Artist: Snoop Dogg (feat. RBX, Tha Dogg Pound & The D.O.C.)
Album: Doggystyle
Song Title: Serial Killa
概要
1993年リリースの『Doggystyle』に収録された本作は、G-Funkの根底に流れる暴力性とホラーコア的なパラノイアを極限まで抽出したポッセ・カット(マイクリレー)である。Dogg PoundのKuruptとDaz、Snoop Dogg、そして特異なフロウを持つRBXが次々と登場し、「自分たちに刃向かうことは自殺行為である」という冷酷な警告をそれぞれのスタイルで描写している。特筆すべきは、1989年の自動車事故で声帯に致命的な損傷を負った伝説のラッパー、The D.O.C.の起用である。かつての美声を失った彼の嗄れた(かすれた)声を、Dr. DreとSnoopはあえて不気味なコーラスとして配置し、楽曲全体を覆うシリアルキラー(連続殺人鬼)というサイコパス的なテーマに完璧な説得力を持たせている。The Ohio Playersの「Funky Worm」を彷彿とさせる不穏なシンセサイザーと相まって、Death Row Recordsの当時の圧倒的な恐怖支配を象徴する一曲である。
和訳
[Intro: Cutty Ranks]
Six million ways to die, choose one
600万通りの死に方がある、一つ選びな
※ジャマイカのダンスホール・レゲエ・アーティスト、Cutty Ranksの1991年の楽曲「A Who Seh Me Dun」からのアイコニックな声ネタのサンプリング。ヒップホップ史上最も引用されたフレーズの一つであり、過酷なストリートで常に死と隣り合わせにあるギャングスタの現実を冷酷に突きつけている。
[Verse 1: Kurupt]
It's time to escape, but I don't know where the fuck I'm headed
逃げ出す時間だ、だが一体どこへ向かってるのか自分でも分からねえ
Up or down, right or left, life or death
上か下か、右か左か、生か死か
I see myself in a mist of smoke
立ち込める煙の中に、自分の姿が見える
Death becomes any nigga that takes me for a joke
俺をジョーク(舐めた態度)扱いする野郎には、等しく「死」が訪れるぜ
We hit a five dollar stick, now we putting in work
5ドルの「スティック」をキメて、これから「仕事」に取り掛かるのさ
※「five dollar stick」は5ドル分のマリファナ、またはPCP(フェンサイクリジン)と呼ばれる強力な幻覚剤を浸したタバコのこと。「putting in work」はギャングの隠語で「敵を襲撃する、殺しをやる」という意味。ドラッグでハイになり、凶暴性を増した状態で抗争へ向かう狂気のループを描写している。
Unaccountable amounts of dirt
数え切れないほどの「汚い仕事」をこなしてきた
※「dirt」は犯罪や違法行為(殺人、強盗、麻薬売買など)を指すストリート・スラング。Kuruptがこれまで手を染めてきた罪の深さを告白している。
Death becomes all niggas, anybody killer
すべての野郎どもに死が訪れる、誰であろうと殺してやる
You know what the deal is, nigga, you know what the real is
どういう状況か分かってんだろ、ニガ、何が「リアル」か知ってるはずだ
[Verse 2: Daz]
I see some off-brand niggas on the corner flaggin' me down
街角で「オフ・ブランド」の野郎どもが俺を呼び止めやがる
※「off-brand」は直訳すると「ブランド外(偽物)」だが、ここでは「どこの馬の骨ともわからない連中」や「格下のフェイク・ギャング」を意味するAAVE。
Sayin', "Yo Daz, what's up with the Pound?
こう言ってくるんだ、「ヨォ、ダズ、Dogg Poundの調子はどうだ?
Is that nigga Snoop alright? Ayo, what's up with the crew?
スヌープの野郎は大丈夫なのか? エイヨォ、クルーはどうなってる?
Is them niggas in jail, or are them niggas through?"
あいつらは刑務所の中か? それとももう終わっちまったのか?」
※録音当時の1993年、Snoop Doggは現実世界で第一級殺人容疑で起訴され、全米のヘッドラインを騒がせていた。ストリートの連中が「Death Rowはもう崩壊するのか?」とゴシップ的に尋ねてくるリアルな状況をそのままリリックに落とし込んでいる。
I said, "If you ain't up on thangs
俺は言ってやった、「お前ら、状況が分かってねえようだな
Snoop Dogg is the name, Dogg Pound's the gang"
スヌープ・ドッグって名前で、俺たちのギャングはDogg Poundだぜ」
It's like this, they don't understand
こういうことさ、あいつらは理解しちゃいねえんだ
It's an everyday thang to gangbang
ギャングバンギン(抗争)なんて、俺たちにとっちゃ毎日の日常(ルーティン)だってことをな
Make that twist, don't be a bitch, let these niggas know
「ツイスト」を作れ、ビビるな、この野郎どもに教えてやれ
※「Make that twist」はクリップスのギャングサイン(指を曲げてCの形などを作る)を掲げること、あるいはブラント(大麻)を巻くことのダブルミーニング。
What's up with you? I represent the Pound and Death Row
お前はどうなんだ? 俺はDogg PoundとDeath Rowをレペゼンしてるぜ
And can't no other motherfucker in L.A. or Long Beach
L.A.やロングビーチにいる他のクソ野郎どもには絶対に無理だ
Or Compton and Watts see D-O-Gs, now
コンプトンやワッツの奴らだって、今の俺たちD-O-Gには手も足も出ねえ
You can't come and you can't run, and you can't
お前は向かってくることも、逃げることもできねえし
See long to the G of the gang, one gun
このギャングのG(ギャングスタ)の未来を見ることもできねえ。一丁の銃
Is all that we need to put you to rest
お前を永遠の眠りにつかせるには、それだけで十分だ
(Pump-pump) Put two slugs dead in your chest
(ガチャン)お前の胸のど真ん中に、2発のスラッグ(弾丸)をブチ込んでやる
※「Pump-pump」はショットガンのポンプアクションの擬音。
Now you dead then a motherfucker creeping and sleeping
これでお前は死んだ。クソ野郎が忍び寄って、眠りにつく
Six feet deep in, fucking with the Pound is
地下6フィート(墓穴)の深さにな。Dogg Poundに喧嘩を売るってのは——
[Chorus: The D.O.C.]
Suicide, it's a suicide
自殺だ、それは自殺行為(スーサイド)だ
※伝説的ラッパーThe D.O.C.によるコーラス。交通事故で潰れた彼の嗄れた声を、Dogg Poundへの反抗が死に直結することを宣告する「死神の声」として配置している。
Suicide, it's a suicide
自殺だ、それは自殺行為だ
Suicide, it's a suicide
自殺だ、それは自殺行為だ
Suicide, it's a suicide
自殺だ、それは自殺行為だ
[Verse 3: Snoop Dogg]
The cloud becomes black and the sky becomes blue
雲は黒く染まり、空は青く変わる
※青(Blue)はスヌープが属するギャング「クリップス」のシンボルカラー。クリップスがストリート(空)を支配し、敵に暗雲をもたらすという比喩。
Now you in the midst of the Dogg Pound crew
今、お前はDogg Poundクルーのど真ん中にいるんだ
Ain't no clue on why the fuck we do what we do
なぜ俺たちがこんなヤバいことをするのか、お前には見当もつかねえだろうな
Leave you in a state of paranoia, ooh
お前をパラノイア(偏執病・恐怖)の状態に置き去りにしてやるよ、ウー
Don't make a move for your gat so soon
そんなに慌てて銃(gat)に手を伸ばそうとするなよ
'Cause I drops bombs like Platoon (Ayy, nigga)
だって俺は『プラトーン』みたいに爆弾を落とすからな(エイ、ニガ)
※1986年のベトナム戦争映画『プラトーン(Platoon)』を引用。同映画の凄惨な爆撃シーンのように、情け容赦なく敵陣を壊滅させるという比喩。
Walk with me, hold my hand and let me lead you
俺と一緒に歩け、手を握れ、俺が導いてやる
I'll take you on a journey, and I promise I won't leave you (I won't leave you)
ヤバい旅に連れて行ってやるよ、絶対に置き去りにはしねえと約束する(置き去りにはしねえよ)
※前曲「Murder Was The Case」における「悪魔」のような、優しくも不気味なトーンで敵を死の世界へと誘引している。
Until you get the full comprehension
お前がすべてを完全に理解するまでな
And when you do, that's when the mission
そして理解した時、それがミッションの始まりだ
Or survival becomes your every thought
あるいは「生き残ること」がお前の頭の中のすべてになる
Keep your eyes open, 'cause you don't wanna be caught
目はしっかり開けておけよ、捕まりたくねえだろ?
Half-stepping with your weapon on safety
銃の安全装置(セーフティ)をかけたまま、中途半端にうろつきやがって
※「Half-stepping」は中途半端な態度のこと。いつでも発砲できるように銃の安全装置を外しておくのがストリートの常識であり、それに気づかない実戦経験のない素人のフェイク・ギャングスタを嘲笑している。
Now break yourself, motherfucker, 'fore you make me
さあ、身ぐるみ全部置いていきな、クソ野郎。俺を本気でキレさせる前にな
※「break yourself」は強盗の際に「持っているものを全部出せ」と脅すストリート・スラング。
Take this 211 to another level
この「211」を、もう一つ上のレベルへ引き上げちまうぞ
※「211」はカリフォルニア州刑法における「強盗(Robbery)」のコード番号。金を出さないなら、単なる強盗から「187(殺人)」へと事態をエスカレートさせるという冷酷な宣言。
I come up with your ends, you go down with the Devil
俺はお前の「エンド(金)」を奪い(上がり)、お前は悪魔と一緒に地獄へ落ちる(下がる)のさ
※「ends」は金。「俺は金を稼いで成り上がり(come up)、お前は死んで地獄へ落ちる(go down)」という、upとdownの対比を用いた秀逸なワードプレイ。
Now roam through the depths of Hell
さあ、地獄の底を彷徨うんだな
Where the rest your busta-ass homeboys dwell, well
お前のクソみたいなダチどもが住んでる場所をな、さてと
[Chorus: The D.O.C. & Snoop Dogg]
Suicide, it's a suicide
自殺だ、それは自殺行為だ
Suicide, it's a suicide
自殺だ、それは自殺行為だ
Suicide, it's a suicide
自殺だ、それは自殺行為だ
Now tell me, what's my motherfuckin' name?
さあ教えてくれ、俺のクソッタレな名前は何だ?
Serial killa
シリアル・キラー(連続殺人鬼)だ
Serial killa
シリアル・キラーさ
Serial killa
シリアル・キラーだ
Wake up in the morning, eat your Lucky Charms cereal
朝起きて、「ラッキー・チャーム」のシリアルを食うのさ
※シリアルキラー(連続殺人鬼)と朝食の「シリアル(cereal)」を掛けた定番のダジャレ。「Lucky Charms」はアメリカの子供向けの人気シリアル。残酷な殺人鬼を自称しながら、朝は子供のように甘いシリアルを食べるというサイコパス的なギャップを演出したブラックジョークである。
[Verse 4: RBX]
Deep, deep like the mind of Minolta
深く、深く。「ミノルタの頭脳」のようにな
※「Minolta(ミノルタ)」は日本のカメラメーカー。当時の彼らの有名なアメリカ向けキャッチコピー「The Mind of Minolta(カメラに内蔵された高度なコンピューター・プログラムを指す)」をサンプリング的に引用し、自分の殺しの思考がそれだけ深く、複雑に計算されていることを示している。
Now picture this
さあ、これを想像(ピクチャー)してみな
※カメラの「ミノルタ」から「picture(写真を撮る/想像する)」へと繋ぐ見事な連想ゲーム。
Let's picnic inside a morgue
死体安置所(モルグ)の中でピクニックをしようぜ
Not pic-a-nic baskets, pic-a-nic caskets
「ピカニック・バスケット」じゃねえ、「ピカニック・カスケット(棺桶)」だ
※アメリカの人気アニメ『ヨギ・ベア(Yogi Bear)』の主人公ヨギが、ピクニック・バスケット(pic-a-nic baskets)を盗む定番のギャグを引用。しかしここでは「バスケット」を「カスケット(casket=棺桶)」と韻を踏んで言い換え、死体を詰めるという意味のホラーコア的な表現に転化させている。RBXの異常なリリシズムが光るライン。
And I got the machine to crack your fuckin' chest plate
俺はお前のクソッタレな胸板をかち割る「マシン(銃)」を持ってる
Open and release them guts
切り開いて、内臓をぶち撒けてやる
Then I release def cuts
そして俺は、最高(def)のカット(曲/切り傷)をリリースするのさ
Brutal, jagged edged, totally roughneck
残酷で、ギザギザの刃で、完全にラフネック(凶暴)だ
Now everybody scream, 'nuff respect to the X
さあ、みんな叫べ。X(RBX)への最大限のリスペクト('nuff respect)をな
'Nuff respect given
リスペクトは十分に与えられた
Disrespect and you will not be living
俺をディスリスペクト(侮辱)すれば、お前はもう生きてはいられねえ
Word to mama and my drama, dilemma
お袋にかけて誓うぜ、俺のドラマ(過酷な人生)とジレンマにな
[Chorus: The D.O.C., Snoop Dogg & RBX]
Suicide, it's a suicide
自殺だ、それは自殺行為だ
Suicide, it's a suicide
自殺だ、それは自殺行為だ
Suicide, it's a suicide
自殺だ、それは自殺行為だ
Now tell me, what's my motherfuckin' name?
さあ教えてくれ、俺のクソッタレな名前は何だ?
Serial killa
シリアル・キラーだ
Serial killa
シリアル・キラーさ
Serial killa
シリアル・キラーだ
Wake up in the morning, eat your Lucky Charms cereal
朝起きて、「ラッキー・チャーム」のシリアルを食うのさ
