Artist: Snoop Dogg (feat. Daz Dillinger)
Album: Doggystyle
Song Title: Murder Was The Case (DeathAfterVisualizingEternity)
概要
1993年リリースの『Doggystyle』に収録された本作は、享楽的なG-Funkの裏に潜むパラノイアと死の恐怖を描いたダークな名曲である。ドライブバイ・シューティングで瀕死の重傷を負った主人公が悪魔とファウスト的な契約を結び、蘇生と引き換えに魂を売り渡すストーリーテリングが展開される。サブタイトルの「DeathAfterVisualizingEternity(永遠を視覚化した後の死)」は頭文字を取ると「D.A.V.E.」となり、物語の不吉なメタファーとして機能している。特筆すべきは、本作の録音直後の1993年8月にスヌープ自身がボディガードによる銃撃事件に関連して第一級殺人容疑で起訴された事実である。リリックで描かれる「殺人罪(Murder was the case)」や終身刑の恐怖は、期せずして彼自身の現実と不気味にリンクし、ヒップホップ史において最も呪術的でリアリティのある楽曲の一つとして語り継がれている。
和訳
[Skit: Heron and Joe Cool]
Woo, hey, now you know...
ウー、ヘイ、これで分かったろ…
Ayy, ayy, JC ('Sup, Heron?)
エイ、エイ、JC(どうした、ヘロン?)
※「JC」はJoe Coolの略。スヌープの実際の従兄弟であり、本作のアルバムジャケットのアートワークを手掛けたアーティストでもあるが、ここではスヌープを狙う敵対ギャングのキャラクターとして登場している。
Ain't that Snoop Dogg over there?
あそこにいるの、スヌープ・ドッグじゃねえか?
That nigga with that blue coat on? (Yeah)
あの青いコートを着た野郎か?(ああ)
※青は西海岸の巨大ストリートギャング「クリップス(Crips)」のシンボルカラー。スヌープがクリップスのセット(派閥)である「Rollin' 20s Crips」に属していることを視覚的に示している。
Yeah, oh yeah, that's that nigga
ああ、間違いない、あの野郎だ
Nigga, roll up on the side of him, man
おい、あいつの横に車を寄せろ
Roll your window down
窓を開けろ
Man, hand me my motherfucking Glock man, give me another clip
俺のクソッタレなグロック(拳銃)を渡せ、予備のマガジンもだ
'Cause I'm gonna smoke this fool
このバカをハチの巣(smoke)にしてやるからな
Yeah, roll the windows down
ああ、窓を開けろ
Yeah, okay there he go
よし、オッケーだ。あそこを歩いてる
Ayy man, you Snoop Dogg?
エイ、お前スヌープ・ドッグか?
Snoop? (Huh?) Snoop Doggy Dogg?
スヌープ?(あ?)スヌープ・ドギー・ドッグか?
Man, he's Snoop Dogg
間違いない、あいつがスヌープ・ドッグだ
Man, fuck that nigga (Nigga, man)
あのクソ野郎、ブッ殺してやる(行くぞ)
Get that nigga, man
あの野郎をやれ
Man, get that fool, man, get him, man, he trying to run, man
あのバカをやれ、撃て、逃げようとしてるぞ
Dump on that fool, man, I don't give a fuck
弾を全弾ブチ込め、知ったこっちゃねえ
What set you got now?
てめえのセット(ギャングの縄張り)は今どうなってるんだ?
※ギャング同士の抗争(ドライブバイ・シューティング)において、相手の所属を嘲笑しながら発砲する極めてリアルなストリートの描写。
Fuck you, nigga
クソ食らえ、ニガ
Yeah, nigga, what's up?
ああ、ニガ、どうした?
Nigga
ニガめ
Yeah, motherfucker
ああ、クソ野郎が
Yeah, nigga, one less nigga (Yeah, yeah)
よし、これで野郎が一人減ったぜ(ああ、そうだな)
Yeah, nigga, you's a dead motherfucker now
ああ、お前はもう死んだクソ野郎だ
[Verse 1]
As I look up at the sky
空を見上げると
My mind starts tripping, a tear drops my eye
意識がトリップし始めて、目から涙がこぼれ落ちる
My body temperature falls
体温が下がっていく
I'm shaking and they break in tryna save the Dogg
俺は震え、救急隊員たちがこのDoggを救おうと駆け込んでくる
Pumping on my chest and I'm screaming
心臓マッサージ(胸部圧迫)をされて、俺は叫び声を上げる
I stop breathing, damn, I see demons
呼吸が止まる。クソッ、悪魔どもの姿が見えるぜ
※臨死体験の描写。死の淵を彷徨う中で、自分が天国ではなく地獄へ落ちる運命にあることを悟る恐怖が描かれている。
Dear God, I wonder, can you save me?
神様、俺を救ってくれませんか?
I can't die, my boo boo's 'bout to have my baby
まだ死ねないんだ、俺の「ブーブー(恋人)」が俺の子供を産もうとしてるんだよ
※「boo boo」は恋人の愛称。録音当時、スヌープの長年の恋人(現在の妻であるShante Broadus)が第一子となるCordeを妊娠していた事実とリンクしており、リリックに痛切なリアリティを与えている。
I think it's too late for praying, hold up
祈るには遅すぎたみたいだ、いや、待てよ
A voice spoke to me and it slowly started saying
ある声が俺に語りかけ、ゆっくりとこう言い始めたんだ
※神に祈ったにもかかわらず、返答してきたのは神を装った悪魔である。ドクター・ドレーがエフェクトをかけた不気味な低音ボイスでこの「声」を演出し、ファウスト的な魂の取引の場面を描き出している。
Bring your lifestyle to me, I'll make it better
お前のライフスタイルを俺に捧げろ、俺がもっと良くしてやる
How long will I live? Eternal life and forever
俺はあとどれくらい生きられる? 永遠の命だ、ずっと終わらない
And will I be the G that I was?
俺は昔みたいなG(ギャングスタ)に戻れるのか?
I'll make your life better than you can imagine or even dreamed of
お前の想像や夢すらも超える、最高の人生にしてやろう
So relax your soul, let me take control
だから魂をリラックスさせろ、俺にコントロールを委ねるんだ
Close your eyes, my son, my eyes are closed
目を閉じるんだ、我が息子よ。俺は目を閉じた
※悪魔が「my son(我が息子)」とキリスト教的な呼びかけを模倣することで、神に見放されたゲットーの若者がいとも簡単に悪魔の誘惑(犯罪や暴力による成功)に屈してしまう構図を示唆している。
[Chorus]
Murder
殺人(マーダー)
Murder was the case that they gave me
俺に下された罪状は「殺人」だった
※スヌープが悪魔との契約によって命を拾った代償として、やがて殺人罪で裁かれる運命にあることを示している。リリース直前の現実の殺人容疑起訴と完全に重なり合った、ヒップホップ史に残る最も不気味なコーラス。
Murder
殺人(マーダー)
Murder was the case that they gave me
俺に下された罪状は「殺人」だった
[Verse 2]
I'm fresh up out my coma
俺は昏睡状態(コマ)から目覚めたばかりだ
I got my Mama and my Daddy and my homies in my corner
お袋や親父、それにダチたちが俺のベッドの周りに集まってる
It's gonna take a miracle they say
奇跡でも起きなきゃ無理だと医者たちは言ってたらしい
For me to walk again and talk again, but anyway
俺が再び歩いて、話せるようになるにはな。でもとにかく
I get fronted some ki's to get back on my feet
再起するために、俺は数キロのコカイン(ki's)を前借りした
※悪魔の力で奇跡的に回復したスヌープが真っ先に行ったのは、堅気(合法)の仕事に就くことではなく、ストリートでのドラッグ・ディーリングの再開であった。一度ギャングスタのライフスタイルに染まった者は、悪魔の契約(犯罪のループ)から逃れられないという運命の悲哀を描写している。
And everything that nigga said came to reality
すると、あの野郎(悪魔)が言った通りのことが現実になったんだ
Living like a baller loc
「ボーラー(成功者)」みたいにイカれた暮らしさ
Having money and blowing hella chronic smoke
大金を手にして、極上のクロニック(大麻)の煙を大量に吹かしてる
I bought my Mama a Benz and bought my boo boo a Jag
お袋にはベンツを、恋人にはジャガーを買ってやった
And now I'm rolling in a nine-trizzay El Do-Rad
そして俺自身は、93年型のエルドラド(El Dorado)を転がしてる
※「trizzay」は3(three)の〜izzle系スラング。キャデラック・エルドラドは西海岸のギャングスタやピンプにとって成功の象徴的車種。
Just remember who changed your mind
ただ、誰がお前の運命を変えてやったのか忘れるなよ
※ここで再び悪魔の声が介入する。物質的な成功を与えた見返りとして、絶対的な服従を求めている。
'Cause when you start set-tripping, that ass is mine
もしお前が「セット・トリップ(裏切り・反抗)」を始めたら、お前の命(ケツ)は俺のモノだからな
※「set-tripping」はギャング同士の抗争や裏切りを意味するロサンゼルスのスラング。悪魔との契約を反故に(堅気の生活に戻ろうと)した瞬間に魂を奪うという冷酷な警告。
Indeed, agreed, proceed to smoke weed
もちろんだ、同意するぜ。俺はウィードを吸い続ける
Never have a want, never have a need
欲しいものなんてない、必要なものもすべて揃ってる
They say I'm greedy but I still want more
人は俺を強欲だと言うが、俺はまだまだ欲しいんだ
'Cause my eyes wanna journey some more, really though (Check it out)
だって俺の目は、もっと先の世界を見たがってるんだ。マジでな(聞いてくれ)
[Bridge]
Now I lay me down to sleep
今、私は眠りにつきます
※キリスト教圏の子供たちが就寝前に唱える伝統的な祈りの言葉。血塗られたギャングスタの物語の途中に無垢な子供の祈りが挿入されることで、悪魔に魂を売った主人公の罪深さと、決して救済されない結末へのコントラストを強烈に際立たせている。
I pray the Lord, my soul to keep
主よ、私の魂をお守りください
If I should die before I wake
もし私が目覚める前に死んでしまったら
I pray the Lord, my soul to take
主よ、私の魂を御手にお導きください
[Verse 3]
No more indo, gin and juice
極上のマリファナ(インド)も、ジン・アンド・ジュースももう終わりだ
※アルバム内の自身のヒット曲(快楽主義的な日々)との完全な決別宣言。悪魔との契約の代償を支払う時(逮捕・投獄)が来たことを意味する。
I'm on my way to Chino, rolling on the grey goose
俺は今「チノ」へ向かってる、「グレイ・グース」に揺られながらな
※「Chino」はカリフォルニア州のチノにある男子刑務所(California Institution for Men)。「grey goose」は高級ウォッカのブランド名ではなく、ここでは囚人を刑務所へ移送するための「灰色の囚人護送バス(The Grey Goose)」を指す刑務所スラング。
Shackled from head to toe
頭から爪先まで手錠と足枷をつけられて
Twenty-five with an izzel, with nowhere to gizzo, I know
25年の終身刑、どこへも行く当てはねえ。分かってるさ
※「izzel」はL(Life sentence=終身刑)、「gizzo」はGoの〜izzle系スラング。「25 to life(25年の服役後に仮釈放の可能性がある終身刑)」という、現実の殺人罪でスヌープが直面していた過酷な量刑のリアリティ。
Them niggas from the other side recognize my face
敵対する派閥の野郎どもが、俺の顔に気づきやがる
'Cause it's the O.G. D-O-double-G, L-B-C
だって俺は、L-B-C(ロングビーチ)のO.G.(オリジナル・ギャングスタ)、D-O-ダブルGだからな
Mad dogging niggas 'cause I don't care
野郎どもをガンつけ(Mad dogging)してやる、知ったこっちゃねえ
Red jumpsuit with two braids in my hair
赤いジャンプスーツを着て、髪は2つのおさげ(ブレイド)に編み込んでる
※刑務所内での囚人服(赤は要注意人物や隔離対象を示す場合がある)と、スヌープのトレードマークであったヘアスタイル。刑務所内でもギャングとしての虚勢を張らざるを得ない状況。
Niggas stare as I enter the center
俺が中央へ入っていくと、野郎どもがジロジロ見てきやがる
They send me to a level three yard, that's where I stay
俺は「レベル3」のヤードに送られた。そこが俺の居場所だ
※「Level 3 yard」は中〜重警備の刑務所の運動場。凶悪犯やギャングの幹部クラスが収容される危険なエリア。
Late night I hear toothbrushes scraping on the floor
深夜になると、床で歯ブラシを削る音が聞こえてくる
※刑務所内の囚人たちが、プラスチックの歯ブラシの柄をコンクリートの床で削って「シャンク(手製のナイフ)」を作っている生々しい音の描写。常に死の危険と隣り合わせのパラノイア。
Niggas getting they shanks, just in case the war
野郎どもはシャンクを用意してるんだ、抗争(戦争)に備えてな
Pops off, 'cause you can't tell what's next
いつ勃発するかわからねえ。次に何が起こるかなんて、誰にも読めないからな
My little homie Baby Boo took a pencil in his neck
俺の可愛いダチの「ベイビー・ブー」は、首に鉛筆を突き立てられちまった
※「Baby Boo」は後輩のギャングメンバーの仮名、あるいは実在の人物。刑務所内での些細な諍いが、日用品(鉛筆)を使った残虐な殺人に直結するという地獄のような現実。
And he probably won't make it to see twenty-two
あいつはたぶん、22歳の誕生日を迎えることはできねえだろうな
I put that on my Mama, I'ma ride for you, Baby Boo
お袋にかけて誓うぜ、俺がお前の仇を討ってやる(ride)、ベイビー・ブー
※「Put it on my Mama」は「母親に誓って(絶対に果たす)」という意味の最強のストリートの誓い。悪魔との契約の結果、彼は刑務所の中でも永遠に殺し合いのループ(Murder was the case)から抜け出せないという絶望的なエンディングを迎える。
[Chorus]
Murder
殺人(マーダー)
Murder was the case that they gave me
俺に下された罪状は「殺人」だった
Murder
殺人(マーダー)
Murder was the case that they gave me
俺に下された罪状は「殺人」だった
Murder
殺人(マーダー)
Murder was the case that they gave me
俺に下された罪状は「殺人」だった
Murder
殺人(マーダー)
Murder was the case that they gave me
俺に下された罪状は「殺人」だった
