UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Everything Is Everything - Lauryn Hill 【和訳・解説】

Artist: Lauryn Hill

Album: The Miseducation of Lauryn Hill

Song Title: Everything Is Everything

概要

本作は、1998年の歴史的名盤『The Miseducation of Lauryn Hill』の終盤を飾る、ゲットーの若者たちに向けた力強いエンパワーメント・アンセムである。タイトルの「Everything is Everything」は、1970年代のダニー・ハサウェイの同名曲にも見られる黒人コミュニティの伝統的なスラングであり、「すべてはなるようになる」「現状を受け入れつつ前へ進む」という達観と希望を意味する。特筆すべきは、当時ペンシルベニア大学の学生だった無名時代のジョン・レジェンド(John Stephens名義)がピアノで参加している点だ。ストリートの過酷な現実(冬)を描きながらも、必ず訪れる希望(春)を約束し、古代アフリカの誇りや公民権運動の闘士たちの魂、そして聖書の教えをヒップホップというフォーマットで見事に融合させた、ローリンの思想の集大成とも言える傑作である。

和訳

[Chorus]

Everything (Everything) is everything (Is everything)
すべては「なるようになる」のさ(すべてはね)
※「Everything is everything」は、1970年代のソウル・ミュージックや黒人コミュニティで頻繁に使われたスラング。「現状は色々あるが、結局すべては丸く収まる」「宇宙の摂理のままである」というスピリチュアルな受容と肯定の表現である。

What is meant to be will be
起こるべくして起こるってこと

After winter (After winter) must come spring (Must come spring)
厳しい冬の後には、必ず春が来るんだから
※ゲットーでの抑圧や人生の苦境を「冬」に、解放や成功を「春」に例えた普遍的なメタファー。耐え忍べば必ず報われるというストリートの若者たちへのメッセージ。

Change, it comes eventually
変化ってやつは、いずれ必ずやって来るのさ

Everything (Everything) is everything (Is everything)
すべては「なるようになる」んだよ

What is meant to be will be (Understand that everything is everything)
起こるべくして起こるのさ(すべては導かれてるって理解しな)

After winter (After winter) must come spring (Must come)
厳しい冬の後には、必ず春が来る

Change, it comes eventually
変化は、いずれ必ずやって来るんだ

[Verse 1]

I wrote these words (I wrote these words) for everyone
アタシはこの言葉を、すべての人に向けて書いたんだ

Who struggles in their youth
青春時代に葛藤してもがいているみんなへ

Who won't accept deception in
欺瞞(ウソ)を受け入れようとしない連中へ

Instead of what is truth (Gotta know the truth, y'all)
真実の代わりにさ(みんな、真実を知らなきゃダメだよ)
※社会や学校教育が押し付ける「誤った教育(Miseducation)」や嘘を拒絶し、自分自身の目で真実を見極めようとする若者たちへの連帯の意志。

It seems we lose the game
アタシたちはゲームに負けてるみたいだよね

Before we even start to play
プレイを始める前からさ
※マイノリティやゲットーの子供たちが、生まれた時点ですでに社会的なハンデ(貧困や人種差別)を背負わされている、アメリカの構造的な不平等を指摘している。

Who made these rules? (Who made these rules?) We're so confused (We're so confused)
一体誰がこんなルールを作ったの? アタシたちは混乱させられてる

Easily led astray
簡単に間違った道へと誘導されちまうんだ

Let me tell ya that...
だから、アタシに言わせてよ…

[Chorus]

Everything is everything
すべては「なるようになる」って

Everything is everything (Everything is everything)
すべては「なるようになる」のさ

Everything is everything (Everything)
すべては「なるようになる」

After winter (After winter) must come spring
厳しい冬の後には、必ず春が来る

Everything is everything (Yo, yo, yo-yo, yo, yo, yo, uh)
すべては「なるようになる」んだ(ヨォ、ヨォ)

[Verse 2]

Our philosophy possibly speak tongues
アタシたちの哲学は、「異言」を話すかもしれない
※「speak tongues(異言を語る)」はキリスト教のペンテコステ派などで見られる、聖霊に満たされて理解不能な言語を話す宗教的現象。ヒップホップのリリックやフローが、外部(白人社会や大人)からは理解不能な「異言」のように聞こえるが、そこには深いスピリチュアルな哲学が宿っているという主張。

Beat drum, Abyssinian, street Baptist (Word)
ドラムを叩く、アビシニアの、ストリートのバプテストさ(マジでな)
※「Abyssinian」はニューヨークのハーレムにある歴史的な黒人教会「アビシニアン・バプテスト教会」のこと。また、アビシニアはエチオピアの旧称であり、黒人の誇り高きルーツを指す。ストリートの文化(Beat drum)とアフリカ系アメリカ人の深い信仰心を見事に繋ぎ合わせている。

Rap this in fine linen (Word), from the beginning
最初から上質なリネン(麻布)に包んで、このラップを届けるよ
※「fine linen」は聖書において聖徒や天使が身にまとう清らかな衣服の象徴。自分のラップが神聖で純度の高いものであるという宣言。

My practice extending across the atlas, I begat this
アタシの活動は地図(世界)を越えて広がる、アタシがこれを生み出したんだ
※「begat」は聖書で「〜の父となる、生む」という意味でよく使われる古語。言葉の端々に聖書的な語彙を散りばめている。

Flipping in the ghetto on a dirty mattress
ゲットーの薄汚れたマットレスの上で宙返り(フリップ)してた頃からね
※貧しいフッドの子供たちが、道端に捨てられた古いマットレスをトランポリン代わりにして遊ぶリアルな光景。同時に「Flipping」はヒップホップにおいて「言葉やサンプリングを自在に操る(フリップする)」というダブルミーニングになっている。

You can't match this rapper slash actress
この「ラッパー兼女優」に、アンタらは敵わないよ
※ローリンは映画『天使にラブ・ソングを2(Sister Act 2)』にリタ役で出演し、女優としても成功を収めていた事実のレペゼン。

More powerful than two Cleopatras
二人のクレオパトラを合わせるよりもパワフルで

Bomb graffiti on the tomb of Nefertiti (Ooh, uh)
ネフェルティティの墓にグラフィティをボム(描く)するくらいにね
※クレオパトラやネフェルティティといった古代エジプト(アフリカ大陸)の偉大な女王たちを引き合いに出し、ブラック・フェミニズムの文脈で自身のカリスマ性を誇示。古代の王墓に現代のストリート・アート(グラフィティ)を刻み込むという、時代を超越したスケールの大きなパンチライン。

MCs ain't ready to take it to the Serengeti
その辺のMCどもじゃ、セレンゲティまで行く覚悟なんてできてないでしょ
※「Serengeti(セレンゲティ)」はタンザニアにある広大な国立公園。他のラッパーたちがストリートの狭い縄張り争いをしている間に、アタシはアフリカの野生や大自然のような壮大なスケールで勝負しているという威嚇。

My rhymes is heavy like the mind of sister Betty (El Shabazz!)
アタシのライムは、シスター・ベティの精神みたいにヘヴィー(重厚)なんだ(エル・シャバズ!)
※「sister Betty (El Shabazz)」は、マルコムXの妻であるベティ・シャバズのこと。彼女は1997年に孫の放火によって悲劇的な死を遂げており、公民権運動を支え続けた彼女の強靭な精神(mind)への深い敬意を表している。

L-Boogie spars with stars and constellations (What?)
L-Boogie(アタシ)は、星々や星座たちとスパーリング(スパー)するのさ(何だって?)

Then came down for a little conversation (Huh)
それから、ちょっとお喋りするために地上へ降りてきたんだ

Adjacent to the king, fear no human being
王(神)の隣に座り、どんな人間だって恐れない

Roll with cherubims to Nassau Coliseum (What?)
ケルビム(智天使)たちを引き連れて、ナッソー・コロシアムに乗り込むのさ
※「Nassau Coliseum」はニューヨーク州ロングアイランドにある大規模なアリーナ。神聖な天使の軍団(cherubims)をバックに従えて、満員のスタジアムでライブをするという、圧倒的なスピリチュアル・フレックス。

Now hear this mixture (Uh), where Hip-Hop meets scripture
さあ、このミクスチャーを聴きな、ヒップホップと「聖典(スクリプチャー)」が出会う場所をさ
※本楽曲、そしてアルバム全体の核心を突くライン。ストリートの文化であるヒップホップと、神の言葉である聖書(scripture)を融合させることが、彼女の音楽的使命であると明確に宣言している。

Develop a negative into a positive picture
ネガティブを現像して、ポジティブなピクチャー(写真/未来)を作り出すのさ
※写真の現像プロセス(ネガからポジフィルムへ)と、ゲットーの悲惨な状況(ネガティブ)を希望(ポジティブ)に変えるという、完璧なダブルミーニング。

[Chorus]

Now everything (Everything, y'all) is everything (Everything, y'all)
すべては「なるようになる」のさ(みんな、なるようになるんだ)

What is meant to be will be (What is meant to be will be, yeah)
起こるべくして起こるってこと

After winter (After winter) must come spring (Must come spring)
厳しい冬の後には、必ず春が来る

Change, it comes eventually (Change, it comes eventually)
変化は、いずれ必ずやって来るんだ

[Verse 3]

Sometimes it seems (Sometimes it seems) we'll touch that dream (We'll touch that dream)
時々、あの夢に手が届きそうに思えることもある

But things come slow or not at all (They come slow, know what I mean?)
でも、物事はゆっくりとしか進まないか、あるいは全く実現しなかったりするのさ(ゆっくり進むんだ、分かるっしょ?)

And the ones on top (And the ones on top) won't make it stop (They won't make it stop)
しかも、トップにいる連中(権力者たち)は、それを止めようとしない

So convinced that they might fall
自分たちが転落するかもしれないって、思い込んで怯えてるからね
※社会のヒエラルキーの頂点にいる白人層や富裕層が、既得権益を失うことを恐れてマイノリティの台頭を意図的に遅らせ、抑圧構造を維持しようとしている冷酷な現実を指摘している。

Let's love ourselves and we can't fail
だから、アタシたち自身を愛そうよ、そうすれば絶対に失敗しない

To make a better situation (Better situation, uh-uh)
もっと良い状況を作り出すためならね

Tomorrow (Tomorrow), our seeds will grow (Our seeds will grow)
明日になれば、アタシたちの蒔いた種はきっと育つよ

All we need is dedication
アタシたちに必要なのは、ただ「献身(デディケーション)」だけさ
※社会システムがどうであれ、黒人コミュニティ内部でのセルフラブ(自己愛)と次世代(seeds=子供たち)への教育・献身こそが、真の解放に繋がるという力強いメッセージ。

Let me tell ya that
だから、これだけは言わせてよ

[Chorus]

Everything is everything (Everything is everything)
すべては「なるようになる」のさ

Everything is everything
すべては「なるようになる」

Everything is everything (Everything is everything)
すべては「なるようになる」んだ

After winter (After winter) must come spring (Must come spring)
厳しい冬の後には、必ず春が来る

Everything is everything (Everything is everything)
すべては「なるようになる」のさ

Everything (Everything) is everything (Is everything)
すべては「なるようになる」んだ

What is meant to be will be (What is meant to be will be)
起こるべくして起こるってこと

After winter (After winter) must come spring (Must come spring)
厳しい冬の後には、必ず春が来る

Change, it comes eventually (Change, it comes eventually)
変化は、いずれ必ずやって来るんだ

[Outro]

La-la-la-la-la (Everything)
ラ・ラ・ラ・ラ・ラ(すべては)

La-la-la-la-la (Everything is everything)
ラ・ラ・ラ・ラ・ラ(すべてはなるようになる)

La-la-la-la-la (La-la-la, la-la-la-la-la)
ラ・ラ・ラ・ラ・ラ

La-la-la-la-la
ラ・ラ・ラ・ラ・ラ

La-la-la-la-la
ラ・ラ・ラ・ラ・ラ

La-la-la-la-la (La-la-la, la-la-la-la-la)
ラ・ラ・ラ・ラ・ラ

La-la-la-la-la
ラ・ラ・ラ・ラ・ラ

La-la-la-la-la (Tell your children)
ラ・ラ・ラ・ラ・ラ(アンタの子供たちに伝えてやって)
※次世代への伝承こそが、このアルバム『Miseducation(誤った教育からの脱却)』の真の目的であることを示して曲がフェードアウトしていく。

La-la-la-la-la (Oh-oh-oh-oh)
ラ・ラ・ラ・ラ・ラ(オーオーオー)