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Just Don’t Give A Fuck (Live From Tramps, New York / 1999) - Eminem 【和訳・解説】

Artist: Eminem

Album: The Eminem Show (Expanded Edition)

Song Title: Just Don’t Give A Fuck (Live From Tramps, New York / 1999)

概要

本作は、1997年のインディー盤『Slim Shady EP』及び、1999年のメジャーデビュー作『The Slim Shady LP』のリードシングルとなった彼の原点とも言える伝説的楽曲のライブ音源である。『The Eminem Show』の20周年記念盤に収録されたこの1999年のクラブ「Tramps」でのパフォーマンスは、ブレイク直前の彼が放つヒリヒリとした熱量を真空パックしている。「スリム・シェイディ」という狂気の人格の完全なマニフェスト(宣言)であり、ドラッグ、暴力、ポリティカル・コレクトネスの破壊、そして当時の白人ラッパーやメインストリームへの容赦ないディスが詰め込まれている。アンダーグラウンドのバトルMCとしての圧倒的なライミングスキルと、社会のタブーを嘲笑するブラックユーモアが高次元で融合しており、彼がいかにしてヒップホップシーンの頂点へと登り詰めたかを証明する歴史的アーカイブである。

和訳

[Verse 1: Eminem]

Slim Shady, brain dead like Jim Brady
スリム・シェイディ、ジム・ブレイディみたいに脳死状態だ
※1981年のレーガン大統領暗殺未遂事件で頭部に被弾し、重度の脳障害を負った報道官ジム・ブレイディを引用。スリム・シェイディという人格が倫理観や道徳を完全に喪失した「脳死状態」であることを示す、Eminem特有の不謹慎なネームドロップである。

I'm a M-80, you little like that Kim lady
俺はM-80爆竹だ、お前はあのキムおばさんみたいにちっぽけだな
※「M-80」は米国の強力な軍用・市販の大型爆竹。自身を爆発物に見立て、当時の妻であるKim Mathers(または女優のキム・ベイシンガー説もあるが、文脈的に身内)を「ちっぽけな存在」として引き合いに出し、相手を小馬鹿にしている。

I'm buzzin', Dirty Dozen, naughty rotten rhymer
俺はハイになってる、ダーティ・ダズン、タチの悪い腐ったライマーさ
※"Dirty Dozen"は彼が所属するデトロイトのクルー「D12」の別称。映画『特攻大作戦(The Dirty Dozen)』から取られており、はみ出し者たちの集まりであることを誇示している。

Cursin' at you players worse than Marty Schottenheimer
マーティ・ショッテンハイマーより酷い言葉で、お前らプレイヤーに悪態をついてやる
※NFLの元名将マーティ・ショッテンハイマーが、試合中やロッカールームで猛烈に放送禁止用語を連発して選手(プレイヤー)を罵倒することで有名だったエピソードをサンプリングした見事なワードプレイ。

You wacker than the motherfucker you bit yo' style from
お前は自分がスタイルをパクったクソ野郎よりもさらにダサいぜ

You ain't gon' sell two copies if you press a double album
2枚組のダブルアルバムを出したところで、2枚すら売れねぇだろうな
※「2枚組アルバム(Double Album)」と「2枚(Two copies)」をかけた痛烈なディス。当時のヒップホップシーンで流行していた2枚組大作主義のラッパーたちへの皮肉でもある。

Admit it, fuck it, while we comin' out in the open
認めろよ、クソが、俺らが表舞台に躍り出てる間にな

I'm doin' acid, crack, smack, coke, and smokin' dope then
アシッドにクラック、ヘロイン、コカインをキメて、それからハッパを吸うんだ
※あらゆるハードドラッグを羅列することで、親や社会が恐れる「最悪の白人の若者像」をあえてカリカチュア(風刺)して演じ切るスリム・シェイディの真骨頂。

My name is Marshall Mathers, I'm an alcoholic (Hi, Marshall)
俺の名前はマーシャル・マザーズ、アルコール依存症です(ハイ、マーシャル)
※アメリカのAA(アルコホーリクス・アノニマス=匿名断酒会)での典型的な自己紹介のパロディ。バックボーカルの「Hi, Marshall」も含め、自身の本名と依存症をエンタメとして消費する自虐的なフリップである。

I have a disease and they don't know what to call it
俺は病気を抱えてるが、医者どもはその病名をなんて呼べばいいか分かっちゃいねぇ

Better hide your wallet 'cause I'm comin' up quick to strip yo' cash
財布を隠しとけよ、一瞬で近づいてお前の現金を巻き上げるからな

Bought a ticket to yo' concert just to come and whip yo' ass
わざわざお前のライブのチケットを買ったのは、お前のケツを蹴り上げるためだけだ

Bitch, I'm comin' out swingin' so fast it'll make yo' eyes spin
ビッチ、俺は目が回るほど速く拳を振り回しながら突撃するぜ

You gettin' knocked the fuck out like Mike Tyson (Pssh)
マイク・タイソンみたいに、完膚なきまでにぶっ倒してやるよ(プシュッ)
※当時の最強の象徴であるボクサー、マイク・タイソンを引き合いに出した攻撃性の誇示。(Pssh)の音は空気を切るパンチの擬音である。

The proof is in the puddin', just ask DeShaun Holton
証拠は火を見るより明らかだ、デショーン・ホルトンにでも聞いてみな
※"The proof is in the pudding"は「論より証拠」という英語の諺。ここでD12のメンバーであり、Eminemの最大の親友であった故「Proof(本名:DeShaun Holton)」の名前を出すことで、諺の"proof"と友人の名前を掛ける高度なダブルミーニングを成立させている。

I'll slit yo' motherfuckin' throat worse than Ron Goldman
ロン・ゴールドマンより酷い有様になるまで、お前の喉笛を掻き切ってやる
※1994年のO・J・シンプソン事件で、首を激しく切り裂かれて惨殺された被害者ロン・ゴールドマンの凄惨な死を引用。倫理のタブーを平然と踏みにじるショック・ラップの極北である。

[Chorus: Eminem]

So when you see me on yo' block with two Glocks
だから俺が2丁のグロックを持って、お前のフッドに現れたら

Screamin', "Fuck the world" like 2Pac (I just don't give a fuck)
2Pacみたいに「世界なんかクソ食らえ」って叫ぶのさ(俺はマジでどうでもいいんだよ)
※2Pacの1995年の楽曲「Fuck The World」へのオマージュ。社会に対する反逆心やニヒリズムという点で、Eminemが2Pacのアティテュードに深く共鳴していたことが窺える。

Talkin' that shit behind my back, dirty mackin'
俺の陰でコソコソとクソみたいな噂話を流して、汚ぇ手を使ってやがる
※"dirty mackin'"は、他人の恋人を寝取ろうとしたり、相手の評判を落とすために陰口を叩くような卑怯な行為を指すストリート・スラング。

Tellin' your boys that I'm on crack (I just don't give a fuck)
仲間たちに俺がクラック中毒だなんて吹聴してな(俺はマジでどうでもいいんだよ)

So put my tape back on the rack, go run and tell your friends
だから俺のテープを棚に戻して、とっとと走ってダチに言いふらせばいいさ

My shit is wack (I just don't give a fuck)
俺の曲はダサいってな(俺はマジでどうでもいいんだよ)

But see me on the street and duck
でもストリートで俺を見かけたら、身を隠した方がいいぜ

'Cause you gon' get stuck, stoned, and snuffed
だって、お前はナイフで刺され、石を投げられ、息の根を止められるんだからな
※"stuck"(刺される)、"stoned"(石打ち、または極度にハイになる)、"snuffed"(殺される)。SとTの頭韻を完璧に踏みながら、裏切り者に対するストリートの過激な報復を描写している。

('Cause I just don't give a fuck)
(だって俺はマジでどうでもいいんだからよ)

[Verse 2: Eminem]

I'm nicer than Pete, but I'm on a search to crush a milkbone
俺はピートよりナイス(上手い)だが、ミルクボーンを粉砕するために探し回ってるんだ
※90年代の白人ラッパーを巡る複雑なネームドロップ。"Pete"は元3rd Bassの白人MC、Pete Niceのこと。"milkbone"は白人ラッパーMiilkboneのこと(犬の骨型おやつ「Milk-Bone」とも掛けている)。MiilkboneがEminemをディスしたことに対するアンサーであり、「俺は過去の白人ラッパーより優秀だし、俺に喧嘩を売った白人ラッパーは犬のエサみたいに噛み砕く」という宣言。

I'm everlastin', I melt vanilla ice like silicone
俺の勢いは永遠だ、ヴァニラ・アイスなんてシリコンみたいに溶かしてやる
※ここでも白人ラッパーの系譜をイジっている。House of PainのEverlastの名前を"everlastin'"に隠しつつ、ポップ路線で一発屋となった白人ラッパーVanilla Iceを「偽物(シリコン)のアイスだからすぐに溶ける」と痛烈にディスしている。

I'm ill enough to just straight up diss you for no reason
理由もなしに真正面からお前をディスるくらい、俺はイカれてるんだ

I'm colder than snow season when it's 20 below freezin'
氷点下20度の雪の季節よりも、俺は冷酷(コールド)だぜ

Flavor with no seasoning, this is the sneak preview
味付けなしの生のフレイバー、こいつはほんの先行上映に過ぎねぇ

I'll diss yo' magazine and still won't get a weak review
お前らの雑誌をディスっても、俺が低い評価を受けることなんてないんだよ
※ヒップホップ系メディア(The Source誌など)の権威を否定し、「どれだけメディアを批判しようが、俺の実力が高すぎるため低いレビューはつけられないだろう」という圧倒的な自信の表れ。

I'll make yo' freak leave you, smell the Folgers crystals
お前の女も寝取ってやる、フォルジャーズのコーヒーの香りでも嗅いで目を覚ましな
※アメリカの定番コーヒーブランド「Folgers」の有名なCMキャッチコピー「The best part of waking up is Folgers in your cup」をサンプリング。"Wake up and smell the coffee"(現実を見ろ)という英語の慣用句を、固有の商品名を使ってオシャレかつ強烈に言い換えたパンチライン。

This is lyrical combat, gentlemen, hold your pistols
こいつはリリックの戦闘だ、紳士諸君、ピストルを構えな

But I form like Voltron and blast you with my shoulder missiles
だが俺はボルトロンのように合体して、肩のミサイルでお前らを吹き飛ばすぜ
※80年代にアメリカで大ヒットした日本発のロボットアニメ『ボルトロン(百獣王ゴライオン等)』の引用。ヒップホップにおいてWu-Tang Clanなどが好んで使った「無敵の合体ロボット」というギミックをバトルライムに落とし込んでいる。

Slim Shady, M&M was the old initials (Bye-bye)
スリム・シェイディだ、M&Mは昔のイニシャルさ(バイバイ)
※Eminemは活動初期、本名Marshall Mathersの頭文字から「M&M」と名乗っていたが、キャンディ会社からの訴訟リスクを避けるため発音を同じくした「Eminem」に変更した。ここではさらに「過去の自分に別れを告げ、スリム・シェイディとして生まれ変わった」ことを宣言している。

Extortion, snortin', supportin' abortion
恐喝、コカインの吸引、それに中絶の支持だ
※韻(ortion)を硬く踏みながら、保守的なアメリカ社会(特にキリスト教右派)が最も嫌悪する「犯罪」「ドラッグ」「人工中絶の支持」を並べ立てて挑発する、意図的なポリティカル・コレクトネスの破壊行為。

Pathological liar, blowin' shit outta proportion
息を吐くように嘘をつく病的な嘘つき、話をクソみたいに針小棒大に吹聴するぜ

The looniest, zaniest, spontaneous, sporadic
誰よりもイカれてて、滑稽で、衝動的で、予測不能

Impulsive thinker, compulsive drinker, addict
突発的な思考回路の持ち主、強迫観念に囚われた酒飲み、そしてジャンキーだ

Half animal, half man
半分は獣、半分は人間さ

Dumpin' yo' dead body inside of a fuckin' trash can
お前の死体をクソみたいなゴミ箱の中に投げ捨ててやる

With more holes than an afghan
アフガン編みの毛布より多くの穴(銃創)を開けてな
※「Afghan」はアフガニスタン由来の幾何学模様の編み物(アフガン編みのブランケットなど)のこと。網目が多くて穴だらけであることと、銃弾で蜂の巣にされた死体をかけたブラックな比喩表現である。

[Chorus: Eminem]

So when you see me on yo' block with two Glocks
だから俺が2丁のグロックを持って、お前のフッドに現れたら

Screamin', "Fuck the world" like 2Pac (I just don't give a fuck)
2Pacみたいに「世界なんかクソ食らえ」って叫ぶのさ(俺はマジでどうでもいいんだよ)

Talkin' that shit behind my back, dirty mackin'
俺の陰でコソコソとクソみたいな噂話を流して、汚ぇ手を使ってやがる

Tellin' your boys that I'm on crack (I just don't give a fuck)
仲間たちに俺がクラック中毒だなんて吹聴してな(俺はマジでどうでもいいんだよ)

So put my tape back on the rack, go run and tell your friends
だから俺のテープを棚に戻して、とっとと走ってダチに言いふらせばいいさ

My shit is wack (I just don't give a fuck)
俺の曲はダサいってな(俺はマジでどうでもいいんだよ)

But see me on the street and duck
でもストリートで俺を見かけたら、身を隠した方がいいぜ

'Cause you finna get stuck, stoned, and snuffed
だって、お前はナイフで刺され、石を投げられ、息の根を止められるんだからな

('Cause I just don't give a fuck)
(だって俺はマジでどうでもいいんだからよ)

[Verse 3: Eminem]

Somebody let me out this limousine (Hey, let me out)
誰か俺をこのリムジンから降ろしてくれ(おい、出してくれよ)
※急に名声を得て「リムジン」に乗るようになったものの、その窮屈な環境やプレッシャーに耐えきれず逃げ出そうとするパラノイア的な精神状態の描写。

I'm a caged demon
俺は檻に閉じ込められた悪魔だ

On stage screamin' like Rage Against the Machine
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンみたいに、ステージ上で叫び散らしてる
※90年代を代表するミクスチャー・ロックバンド「Rage Against the Machine(RATM)」の引用。ザック・デ・ラ・ロッチャの激しいシャウトと、体制に対する破壊的な怒り(Rage)に自らのパフォーマンスを重ね合わせている。

I'm convinced I'm a fiend
俺は自分がヤク中だと確信してるぜ

Shootin' up while this record is spinnin'
このレコードが回ってる間に、静脈に注射を打ってるんだからな

Clinically brain-dead, I don't need a second opinion
臨床的には脳死状態さ、セカンドオピニオンなんて必要ねぇよ

Fuck droppin' a jewel, I'm flippin' a sacred treasure
「宝石(知恵)を落とす」なんてクソ食らえだ、俺は「神聖な宝」を売りさばいてるんだよ
※ヒップホップのスラングで「Drop a jewel」は「価値ある知識や真理を語る」という意味。Eminemはそんな説教くさいラッパーの常套句を鼻で笑い、自分はそれ以上の「神聖な宝(Sacred treasure=ヤバすぎる自分のリリック、あるいは上質なドラッグのメタファー)」をフリップ(転売)していると豪語している。

I'll bite yo' motherfuckin' style just to make it fresher
お前のクソみたいなスタイルをパクって、もっとフレッシュに洗練させてやるよ
※ヒップホップにおいて最も忌み嫌われる「Bite(パクリ)」をあえて堂々と宣言し、「お前のダサいスタイルを俺がパクってやった方がよっぽどマシな曲になる」と相手のオリジナルとしての尊厳を完全に破壊する最上級の侮辱。

I can't take the pressure, I'm sick of bitches
もうプレッシャーには耐えられねぇ、ビッチどもにはウンザリだ

Sick of naggin' bosses bitchin' while I'm washin' dishes
俺が皿洗いをしてる間にガミガミ説教してくる上司どもにもヘドが出るぜ
※大ブレイクする直前、デトロイトのレストラン(Gilbert's Lodge)で時給数ドルの皿洗いをして家族を養っていた自身のリアルな底辺労働の記憶。

In school, I never said much, too busy havin' a head rush
学校じゃ、俺はほとんど喋らなかった。頭に血を上らせるのに忙しすぎてな

Doin' too much rush, had my face flushed like red blush
ドラッグ(ラッシュ)をやりすぎて、顔が赤いチークみたいに上気してたんだ
※"rush"は吸入系のドラッグ(ポッパー等)のこと。「Head rush(立ちくらみやドラッグのキックバック)」とドラッグの名称を掛けている。

Then I went to Jim Beam, that's when my face grayed
それからジム・ビームに手を出して、俺の顔は土気色になっちまった
※Jim Beamは有名なバーボン・ウイスキー。アルコール依存への移行と、それに伴う健康状態の悪化を色(赤からグレーへ)で対比させている。

Went to gym in eighth grade, ***** the women's swim team
8年生の時に体育館に行って、女子水泳部を〇〇してやったぜ
※検閲(*****)されている部分は「raped」。あまりに過激で非人道的な表現のため、公式の音源でも逆再生処理などでマスキングされていることが多い、スリム・シェイディの極悪非道なショック・ラップの象徴的なライン。Jim Beamと"gym in eighth grade"(ジム・イン・エイス・グレイド)の恐るべき脚韻の硬さも特筆に値する。

Don't take me for a joke, I'm no comedian
俺をジョーク扱いすんなよ、コメディアンじゃねぇんだ

Too many mental problems got me snortin' coke and smokin' weed again
抱えきれないほどの精神問題を抱えて、またコカインを鼻から吸ってハッパを吹かしてる

I'm goin' up over the curb, drivin' on the median
縁石に乗り上げて、中央分離帯の上を爆走してるぜ

Finally made it home but I don't got the key to get in
やっとの思いで家に着いたのに、中に入るための鍵を持っていなかったんだ
※ドラッグとアルコールで泥酔して車を暴走させ、なんとか帰宅したものの、妻(Kim)と喧嘩して追い出されたため鍵がない、あるいはドラッグでラリって鍵を失くしたという、悲惨極まりない日常のリアルなオチ。

[Chorus: Eminem]

So when you see me on yo' block with two Glocks
だから俺が2丁のグロックを持って、お前のフッドに現れたら

Screamin', "Fuck the world" like 2Pac (I just don't give a fuck)
2Pacみたいに「世界なんかクソ食らえ」って叫ぶのさ(俺はマジでどうでもいいんだよ)

Talkin' that shit behind my back, dirty mackin'
俺の陰でコソコソとクソみたいな噂話を流して、汚ぇ手を使ってやがる