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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Bathtub - Snoop Dogg (feat. Warren G) 【和訳・解説】

Artist: Snoop Dogg (feat. Warren G)

Album: Doggystyle

Song Title: Bathtub

概要

1993年リリースの歴史的名盤『Doggystyle』の幕開けを飾るイントロダクション(スキット)である。バスタブで女性とくつろぐスヌープというシチュエーションは、ブラックスプロイテーション映画(『スーパーフライ』等)や『スカーフェイス』を彷彿とさせるギャングスタのステレオタイプな成功者の姿を描いている。しかし同時に、裏社会のしがらみや警察からの逃亡に疲弊する生々しい姿が対比として挿入されている。特筆すべきは「警察に追われる」というラインであり、これはアルバム発売直前にスヌープが実際に直面した第一級殺人容疑の裁判という現実のメタファーとして強烈なリアリティを放つ。盟友ウォーレン・Gが語る「アメリカン・ドリーム」の再定義は、物質的成功と退廃が同居する90年代Gファンクの精神性そのものを象徴している。

和訳

[Intro: Snoop Dogg & Woman]

Uh, that felt good
ああ、気持ちいいぜ

Does it, baby?
そう、ベイビー?

Yeah, rub my back for me
ああ、背中を流してくれよ

Where do you want me to rub it, baby?
どこを流してほしいの?

Right here
ここだ

Okay
オッケー

Oh
おお

Turn around
振り返って

A'ight, check it out, though
よし、それよりちょっと聞いてくれ

Why don't you put me on some music?
なんか音楽をかけてくれないか?

What you wanna hear, baby?
何が聴きたいの?

Put me on some of that old gangsta shit
昔のギャングスタ・シットをかけてくれ
※スヌープが要求する「old gangsta shit」は、彼らの音楽的ルーツである70年代のファンクやソウル(カーティス・メイフィールドなど)、あるいはアイス・Tらの初期ギャングスタ・ラップを指す。バスタブでの豪遊というシチュエーション自体がブラックスプロイテーション映画のオマージュであり、続くGファンクサウンドのルーツを明確に提示している。

A'ight then
わかったわ

Damn, the fuck is that?
クソ、なんだあの音は?

Every time I'm chilling someone ringing my motherfucking doorbell
くつろいでる時に限って、いつも誰かが家のチャイムを鳴らしやがる

You want me to get that for you?
私が出ようか?

Yeah, handle that shit for me
ああ、頼むわ

A'ight, I'll be right back
オッケー、すぐ戻るわね

[Interlude]

What the fuck?
なんだよ?

Hey, Snoop
ヘイ、スヌープ

Yo, what's up, Snoop Dogg?
ヨォ、調子はどうだ、スヌープ・ドッグ?

[Verse: Snoop Dogg & Warren G]

Hey, hey, hey, Snoop, what's going down?
ヘイヘイヘイ、スヌープ、調子はどうよ?

What's up, G-Dogg?
おう、G-Dogg(ウォーレン・G)、元気か?

Oh, nothing, trying to live between the sky and Earth and ain't touching dirt nowhere, man
ああ、ぼちぼちだ。天と地の間で上手くやってるよ、泥水はすすっちゃいねえ
※「ain't touching dirt(土に触れない)」は、ストリートの泥沼(犯罪や貧困)から抜け出し、成功した高み(天)にいることを示す表現。同時に「死んで土に埋まっていない(サバイブしている)」という意味を内包するAAVE特有のダブルミーニングである。

Right, right
だよな、だよな

Everything fucked about right about now, Dogg
今、マジで全てがクソみたいな状況なんだよ、Dogg

I'm about ready to get up out this, damn
もうこんな生活から抜け出したい気分だぜ、クソ

I'm ready to get his shit up, man
もうウンザリなんだよ、マジで

With the motherfucking law after me
サツにも目をつけられてるしな
※本作『Doggystyle』がリリースされる直前の1993年8月、スヌープはボディガードが起こした銃撃事件に関連して第一級殺人容疑で逮捕され、全米のヘッドラインを飾った。このラインは単なるギャングスタ・ラップのギミックを超え、彼が直面していた投獄の恐怖という現実のメタファーとして強烈なリアリティを放っている。

Punk-ass bitches, sucka-ass niggas
クソみたいなビッチどもに、サツに媚びるような野郎ども

I can't take this shit no more, dog
もうこれ以上は耐えられねえよ、兄弟

What? Man, you want to get out the game? Come on, man
はあ? お前、このゲーム(ストリートの生活)から降りるってのか? 勘弁しろよ

You can smoke a pound of bud everyday
毎日1ポンド(約450グラム)の極上ウィードを吸える身分だろ

You got a big screen TV, man, you wanna give all this up?
デカいテレビだってある、これらを全部捨てるって言うのか?

You got the dopest shit out on the streets
お前は今、ストリートで一番ヤバい音楽を持ってるんだぜ

Nigga, is you crazy? That's the American Dream, nigga
イカれたのか? これぞ「アメリカン・ドリーム」じゃねえか
※ウォーレン・Gが語る「アメリカン・ドリーム」の再定義。白人社会における伝統的なアメリカン・ドリーム(郊外の家、安定した職)とは異なり、ゲットー出身の黒人青年たちにとってのそれは「無限のウィード、巨大なテレビ、ストリートでの絶対的なプロップス(尊敬)」であった。物質的成功こそが彼らにとっての頂点であるという90年代ヒップホップ特有の価値観が凝縮されている。

Well, ain't it?
だろ?

Fool, you better come on in
バカ言ってないで、さっさと中に入れよ

Wait, wait, wait, wait, hold up, Snoop
待て待て待て、ちょっと待ってくれ、スヌープ

Hey, nigga, I put five dollars on the weed
おい、俺もウィード代として5ドル払ったんだぞ
※大金持ちの「アメリカン・ドリーム」を語った直後にもかかわらず、「ウィード代の5ドル」で揉めるというコミカルなオチ。これは、彼らがどれだけ世界的な成功を収めようとも、仲間内で小銭を出し合ってブラントを回し飲みしていた「フッド(地元)」のメンタリティを一切失っていないことを巧みに表現している。

You better quit fucking with me
からかうのはやめてくれよ

[Outro: Dr. Dre & Gylan Kain]

It's time to get busy in this motherfucker
さあ、このクソッタレな場所でブチかます時間だぜ

Like we always do about this time
いつものように、この時間からな
※Dr. Dreのアイコニックなフレーズであり、ヒップホップ史に残る名盤の本格的な幕開けを宣言している。このセリフ自体が、The Last PoetsのメンバーであったGylan Kainらのスポークン・ワードやブラック・ナショナリズムの系譜からインスパイアされた表現であり、Gファンクが過去のブラックミュージックの遺産の上に成り立っていることを示唆している。