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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

When the Music Stops - Eminem (feat. D12) 【和訳・解説】

Artist: Eminem (feat. D12)

Album: The Eminem Show

Song Title: When the Music Stops

概要

2002年の『The Eminem Show』に収録された本作は、エミネムが率いるデトロイトのヒップホップ・グループ「D12」をフィーチャーしたドープなポセ・カット(マイクリレー)である。曲のテーマは「エンターテインメント(音楽)と現実の境界線」。エミネムのVerse 1では、ヒップホップ界に蔓延する安易なビーフ(ラップバトルを現実の殺し合いに発展させる風潮)に対する痛烈な批判が展開される。しかし、続くD12のメンバーたち(Swifty, Kon Artis, Kuniva, Proof, Bizarre)のVerseは、それぞれが現実世界で抱える闇(アルコール依存、パラノイア、暴力衝動、音楽への狂信)を極限までエスカレートさせていく。音楽というフィクションが終わった後(When the music stops)、彼らが向き合わなければならない血生臭い「現実」がどのようなものかを、各々の視点からハードコアに描いたヒップホップ史に残るマイクリレーだ。

和訳

[Intro: Bizarre]

Music, reality: sometimes it's hard to tell the difference
音楽と現実。時々、その違いを見分けるのは難しい

But we as entertainers have a responsibility to these kids
しかし、エンターテイナーとして、我々はこの子供たちに対して責任を負っている……

Psych
なーんてな(嘘だよ)
※Bizarre(ビザール)による、メディアの優等生的な発言をパロディにしたイントロ。当時のエミネムやD12に向けられていた「若者に悪影響を与える」という批判に対し、道徳的な責任など負うつもりはないという強烈なアイロニー。

[Verse 1: Eminem]

If I were to die, murdered in cold blood tomorrow
もし明日、俺が冷酷に殺されて死んだとしたら

Would you feel sorrow, show love, or would it matter?
お前らは悲しんで、愛を示してくれるか? それとも、どうでもいいと思うのか?

Could never be the lead-off batter
俺は決して一番バッター(口火を切る役)にはなれない

If there ain't shit for me to feed off, I'm see-saw battlin'
食らいつく(反撃のネタになる)モンがなきゃ、シーソーゲームみたいなバトルになるだけだ
※エミネムは自分から意味のないビーフ(ディスり合い)を仕掛けることはないが、相手が攻撃してくるなら(餌をくれるなら)徹底的にやり返すというスタンス。

But there's way too much at stake for me to be fake
だがな、フェイク(偽物)でいるには、俺が賭けてるモンが多すぎるんだよ

There's too much on my plate
俺の皿には、もう処理しきれねえほど沢山のモンが乗ってる

I done came way too far in this game to turn and walk away
このゲーム(ヒップホップ業界)で背を向けて立ち去るには、あまりにも遠くまで来すぎちまった

And not say what I got to say
言わなきゃならねえことを、言わずに黙ってるなんてな

What the fuck you take me for, a joke? You smokin' crack?
俺のことをなんだと思ってるんだ、ただのジョークか? クラックでも吸ってんのか?

'Fore I do that, I'd beg Mariah to take me back
黙って立ち去るくらいなら、マライアによりを戻してくれって泣きつく方がマシだぜ
※「Superman」に続くマライア・キャリーへのディス。彼女に復縁を懇願するという彼にとって「最もあり得ない屈辱的な行為」を引き合いに出し、絶対に自分のスタンスを曲げないことを強調している。

I'll get up 'fore I get down, run myself in the ground
倒れる前に立ち上がり、自分自身を極限まで追い込んでやる

'Fore I put some wack shit out
クソみたいな(ワックな)曲を世に出すくらいならな

I'm tryna smack this one out the park, five-thousand mark
この一撃を場外ホームランにしてやるんだ、5000フィート(約1.5km)の特大弾をな

Y'all steady tryna drown a shark
お前らは相変わらず、サメを溺れさせようと無駄な努力をしてやがる
※「drown a shark(サメを溺死させる)」。エミネム(水中で無敵の捕食者)を、彼のホームグラウンド(ラップゲーム)で潰そうとすることの無意味さを嘲笑ったパンチライン。

Ain't gon' do nothin' but piss me off
ただ俺をキレさせるだけで、何の意味もねえんだよ

Lid to the can of whip-ass, just twist me off
俺は「ケツを蹴り上げる(Whip-ass)缶詰」のフタだ。さあ、ひねって開けてみろよ

See me leap out, pull a piece out
俺が飛び出して、銃(ピース)を抜くのを見ることになるぜ

Fuck shootin', I'm just tryna knock his teeth out
いや、撃つなんてもんじゃねえ、あいつの歯を全部ぶち抜いてやるんだ

Fuck with me now, bitch, let's see you freestyle
今すぐ俺にちょっかい出してみろよ、ビッチ。お前のフリースタイルを見せてみろ

Talk is cheap
口で言うだけならタダだからな

Motherfucker, if you really feelin' froggish, leap
クソ野郎、もし本当に「カエル(froggish)」みたいに威勢がいいなら、跳んでみろよ
※「feeling froggish, leap」は「もしやる気(喧嘩する気)があるなら、かかってこい」というストリートの慣用句。

"Yo, Slim, you gon' let him get away with that?
「なあスリム、あいつをあのまま逃がすのか?

He tried to play you, you can't let him escape with that"
あいつはお前をコケにしたんだぜ、このまま見過ごすわけにはいかねえだろ」
※取り巻き(イエスマン)たちが、ラッパーのプライドを煽って無意味なビーフや暴力をけしかける「ストリートのリアルな声」の再現。

Man, I hate this crap
なあ、俺はこういうクソみたいな風潮が大嫌いなんだ

This ain't rap, this is crazy, the way we act
こんなのラップじゃねえ。俺たちのこの振る舞いは、完全にイカれてる

When we confuse hip-hop with real life when the music stops
音楽が鳴り止んだ後、ヒップホップと現実世界の殺し合いを混同しちまうなんてな
※2PacやNotorious B.I.G.の死を念頭に置いた、エミネムによる極めてシリアスな業界批判。マイクの前の「ラップバトル」を、現実の「殺し合い」に持ち込むラッパーや取り巻きたちの愚かさを嘆いている。しかし、この直後からD12のメンバーたちは、その「現実の狂気」を体現するようなハードコアなバースをリレーしていく。

[Verse 2: Swifty McVay]

Ain't no gettin' rid of McVay, if so, you would've tried
このマクヴェイを排除することなんてできねえ。もしできるなら、とっくに試してるはずだ

The only way I'm leavin' this bitch is suicide
俺がこのクソみたいな世界から去る唯一の方法は、自殺だけだ

I have died clinically
俺は臨床的には一度死んでるんだ

Arrived back at my enemy's crib with Hennessy
ヘネシーを持って、敵の家(アジト)に蘇って戻ってきたのさ

Got drunk then I finished him
酔っ払って、そのままあいつにトドメを刺してやった

I'm every nigga's favorite archenemy
俺はどのニガにとっても「お気に入りの宿敵(大魔王)」なんだ

Physically fitted to be the most dangerous nigga with beef
ビーフ(抗争)において、肉体的にも最も危険なニガになるために鍛え上げられてる

I spark willingly, with a Dillinger in the dark, diligently
暗闇の中でデリンジャー(小型拳銃)を構え、俺は喜んで、そして勤勉に火花(発砲)を散らす

I'm not what you think
俺はお前らが思ってるような奴じゃない

I appear to be fucked up, mentally endangered
俺は完全にイカれてて、精神的に絶滅危惧種(手遅れ)に見えるだろうな

I can't stay away from a razor
カミソリの刃から離れられねえんだ

I just want my face in a paper
俺はただ、新聞の紙面に自分の顔を載せたいだけさ(凶悪犯罪者としてな)

I wish a nigga had a grenade to squeeze tight to awake neighbors for acres (Bah)
何エーカーも先の近所の連中を叩き起こすために、ニガが手榴弾を強く握りしめてりゃいいのにな(バーン!)

I'll murder you, I gauge and have me turn into
お前を殺してやる。俺は状況を見極め(ショットガンを構え)、自分自身を

A mad man, Son of Sam, bitch, I'm surgical
狂人、サムの息子(シリアルキラー)に変貌させるんだ。ビッチ、俺の殺しは外科手術(サージカル)並みに正確だぜ
※「Son of Sam(サムの息子)」は1970年代にニューヨークを震撼させた実在の連続殺人鬼デビッド・バーコウィッツの異名。Swiftyのバースは、音楽の比喩を超えた純粋な殺人衝動と狂気で満ちている。

I'm allergic to dyin', you think not?
俺は「死ぬこと」にアレルギーがあるんだ(死ぬ気はねえ)。そうは思わないか?

You got balls? We can see how large, when the music stops
お前にはタマ(度胸)があるのか? 音楽が鳴り止んだ時、そのタマがどれくらいデカいか見てやろうじゃねえか

[Verse 3: Kon Artis]

I was happy havin' a deal at first
最初は、レコード契約が取れて幸せだった

Thought money would make me happy
金があれば幸せになれると思ってたんだ

But it only made my pain worse
でも、金は俺の痛みを悪化させただけだった

It hurts when you see your friends turn their back on you, dawg
ダチがお前に背を向けるのを見るのは、マジで辛いぜ

And you ain't got nothin' left but your word and your balls
残されたのは、自分の言葉(ラップ)とタマ(誇り)だけになっちまう

And you're stressed from the calls of your new friends
そしてお前は、「新しい友達」からの電話にストレスを抱える

Beggin' with their hands out
連中は両手を差し出して、金をせびってくるんだ

Checkin' for your record when it's sellin'
お前のレコードが売れてる時は、常にチェックしてすり寄ってくる

When it ain't, that's the end: no laughs, no friends
だが売れなくなった途端、それで終わりだ。笑い声も、友達も消え去る

No girls, just the gin you drink 'til your car spin
女もいなくなる。残るのは、車がスピンするまで飲み続けるジン(酒)だけさ

You think, "Damn" when you slam into the wall and you fall
壁に激突して、車から転げ落ちた時に「クソッ」って思うんだ

Out the car and try to crawl with one arm
片腕だけで必死に這いつくばろうとしながらな
※Kon Artis(Mr. Porter)のバースは、D12の成功に伴う人間不信とアルコール依存の暗い現実(名声の代償)を悲痛に描いている。

I'm 'bout to lose it all in a pool of alcohol
俺はアルコールのプールん中で、すべてを失おうとしてる

If my funeral's tomorrow, wonder would they even call?
もし俺の葬式が明日だとしたら、連中は電話すら掛けてくるんだろうか?

When the music stops
音楽が鳴り止んだらな

[Verse 4: Kuniva]

Let's see how many of your men loyal
お前のダチの何人が、本物の忠誠心を持ってるか見てみようぜ

When I pull up lookin' for you with a pistol sippin' a can of Pennzoil
俺がピストルを構え、ペンゾイル(エンジンオイル)の缶をすすりながらお前を探しに現れた時にな

I'm revved up; who said what when lead bust?
俺のエンジンは全開だ。鉛の弾丸がぶっ放された時、誰が何を言ったって?

Your head just explode with red stuff
お前の頭は、赤い飛沫(脳みそと血)を撒き散らして爆発するだけだ

I'm handcuffed, tossed in the paddy-wagon
俺は手錠をかけられ、護送車(パディ・ワゴン)に放り込まれる

Braggin' about how you shouted like a coward
そこでお前が臆病者みたいにどんな悲鳴を上げたか、自慢してやるよ

Bullets devoured you, showered you niggas
銃弾がお前を喰らい尽くし、お前らニガどもに弾の雨を降らせたってな

If I was you niggas, I'd run while given a chance
もし俺がお前らだったら、チャンスが与えられてるうちに逃げ出してるぜ

Understand, I can enhance the spirit of man
分かってるか、俺は人間の魂(スピリット)を高揚させる(肉体から魂を解放する=殺す)ことができるんだ

Death itself, it can't hurt me
死そのものは、俺を傷つけることはできねえ

Just the thought of dyin' alone that really irks me
俺をマジでイラつかせるのは、「孤独に死ぬこと」への想像だけだ

You ain't worthy to speak thoughts of cheap talk
お前には、安っぽい戯言を口にする価値すらねえよ

Be smart and stop tryna walk how Gs walk before we spark
俺たちが火花を散らす前に、賢く振る舞って「ギャングスタの歩き方」の真似事なんてやめるんだな

Hug the floor while we playin' tug-of-war wit' your life
俺たちがお前の命で「綱引き」をしてる間、大人しく床に抱きついて(這いつくばって)な

Fuck a tour and a mic, I'd rather fuck a whore with a knife (Ah)
ツアーやマイクなんてクソ食らえだ。俺はむしろ、ナイフで娼婦をファック(殺害)する方を選ぶぜ(アー)

Deliver that shit that coroners like
検視官(死体解剖医)が喜ぶようなシット(死体)をお届けしてやるよ

You hype poppin' shit in broad daylight, nigga, you're a goner at night
白昼堂々、威勢よくほざいてるお前も、夜になればただの死体(ゴナー)さ

When the music stops
音楽が鳴り止んだ時にな

[Verse 5: Proof]

Instigators turn pits in cages
扇動者どもが、檻の中の闘犬(ピットブル)たちを凶暴にさせる

Let loose and bit the neighbors, wrist to razors
鎖を解かれりゃ、近所の奴らに噛みつき、手首にカミソリを当てる(自傷する)

Y'all don't want war, y'all want talk
お前らは戦争(リアルな抗争)なんて望んじゃいねえ、ただ口で語りたいだけだ

In the dark, my dogs all bark like, "Woof"
暗闇の中で、俺の犬(ダチ)たちは一斉に吠える。「ウーフ」ってな
※D12のリーダーであり、デトロイトのストリートのカリスマだった故Proof(プルーフ)のバース。「Woof(ウーフ)」は犬の吠え声だが、Proofの名前と韻を踏むための導入でもある。

Proof, nigga, I'm a wolf
俺がプルーフだ、ニガ。俺は狼(ウルフ)だぜ

Get your whole roof caved in like reindeer hooves
トナカイの蹄(サンタのソリ)みたいに、お前の家の屋根を丸ごと踏み抜いて陥没させてやる

Stomp the booth, shake the floor tiles loose
レコーディング・ブースを踏み鳴らし、床のタイルを揺らして剥がしてやる

The more y'all breathe, shit, the more I moves
お前らが息をすればするほど、クソッ、俺の動きは激しくなるんだ

It's Hill Street, this is hardcore blues
ここはヒル・ストリート(デトロイトのタフな地域)。こいつはハードコアなブルースだ

Put a gun to rap, check in all our dues, nigga
ラップの頭に銃を突きつけ、俺たちが払ってきた「すべての代償」を回収してやるよ、ニガ

Or make the news, bet you all y'all move
さもなきゃニュースの(死体の)見出しにしてやる。賭けてもいい、お前らは全員動揺するはずだ

When the Uzi pop, you better drop when the music stop
ウージー(サブマシンガン)が火を噴いた時、音楽が鳴り止んだ時には、大人しく地面に伏せとくんだな
※Proof自身が2006年にデトロイトのナイトクラブで銃撃され命を落としている事実を重ねると、この「音楽が終わった後の銃声」という言葉はあまりにも重く、悲劇的な予言のように響く。

[Verse 6: Bizarre]

Music has changed my life in so many ways
音楽は俺の人生を、いろんな意味で変えちまった

Brain's confused, been fucked since the 5th grade
脳みそは混乱してる。小学5年の頃から完全にイカれちまってるんだ
※D12のトリックスター、Bizarre(ビザール)のバース。音楽(フィクション)の影響を受けすぎて現実と空想の区別がつかなくなった精神異常者の語り。

LL told me to rock the bells
LL(クール・J)が俺に「ロック・ザ・ベル(ベルを鳴らせ)」って言ったんだ

N.W.A said "Fuck tha Police," now I'm in jail
N.W.Aが「ファック・ザ・ポリス」って言うから、今俺は刑務所に入ってる
※ヒップホップの名曲のメッセージを文字通り真に受けて犯罪を犯したという、エミネムがVerse 1で危惧した「ラップと現実の混同」の最悪のパロディ。

'93 was strictly R&B
1993年は完全にR&Bの年だった

Fucked up haircut, listened to Jodeci
イカれた髪型にして、ジョデシィ(Jodeci)を聴き狂ってた

Michael Jackson, who gon' tell me I ain't Mike?
マイケル・ジャクソン。俺がマイクじゃないなんて、誰が言えるんだ?

Ass cheeks painted white, fuckin' Priscilla tonight
ケツの頬っぺたを白く塗って、今夜はプリシラ(エルヴィス・プレスリーの元妻/マイケルの元妻リサ・マリーの母)とファックするぜ

Flyin' down Sunset, smokin' crack
サンセット大通りをぶっ飛ばし、クラックを吸いながら

Transvestite in the front, Eddie Murphy in the back
助手席に女装男を乗せ、後部座席にはエディ・マーフィだ
※1997年に俳優エディ・マーフィがトランスジェンダーの娼婦を車に乗せていて警察に職務質問されたスキャンダルを揶揄している。

M.O.P. had me grimy and gritty
M.O.P.(ハードコア・ヒップホップデュオ)の曲のせいで、俺は薄汚くて凶暴になっちまった

Marilyn Manson, I dyed my hair blue and grew some titties
マリリン・マンソンの影響で、髪を青く染めて、おっぱい(女性化乳房)を成長させたぜ

Ludacris told me to throw them bows
リュダクリスが俺に「肘鉄(bows)を食らわせろ」って言ったんだ

Now I'm in the hospital with a broken nose and a fractured elbow
おかげで今、俺は鼻をへし折られ、肘を骨折して病院のベッドの上さ
※リュダクリスのヒット曲「Rollout (My Business)」や「Throw Them Bows」の影響で暴れて返り討ちにあったというオチ。

Voices in my head, I'm goin' in shock
頭の中で声が聞こえる、俺はショック状態に陥ってる

I'm reachin' for the Glock, but the music stops
俺はグロック(拳銃)に手を伸ばす、しかし、そこで音楽が鳴り止むんだ
※ビザールが音楽のメッセージに洗脳され、ついに銃(Glock)を引き抜こうとした瞬間、プツリと音楽が途切れる。音楽(フィクション)の狂気が現実の暴力に転化した瞬間に曲が終わるという、映画のような完璧なエンディング。