Artist: Eminem
Album: The Eminem Show (Expanded Edition)
Song Title: Stimulate
概要
本作「Stimulate」は、2002年の大ヒットシングル「Cleanin' Out My Closet」のB面(ボーナストラック)として収録され、後に『The Eminem Show (Expanded Edition)』や映画『8 Mile』のサウンドトラック(Special Edition)に収録された、隠れた名曲である。当時のエミネムが直面していた最大のテーマである「親や政治家からのバッシング」と「若者たちへの巨大な影響力」について、非常に冷静かつ客観的な視点から語られている。彼は自身を親や保護者ではなく、あくまでリスナーの思考を「刺激(Stimulate)」するエンターテイナーであると定義し、自分の音楽が引き起こす社会的なハレーションを分析している。「Sing for the Moment」や「White America」と対になるようなメッセージ性を持ちながら、浮遊感のあるアンビエントなビートに乗せて優しく語りかけるような異色のトーンが特徴である。
和訳
[Intro]
Psst, hey, listen
シッ、おい、聞いてくれ
(Da-da-da-da-da-da-da-da-da-da)
(ダ・ダ・ダ…)
I love my job (Woo!)
俺は自分の仕事が大好きなんだ(フゥー!)
Makes me feel like Superman, haha
スーパーマンになったような気分にさせてくれるぜ、ハハッ
※アルバム収録の「Superman」と同様に、若者たちから神やヒーローのように崇拝されている自身の絶対的な影響力を指している。
(Da-da-da-da-da-da-da-da-da-da)
(ダ・ダ・ダ…)
Can you fly? I can, wanna see?
お前は空を飛べるか? 俺は飛べるぜ、見てみるか?
※音楽を通じてリスナーの精神を高揚させ、現実から離れた場所へ連れて行く(fly / high)ことができるというエンターテイナーとしての自信。
Psh
プシュッ
[Chorus]
I'm only entertainin' you, my
俺はお前らを楽しませてる(エンターテイン)だけだ、俺の
Goal is to stimulate, makin' you high
目的はお前らを「刺激(スティミュレイト)」して、ハイにさせること
And take you and I
そして、お前らと俺を連れて行くんだ
To a place that you can't see but I believe you can fly
お前らの目には見えない場所へな。でも、お前なら空を飛べるって俺は信じてるぜ
I don't mean nobody harm, I'm just partyin'
誰かを傷つけるつもりなんてねえ、俺はただパーティー(音楽)を楽しんでるだけだ
I'm not your dad, not your mom, not your guardian
俺はお前の親父でも、母親でも、保護者でもねえんだよ
※この曲の核心。自分の過激な歌詞を聞いて子供が真似をしたとしても、それは教育を放棄した「親の責任」であり、自分はあくまで音楽を提供するエンターテイナーに過ぎないという主張。
Just the man who's on the mic
俺はただ、マイクを握ってる男ってだけだ
So let me entertain you (Yeah)
だから、俺にお前らを楽しませてくれよ(イェー)
[Verse 1]
My lyrical content is constantly under fire
俺のリリック(歌詞)の内容は、絶えず非難の的(under fire)になってる
No wonder why I constantly bomb back
だから俺が絶えず爆弾(反撃の曲)を落とし返すのも無理はねえだろ
To combat attacks with constant concepts
絶え間ないコンセプトで、あいつらの攻撃と戦う(コンバット)ためにな
When lyrics are constantly took outta context
俺の歌詞が絶えず、文脈を無視して切り取られてる(outta context)時にな
※「content」「constantly」「combat」「concept」「context」という見事な頭韻(Alliteration)の連続。メディアが彼のリリックの表面的な過激さだけを切り取り、その裏にあるユーモアや社会風刺という本来の文脈(コンテクスト)を無視していることへの怒り。
Failure to communicate with Congress has
連邦議会とのコミュニケーションの失敗は
Been a problem for the longest, I guess, but
ずっと長いこと問題になってきたよな、多分。でも
Maybe one day we can make some progress
もしかしたらいつか、少しは前進(プログレス)できるかもしれない
Food for thought, see how long it takes to digest
思考の糧(フード・フォー・ソート)だ。あいつらがこれを消化するのに、どれくらい時間がかかるか見物だな
※「White America」でも語られた、合衆国議会(Congress)での公聴会におけるヒップホップ批判への言及。自分の音楽は単なる暴力ではなく「考えるための材料(Food for thought)」であり、頭の固い政治家たちがそれを理解(消化)する日を待っているという知的な皮肉。
Feelin' good when I should be ashamed
恥じるべき(批判されるべき)時に、むしろ気分がいいんだ
Shit, I really shoulda fell, but I stood, see, I came
クソッ、俺は本当なら落ちぶれてたはずなのに、踏みとどまった。ほら、やって来たぜ
Like a flame in the night, like a ghost in the dark
夜の炎のように、暗闇の中の幽霊のように
There's a ray, there's a light, there's a hope, there's a spark
一筋の光線があり、光があり、希望があり、火花があるんだ
※貧困や家庭崩壊という暗闇(dark)の中で生きていた自分自身や若者たちにとって、ヒップホップという音楽が唯一の「希望の光(light/spark)」であったことの比喩。
But when planets collide they'll never see eye to eye
でも、惑星同士(異なる価値観)が衝突する時、決して意見が一致(eye to eye)することはない
Until they decide to set their differences aside
お互いが、その違い(対立)を脇に置こうと決心するまではな
And this is why only one of us will survive
だからこそ、俺たち(俺か批判者か)のどちらか一つしか生き残れないのさ
So children, follow my lead and feel the vibe, because
だから子供たちよ、俺のリードについてきて、このバイブスを感じてくれ。だって——
[Chorus]
I'm only entertainin' you, my
俺はお前らを楽しませてる(エンターテイン)だけだ、俺の
Goal is to stimulate, makin' you high
目的はお前らを「刺激」して、ハイにさせること
And take you and I
そして、お前らと俺を連れて行くんだ
To a place that you can't see but I believe you can fly
お前らの目には見えない場所へな。でも、お前なら空を飛べるって俺は信じてるぜ
I don't mean nobody harm, I'm just partyin'
誰かを傷つけるつもりなんてねえ、俺はただパーティー(音楽)を楽しんでるだけだ
I'm not your dad, not your mom, not your guardian
俺はお前の親父でも、母親でも、保護者でもねえんだよ
Just the man who's on the mic
俺はただ、マイクを握ってる男ってだけだ
So let me entertain you (Yeah)
だから、俺にお前らを楽しませてくれよ(イェー)
[Verse 2]
My music can be slightly amusin'
俺の音楽は、ちょっとした娯楽(アミューズメント)みたいなモンだ
You shouldn't take lyrics so serious, it might be confusin'
歌詞をそこまで深刻に受け取るべきじゃない、混乱しちまうかもしれないからな
Tryin' to separate the truth from entertainment
「真実」と「エンターテインメント」を切り離そうとするのは
It's stupid, ain't it? I get sick of tryin' to explain it
バカげてるだろ? もうそれを説明しようとするのにもウンザリだぜ
See, I could sit and argue with you, but it goes beyond
ほら、俺が座ってあんたらと議論することだってできるが、そんな次元の話じゃない
Just being a snot, pointy-nosed bleach-blond
俺がただの生意気な、尖った鼻のブリーチした金髪野郎だってこと以上にな
'Cause I came here to uplift, let your woes be gone
だって俺は、お前らを元気づけ(uplift)、その悲しみを消し去るためにここに来たんだから
Tell 'em to get fucked and just mosey on
奴ら(批判者)には「クソ食らえ」って言って、ただのんびり歩き続け(mosey on)りゃいい
Constantly movin', constantly usin'
絶え間なく動き続け、絶え間なく利用するんだ
The Constitution as a form of restitution
アメリカ合衆国憲法(言論の自由)を、名誉回復(損害賠償)の手段としてな
Bless the children, nothin' less than brilliant
子供たちに祝福を。それは間違いなく素晴らしい(ブリリアントな)ことだ
Let me entertain you like Robbie Williams
ロビー・ウィリアムスみたいに、お前らを楽しませてやるよ
※イギリスの世界的ポップスター、ロビー・ウィリアムス(Robbie Williams)の1997年の大ヒット曲「Let Me Entertain You」からの引用。彼もまたスキャンダラスなエンターテイナーとしてメディアを騒がせていた。
I'll be here when y'all are gone, rebuildin'
お前ら(批判者)が全員消え去った後も、俺はここにいて、再建(リビルド)し続ける
World revolvin', still evolvin', still Slim
世界は回り続け、俺は進化し続け、それでも俺は「スリム」のままだ
How many kids’ll copy? Prob'ly millions
一体どれだけの子供たちが俺の真似をするだろうな? 多分、何百万人だろう
But I'ma do this as a fuckin' hobby 'til then, 'cause
でも、その時まで俺はこれをクソみたいな「趣味」としてやり続けるだけさ。だって——
※何百万人もの若者に影響を与えながらも、自分にとってラップはただの「趣味(エンタメ)」であると突き放すことで、教育的な責任を押し付けてくる大人たちを挑発している。
[Chorus]
I'm only entertainin' you, my
俺はお前らを楽しませてる(エンターテイン)だけだ、俺の
Goal is to stimulate, makin' you high
目的はお前らを「刺激」して、ハイにさせること
And take you and I
そして、お前らと俺を連れて行くんだ
To a place that you can't see but I believe you can fly
お前らの目には見えない場所へな。でも、お前なら空を飛べるって俺は信じてるぜ
I don't mean nobody harm, I'm just partyin'
誰かを傷つけるつもりなんてねえ、俺はただパーティー(音楽)を楽しんでるだけだ
I'm not your dad, not your mom, not your guardian
俺はお前の親父でも、母親でも、保護者でもねえんだよ
Just the man who's on the mic
俺はただ、マイクを握ってる男ってだけだ
So let me entertain you (Yeah)
だから、俺にお前らを楽しませてくれよ(イェー)
[Verse 3]
My lyrical content contains subject matter
俺の歌詞のコンテンツには、こんな主題(サブジェクト)が含まれてる
That sucks up all these fucked-up young kids
このイカれた若者たち全員を吸い寄せるような内容がな
At a alarming rate, common denominate
恐ろしいほどのスピードでな。共通分母(コモン・デノミネイト)さ
Add it up, and you'll see just why I dominate
それを足し合わせてみりゃ、なんで俺がこのシーンを支配(ドミネイト)してるか分かるだろ
※アメリカ中の「問題を抱えた若者たち(fucked-up young kids)」がエミネムの音楽に共感し、彼を支持しているという事実。社会の闇という「共通分母」を一つにまとめ上げた結果が、自分の巨大な売上(支配)であるという冷静な分析。
I try to stimulate, but kids emulate
俺は「刺激(スティミュレイト)」しようとしてるだけだが、子供たちは「模倣(エミュレイト)」する
And mimic every move you make, "Slim, you great"
俺の行動を一つ残らず真似して、「スリム、あんた最高だぜ」って言うんだ
But wait, can't you see I'm only here to entertain?
だが待てよ、俺がただ「楽しませる」ためだけにここにいるってことが分からないか?
I gotta be the one to go against the grain
俺は、木目(常識)に逆らって進む(go against the grain)役割を担わなきゃならねえんだ
'Cause, man, I see it, feel it, live it, but it's inhumane
だって俺はそれを見て、感じて、生きてきた。でも、非人道的(インヒューメイン)だろ
For me to see you be influenced and pretend you ain't
お前らが俺の影響を受けてるのを見ておきながら、そうじゃないフリをするなんてな
But they don't understand that I've been through pain
だが連中(大人たち)は、俺がどれほどの痛みを経験してきたかを理解しちゃいない
If you get to know me I could be a friend you gain
もし俺の本当の姿を知れば、俺はお前らの「良き友人」になれるかもしれないのにな
But you can't just stand there and try to judge
でもお前らは、ただそこに突っ立って、俺を裁こう(ジャッジ)とすることしかできない
It hurts but your jealousy probably tears you up inside as much
それは痛むが、お前らの嫉妬心もおそらく、お前ら自身の内側を同じくらい引き裂いてるんだろうぜ
And it's such a pleasure, every button that I touch
俺が(社会の)ボタンに触れるたびに反応が返ってくる、こんな痛快なことはねえよ
I treasure every glutton that I punish in my lust, but
俺の欲望(ラスト)のままに罰を与える、すべての強欲な豚(グラットン)たちを大切に思ってるぜ。でも——
※社会からの批判や憎悪すらも、自分のエンターテインメントの一部(ボタン)としてコントロールし、楽しんでいるという狂気と余裕。
[Chorus]
I'm only entertainin' you, my
俺はお前らを楽しませてる(エンターテイン)だけだ、俺の
Goal is to stimulate, makin' you high
目的はお前らを「刺激」して、ハイにさせること
And take you and I
そして、お前らと俺を連れて行くんだ
To a place that you can't see but I believe you can fly
お前らの目には見えない場所へな。でも、お前なら空を飛べるって俺は信じてるぜ
I don't mean nobody harm, I'm just partyin'
誰かを傷つけるつもりなんてねえ、俺はただパーティー(音楽)を楽しんでるだけだ
I'm not your dad, not your mom, not your guardian
俺はお前の親父でも、母親でも、保護者でもねえんだよ
Just the man who's on the mic
俺はただ、マイクを握ってる男ってだけだ
So let me entertain you (Yeah)
だから、俺にお前らを楽しませてくれよ(イェー)
[Outro]
enif eb lliw gnihtyreve dnA
(And everything will be fine)
すべてうまくいくさ
※アウトロの音声は、英語の文章を逆再生(バックワード・マスキング)したものである。ここでは逆再生された本来のメッセージを和訳している。
uoy niatretne em tel oS
(So let me entertain you)
だから俺に、お前を楽しませてくれ
edir eht rof ereh ylno m'I
(I'm only here for the ride)
俺はこの(音楽という)ドライブを楽しむためにここにいるだけだ
uoy evas ot ereh ton m'I
(I'm not here to save you)
俺はお前を救うためにここにいるわけじゃない
※逆再生という不気味な手法を使って、曲の核心である「自分は救世主ではなく、ただのエンターテイナーである」というメッセージを無意識(サブリミナル)に刷り込むように曲は幕を閉じる。
