Artist: Snoop Dogg (feat. Nanci Fletcher & Sam Sneed)
Album: Doggystyle
Song Title: Checkin’ (Interlude)
概要
1993年のヒップホップ史に燦然と輝く名盤『Doggystyle』に収録された、冷酷かつシネマティックなスキット(インタールード)である。本作では、デス・ロウ・レコードのプロデューサー兼ラッパーであったサム・スニードと、看板シンガーのナンシー・フレッチャーが客演として寸劇を演じている。恋人(ナンシー)がクラブで大スターであるスヌープに夢中になり声をかけたことから、嫉妬に狂ったサム・スニードとスヌープの間に致命的なトラブルが勃発する。特筆すべきは、のちにサム・スニードの代表曲となる「U Better Recognize」のキラーフレーズが早くも登場している点だ。「女が自分を選んだ」というピンプの掟を盾に一切引かないスヌープと、メンツを潰された男の衝突が、最終的に銃殺劇へと至る結末は、90年代G-Funk特有の暴力性とパラノイアを見事に音像化している。
和訳
[Background Music] [Skit: Nanci Fletcher, Sam Sneed & Snoop Dogg]
Oh shit is, is that Snoop over there? Oh shit
マジで、あそこにいるのってスヌープじゃない? ヤバっ
※ナンシー・フレッチャー演じる女性が、当時すでにストリートのカリスマであったスヌープ・ドッグを偶然見つけて興奮する様子。彼女が現在一緒にいる男(サム・スニード)のプライドを無自覚に傷つける、トラブルの引き金となる発言。
Fuck that nigga bitch. My name is Sam Sneed you betta recognize
あんな野郎知るかよ、ビッチ。俺の名前はサム・スニードだ、よく認識(レコグナイズ)しとけ
※サム・スニード(Sam Sneed)はDr. Dreの右腕として『Murder Was The Case』等のプロデュースに関わったデス・ロウの重要人物。彼が1994年にDr. Dreをフィーチャーしてリリースすることになる自身の代表曲「U Better Recognize」のタイトルとパンチラインが、このスキットで既に提示されているという、ヒップホップファンにとってたまらない伏線となっている。
Aiyyo, aiy, I'm sorry, I just love that nigga he is so fine
エイヨォ、ええ、ごめんね。でも私、彼のことが大好きなの。マジでカッコいいんだもん
Man fuck that nigga
おい、あんな野郎クソ食らえだ
His music is so fuckin dope
彼の音楽、めちゃくちゃドープじゃない
Hey look Sam man, I gotta go pee I'll be right back aight
ねえサム、ちょっとトイレに行ってくるわ、すぐ戻るからね
※ナンシーはトイレに行くと嘘をついて、実際にはスヌープに声をかけに行こうとしている。
Yeah aight
ああ、わかったよ
Yeah yeah I'm just slidin you know
ああ、ああ、ただ流してるだけさ、分かるだろ
Get this Henny tap in my vein
このヘネシーを血管にブチ込んでるのさ
※「Henny」は高級コニャックのヘネシー(Hennessy)のこと。ストリートの黒人層にとって絶対的なステータスシンボルである酒を、ドラッグのように「血管に注ぐ(tap in my vein)」と表現するハードコアな描写。
Yo Snoop whassup Snoop?
ヨォ、スヌープ、元気? スヌープ?
Ay, hold up, yo
エイ、ちょっと待ってな、ヨォ
Hey, how you doin?
ねえ、調子はどう?
Whats happenin?
何かあったか?
Yo Snoop you know I just love your shit you are just so fine to me
ねえスヌープ、あなたの音楽大好きなの。私にとって、あなたは本当に最高よ
Aiyyo bitch, bring your black ass back over
エイヨォ、ビッチ、その黒いケツをさっさとこっちへ戻せ
※浮気に気づいたサム・スニードが激怒して割り込んでくる場面。「black ass」は同胞間での罵倒や命令を強調するAAVE(アフリカ系アメリカ人英語)特有の表現。
What the fuck's wrong with you?
一体どうしたって言うのよ?
Yo whas happenin is that your nigga or somethin?
ヨォ、どうした? あれはお前の男か何かか?
Look check this shit out that nigga he don't run me OK?
ねえ、聞いて。あの男が私を仕切ってるわけじゃないの、OK?
I'm talkin to you that's all
私はあなたと話してるだけよ、それだけ
Yeah whassup nigga? What the fuck's wrong with you?
ああ、どうしたニガ? お前、一体何が気に入らねえんだ?
※サム・スニードがスヌープに対して直接的にメンツの張り合いを挑む。
Yo nigga whats happenin fool?
ヨォ、ニガ、どうしたってんだよ、バカ野郎?
You know the name of the game, your bitch chose me
このゲームのルールは知ってんだろ、お前のビッチが俺を選んだんだよ
※ストリートにおけるピンプ(ポン引き)の哲学。女を奪われたのは男の魅力がないからであり、女の行動の責任は女自身にあるとする論理。スヌープは相手の男に一切の非を認めず、圧倒的な強者の余裕を見せつける。
Nigga we can handle this like some gentlemen
ニガ、俺たちはこれを紳士的に解決することもできるし
Or we can get into some gangsta shit
それか、ギャングスタらしくやり合うこともできるぜ
※言葉で話し合うか、暴力(銃撃戦)で決着をつけるか、相手に選択を迫る冷酷なセリフ。G-Funkのシネマティックなバイオレンスを象徴するパンチライン。
So whassup nigga?
で、どうするんだ、ニガ?
Have it your motherfuckin way
お前のクソッタレな好きにしろよ
Well whassup?
よし、ならどうする?
(Gunshots)
(銃声)
※言葉の応酬の末、躊躇なく銃が発砲される。メンツを潰された男と、ストリートの掟を曲げない男の対立が、日常的な殺人劇としてあっけなく幕を閉じるという90年代ギャングスタ・ラップの生々しい現実を表現している。
That's whassup, nigga
そういうことだ、ニガ
※銃殺した後のスヌープの冷酷な捨て台詞。「What's up(どうする?/これがどういうことか)」という問いに対して、銃弾がその答えであるという暴力的な幕引き。
