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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

G Funk Intro - Snoop Dogg (feat. The Lady of Rage & George Clinton) 【和訳・解説】

Artist: Snoop Dogg (feat. The Lady of Rage & George Clinton)

Album: Doggystyle

Song Title: G Funk Intro

概要

西海岸ヒップホップの金字塔であるスヌープ・ドッグの1993年のデビューアルバム『Doggystyle』の実質的なオープニングトラックである。タイトルが示す通り、ドクター・ドレーが確立した「G-Funk」という音楽サブジャンルの到来を高らかに宣言するアンセムとしての役割を担っている。P-Funkの総帥ジョージ・クリントンをイントロとアウトロのナレーションに起用することで、G-Funkが70年代ファンクの正当な後継者であることを歴史的に証明し、デス・ロウ・レコードの秘密兵器であったザ・レディ・オブ・レイジが強烈なヴァースをキックすることでレーベルの層の厚さを見せつけている。サンプリングソースにはThe Ohio Playersの「Funky Worm」の象徴的なシンセサイザー音が使用されており、G-Funkの雛形を完全に体現した歴史的重要作である。

和訳

[Intro: George Clinton]

Yeah, this is another story about dogs
ああ、これは犬どもにまつわるもう一つの物語だ
※P-Funkの創始者であり、G-Funkの音楽的・精神的ルーツであるジョージ・クリントン本人が参加している。彼がスヌープの作品に「犬」のメタファーで語りかけることは、ファンクの系譜が西海岸のギャングスタ・ラップへと正式に継承されたことを意味する、ヒップホップ史において極めて重要な戴冠式のような瞬間である。

For the dog that don't pee on trees is a bitch
木に向かって小便をしない犬は、ただのメス犬(ビッチ)だからな
※「木に立ち小便をしない=オス犬ではない」という犬の習性をメタファーにし、ストリートでハードに生き抜く覚悟のない者や、縄張りを主張できないラッパーは「ビッチ(女々しい奴)」であるという厳しいギャングスタの掟を表現している。

So says Snoop Dogg
スヌープ・ドッグはそう言ってるぜ

So get your pooper scooper 'cause the nigga's talkin' shit
だから糞すくいのスコップを用意しな、こいつがヤバいクソ(戯言)をぶち撒けるからな
※「talkin' shit」はスラングで「戯言を言う」「悪口を言う」という意味だが、ここでは文字通りの「クソ(shit)」と掛けており、犬の糞を片付けるための「pooper scooper」を持参しろというユーモア溢れる言葉遊びである。

Roof! Roof! Roof! Roof! Roof!
バウ!バウ!バウ!バウ!バウ!
※クリントンによる犬の吠え声。のちのジョージ・クリントンの楽曲「Atomic Dog」へのオマージュ的文脈も孕んでいる。

[Verse: The Lady of Rage, Dr. Dre, & Snoop Dogg]

I'm sippin' on Tanqueray
タンカレーをちびちび飲んでるアタシ
※タンカレー(Tanqueray)はスヌープや西海岸のラッパーたちが愛飲していたジンの銘柄。アルバム内の大ヒット曲「Gin and Juice」に繋がる伏線でもある。

With my mind on my money and my mouth fulla' gan-jay
頭の中は金のことばかり、口にはガンジャをいっぱいに含んでな
※「gan-jay」はマリファナを指す「ganja」の変形。また、「mind on my money」というフレーズは、後に収録されている「Gin and Juice」の伝説的なフック「With my mind on my money and my money on my mind」と完全にリンクしている。

R-A-G to the motherfuckin' E
R-A-GからクソッタレなE
※自身のMCネームであるRage(The Lady of Rage)のスペルアウト。

Back with my nigga S-N-double-O-P
マイ・ニガ、S-N-ダブルO-Pと一緒に戻ってきたぜ

Yeah, and ya don't stop
イェー、そして止まるんじゃねえぞ
※70〜80年代のオールドスクールなヒップホップで多用された定番のコール&レスポンスのフレーズをサンプリング的に引用し、自身のルーツへのリスペクトを示している。

Rage in effect, I just begun to rock
レイジの登場だ、アタシのロックは始まったばかり

I said, yeah, and ya don't quit
イェー、そして絶対にやめるなよ

Hey-yo, Rage, would you please drop some gangsta shit?
ヘイ、レイジ、いっちょギャングスタなシットをカマしてくれないか?
※ここでドクター・ドレー(またはスヌープ)が合いの手を入れ、レイジのハードコアなヴァースを引き出している。

I rock rough and stuff with my afro puffs
アフロ・パフを揺らしながら、荒々しくブチかますぜ
※「Afro Puffs」は、後にレイジがドクター・ドレーのプロデュースでリリースすることになる彼女の代表的なソロ・シングルのタイトルである。自身のトレードマークであるヘアスタイルをフックにし、今後のソロ活動を予告するプロモーション的なラインとなっている。

Handcuffed as I bust, 'bout to tear shit up
手錠をかけられたままラップを吐いて、すべてをぶっ壊してやる

Oh, what? Did ya think I, didn't ever think I
はぁ、何? アタシがこんな風にできるなんて、思いもしなかったろ?

Would be the one to make you blink eye, I'm catchy like pink-eye
瞬きさせるほどの存在だってな。アタシのラップは「ピンク・アイ」みたいに感染するんだよ
※「pink-eye(結膜炎)」は非常に伝染しやすい病気である。自分のラップのフロウが「catchy(キャッチー、人を惹きつける)」であることと、病気が「catch(うつる)」することを掛けた高度なライミングである。

Never will there ever be another like me, um
アタシみたいなヤツは、今後二度と現れないね

You can play the left 'cause it ain't no right in me
お前らは「左(取り残される)」を選ぶしかない、だってアタシの中に「右(正しい/妥協)」なんてないんだから
※「left(左 / 取り残される)」と「right(右 / 正しい)」という対義語を用いた秀逸なワードプレイ。相手を置き去りにしつつ、自分が常にストリートの正解であることを主張している。

Out the picture, out the frame, out the box I knock 'em all
写真の外、フレームの外、枠にとらわれずに全員ぶっ倒す

Smack 'em out the park, like "A Friendly Game of Baseball"
場外ホームランを打つようにぶっ叩くぜ、「フレンドリー・ゲーム・オブ・ベースボール」みたいにな
※1991年にリリースされた東海岸のグループ、Main Sourceの社会的メッセージソング「A Friendly Game of Baseball」へのオマージュ。警察の黒人に対する残虐行為(ポリス・ブルータリティ)を野球のルールに例えた名曲を引き合いに出し、自身の攻撃的なリリシズムの切れ味を強調している。

Grand slam, yes, I am
満塁ホームラン、そう、アタシのことさ

Kickin' up dust and I don't give a goddamn
砂埃を蹴り上げて暴れまわる、誰がどう思おうと知ったこっちゃない

'Cause I'm that lyrical murderer pleading guilty
だってアタシは有罪を認めるリリカルな殺人者だからな

You know from my skills I'm about to be
アタシのスキルを見りゃ、これからどうなるか分かるだろ?

Filthy, large, Rage in charge
クソみたいにデカく成り上がる、レイジが仕切る時間だ

You know what's happenin', don't try to play Raj
何が起きてるか分かってんだろ、「ラジ」みたいな真似はよせ
※1970年代の黒人シットコム(コメディドラマ)『What's Happening!!』の主人公、ラジ(Raj)を引用している。番組名と「what's happenin'(何が起きているか)」を掛けた言葉遊び。

This ain't no re-run, see, hun, don't you wanna be one?
これは再放送(リラン)じゃないんだよ、ねぇ、アンタも一員になりたいんだろ?
※同番組『What's Happening!!』に登場する太っちょのキャラクター「リラン(Rerun)」の名前と、「再放送(re-run)」を掛け合わせた極めて巧妙なパンチライン。アタシのパフォーマンスはいつでも新鮮で生身だ、という主張。

However, Rage'll wreck ya 'cause I'm def
どんな手を使おうと、レイジがアンタをボコボコにする、アタシは最高(def)だからな

I kick my vocals, I loc yo, coast to coast or local, uh!
ヴォーカルをキックし、狂ったように(loc)ブチかます。全国規模でも地元でもな!

I'll make 'em go coo-coo for my Cocoa
アタシのココアのために、あいつらを狂わせてやるよ
※アメリカの有名なシリアル「Cocoa Puffs(ココア・パフ)」のCMキャッチフレーズ「I'm cuckoo for Cocoa Puffs!(ココア・パフに夢中!)」をサンプリング。自身の「Afro Puffs(アフロ・パフ)」と掛けており、聴衆が自分の音楽(と髪型)に熱狂して正気を失う様子を表現している。

Puffin' stuff, ayo, Snoop, you're up
煙を吹かしながらな。エイヨォ、スヌープ、アンタの番だよ

Let these niggas know that niggas don't give a fuck
アタシらが誰の目も気にしちゃいないってことを、こいつらに教えてやりな

[Chorus: Snoop Dogg]

This is just a small introduction to the G-funk era
これはG-Funk時代の、ほんの小さな自己紹介にすぎないぜ
※ドクター・ドレーの『The Chronic』で萌芽したG-Funkサウンドが、スヌープの『Doggystyle』によって完全に一つの「時代(era)」として確立されたことを宣言する歴史的なライン。

Everyday of my life I take a glimpse in the mirror
毎日生きていく中で、鏡をチラッと覗き込むと

And I see motherfuckers tryna be like me
俺の真似をしようとするクソ野郎どもの姿が見えるんだ

Ever since I put it down with the D-R-E
俺がD-R-E(ドクター・ドレー)と一緒にブチかまして以来な
※スヌープの独特のレイドバックしたフロウとスラング(「〜izzle」など)はヒップホップ界に革命を起こし、瞬く間に全米のラッパーが彼のスタイルを模倣し始めた。ドレーとのコラボレーションがシーンの勢力図を西海岸へ完全に塗り替えたという揺るぎない自信が表れている。

[Outro: George Clinton]

Foamin' at the mouth and waggin' his tail
口から泡を吹いて、尻尾を振りながら

Searchin through the yard with a keen sense of smell
鋭い嗅覚で庭中を探し回る

Lookin' for the bitches in heat
発情したメス犬(ビッチ)を探してるのさ

And when he find it he'll be sniffin her seat
見つけたら、そいつの尻を嗅ぎまわるんだ

We travel in packs and we do it from the back
俺たちは群れで行動し、後ろからヤる

How else can you get to the booty?
そうじゃなきゃ、どうやって極上のケツ(獲物)にありつけるんだ?

We do it doggystyle
俺たちはドギースタイルでヤるんだよ

All the while we do it doggystyle
いつだって俺たちはドギースタイルさ
※アルバムのタイトル『Doggystyle(後背位)』を回収するパート。単なる性的なメタファーだけでなく、背後からシーンを出し抜いて天下を取るというギャングスタの野心や、犬のように本能のままに生きるという哲学が含まれている。

Yo motherfuckin' hoe!
このクソッタレな娼婦め!

He fucked the fleas off the bitch, he shaked the ticks off his dick
オス犬はメス犬からノミを振り落とすほど激しくヤリ、自分のイチモツからダニを払い落とした

And in the booty, he buries his motherfuckin' bone
そしてそのケツの中に、俺のクソデカい骨を埋めてやるのさ
※「bone(骨)」は、犬が大好きな骨と、勃起した男性器(boner)という下品だが秀逸なダブルミーニング。ジョージ・クリントンのP-Funk由来の泥臭いエロティシズムが炸裂している。

And if there's any left over, he'll roll over and take a doggy bag home
もし食い残しがあったら、寝返りを打って「ドギーバッグ」でお持ち帰りさ
※レストランでの持ち帰り用の袋を意味する「ドギーバッグ(doggy bag)」と「犬(dog)」を掛けた極めてアメリカ的なユーモア。どんな欲求も残さず満たし尽くすというスヌープのライフスタイルを代弁している。

[Skit: Daz Dillinger & Snoop Dogg]

Damn, that Tanqueray is talkin' to a nigga
クソ、あのタンカレー(ジン)が俺に語りかけてきやがる
※「酒が回ってきた」「酔っ払ってきた」というストリートの表現。

I ain't bullshittin', one of y'all niggas gotta get it
冗談じゃねえ、お前らの誰かがあれをやるべきだぜ

Man, I got to piss
おい、俺はションベンに行ってくるわ

Breath test?
息の検査か?
※マリファナや酒の匂いをチェックする警察の呼気検査(Breathalyzer)を茶化したジョーク。常に警察の影と隣り合わせにいる彼らの日常を切り取ったスキットで楽曲が締めくくられる。