Artist: Lil Nas X
Album: 7
Song Title: Kick It
概要
2019年のデビューEP『7』収録の本作は、突然の世界的ブレイクを果たした直後のLil Nas Xが直面した「人間関係の劇的な変化」をテーマにしている。興味深いのは、歌詞の視点が彼自身ではなく、「成功の匂いを嗅ぎつけてすり寄ってくるかつての知人」に設定されている点だ。「Old Town Road」のビルボード除外騒動に言及しながら親しげに近づき、無視されると手のひらを返して「2ヶ月で消える一発屋」と罵倒する。この生々しい描写は、彼に向けられた世間の偏見やフェイクな友人たち(クラウト・チェイサー)の滑稽な心理を、皮肉とユーモアを交えて見事に炙り出している。
和訳
[Intro]
Bizness Boi
ビズネス・ボーイ
※本楽曲のプロデューサーであるBizness Boiのシグネチャータグ。彼はPartyNextDoorや6LACKなども手掛けるR&B/トラップシーンの重要人物である。
[Chorus]
Run to, to me, for three
俺のところへ、俺のところへ駆け込んでこいよ、3グラムのために
※「three」はマリファナの量(約3グラム=eighth、1/8オンス)を指すスラング。かつての知人がLil Nas X(以降、Nas)を呼び出すための口実としてマリファナの取引を使っている。
See, if you need weed, get it from me
ほら、ハッパが必要なら、俺から買えよ
It's good
極上だぜ
See if you want it, Nas, I got it, nigga, we should go and kick it
欲しいなら言ってくれよ、Nas、俺が持ってるからさ。なぁ、一緒に遊ぼうぜ(キック・イット)
※「kick it」は「遊ぶ、チルする」というスラングで、本作のタイトル。急に世界的スターになったNasに対し、マリファナをダシにしてどうにか繋がりを持とう(クラウト・チェイスしよう)とする浅ましい心理が描かれている。
See you on the move, but we was cool, now don't forget it
お前が忙しく動き回ってるのは見てるけど、俺たち仲良かっただろ。なぁ、忘れないでくれよ
※「we was cool」と過去の薄い関係を過剰に強調し、恩着せがましく接近してくるフェイクな友人の典型的なセリフ。
Oh come, get weed from me
なぁ来いよ、俺からハッパを買ってくれ
It's good
極上なんだ
[Verse 1]
Now you all over the place
今やあちこちでお前の姿を見かけるぜ
Check TL, I see your face
タイムライン(TL)を見れば、お前の顔が流れてくる
You just the nigga these days
最近のお前はマジで時の人だな
My brother showed me your wave
うちの兄貴がお前の波(流行り)を教えてくれたんだ
Seen you on the TV, heard that Billboard took your chartin' place
テレビでも見たし、ビルボードがお前のチャート枠を奪ったって話も聞いたぜ
※2019年に起きたヒップホップ史に残る大事件「Old Town Roadのビルボード・カントリーチャート除外騒動」への直接的な言及。知人が世間のゴシップをネタにして、必死にNasとの会話の糸口を見つけようとしている生々しい描写。
Heard your snippets on IG, man, tell me what's the droppin' dates
インスタ(IG)でお前の新曲のデモ(スニペット)も聴いたよ。なぁ、リリース日はいつなんだ?
My big sister love you nigga, you the G.O.A.T., my uncle say
うちの姉貴もお前のことが大好きだし、叔父さんに至ってはお前のことをG.O.A.T.(史上最高)だって言ってるぜ
※「G.O.A.T.」はGreatest Of All Timeの略。家族全員がファンだと誇張し、どうにかしてスターになったNasの関心を惹きつけようとする、下心丸出しの滑稽なアピールである。
New pack just came in, my nigga, this that cookie funnel cake
新しいネタ(パック)が入ったんだ、兄弟。クッキー・ファンネル・ケーキっていう極上の品種さ
※「pack」はマリファナの束。「cookie funnel cake」は人気の大麻品種であるGirl Scout Cookies系のフレーバーを指す。高級な大麻をエサにして気を引こうとしている。
[Chorus]
Run to, to me, for three
俺のところへ、俺のところへ駆け込んでこいよ、3グラムのために
See, if you need weed, get it from me
ほら、ハッパが必要なら、俺から買えよ
It's good
極上だぜ
See if you want it, Nas, I got it, nigga, we should go and kick it
欲しいなら言ってくれよ、Nas、俺が持ってるからさ。なぁ、一緒に遊ぼうぜ(キック・イット)
See you on the move, but we was cool, now don't forget it
お前が忙しく動き回ってるのは見てるけど、俺たち仲良かっただろ。なぁ、忘れないでくれよ
Oh come, get weed from me
なぁ来いよ、俺からハッパを買ってくれ
It's good
極上なんだ
[Instrumental Bridge] [Verse 2]
Oh, you just that nigga, now, can't pick up, cool, then let me know
あぁ、お前はもう「大物」ってわけか。電話にも出られないんだな、オッケー、ならそう言ってくれよ
※ここから視点人物(知人)の態度が豹変する。Nasに連絡を無視されたことでプライドを傷つけられ、すり寄る態度から一転して攻撃的になる「手のひら返し」が見事に描写されている。
You ain't got no talent, nigga, more up in my pinky toe
お前になんか才能はねえよ、俺の足の小指のほうがまだマシな才能を持ってるぜ
※拒絶された腹いせに放たれる負け惜しみ。相手を否定することで自己正当化を図るアンチの典型的な行動パターン。
I just thought that we could kick it, why not let me know?
俺はただ一緒に遊びたかった(キック・イットしたかった)だけなのに、なんで一言くらい言ってくれないんだ?
You'll fall off, I'll give it, oh
どうせお前はすぐに落ち目になる(フォール・オフする)さ。あぁ、予想してやるよ
※「fall off」は人気が落ちる、キャリアが終わること。
Two months, give or take a whole
まぁ2ヶ月ってとこか、長く見積もってもな
※「Old Town Road」の爆発的ヒット直後、多くのヘイターやメディアがLil Nas Xを「一発屋(One Hit Wonder)」と嘲笑し、すぐに消えると予言していた事実への強烈な皮肉。彼はこの声に屈することなく、歴史的な大成功を収め、ヘイターたちの予言を完全に打ち砕くことになる。
[Chorus]
Run to, to me, for three
俺のところへ、俺のところへ駆け込んでこいよ、3グラムのために
See, if you need weed, get it from me
ほら、ハッパが必要なら、俺から買えよ
It's good
極上だぜ
See if you want it, Nas, I got it, nigga, we should go and kick it
欲しいなら言ってくれよ、Nas、俺が持ってるからさ。なぁ、一緒に遊ぼうぜ(キック・イット)
See you on the move, but we was cool, now don't forget it
お前が忙しく動き回ってるのは見てるけど、俺たち仲良かっただろ。なぁ、忘れないでくれよ
Oh come, get weed from me
なぁ来いよ、俺からハッパを買ってくれ
It's good
極上なんだ
