルミーニングであるというGeniusでのファンの考察も存在する。
No more red light for me, baby, only green, I gotta go
俺を止める赤信号はもうねえよ、ベイビー。あるのは青信号だけだ、俺は進まなきゃならねえ
※これ以上自分を偽って立ち止まる(赤信号)ことをやめ、真の自分として前進する(青信号)決意表明。
Pack my past up in the back, oh, let my future take ahold
過去は全部バックパックに詰め込んで、あぁ、未来に身を委ねるんだ
※「クローゼット(ゲイであることを隠している状態)」の中に過去をしまい込み、解放された未来へと踏み出すメタファー。
This is what I gotta do, can't be regrettin' when I'm old
これが俺のやるべきことだ、ジジイになった時に後悔なんてしてられねえからな
※カミングアウトがキャリアの妨げになる恐怖よりも、一生自分を偽り続けて後悔する恐怖の方が大きいという、彼がカミングアウトに至った最大の動機が明かされている。
[Verse]
Brand new places I'll choose and I'll go, I know
俺が自分で選んだ新しい場所へ行くんだ、分かってる
Embracin' this news I behold unfolding
目の前で明らかになっていくこのニュースを受け入れながらな
※「news」は彼自身のカミングアウトのニュースのこと。世界中のメディアやファンがこの事実を知って騒ぎ立てる状況を、彼自身が予想し、それを受け入れている(Embracin')状態を描写している。
I know, I know, I know it don't feel like it's time
分かってる、分かってるよ。まだその時期じゃない気がするのは
But I look back at this moment, I'll see that I'm fine
でも後になってこの瞬間を振り返った時、俺は間違ってなかったって分かるはずさ
I know, I know, I know it don't feel like it's time
分かってる、分かってるよ。まだその時期じゃない気がするのは
※「Old Town Road」がビルボードチャートで歴史的な大記録を更新し続けていたまさにその絶頂期。ビジネス的にはカミングアウトするには「最悪のタイミング(it don't feel like it's time)」だったかもしれないが、彼の精神的な限界が来ていたことを示している。
I set boundaries for myself, it's time to cross the line
自分で自分に境界線を引いてたんだ、今こそその線を越える時だ
※本作の核心部。「boundaries(境界線)」とは、世間の目を気にして無意識に「ストレートのラッパー」として振る舞っていた彼自身が作った心の壁のこと。「cross the line(一線を越える)」ことで、クローゼットの扉を開け、ゲイの黒人男性アーティストとしての真の姿を世に晒すという強烈な決意。
[Chorus]
True say, I want and I need
マジな話、俺は望んでるし、必要なんだ
To let go, use my time to be free
すべてを手放して、自由になるために時間を使うことが
It's like it's always what you like
まるでいつも、お前らの好みに合わせているみたいだ
It's always what you like
いつもお前らの思い通りにさ
Why it's always what you like?
なんでいつもお前らの好きなように生きなきゃならないんだ?
It's always what you like, uh
いつだってお前らの好みに合わせてさ、アー
[Post-Chorus]
Ain't no more actin', man, that forecast say I should just let me grow
もう演技は終わりだ。天気予報(未来)は、俺らしく成長すべきだって言ってるぜ
No more red light for me, baby, only green, I gotta go
俺を止める赤信号はもうねえよ、ベイビー。あるのは青信号だけだ、俺は進まなきゃならねえ
Pack my past up in the back, oh, let my future take ahold
過去は全部バックパックに詰め込んで、あぁ、未来に身を委ねるんだ
This is what I gotta do, can't be regrettin' when I'm old
これが俺のやるべきことだ、ジジイになった時に後悔なんてしてられねえからな
