Artist: Lil Nas X
Album: NASARATI
Song Title: In The Bank
概要
2018年リリースのデビュー・ミックステープ『NASARATI』収録。インターネットのミームクリエイターから本物のラッパーへと転身しつつあったLil Nas Xが、トラップ・ミュージック特有のフレックス(自慢)と、自身のオタク的でユーモラスなルーツを融合させた一曲だ。BlocBoy JBのダンスやNBA選手のジェームス・ハーデン、さらにはお騒がせラッパーのアジーリア・バンクスといったポップカルチャーからの引用を多用。特筆すべきは、ストリートの掟を歌いながら途中で自分自身の文法の間違いを訂正するという、ギャングスタ・ラップのステレオタイプを逆手に取った自己言及的なジョークである。まだ大金を手にする前に「ミリオンを稼いだ」と豪語する、引き寄せの法則(Manifestation)に満ちた初期の傑作である。
和訳
[Intro]
Uh
アー
Uh, uh
アー、アー
Uh
アー
Uh
アー
Uh, uh
アー、アー
Uh, uh, uh, uh
アー、アー、アー、アー
[Verse 1]
Guess I'm finna pop shit
俺はこれから一発ブチかますぜ
Niggas run and they hide when I drop shit
俺が曲をドロップすれば、連中はビビって逃げ隠れする
Balenciagas on my paw print
俺の足跡(肉球)にはバレンシアガのロゴが刻まれてるぜ
※「paw print(動物の足跡・肉球)」を自分の足(靴)の比喩として使い、高級ブランドのBalenciagaのスニーカーを履いていることをフレックスしている。
12 ask a nigga questions, I ain't saw shit
12(サツ)が質問してきても、「俺は何も見ちゃいねえ(I ain't saw shit)」って答えるぜ
※「12」は警察を指すストリート・スラング。警察には絶対に口を割らないという、ヒップホップにおける「No Snitching(密告禁止)」のストリートコードを歌っている。
Wait, I mean I didn't see shit
待てよ、「何も見ていない(I didn't see shit)」だったな
※Geniusでも高く評価されているライン。直前の「I ain't saw shit」というストリート特有の崩れた(文法的に間違った)英語を、「I didn't see shit」という正しい過去形に自ら訂正している。タフなギャングスタを演じきれず、オタク気質(ネットトロール)の素顔が透けて見える、Lil Nas Xならではの極めて高度なメタ・ジョークである。
I line 'em up and then I shoot, I Bloc' B shit
奴らを一列に並べて撃ち抜く、BlocBoy JBみたいにな
※メンフィス出身のラッパーBlocBoy JBと、彼が2018年にDrakeとコラボして大流行させた楽曲「Look Alive」およびバイラルダンス「Shoot」への言及。銃を「撃つ(shoot)」ことと、ダンスの「Shoot」を掛けたワードプレイ。
They gon' miss me when I leave shit
俺がここを去ったら、奴らは俺を恋しがるだろうな
'Cause all these other rap niggas won't be shit
だって、他のラッパー共なんてマジで大したことねえからな
Uh, I gotta check the stash
ああ、隠し金庫(スタッシュ)を確認しねえとな
※「stash」は違法な金やドラッグを隠しておく場所。
New whip, oh my God, you gotta check the dash
新しい車だ、おいマジかよ、このダッシュボード(速度)を見てみろよ
※「whip」は高級車のこと。「dash」は車のダッシュボード、あるいはスピードメーター。
Real-ass nigga, so I don't fuck with trash
俺は本物だから、ゴミみたいな連中とはつるまねえ
Niggas mad 'cause I'm makin' cash fast like Dash, yo
ダッシュみたいに超高速で金を稼ぐ俺を見て、連中はブチギレてるぜ
※ピクサーのアニメ映画『Mr.インクレディブル』に登場する、超高速で走る能力を持った長男「ダッシュ(Dash)」の引用。インターネットのスピード感で瞬く間にスターダムを駆け上がる自分自身を重ねている。
My big bro is telling me
兄貴が俺に言ってくれたんだ
"You finna blow, lil' bro, be a celebrity"
「お前は絶対にブレイクするぞ、弟よ。セレブになるんだ」ってな
And I don't even need no melody
俺にはメロディすら必要ねえんだ
※メロディックなマンブル・ラップが全盛だった当時のシーンにおいて、ラップのスキルだけで勝負できるという自信の表れ。(ただし後年、彼は誰よりもキャッチーなメロディメイクで世界を制することになる)
I'm killin' rappers, all you niggas is in jeopardy
ラッパー共を皆殺しにしてる、お前ら全員マジで危険な状態(ジェパディ)だぜ
※アメリカの長寿クイズ番組『Jeopardy!(ジェパディ!)』と、「jeopardy(危険に晒されている状態)」を掛けたダブルミーニング。
[Chorus]
Lil' boy, I am killing ya
坊や、俺がお前を仕留めてやるよ
Keep a stack in the bank, no Azealia
銀行(バンク)に札束を積んでる、アジーリアじゃねえけどな
※「bank(銀行)」と、過激な発言やSNSでのビーフで度々炎上する女性ラッパー「Azealia Banks(アジーリア・バンクス)」の苗字を掛けた秀逸なパンチライン。
Last night, I just made about a milli', uh
昨日の夜だけで、ミリオン(100万ドル)くらい稼いじまったぜ
※録音当時(ブレイク前)の彼は大学を中退し姉の家に居候していたため、これは完全なハッタリ(キャップ)である。しかし、この言葉を現実のものにしてしまった言霊の力こそが彼の凄みである。
On my soul, man, you niggas not real enough
誓って言うが、お前らみたいなフェイク野郎じゃ話にならねえんだよ
Uh, lil' boy, I am killing ya
ああ、坊や、俺がお前を仕留めてやるよ
Keep a stack in the bank, no Azealia
銀行(バンク)に札束を積んでる、アジーリアじゃねえけどな
Last night, I just made about a milli', uh
昨日の夜だけで、ミリオン(100万ドル)くらい稼いじまったぜ
On my soul, man, you niggas not real enough
誓って言うが、お前らみたいなフェイク野郎じゃ話にならねえんだよ
[Verse 2]
Ugh, you niggas not real e'
ああ、お前らはマジでフェイクだ
Pour up the cup with some lean, yes, I fill up
カップにリーンを注ぐ、そうさ、なみなみと満たすんだ
※「lean」は咳止めシロップ(コデイン/プロメタジン)とスプライト等を割ったヒップホップ界で蔓延するドラッグドリンク。
Flow is on go, and you know that my bro
俺のフロウは止まらねえ、ダチのお前なら分かってるだろ
Chop off your pinkie toe, so lay low, he a killer
お前の足の小指を切り落とす、大人しくしてな、あいつは殺し屋なんだ
※マフィアやヤクザのような残虐な拷問のメタファーを用いて、ストリートの冷酷さを演出している。
Yeah, platinum Pateks, Yappas automatic
プラチナのパテック、ヤッパはフルオートマチックだ
※「Pateks」は超高級時計ブランドのパテック・フィリップ。「Yappa(Chopper)」は連射可能なアサルトライフルのこと。富と暴力の象徴を並列させている。
Lil Nas X up next
次に天下を取るのはこのLil Nas Xだ
So you upset, say, "He problematic"
だからお前らはイラついて「あいつは問題児だ」なんて喚くんだろ
Niggas so dramatic, uh
お前らマジでドラマチックに騒ぎすぎだぜ
Yo, I'm James, yes, I'm Harden
ヨォ、俺はジェームズ、そう、ハーデンだ
※ヒゲがトレードマークのNBAのスーパースター、ジェームズ・ハーデンのこと。圧倒的な得点力を持つ彼に自分を重ねている。
I go gorilla when guardin'
ディフェンス(ガード)の時はゴリラみたいに暴れまわるぜ
※実はジェームズ・ハーデンはNBA界隈で「ディフェンス(ガード)を全くしない選手」としてネットミーム化していた。Lil Nas Xがそれを知らずにリリックを書いたのか、あるいはそのミームを逆手に取った高度な皮肉なのか、Redditでも議論の的となったライン。
Shit on you niggas, I'm fartin'
お前らの上にクソを垂れてやる、オナラをぶっかましてな
※相手を圧倒する(shit on)という定番フレーズに、文字通りのオナラ(fart)を付け加える幼稚なユーモア。初期の彼らしいトロール的感性。
Minks and chinchillas, I'm startin'
ミンクやチンチラの毛皮を着込んで、いざ出陣だ
※動物愛護の観点から批判の的になりやすい高級毛皮をあえて誇示することで、アンチを煽るヒップホップ的フレックス。
I'm disregardin' all your barkin'
お前らの負け犬の遠吠えなんて完全無視さ
At a party and I'm sparkin'
パーティーのど真ん中でハッパに火をつける(スパークする)
So fuck the sneak-dissing, please listen
だからコソコソとディスってんじゃねえ、よく聞けよ
※「sneak-dissing」は名前を出さずに遠回しに相手を批判する卑怯な行為。
You beef with yourself, while my 'Rari is parkin'
俺がフェラーリを駐車してる間、お前は勝手に一人でキレてろってこった
※相手のビーフ(喧嘩腰の態度)を全く相手にせず、自分は高級車('Rari = Ferrari)を乗り回す優雅な生活を楽しんでいるという勝者の余裕。
Bitch
ビッチ
[Chorus]
Lil' boy, I am killing ya
坊や、俺がお前を仕留めてやるよ
Keep a stack in the bank, no Azealia
銀行(バンク)に札束を積んでる、アジーリアじゃねえけどな
Last night, I just made about a milli', uh
昨日の夜だけで、ミリオン(100万ドル)くらい稼いじまったぜ
On my soul, man, you niggas not real enough
誓って言うが、お前らみたいなフェイク野郎じゃ話にならねえんだよ
Uh, lil' boy, I am killing ya
ああ、坊や、俺がお前を仕留めてやるよ
Keep a stack in the bank, no Azealia
銀行(バンク)に札束を積んでる、アジーリアじゃねえけどな
Last night, I just made about a milli', uh
昨日の夜だけで、ミリオン(100万ドル)くらい稼いじまったぜ
On my soul, man, you niggas not real enough
誓って言うが、お前らみたいなフェイク野郎じゃ話にならねえんだよ
[Bridge]
On-on my soul, man, you niggas not real enough
誓って言うが、お前らみたいなフェイク野郎じゃ話にならねえんだよ
On-on my soul, man, you niggas not real enough-ough
誓って言うが、お前らみたいなフェイク野郎じゃ話にならねえんだよ
Like, like, like Azealia
アジーリア、アジーリア、アジーリアみたいにな
Like, like, like Azealia
アジーリア、アジーリア、アジーリアみたいにな
Like, like, like Azealia
アジーリア、アジーリア、アジーリアみたいにな
[Chorus]
Lil' boy, I am killing ya
坊や、俺がお前を仕留めてやるよ
Keep a stack in the bank, no Azealia
銀行(バンク)に札束を積んでる、アジーリアじゃねえけどな
Last night, I just made about a milli', uh
昨日の夜だけで、ミリオン(100万ドル)くらい稼いじまったぜ
On my soul, man, you niggas not real enough
誓って言うが、お前らみたいなフェイク野郎じゃ話にならねえんだよ
Uh, lil' boy, I am killing ya
ああ、坊や、俺がお前を仕留めてやるよ
Keep a stack in the bank, no Azealia
銀行(バンク)に札束を積んでる、アジーリアじゃねえけどな
Last night, I just made about a milli', uh
昨日の夜だけで、ミリオン(100万ドル)くらい稼いじまったぜ
On my soul, man, you niggas not real enough
誓って言うが、お前らみたいなフェイク野郎じゃ話にならねえんだよ
