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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Rookie - Lil Nas X 【和訳・解説】

Artist: Lil Nas X

Album: October 31st

Song Title: Rookie

概要

2018年発表のEP『October 31st』に収録された、Lil Nas Xのキャリア初期の野心と覚悟が刻まれた一曲。タイトル「Rookie(新人)」が示す通り、ラップゲームに本格参入したばかりの彼が、周囲の嘲笑やレーベルからの冷遇を跳ね返し、頂点に立つことを宣言するマニフェストである。特筆すべきは、同時代のラッパーが犯罪者やギャングスタを賛美する中で、自身は宇宙物理学者ニール・ドグラース・タイソンからインスピレーションを受けていると語る、彼のオタク的で知的なバックグラウンドの提示だ。さらにNBAのレブロン・ジェームズの移籍劇に自身の才能を逃したレーベルを例えるなど、ポップカルチャーとスポーツの時事ネタを巧みに織り交ぜる彼のリリシズムが光る、ブレイク前夜の熱量に満ちたトラックである。

和訳

[Verse 1]

Uh
アー

Get it, get it, I went and did it again
稼いでやるぜ、あぁ、俺はまたブチかましてやったんだ

Rip it, flip it, they say I'm switchin' on friends
ビートを切り刻んで金を稼ぐ、連中は俺がダチを裏切ったなんて言いやがる
※音楽制作に没頭して成功を追い求めるあまり、地元の友人たちと疎遠になってしまった状況。「switchin' on」は態度を変える、裏切るという意味のAAVE。

They say I'm trippin', forestallin' myself within
俺が狂ってる、自分の殻に閉じこもってチャンスを逃してるって言うんだ
※「trippin'」は勘違いしている、薬物でハイになっているという意味だが、ここでは「音楽で成功するなんて現実離れした妄想に囚われている」という周囲の冷ややかな視線を指す。

I only trip when I trip and fall in that Benz
俺がトリップするのは、あのベンツの中でつまづいて転ぶ時だけさ
※周囲に言われる「trippin'(狂ってる)」と、物理的に「trip(つまづく)」を掛けたワードプレイ。いずれベンツのような高級車に乗れるほどの成功を収めるという確信。

I'ma bake the feature for the right pricing
適正な価格を提示するなら、客演(フィーチャー)を焼き上げてやるよ
※「bake」はマリファナを吸う、またはお菓子を焼くという意味だが、ここでは「完璧なバースを作ってやる」という意味。

Cake the beat, I'm just the right icing
ビートをケーキにするなら、俺はちょうどいいアイシングってことさ
※直前の「bake」からの連想。「icing」はケーキの表面を覆う甘い糖衣のことだが、ヒップホップにおいては「ice(ダイヤモンド・宝石)」のように楽曲を輝かせる存在であるというダブルミーニング。

See, I'm inspired by Neil deGrasse Tysons
ほら、俺はニール・ドグラース・タイソンにインスパイアされてんだ
※アメリカの著名な宇宙物理学者、ニール・ドグラース・タイソンへの言及。ステレオタイプなストリートのハスラーではなく、宇宙的な視野や科学的知性を持つ人物に憧れるという、オタクカルチャー出身のLil Nas Xらしい異質なリファレンス。

They inspired by squealers that's doing lifings
奴らは終身刑を食らってるチクリ魔に憧れてるのにな
※「squealer」は警察に情報を売る密告者(スニッチ)。「lifings」は終身刑。フェイクなギャングスタを演じ、結果的に刑務所送りになる同時代のラッパーたちの愚かさを強烈に皮肉っている。

I get three hours of sleep, just to get better
腕を磨くために、睡眠時間はたったの3時間だ

These cowards, they out here sour at me, petty vendettas
この臆病者共は俺に嫉妬して、くだらねえ復讐心を燃やしてやがる
※「sour」は不機嫌になる、嫉妬すること。

I ain't ate right or took a pee, waitin' for cheddar
まともに飯も食わずションベンも行かず、ただ金を手にするのを待ってんだ
※「cheddar(チェダーチーズ)」は金(札束)を意味するヒップホップ・スラング。音楽制作に没頭するあまり、寝食や排泄すら忘れているという凄まじいワーカホリックぶり。

Workin' late night, oh, it's just me, David the letter-man
深夜まで働いてる、あぁ、俺だけさ。まるでデヴィッド・レターマンみたいにな
※アメリカの長寿深夜トーク番組『レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン』の司会者David Lettermanと、「late night(深夜帯)」を掛けた秀逸なパンチライン。同時にリリック(文字=letter)を書く男(man)という意味も内包している可能性がある。

[Pre-Chorus]

C'mon girl, get up
さあ行くぜ、立ち上がれ

Come a little bit
こっちへ来な

C'mon girl, get up
さあ行くぜ、立ち上がれ

Come a little bit (Bit, bit)
少しこっちへ来いよ

My whole life I was under it!
俺のこれまでの人生、ずっとどん底だったんだ!

All-
すべて—

Che-che-check
チ・チ・チェック

[Chorus: Lil Nas X]

Uh, so I'll be damned if I let a pussy take it from me
だから腰抜け野郎に俺の居場所を奪われるなんて絶対にごめんだね

I'm the man, I'm the rookie, finna make the money
俺が主役だ。俺はルーキーだが、これから大金を稼ぐんだ

I make 'em dance, throw ya hands up and shake it for me
奴らを踊らせるぜ、手を挙げて俺のために振ってくれ

I'm advanced, man, my fans out here waitin' for me
俺は進化してるんだ、ファンがここで俺を待ってんだよ

So I'll be damned if I let a pussy take it from me
だから腰抜け野郎に俺の居場所を奪われるなんて絶対にごめんだね

I'm the man, I'm the rookie, finna make the money
俺が主役だ。俺はルーキーだが、これから大金を稼ぐんだ

I make 'em dance, throw ya hands up and shake it for me
奴らを踊らせるぜ、手を挙げて俺のために振ってくれ

I'm advanced, man, my fans out here waitin' for me
俺は進化してるんだ、ファンがここで俺を待ってんだよ

[Verse 2]

Uh, I'm doing better so petty shit I just let it go
あぁ、調子がいいから、くだらねえことは全部水に流すぜ

I'm more focused on leaving sofas to Mexico
他人の家のソファで寝る生活を抜け出して、メキシコへ行くことの方に集中してんだ
※Lil Nas Xは大学中退後、実家を出て姉の家のソファで寝泊まりする(カウチサーフィン)生活を送りながら音楽を作っていた。その貧しい現状から脱却し、メキシコなどのリゾート地へバカンスに行くような成功への執着。

Touring Europe and Africa, buzz around the globe
ヨーロッパやアフリカをツアーして、世界中でバズを起こすのさ

"Nas, can I get back to ya?" bitch, the sound of dough
「Nas、後で掛け直していいか?」ビッチ、それは金の鳴る音だぜ
※売れる前は電話を後回しにされていた(軽視されていた)相手からの電話に対し、今や自分がビジネスで成功し、相手の言葉が「金目当て」の擦り寄りにしか聞こえない状況。

Is all that I hear
俺の耳にはそれしか聞こえねえよ

Bitch, I'm really spittin' now, this is my career
ビッチ、俺は今マジでラップをスピットしてんだ。これが俺のキャリアだ

Shoutout to the labels flaking on me, fuck they ears
俺との契約をドタキャンしたレーベル共、シャウトアウトだ。あいつらの耳は腐ってやがる
※「flaking」は約束をすっぽかす、反故にすること。彼がSoundCloud上で注目を集め始めた頃、接触してきたものの最終的に見放したA&Rやレコード会社の無能さを痛烈に批判している。

You just lost your best player, 'Bron and Cavaliers, disappear! Uh!
お前らは最高のプレイヤーを失ったんだ、レブロンが去ったキャバリアーズみたいにな。消え失せな! アー!
※本楽曲がリリースされた2018年は、NBAのスーパースターであるレブロン・ジェームズ('Bron)がクリーブランド・キャバリアーズを離れ、ロサンゼルス・レイカーズへ移籍した年である。レブロンという絶対的エースを失って没落したキャバリアーズの状況を、未来のスーパースターである自分(Lil Nas X)との契約を逃したレーベルの致命的なミスに重ね合わせた、Geniusでも高く評価されるスポーツ・メタファー。

I came to do it
俺はこれをやるために来たんだ

I came to fucking pursue it
これをトコトン追求するために来たんだよ

They showin' love in this bitch
連中はこの場所で愛を示してくれてるぜ

'Cause I'm blowin' up and they knew it would happen
だって俺がブレイクしてて、奴らもこうなるって分かってたからな

In this rappin', I'm the new captain
このラップゲームにおいて、俺が新しいキャプテンさ

I sat back, perfected my craft while niggas was laughing
あいつらが俺を笑ってる間、俺は後ろに座って自分のスキルを完璧に磨き上げてたんだよ

[Outro]

Uh
アー