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CARRY ON - Lil Nas X 【和訳・解説】

Artist: Lil Nas X

Album: NASARATI

Song Title: CARRY ON

概要

2018年にリリースされたLil Nas Xの初期ミックステープ『NASARATI』の収録曲。ブルーアイド・ソウルのレジェンド、Bobby Caldwellの1982年の名曲「Carry On」を大胆にループサンプリングしている。「Old Town Road」で世界的スターになる前の彼の個人的な苦悩——両親の離婚、薬物依存の母親からのネグレクト、祖母の死への自責の念——を生々しく綴った極めて内省的なトラックだ。特筆すべきは、本作のサンプリングが無許可であったため、後に音楽出版社The Music Forceから2500万ドル(約27億円)の巨額の著作権侵害訴訟を起こされ、主要ストリーミングから削除されるというヒップホップ特有の洗礼(クリアランス問題)を受けた曰く付きの楽曲であることだ。彼のトラウマと野心が交錯する、コアなファンからの評価が高い一曲である。

和訳

[Intro]

F-F-Freezin' like the fuckin' Wynter
マジでクソ寒いぜ、ウィンターみたいにな
※プロデューサーであるWynterのビートタグ。単なるプロデューサー名のシャウトアウトであると同時に、後に続くLil Nas X自身の「冷え切った状況(家族との断絶や孤独)」や、ヒップホップ的な「cold(冷酷でヤバい)」なフロウを暗示するダブルミーニングとして機能している。

[Chorus: Bobby Caldwell]

Carry on
生き抜くんだ

Though it may be hard to understand it
今は理解できないかもしれないが

You've got to carry on
お前は前に進み続けなきゃならない

Carry on
生き抜くんだ

Though it may be hard to understand it
今は理解できないかもしれないが

You've got to carry on
前に進み続けなきゃならないんだ
※原曲の「Carry On」は恋愛関係の終わりと前進を歌ったものだが、Lil Nas Xはこのコーラスを「崩壊した家族関係や自身のトラウマから立ち直り、過酷な現実を生き抜く(Carry on)」ための精神的なアンセムとして再解釈している。サンプリング文化における文脈の転換(リコンテクスト化)の見事な例である。

(F-F-Freezin' like the fuckin' Wynter)
(マジでクソ寒いぜ、ウィンターみたいにな)

[Refrain: Lil Nas X]

My flow so cold, you notice it (Notice it)
俺のフロウは超コールドだ、お前も気づいてるだろ(気づいてるよな)
※ヒップホップにおける「cold」は「カッコいい、イケてる」を意味するスラングだが、ここでは彼を取り巻く冷酷な現実や、トラウマによって感情を押し殺した冷徹なメンタリティとも掛かっている。

My dreams unfold, behold this shit ('Hold this shit)
俺の夢が現実になっていく、このヤバい景色を見とけよ(見とけよ)

Had my life rearranged, it's strange as shit
人生がガラッと変わっちまった、マジで奇妙な気分だぜ
※Lil Nas Xは大学を中退し、音楽の道へ進むために実家を出て姉や兄の家を転々としていた。インターネット上のミームクリエイターからラッパーへと自身の人生を「再構築(rearranged)」していく過程の戸惑いと野心が表現されている。

And not the same as before, I changed a bit
昔とは違う、俺も少し変わっちまったんだ

[Verse 1: Lil Nas X]

How you leave your son all alone? (Ayy, ayy, ayy)
自分の息子を一人ぼっちで置いていくなんて、どういう神経してんだ?(エイ、エイ、エイ)
※Lil Nas Xの母親に対する痛烈なディスと悲痛な叫び。彼の両親は彼が6歳の時に離婚しており、母親は深刻な薬物依存症に苦しんでいた。後年のヒット曲「Dead Right Now」でも触れられる、彼の人生における最大のトラウマの一つである。

See you every other month, can you hit a nigga phone? (Yeah, yeah)
会うのは数ヶ月に一度、電話の一本くらい寄越せないのかよ?(イェー、イェー)

Mama, can't believe you let that nigga turn you from your home (Yeah, ayy)
なぁ母さん、あの男のせいでアンタが家から追い出されるなんて信じられないぜ(イェー、エイ)
※母親が新しい恋人(あるいはドラッグの売人)の影響で家庭を放棄し、転落していく様を非難している。彼がなぜ音楽で成功し「Carry on(生き抜く)」しなければならなかったのか、その根本的なモチベーションが明かされている。

You ain't even who you used to be, the person that I've known (What? What?)
アンタはもう昔のアンタじゃない、俺が知ってた頃の人じゃないんだ(何?何?)

Guess I have to carry on (F-F-Freezin' like the fuckin' Wynter)
俺は一人で生きていくしかないみたいだな(マジでクソ寒いぜ、ウィンターみたいにな)

[Chorus: Bobby Caldwell]

Carry on
生き抜くんだ

Though it may be hard to understand it
今は理解できないかもしれないが

You've got to carry on
お前は前に進み続けなきゃならない

Carry on
生き抜くんだ

Though it may be hard to understand it
今は理解できないかもしれないが

You've got to carry on
前に進み続けなきゃならないんだ

[Refrain: Lil Nas X]

My flow so cold, you notice it (Notice it)
俺のフロウは超コールドだ、お前も気づいてるだろ(気づいてるよな)

My dreams unfold, behold this shit ('Hold this shit)
俺の夢が現実になっていく、このヤバい景色を見とけよ(見とけよ)

Had my life rearranged, it's strange as shit
人生がガラッと変わっちまった、マジで奇妙な気分だぜ

And not the same as before, I changed a bit
昔とは違う、俺も少し変わっちまったんだ

[Verse 2: Lil Nas X]

Worried 'bout my health, bad thoughts, when I'm gonna die?
自分の健康が心配になる、悪い思考が巡るんだ、俺はいつ死ぬんだろうな?
※ヒップホップ・コミュニティで蔓延する若手アーティストの早逝や、自身のライフスタイルに対する極度のパラノイア(不安症)を吐露している。彼は後年、自身のうつ病や自殺願望について公に語るようになるが、この時期からすでにメンタルヘルスの悪化という兆候が見て取れる。

I like to get high 'cause it distract me when I wonder why
ハイになるのが好きなんだ、なぜ生きてるのかって自問するのを紛らわせてくれるから

'Fore my grandma died, I wasn't there, I wasn't by her side
ばあちゃんが死ぬ前、俺はそこにいなかった、傍にいてやれなかったんだ

Knew that she was dying, didn't put my selfish shit aside (F-F-Freezin' like the fuckin' Wynter)
死期が近いのは分かってたのに、自分の身勝手な都合を後回しにできなかったんだ(マジでクソ寒いぜ、ウィンターみたいにな)
※祖母の死に目に立ち会えなかったことへの深い後悔と自責の念。「自分の身勝手な都合(selfish shit)」とは、音楽制作やインターネット上での活動に没頭するあまり、家族との時間を犠牲にしてしまったことを指す。成功への執念がもたらした代償の重さがこのラインに凝縮されている。

[Chorus: Bobby Caldwell]

Carry on
生き抜くんだ

Though it may be hard to understand it
今は理解できないかもしれないが

You've got to carry on
お前は前に進み続けなきゃならない

Carry on
生き抜くんだ

Though it may be hard to understand it
今は理解できないかもしれないが

You've got to carry on
前に進み続けなきゃならないんだ

(F-F-Freezin' like the fuckin' Wynter)
(マジでクソ寒いぜ、ウィンターみたいにな)

[Verse 3: Lil Nas X]

My grandma died, I shed some tears
ばあちゃんが死んで、涙を流したよ

My mama lied, she left me here
母さんは嘘をついて、俺をここに置いていった

I keep secrets, can't tell a soul
秘密を抱え込んでる、誰にも言えやしない
※GeniusやReddit等で最も議論されるラインの一つ。この「秘密(secrets)」は、当時の彼がまだ世間にも家族にもカミングアウトしていなかった自身のゲイとしてのセクシュアリティを暗示しているという考察が有力視されている。ホモフォビアが根強いヒップホップシーンにおいて、同性愛者であることを隠しながら生きるプレッシャーが「誰にも言えない(can't tell a soul)」という言葉に表れている。

Trust me and myself, that's all I know
信じられるのは俺自身だけ、俺にはそれしか分からないんだ

My family split, can't live like this
家族はバラバラだ、こんな生き方はもう無理だ

No reunion shit, just who that is
再会なんてクソ喰らえだ、ただ「あれ誰?」って感じさ
※家族の絆が完全に修復不可能になっている冷酷な現実。血の繋がった家族であっても、今や赤の他人のように「誰だっけ?(who that is)」と感じてしまうほどの精神的距離と諦念を表している。

I just pretend it's all okay
俺はただ、全部上手くいってるフリをしてるだけなんだ

I'ma kill everything that's in my way
俺の邪魔をする奴らは、全員ぶっ殺してやるよ
※直前の「上手くいっているフリ」という弱さから一転し、攻撃的で冷酷なヒップホップ・ペルソナを急激に身に纏う。トラウマや孤独を攻撃性や成功への渇望へと変換して精神を保つ、トラップ・ミュージック特有の自己防衛機制の発露である。

[Refrain: Lil Nas X]

My flow so cold, I must admit
俺のフロウは超コールドだ、それは認めざるを得ない

My dreams unfold, behold this shit
俺の夢が現実になっていく、このヤバい景色を見とけよ

Had my life rearranged, it's strange as shit
人生がガラッと変わっちまった、マジで奇妙な気分だぜ

And not the same as before, I changed a bit (F-F-Freezin' like the fuckin' Wynter)
昔とは違う、俺も少し変わっちまったんだ(マジでクソ寒いぜ、ウィンターみたいにな)

[Chorus: Bobby Caldwell]

Carry on
生き抜くんだ

Though it may be hard to understand it
今は理解できないかもしれないが

You've got to carry on
前に進み続けなきゃならないんだ